サーヴィトリ (オペラ)
『サーヴィトリ』(Sāvitri)作品25 はグスターヴ・ホルストが作曲した全1幕の室内オペラ。彼自身が著したリブレットが用いられている。話の筋は『マハーバーラタ』の「サヴィトリとサティヤヴァーン」の挿話に基づいており、他にも『Specimens of Old Indian Poetry』(ラルフ・グリフィス)と『Idylls from the Sanskrit』が用いられている[1]。編成は3人の独唱者、歌詞を持たない女声合唱、12人の室内オーケストラ(フルート2、コーラングレ、2群の弦楽四重奏、コントラバス)となっている。ホルストは本作に辿り着くまでに少なくとも6度はオペラの作曲に挑戦していた。
演奏史
[編集]本作の初演は1916年12月5日、ロンドンのウェリントン・ホールでアマチュアによる公演として行われた。ホルストはこの作品について「野外、あるいは小規模な建物内」での上演を意図していた[2]。プロによる初めての公演はアーサー・ブリスの指揮で1921年6月23日にリリック・シアターで行われ、ドロシー・シルクがタイトル・ロール、ステュアート・ウィルソンがサティヴヤヴァーン、クリーヴ・ケアリーが死を演じた[3]。
評価
[編集]ホルストの友人で作曲家仲間であったレイフ・ヴォーン・ウィリアムズは本作に旋法的様式が用いられていると述べる[4]。ジョン・ウォラックは本作開始部での複調の使用に関して、異なっていながらもわずかに繋がるサーヴィトリと死の領域を表すものであるとコメントしている[5]。ホルストが本作では楽器編成の大きさという意味でワーグナーの楽劇に見られる壮大さを放棄する形にしているにもかかわらず[6]、ドナルド・ミッチェルは声楽の使用法にワーグナーの影響が認められるとして非常に批判的なコメントを残している[7]。バイロン・アダムズはこの作品の性格が普通の人々よりも「原型」に近いのだと表現した[8]。対照的に、アンドリュー・クレメンツは本作が「東方」の文化を「西方」の音楽形式に組み入れた巧みな方法を高く評価する論評を記した[9]。
配役
[編集]あらすじ
[編集]木こりのサティヤヴァーンの妻であるサーヴィトリは、死が自分を呼ぶ声を耳にする。死は彼女の夫となることを要求する。サティヤヴァーンが到着して苦悩する妻を発見し、サーヴィトリにその恐怖はマーヤー(幻覚)に過ぎないと安心させる[10]。「全ては非現実、全てはマーヤー」。そうでありながらも、死が現れるとサティヤヴァーンの強さは消えてなくなり、彼は地面に倒れ込む。ひとり残され孤独となったサーヴィトリは、死を迎え入れる。彼女の言葉に感じ入って慈悲の心が芽生えた死は、彼女に対してサティヤヴァーンを返すこと以外であれば何でも恵んでやると申し出る。サーヴィトリは最高に満ち足りた人生を求める。死が彼女の望みを認めた後になって、彼女はそのような人生はサティヤヴァーンなしにはあり得ないのだと告げる。打ち負かされた死は彼女のもとを去っていく。サティヤヴァーンが目を覚ます。「死もマーヤー」であったのだ。
出典
[編集]- ^ Head, Raymond (September 1988). “Holst and India (III)”. Tempo. New Series (166): 35–40. doi:10.1017/S0040298200024293. JSTOR 945908.
- ^ Ottaway, Hugh (June 1974). “Holst as an Opera Composer”. The Musical Times 115 (1576): 473–474. doi:10.2307/957953. JSTOR 957953.
- ^ Holst, Imogen (1974). A Thematic Catalogue of Gustav Holst's Music. London: Faber Music. p. 86. ISBN 0-571-10004-X
- ^ Vaughan Williams, Ralph (October 1920). “Gustav Holst (Continued)”. Music & Letters 1 (4): 305–317. doi:10.1093/ml/I.4.305. JSTOR 726997.
- ^ Warrack, John (September 1974). “Holst and the Linear Principle”. The Musical Times 115 (1579): 732–735. doi:10.2307/957840. JSTOR 957840.
- ^ Colin Matthews, liner notes to Hyperion Recording of Sāvitri, CDH55042 (2000 reissue).
- ^ Mitchell, Donald (November 1956). “London Concerts and Opera”. The Musical Times 97 (1365): 596–597. doi:10.2307/938276. JSTOR 938276.
- ^ Adams, Byron (Winter 1992). “Review of Gustav Holst: The Man and His Music by Michael Short”. The Musical Quarterly 76 (4): 584–591. doi:10.1093/mq/76.4.584. PMC 493520 .
- ^ Andrew Clements (2004年5月20日). “Savitri (Symphony Hall, Birmingham)”. The Guardian 2007年7月14日閲覧。
- ^ Trend, J. B. (October 1921). “Savitri, an Opera from the Sanskrit”. Music & Letters 2 (4): 345–350. doi:10.1093/ml/II.4.345. JSTOR 726591.
関連文献
[編集]- Parrott, Ian (1967). "Holst's Savitri and Bitonality." The Music Review, vol. 28, pp. 323–328.