シュードモナス・エントモフィラ
シュードモナス・エントモフィラ | |||||||||||||||||||||
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分類 | |||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||
Pseudomonas entomophila |
シュードモナス・エントモフィラ(Pseudomonas entomophila)とは、シュードモナス属のグラム陰性細菌である。2000年に行われたシュードモナス属の16S rRNA系統解析によりP. putidaグループに位置づけられた[1]。
分布と特徴
[編集]Pseudomonas entomophilaは土壌、植物の根圏、水圏、昆虫の体内で見出される。最初に発見されたのはキイロショウジョウバエDrosophila melanogasterの体内からで、幼虫および成虫の致死性病原菌としてであった。
P. entomophilaのゲノムDNAは単一の環状染色体である。5,888,780ヌクレオチドから成り、5,169個のコード配列(そのうち3,466個については機能が明らかとなっているか予測されている)と107個のRNA遺伝子が発見されている[2]。
細胞の構造タンパク質はPSEEN0141、PSEEN2177、PSEEN3946の3つである。これらの構造タンパク質は宿主の表面への吸着やコロニーの形成に関わる。ペントースリン酸経路、エントナー・ドゥドロフ経路、TCA回路、6-ホスホフルクトキナーゼが欠けた不完全なEMP回路を持つ。土壌中でポリマーを分解する加水分解酵素(リパーゼ、プロテアーゼ)を産生する[3]。また、シアン化水素合成酵素を有していると推定されている[4]。
病原性
[編集]キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)などの昆虫に感染する致死性の昆虫病原菌である[5]。キイロショウジョウバエについては幼虫にも成虫にも毒性がある。
P. entomophilaがキイロショウジョエバエ体内に侵入すると、キイロショウジョウバエは免疫応答し、リゾチームなどの分解酵素を分泌する。P. entomophilaはこれに耐性を持つ。この耐性は4種のカタラーゼ、2種のスーパーオキシドジスムターゼ、3種のヒドロペルオキシドレダクターゼ、11種のグルタチオン-S-トランスフェラーゼを産生することにより獲得され、キイロショウジョエバエの腸内に生息することを可能にする[2]。また、キイロショウジョウバエ体内の抗菌ペプチドを分解するプロテアーゼAprAをP. entomophilaは分泌する[5]。しかし、AprAを分泌しないが病原性を示す菌株も発見されている[5]。
P. entomophilaの毒素は溶血活性を持つリパーゼと細胞外プロテアーゼであり、血液細胞の細胞壁を破壊する。溶血性毒素の多重遺伝子としてPSEEN2485、PSEEN2697、PSEEN2788などがある[3]。P. entomophilaは溶血性毒素のほか、昆虫毒性に関わるとされるセリンプロテアーゼ(PSEEN3027, PSEEN3028, PSEEN4433)とアルカリ性プロテアーゼ(PSEEN1550)も持つ[3]。
病原菌であるが、病原菌が普通持っているIII型分泌装置を持たない。P. entomophilaの毒素はI型およびII型分泌装置タンパク質に吸着している。
P. entomophilaの毒素産生はGacS/GacA系により制御されている。GacS/GacA系はガンマプロテオバクテリアの二次代謝産物の産生、タンパク質の浸出、病原性因子を調節GacS/ GacAシステムの制御する遺伝子領域である[5]。
昆虫に対して高い毒性をもつが、植物の細胞壁を破壊する酵素を持たず植物病原性がない。このため、殺虫用の生物農薬として研究開発されている[6][5]。
脚注
[編集]- ^ 安齊洋次郎; H. Kim; J. Y. Park; H. Wakabayashi; H. Oyaizu, H (Jul 2000). “Phylogenetic affiliation of the pseudomonads based on 16S rRNA sequence”. Int J Syst Evol Microbiol 50 (4): 1563–89. doi:10.1099/00207713-50-4-1563. PMID 10939664 .
- ^ Encyclopedia of Genes and Genomes (KEGG)
- ^ a b c N. Vodovar; D. Vallenet; S. Cruveiller; Z. Rouy; V. Barbe; C. Acosta et al (2006). “Complete genome sequence of the entomopathogenic and metabolically versatile soil bacterium Pseudomonas entomophila”. Nat. Biotechnol. 24 (6): 673-679. doi:10.1111/j.1462-5822.2010.01501.x .
- ^ B. Ryall; H. Mitchell; D. Mossialos; H.D. Williams (2009). “Cyanogenesis by the entomopathogenic bacterium Pseudomonas entomophila”. Letters in Applied Microbiology 49: 131-135. doi:10.1111/j.1472-765X.2009.02632.x .
- ^ a b c d e I. Vallet-Gely; O. Opota; A. Boniface; A. Novikov; B. Lemaitre (2010). “A secondary metabolite acting as a signaling molecule controls Pseudomonas entomophila virulence”. Cellular Microbiology 12 (11): 1666-1679 .
- ^ PMID 16699499