サイコクサバノオ
サイコクサバノオ | |||||||||||||||||||||
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分類(APG IV) | |||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||
Dichocarpum univalve (Ohwi) Tamura et Lauener (1968)[1] | |||||||||||||||||||||
シノニム | |||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||
サイコクサバノオ(西国鯖の尾)[4] |
サイコクサバノオ(西国鯖の尾、学名:Dichocarpum univalve)は、キンポウゲ科シロカネソウ属の多年草[4][5]。
特徴
[編集]植物体全体に繊細である。根茎はあるが、短くほとんど発達しない。茎は高さ10-20cmになり、無毛か、ときに開出する毛がまばらに生える。根出葉は無いか、または1-4個あり、1回3出複葉で、頂小葉は菱形から扇形になり、長さ0.7-1.5cm、幅0.5-1.5cm、無毛か裏面に伏毛が生え、葉柄は長さ2.5-6cmになり、やや開出する毛がまばらに生える。茎の下部につく葉は互生し、上部の葉は対生する。上部の茎葉は1回3出複葉で、頂小葉は菱形から菱状卵形になり、長さ1-1.7cm、幅0.8-1.5cm、縁は粗い鋸歯縁となるか羽状に中裂し、基部はくさび形となり、両面ともにほとんど無毛、葉柄にはやや開出する毛が生え、葉柄の基部は合着する[4][5][6]。
花期は3-5月。茎先に径8-10mmの白色から緑白色の花が数個、下向きに半開して咲く。花柄は長さ0.5-1cmになり、小苞はなく、開出毛が生える。花弁状の萼片は5個あり、楕円形で長さ5-7mm、幅2-4mmになり、中央に紫色のすじが入る。萼片の内側に小さな黄色の花弁が5個あり、花弁の舷部は1弁のみで、広楕円形で先端が浅くへこみ、内曲して垂れ下がり、その柄は白色になる。雄蕊は10数個あり、長さ4mm、葯は白色で長さ0.5mm、花糸は下部が広がる。雌蕊は2個あり柱頭は針状になる。果実は袋果で長さ0.9cmになり、基部で2個が合着して魚の尾状に広がる。種子は径約1mmの球形となり、褐色で、表面は平滑で光沢がある。染色体数2n=36[4][5][6]。
分布と生育環境
[編集]日本固有種[7]。本州の近畿地方と四国に分布し[5]、湿り気の多いスギ林や落葉広葉樹林の林縁などに生育する[6]。
名前の由来
[編集]和名サイコクサバノオは、「西国鯖の尾」の意[4]で、「鯖の尾」とは、この属の果実は2個の袋果が広がって魚のサバの尾状に左右に広がることからいう[8]。
種小名(種形容語) univalve は、「一弁の」「単弁の」の意味[9]。
種の保全状況評価
[編集]国(環境省)のレッドデータブック、レッドリストの選定状況はない。都道府県のレッドデータ、レッドリストでは、大阪府が絶滅危惧I類、奈良県が絶滅寸前種、香川県が絶滅危惧I類(CR+EN)となっている[10]。
分類
[編集]本種ははじめ、大井次三郎 (1934) によって、サバノオの変種、Isopyrum dicarpon Miq. var. univalve Ohwi (1934)[2]とされた。その後、W.T.WANG & HSIAO (1964)によってシロカネソウ属が独立属とされ、田村道夫ら (1968) によって、本属の独立種、Dichocarpum univalve (Ohwi) Tamura et Lauener (1968) [1]とされた。サバノオの花弁の舷部は内外の2弁に分かれ、オレンジ色であるのに対し、本種の花弁の舷部は1弁からなり、黄色である[5][11]。
「サバノオ」の名前がつく本属の種に、本種のほか、サバノオ D. dicarpon、キバナサバノオ D. pterigionocaudatum、トウゴクサバノオ D. trachyspermum がある。サバノオは本州の岐阜県と九州に分布、キバナサバノオは本州の日本海側に偏った福井県、滋賀県、京都府、兵庫県に分布、トウゴクサバノオは東日本だけでなく、本州の岩手県以南、四国、九州に分布する[5][7]。
ギャラリー
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花は数個が下向きに半開して咲く。花弁に見えるのは萼片で5個あり、中央に紫色のすじが入る。
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黄色のものが花弁で5個ある、花弁の内側にあるのは雄蕊で10数個ある。この花では雌蕊はまだ見えていない。
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茎の上部の葉は対生する。1回3出複葉で、頂小葉は菱形から菱状卵形になり、縁は粗い鋸歯縁となるか羽状に中裂し、基部はくさび形となり、両面ともにほとんど無毛、葉柄にはやや開出する毛が生え、葉柄の基部は合着する
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スギの枯れ葉付近のものが根出葉。1回3出複葉で、頂小葉は菱形から扇形になる。
脚注
[編集]- ^ a b サイコクサバノオ 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ a b サイコクサバノオ(シノニム) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ サイコクサバノオ(シノニム) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ a b c d e 『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』p.224
- ^ a b c d e f 門田裕一 (2016)『改訂新版 日本の野生植物2』「キンポウゲ科シロカネソウ属」pp.149-151
- ^ a b c サイコクサバノオ、撮れたてドットコム、いがりまさし
- ^ a b 門田裕一 (2011)「キンポウゲ科」『日本の固有植物』p.54
- ^ 『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』p.223
- ^ 『小学館ランダムハウス英和大辞典』p.2966
- ^ サイコクサバノオ、日本のレッドデータ検索システム、2024年6月30日閲覧
- ^ 小菅桂子, 田村道夫「日本産のシロカネソウ属」『植物分類,地理(Acta Phytotaxonomica et Geobotanica)』第39巻第1-3号、日本植物分類学会、1988年、37-46頁、doi:10.18942/bunruichiri.KJ00002594210。
参考文献
[編集]- 小菅桂子, 田村道夫「日本産のシロカネソウ属」『植物分類,地理(Acta Phytotaxonomica et Geobotanica)』第39巻第1-3号、日本植物分類学会、1988年、37-46頁、doi:10.18942/bunruichiri.KJ00002594210。
- 加藤雅啓・海老原淳編著『日本の固有植物』、2011年、東海大学出版会
- 門田裕一監修、永田芳男写真、畔上能力編『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』、2013年、山と溪谷社
- 大橋広好・門田裕一・木原浩他編『改訂新版 日本の野生植物 2』、2016年、平凡社
- サイコクサバノオ、撮れたてドットコム、いがりまさし
- 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList)
- 日本のレッドデータ検索システム
- 小学館ランダムハウス英和大辞典、小学館ランダムハウス英和大辞典第二版編集委員会編、1994年、小学館