キ92 (航空機)
キ92は、太平洋戦争末期に日本陸軍で試作された輸送機である。設計・製造は立川飛行機。それまでの輸送機をすべての面で上回る性能を持つ機体として開発されたが、戦局の悪化により試作機が1機完成しただけで終戦を迎えた。
概要
[編集]昭和17年3月に陸軍は、立川に対して新型双発大型輸送機キ92の開発を指示した。陸軍の要求は従来の輸送機(一〇〇式輸送機等)よりも搭載力、速度、航続距離など全ての性能が上回っていることを求めていた。当初は軽戦車や野戦砲の輸送用とする仕様だったが、最終的には兵員輸送用の機体とすることになった。
立川では昭和18年3月に設計を完了させて試作に着手し、昭和19年9月に試作機を完成させた。機体はアメリカのC-46とほぼ同規模の大きさで、胴体は断面を真円形にして片側2列の4座配置の客席を持つ完全密閉式キャビンを有し、窓も二重式とするなど従来の輸送機にないあたらしい試みがなされている、さらに主翼にはファウラー・フラップ付きの層流翼を採用し、エンジンは強力なハ104の双発強制冷却ファン付とした。兵員は34名搭乗が可能だった。また戦略物資の不足を考慮して、尾翼部分は木製であった。
試験飛行の結果は良好で最大速度426km/hを記録したともいうが、胴体に大きなハッチが設けられていたため胴体の剛性が不足し、危険だったためテストが打ち切られたともいう。当初は試作機3機、増加試作機10機に続いて4000機という生産計画が立てられていたが、戦局の悪化により本機のような後方支援的な機体の開発の優先順位が下がった上に、空襲の激化から審査も進捗せず結局試作1機のみで終戦を迎えることとなった。本機を全木製化したキ114も計画されていた。なお、立川は、軍用輸送機だけでなく将来の商業輸送機に転用する計画を持っていたといわれる。[1]
スペック
[編集]- 全長:22.00m
- 全幅:32.00m
- 全高:5.95m
- 主翼面積:122.0m2
- 自重:11,175kg
- 全備重量:17,600 kg
- エンジン:ハ104 空冷星型18気筒 1870hp ×2
- 最高速度:466km/h
- 実用上昇限度: 10,100m
- 上昇率:7000m/18'20"
- 航続距離:3,960km〜5,000km
- 乗員:5名+兵員34名
(データは計算値)
- 武装12.7mm(旋回)×1
- 搭載量:4,425㎏
出典
[編集]- ^ 小川利彦『幻の新鋭機』廣済堂出版、1997年。
関連項目
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