シティスター (路面電車車両)
71-911 "シティスター" 71-911E "シティスター" 71-911EM "ライオネット" | |
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基本情報 | |
製造所 | PC輸送システムズ |
製造年 |
71-911 2014年 - 71-911E 2016年 - 71-911EM 2018年 - |
運用開始 | 2015年(71-911) |
主要諸元 | |
軌間 |
71-911 1,524 mm 71-911E 1,435 mm 71-911EM 1,524 mm |
車両定員 |
71-911、71-911E 着席33人 定員119人(乗客密度5人/m2時) 最大170人(乗客密度8人/m2時) 71-911EM 着席34人 定員111人(乗客密度5人/m2時) 最大155人(乗客密度8人/m2時) |
全長 |
71-911、71-911E 16,500 mm 71-911EM 16,700 mm |
全幅 | 2,500 mm |
備考 | 主要数値は[1][2][3][4]に基づく。 |
シティスター(英語: CityStar、ロシア語: Сити Стар)は、ロシア連邦の鉄道車両メーカーであるPC輸送システムズ(ПК Транспортные системы)が製造する路面電車車両の愛称。形式名は71-911および71-911Eで、車内全体が低床構造となっている超低床電車である。この項目では、ライオネット(Lionet、Львенок)の愛称を持つ発展型車両の71-911EMについても解説する[2][5][6]。
概要
[編集]PC輸送システムズは2013年に設立された企業で、2015年に認可を受けて以降、ロシア連邦を始めとする旧ソビエト連邦各国の路面電車へ向けて超低床電車の量産を実施している。その中でも「シティスター」は、中程度の輸送量を想定した1両での運用が可能なボギー車(単車)である[7][2][8]。
終端にループ線がある路線での使用を前提にしており、運転台や乗降扉(両開き、4箇所)は車体の片側のみに設置されている。PC輸送システムズが特許を有している、回転軸を備え低床構造に適したボギー台車を使用する事で、単車ながらも床に段差がない100 %低床構造が実現している他、車椅子スペースなど広い空間も確保されている。車内の設備にはロシア連邦で製造された路面電車車両で初めてアルミニウム合金が用いられ、冷暖房双方に対応した空調装置も搭載されている。これらを含め、シティスターに使用されている部品の85 %はロシア連邦内で生産されたものである[2][4]。
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車内(71-911E)
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運転台(71-911E)
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車内(71-911EM)
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運転台(71-911EM)
車種・運用
[編集]2020年現在、シティスターや発展形の車種の導入先は以下の通りである。ただしトヴェリ市電に導入された車両(71-911:8両)については制動装置の不具合により2017年4月以降営業運転を離脱し、翌2018年11月に市電自体が廃止されたため2020年の時点で使用されていない[9][10]。
71-911
[編集]「シティスター」の基本形式。旧ソ連の路面電車で広く採用されている軌間1,524 mm(広軌)に対応する。2015年からトヴェリ市電へ8両が導入され、2019年からはカザン市電へ向けて5両が製造されている他、2020年1月31日にはラトビアのダウガフピルス市電でも営業運転を開始しており、こちらには計8両が導入されている[11][12][13][14][15]。
71-911E
[編集]軌間1,435 mm(標準軌)に対応した台車を有する形式。ロシア連邦で唯一標準軌の路線網を有する路面電車であるロストフ・ナ・ドヌ市電へ向けて2016年 - 2017年に30両が導入され、2019年の時点で運行本数の8割以上を同形式が担っている[1][11][16][17][18]。
71-911EM
[編集]2018年に発表され、同年に開催されたイノトランスに試作車が展示された、「シティスター」の発展型車両。人間工学に基づいた前面や運転台のデザイン変更や、架線レス区間での走行に対応した充電池の搭載への対応などが主な改良点となっている。愛称の「ライオネット」はライオンの子供(子獅子)を意味する[注釈 1][5][6][21][22]。
2023年現在、試作車1両に加えて以下の都市へ向けて量産車の製造が行われている。これら以外にヤロスラヴリ市電(ヤロスラヴリ)への導入も検討され、2023年に1両が営業運転に投入されたものの、PC輸送システムズの車両生産計画の都合により合計47両の車両製造が困難になったため導入計画は中止され、既に導入された1両についても同年10月時点でPC輸送システムズへの返却が予定されている[23][24][25][26]。
- ウラン・ウデ市電(ウラン・ウデ) - 15両を導入。
- ペルミ市電(ペルミ) - 23両を導入。2023年以降44両を増備予定[23][27][28]。
- ウリヤノフスク市電(ウリヤノフスク) - 29両を導入[24]。
- モスクワ市電(モスクワ) - 40両を導入[29]。
- イジェフスク市電(イジェフスク) - 16両を導入[30]。
