ガゼル (自動車)
ガゼル(GAZelle、ロシア語: ГАЗе́ль)は、ロシアの自動車メーカー、GAZによって製造・販売される小型商用車である。
概要
[編集]ソビエト連邦の崩壊と市場経済移行時に、ロシアの自動車メーカーは需要の高い小型商用車を生産しておらず、GAZはそこに目をつけ、既存のGAZ製の乗用車(特にGAZ-31029)をベースに1994年に初代モデルを発売。当初はトラックのみだったが、1996年にはミニバスを、1998年には小型のソボルを発売。フロントグリルは1998年までに生産された他車種と同一のデザインを採用。ヘッドランプは角型4灯式で、トランスミッションはMTのみであった。
1993年8月にモスクワモーターショーで発表され、生産はニジニ・ノヴゴロドで開始された。
1999年には他車種をベースにしたガゼルの全地形対応モデルを発売。現在では、リアディファレンシャルロックの名でオプション設定されている。
以前はリガ自動車工場がソビエト連邦全体のミニバスを製造していたが、後に輸出向けモデルのみの生産となった事を受け、GAZはガゼルの開発に至った。その後もモデルチェンジされているが、変更は最小限に抑えられており、ロシア市場では現在もなお人気の車種となっている。
2003年に2代目モデルへモデルチェンジ。ヘッドランプは異型2灯式となり、フロントグリル、フロントバンパーは初代と比較して丸みを帯びたデザインとなり、ボンネット下部のスペースを拡大、テールランプも変更された。全輪駆動車には新たなダッシュボード、パワーステアリング、スチールホイールが与えられた。2004年にはABSを新規搭載。
2005年には累計生産台数が100万台を記録。ガゼルはCIS諸国と中央および東ヨーロッパとは別に、モロッコやフィリピンなどアジアおよびアフリカ市場にも輸出される[1]。
2010年に3代目モデルへモデルチェンジ。3代目は車名がガゼル・ビジネスへ変更された。バンパーと一体化したフロントグリルなど、130個所が変更されている。内部に関してはフロントパネル、ステアリング・ホイール、カーオーディオが改良され、キャブヒーターのスイッチ類がキャビンの前方へ変更された。エンジンは直噴式UMZ-4216型を搭載する。2010年生産車は、カミンズ製ターボチャージャー付ディーゼルエンジンを搭載した。多数の先進技術を搭載し、内部の方が大幅に変更された。2011年にはハイルーフのシャトルバンを発売。2013年にはバイフューエル式ガソリンエンジン搭載車を発売。
2013年4月10日に4代目モデルへモデルチェンジ。再び車名変更があり、ガゼル・ネクストへ変更された。かなり大規模なモデルチェンジとなり、外観デザインが大幅に変更された。なお、ガゼル・ビジネスは継続生産される。このネクストというサブネームは、ソボルなどにも使用される[2]。グレード展開は ベーシック、コンフォート1、コンフォート2の3種類である。ベーシックはパワーステアリング、クルーズコントロール、アラームドアオープンポジション、スタビライザー、調整可能照明付ダッシュボード、オンボードコンピュータ、加熱機能付サイドミラー、パワーウィンドウ、カーオーディオ、セントラルロックシステム、調整可能アームレスト付シート、上下調整可能ステアリングコラム、暖房付ラジエーター、ライター、ツールキットが装備される。コンフォート1はフォグランプ、電動格納ドアミラー、加熱シート、腰椎サポートクッションが追加される。コンフォート2は予熱装置、大容量バッテリー(85Ah)が追加される。全グレードにはディファレンシャルロック、ABS付ブレーキシステム、エアコンがオプション設定される。2014年3月7日にはダブルキャブモデルを発売。同3月24日にはガゼル・ネクストをベースにしたミニバス、ガゼル・ネクストシティラインを発売。2014年5月にはGAZが欧州車両型式承認を取得し、欧州での販売を開始。2015年9月にはモスクワで開催されたコムトランス展にパネルバンモデルとミニバスモデルを展示。パネルバンは2016年4月、ミニバスは同11月に発売された。
バリエーション
[編集]- GAZ-3302 - アオリ付平ボディ、3人乗りキャブ、後輪駆動モデル
- GAZ-33021 - アオリ付平ボディ、GAZ-3302の改良モデル
- GAZ-33023 - アオリ付平ボディ、全輪駆動モデル
- GAZ-33027 - アオリ付平ボディ、6人乗りキングキャブ、後輪駆動モデル
- GAZ-330237 - アオリ付平ボディ、キングキャブ、全輪駆動モデル
- GAZ-3221 - ミニバス、8席、全輪駆動モデル
- GAZ-32213 - ミニバス、13席、全輪駆動モデル
- GAZ-322132 - ミニバス、マルシュルートカおよびシャトルバス用13席、全輪駆動モデル
- GAZ-2705 - パネルバン、全輪駆動モデル
- GAZ-27051 - 救急車、全輪駆動モデル
- GAZ-27052 - パネルバン、キングキャブ、全輪駆動モデル
- GAZ-27057 - パネルバン、キングキャブ、全輪駆動モデル
余談
[編集]プロジェクトでは、元々アゼルバイジャンキロババードの工場での生産を予定していた[3]。
一部では、1986年式フォード・トランジットに類似しているとの指摘があったが[4][5]、初代モデルはエンジン、トランスミッション、インテリアデザイン、ステアリング、ブレーキ類など、技術面で異なる[6]。その他、ガゼルはロシア製エンジンのみを搭載している。また、フロントシートや暖房と換気設備、ラジエーター、ダッシュボードも変更されており、ロシアの道路状況に適応するため、地上高を高く設定している点も異なる[6]。
脚注
[編集]- ^ “Коммерческие автомобили — ГК «Современные транспортные технологии»”. autoplatform.ru. 2024年5月31日閲覧。
- ^ “Gorky Automobile plant to showcase its products at the International Motor Show in the Philippines | Automotive World”. web.archive.org (2019年4月9日). 2024年5月31日閲覧。
- ^ Trucks of the Soviet Union. ベヒモス. (2017). p. 308頁
- ^ “Russia revival: Contract assembly, cargo vans fuel GAZ rebirth”. オートモーティブ・ニュース・ヨーロッパ・コングレス. 2024年5月31日閲覧。
- ^ “GAZelle celebrated 25th anniversary! :: Новости коммерческого транспорта”. web.archive.org (2023年8月25日). 2024年5月31日閲覧。
- ^ a b “Сравнение «Форд-Транзит» и «Газель»”. www.gruzovikpress.ru. 2024年5月31日閲覧。