コウリンカ
コウリンカ | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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長野県諏訪地域 2021年9月上旬
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分類(APG IV) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Tephroseris flammea (Turcz. ex DC.) Holub subsp. glabrifolia (Cufod.) B.Nord. (1978)[1] | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
シノニム | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
コウリンカ(紅輪花)[5][6] |
コウリンカ(紅輪花、学名:Tephroseris flammea subsp. glabrifolia)は、キク科オカオグルマ属の多年草[5][6][7]。タカネコウリンギク(学名:T. flammea subsp. flammea)を分類上の基本種とする亜種[6][7]で、基本種とは、比べると茎に毛が少ない点で区別される[8]。以前はキオン属 Senecio L. に分類されていた[9]。
特徴
[編集]根茎は細く短く、細い根が多数生える。茎は直立し、分枝しないで、高さは30-60cmになる。茎にほとんど毛はないか、上部に少しくも毛があり、下方は角ばり紫色をおびる。根出葉はさじ形になり、縁には鈍い鋸歯があり、基部に翼のある長い葉柄があるが、花時には生存しない。茎につく葉は10個ほどあって互生し、下部のものの葉身は広倒披針形で、長さ10-16cm、幅18-35mmになり、先は鈍頭、縁には不ぞろいで微凸な鋸歯があり、基部に向かってしだいに狭くなって基部は半ば茎を抱き、茎に短く沿下する。茎の中部につく葉の葉身は披針形になり、基部は茎を抱く。葉の両面にはくも毛がある[5][6][7][8]。
花期は7-9月。頭状花序は6-13個が散形状につき、頭花の径は3-4cm、花柄は長さ5-16cmになる。総苞は長さ5-8mmになる鐘形で、同属のタカネコウリンカにある総苞基部の苞葉はない。花冠は橙黄色で、舌状花冠は10-15個あり、長さは17-22mm、幅2mmで、反り返った形状は特徴的である。果実は楕円状の痩果になり、長さ3mm、密毛が生える。冠毛は汚白色で、長さ6.5-8mmになる。染色体数2n=46[5][6][7][8]。
分布と生育環境
[編集]日本では、本州の温帯域に分布し、山地の日当たりの良い、湿り気のある草原に生育する[5][6][7]。世界では、朝鮮半島に知られる[7]。
名前の由来
[編集]和名コウリンカは、「紅輪花」の意で、舌状花を紅色の車輪に見立てたものという[10]。牧野富太郎 (1940) は、『牧野日本植物圖鑑』の初版において、「和名ハ紅輪花ノ意ニシテ花色丹色ナレバ云フ」[11]と簡単に説明している。
種小名(種形容語)flammea は「鮮緋色の」「火焔色の」の、亜種名 glabrifolia は「無毛の葉の」の意味[12]。
種の保全状況評価
[編集]絶滅危惧II類 (VU)(環境省レッドリスト)
(2020年、環境省)
都道府県のレッドデータ、レッドリストの選定状況は次の通り[13]。
福島県-絶滅危惧IB類(EN)、茨城県-絶滅危惧IA類、栃木県-絶滅危惧II類(Bランク)、群馬県-絶滅危惧IB類(EN)、埼玉県-絶滅危惧I類(CE)、東京都-絶滅(EX)、神奈川県-絶滅危惧IA類(CR)、新潟県-絶滅危惧II類(VU)、山梨県-準絶滅危惧(NT)、長野県-留意種(N)、静岡県-絶滅危惧IB類(EN)、京都府-絶滅寸前種、兵庫県- Aランク、鳥取県-絶滅危惧I類(CE+EN)、岡山県-絶滅危惧I類、広島県-絶滅危惧I類(CE+EN)
ギャラリー
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茎にほとんど毛はないか、上部に少しくも毛があり、下方は角ばり紫色をおびる。茎につく葉は10個ほどあって互生する。
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10個前後の頭花を散形状につけ、花冠は橙黄色で、舌状花冠は10-15個あり、細長く、反り返った形状は特徴的である。
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茎の下部につく葉基部は半ば茎を抱き、茎に短く沿下する。
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葉の裏面。くも毛がある。
タカネコウリンギク
[編集]タカネコウリンギク (Tephroseris flammea (Turcz. ex DC.) Holub (1973) subsp. flammea[14] 、シノニム:Senecio flammeus Turcz. ex DC. (1837) subsp. flammeus[15]、S. longeligulatus H.Lév. et Vaniot (1910)[16])は、コウリンカの分類上の基本種。多年草。茎は高さ15-40cmになり、茎に長くて縮れた毛が密に生え、またくも毛もある。花期は7-8月。頭花は、径30-32mmになり、茎の上部に2-7個が散形状につく。総苞は長さ5mm。筒状花および舌状花ともに鮮やかなオレンジ色で、舌状花冠は長さ13-22mm、幅1.5mmになり、やや反り返ってつく。冠毛は長さ約5.5mmになる。染色体数2n=48[7][17]。日本では九州の阿蘇山の外輪山や九重山の山麓などに分布し、火山性草原に生育する。世界では、朝鮮半島、中国大陸北部、ロシア極東地方に分布する。朝鮮半島と九州が陸続きだった最終氷期に大陸から分布を広げ、氷期終了後も九州北部の草原に残存したものと考えられている[17]。
絶滅危惧IB類 (EN)(環境省レッドリスト)
(2020年、環境省)
都道府県のレッドデータ、レッドリストの選定状況は次の通り[18]。
熊本県-絶滅危惧IA類(CR)、大分県-絶滅危惧II類(II)
脚注
[編集]- ^ コウリンカ 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ コウリンカ(シノニム) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ コウリンカ(シノニム) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ コウリンカ(シノニム) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ a b c d e 『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』p.528
- ^ a b c d e f 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1154
- ^ a b c d e f g 門田裕一 (2017)『改訂新版 日本の野生植物 5』「キク科キク亜科キオン連」pp.311-312
- ^ a b c 井上健「コウリンカ」『絶滅危惧植物図鑑 レッドデータプランツ 増補改訂新版』p.30
- ^ 北村四郎 (1981)『日本の野生植物 草本III 合弁花類』「キク科」p.182
- ^ 『山溪名前図鑑 野草の名前 夏』p.133
- ^ こうりんくゎ、牧野日本植物図鑑(初版・増補版)インターネット版、高知県立牧野植物園
- ^ 『新分類 牧野日本植物図鑑』pp.1493-1494
- ^ コウリンカ、日本のレッドデータ検索システム、2021年11月07日閲覧
- ^ タカネコウリンギク 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ タカネコウリンギク(シノニム) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ タカネコウリンギク(シノニム) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ a b 矢原徹一「タカネコウリンギク」『絶滅危惧植物図鑑 レッドデータプランツ 増補改訂新版』p.30
- ^ タカネコウリンギク、日本のレッドデータ検索システム、2021年11月07日閲覧
参考文献
[編集]- 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎他編『日本の野生植物 草本III 合弁花類』、1981年、平凡社
- 高橋勝雄『山溪名前図鑑 野草の名前 夏』、2003年、山と溪谷社
- 門田裕一監修、永田芳男写真、畔上能力編『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』、2013年、山と溪谷社
- 矢原徹一他監修『絶滅危惧植物図鑑 レッドデータプランツ 増補改訂新版』、2015年、山と溪谷社
- 大橋広好・門田裕一・木原浩他編『改訂新版 日本の野生植物 5』、2017年、平凡社
- 牧野富太郎原著、邑田仁・米倉浩司編集『新分類 牧野日本植物図鑑』、2017年、北隆館
- 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList)
- 日本のレッドデータ検索システム