- チェレポヴェツ市電(チェレポヴェツ) - 27両を導入[24][31]。
- クラスノヤルスク市電(クラスノヤルスク) - 25両を導入[24][32]。
- ヴェルフナヤ・ピシュマ市電(ヴェルフナヤ・ピシュマ) - 11両を導入[33][34]。
- トゥーラ市電(トゥーラ) - 22両を導入[24][35]。
- クルスク市電(クルスク) - 22両を導入予定、2023年時点で1両を試験的に導入し試運転を実施中[24][36]。
- ヴォルゴグラード市電、ヴォルゴグラード・メトロトラム(ヴォルゴグラード) - 50両を導入予定[37]。
- ノヴォトロイツク市電(ノヴォトロイツク) - 13両を導入予定[38]。
- サラトフ市電(サラトフ) - 1両を導入予定[39]。
- サンクトペテルブルク市電(サンクトペテルブルク) - 17両を導入予定。全車とも人工知能を用いた運転支援システムを搭載[40]。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ a b 服部重敬 2019, p. 104.
- ^ a b c d “«Сити Стар»”. ПК Транспортные системы. 2020年2月28日閲覧。
- ^ ПК Транспортные системы 2015, p. 4.
- ^ a b ПК Транспортные системы 2015, p. 5.
- ^ a b “«Львенок»”. ПК Транспортные системы. 2020年2月28日閲覧。
- ^ a b “Tram car 71-911EM Lionet”. InnoTrans Virtual Market Place. 2020年2月28日閲覧。
- ^ 服部重敬 2019, p. 100.
- ^ ПК Транспортные системы 2015, p. 2.
- ^ 服部重敬 2019, p. 98.
- ^ “Все трамваи "City Star" сломались и уже более 45 дней не выходят на линию”. tvernews.ru (2017年4月12日). 2020年2月28日閲覧。
- ^ a b Libor Hinčica (2016年8月17日). “„RUSKÉ EVO“ ZAMÍŘÍ DO ROSTOVA NA DONU”. Československý Dopravák. 2020年2月28日閲覧。
- ^ Libor Hinčica (2018年7月23日). “LVÍČEK – NOVÁ RUSKÁ TRAMVAJ”. Československý Dopravák. 2020年2月28日閲覧。
- ^ “В Казани появилось три новых трамвая с системой пожарной безопасности”. inkazan.ru (2019年11月29日). 2020年2月28日閲覧。
- ^ Ирена Вилциня (2020年1月31日). “Новые трамваи поехали по маршруту № 2 в Даугавпилсе”. Chayka. 2020年2月28日閲覧。
- ^ “City Star встретили в Казани”. ПК Транспортные системы (2019年9月11日). 2020年2月28日閲覧。
- ^ “Сити Стар 71-911E прибыл для обкатки в Ростов-на-Дону”. tvernews.ru (2016年2月24日). 2020年2月28日閲覧。
- ^ “Четыре новых низкопольных трамвая выходят на ростовские улицы”. Блокнот - Новости Ростова-на-Дону. (2016年12月6日). 2020年2月28日閲覧。
- ^ Павел Яблоков (2018年7月3日). “В Ростове-на-Дону восстановлено трамвайное движение по улице Станиславского”. TR.ru. 2020年2月28日閲覧。
- ^ “«Лев»”. ПК Транспортные системы. 2020年2月28日閲覧。
- ^ “Tram car 71-934 Lion”. InnoTrans Virtual Market Place. 2020年2月28日閲覧。
- ^ “Первый «Львёнок» уже на пути в Улан-Удэ”. Байкал Daily (2019年8月31日). 2020年2月28日閲覧。
- ^ “Tram leasing deal signed”. Metro Report International. Railway Gazette International (2020年8月27日). 2020年9月7日閲覧。
- ^ a b Дарья Гербер (2023年6月13日). “«Львята» готовятся к выходу на трамвайные маршруты Перми, Ярославля и Тулы”. TR.ru. 2023年6月14日閲覧。
- ^ a b c d e f Vít Hinčica (2023年7月24日). “Tula získala 17 Lvíčků, Perm pořizuje dalších 30”. Československý Dopravák. 2023年7月25日閲覧。
- ^ Павел Яблоков (2023年10月9日). “УКВЗ готовится к отправке 220 трамваев в 10 городов России”. TR.ru. 2023年10月2日閲覧。
- ^ Дарья Гербер (2023年10月10日). “Трамваи для Южного Урала, Мариуполя, Барнаула, Ярославля и Саратова: поставки и планы”. TR.ru. 2023年10月2日閲覧。
- ^ “НОВЫЕ ТРАМВАИ В ПЕРМЬ ПОСТАВИТ «ПК ТРАНСПОРТНЫЕ СИСТЕМЫ»”. Business Class (2020年11月21日). 2021年3月22日閲覧。
- ^ Дарья Гербер (2024年1月4日). “Новые трамваи: поставки в Петербург, Ярославль, Пермь, Краснодар, Самару и Нижний Новгород”. TR.ru. 2024年1月10日閲覧。
- ^ “Moscow LRV contract awarded”. Internatinoal Railway Journal (2020年10月6日). 2020年10月8日閲覧。
- ^ “«ПК Транспортные системы» выполнила контракт на поставку 16 трамваев «Львенок» в Ижевск”. Металлоснабжение и сбыт (2020年12月8日). 2021年10月3日閲覧。
- ^ Павел Яблоков (2021年9月6日). “От Калининграда до Сибири: три завода обновляют подвижной состав в трамвайных депо страны”. TR.ru. 2021年10月13日閲覧。
- ^ Павел Яблоков (2021年10月12日). “Красноярск и Пермь закупают новые трамваи, Уфа — забирает из Москвы”. TR.ru. 2021年10月13日閲覧。
- ^ “Для трамвая модели 71-911ЕМ «Львёнок» до Верхней Пышмы выбрали цвет”. ИА “Уральский меридиан” (2022年4月18日). 2022年5月11日閲覧。
- ^ “В Таганроге и Москве продолжается реконструкция трамвайных путей, в Екатеринбурге — готовятся к новым открытиямт”. TR.ru (2022年5月5日). 2022年5月11日閲覧。
- ^ Дарья Гербер (2024年2月8日). “Новые трамваи спешат в Новотроицк, Улан-Удэ и Тулу, троллейбусы — в Новороссийск и Ковров”. TR.ru. 2024年2月11日閲覧。
- ^ Дарья Гербер (2024年2月15日). “Новые трамваи готовят для Красноярска, Волгограда и Хабаровска, в Курске — выбирают имена”. TR.ru. 2024年2月18日閲覧。
- ^ Дарья Гербер (2023年9月13日). “Новые трамваи закупают для Волгограда, Новотроицка, Челябинска и Магнитогорска”. TR.ru. 2023年9月21日閲覧。
- ^ Дарья Гербер (2023年11月21日). “Новые трамваи — в Барнаул, Мозырь, Новотроицк, Ярославль и на Южный Урал: поставки и планы”. TR.ru. 2023年11月23日閲覧。
- ^ “Latest rolling stock procurements and supplies: Alstom, Siemens, OBB, Uraltransmash, PC TS”. RolingStock (2024年1月29日). 2024年3月4日閲覧。
- ^ Павел Яблоков (2024年8月15日). “Новые трамваи: поставки в Волгоград, Краснодар, Новосибирск и Санкт-Петербург”. TR.ru. 2024年8月21日閲覧。
参考資料
[編集]- 服部重敬「定点撮影で振り返る路面電車からLRTへの道程 トラムいま・むかし 第10回 ロシア」『路面電車EX 2019 vol.14』、イカロス出版、2019年11月19日、96-105頁、ISBN 978-4802207621。
- ООО «ПК Транспортные системы» (PDF) (Report). ПК Транспортные системы. 2015年7月. 2020年2月28日閲覧。
外部リンク
[編集]PC輸送システムズの公式ページ”. 2020年2月28日閲覧。
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