カリンカ
「カリンカ」(ロシア語: Калинка)は、ロシアの愛唱歌である。
概要
[編集]題名の「カリンカ」とは、樹木のガマズミ属(ロシアで代表的な種はセイヨウカンボク)[1]を意味するロシア語「カリーナ」(калина)の指小形である。いわば「ガマズミさん」「ガマズミちゃん」といった含意である。
長い間ロシア民謡と考えられてきたが、実際には、作曲家・作家・民謡研究者のイワン・ペトローヴィチ・ラリオーノフが1860年に作詞・作曲した作品である。この歌の初演は、ラリオーノフが音楽を書いたサラトフのアマチュア劇団の芝居で、舞台上で歌われたものである。
初演からまもなくして、ラリオーノフの友人で自ら設立した合唱団も擁していた、歌手のドミートリー・アレクサンドロヴィチ・アグレネフ=スラヴャンスキー(Агренев-Славянский, Дмитрий Александрович)の依頼に応じ、スラヴャンスキーのレパートリーにこの歌を加えることを許諾した。スラヴャンスキーの合唱団のレパートリーとなってから、「カリンカ」は人気を集め始めた。
日本語詞では、井上頼豊の訳詞や楽団カチューシャによる詞が広く知られている。
ロシア語の歌詞
[編集]ロシア語詞 | 日本語訳 |
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Калинка, калинка, калинка моя! |
ガマズミよ、ガマズミよ、私のガマズミよ! |
楽曲の使用
[編集]- 「カリンカ」の旋律は、ソビエト連邦で開発されたコンピューターゲーム『テトリス』のBGMとして、「トロイカ」「コロブチカ」などと並び使用されている。ファミリーコンピュータ版(ビーピーエス)では、プレイ時のBGM(選択式)に使用されていた。『ぷよぷよテトリス』(セガゲームス)では、「ビッグバン」ルール時のBGMに「カリンカ」の一部分が挿入されている。
- 英国のサッカークラブのチェルシーFCでは、ロシアの大富豪ロマン・アブラモヴィッチが同チームを買収したことにちなみ、ファンが「カリンカ」を歌う。
「カリンカ」の語の使用例
[編集]ロシア料理のレストランでは、ロシア国内でも外国でも、店の名前に好んで「カリンカ=マリンカ」 (Калинка - малинка)と名をつける。ロシアの民芸品を売る店でも、店名をこの名前にすることを好み、サンクトペテルブルクにはこの名称の写真スタジオが存在する。「カリンカ=マリンカ」の名称が、いかにも「伝統的ロシア」のイメージを喚起させるものになっているので、ロシア風に見せたいものに好んで施される名称である。
脚注
[編集]- ^ 狩野昊子『ロシア語の比喩・イメージ・連想・シンボル事典 ―植物―』 日ソ、2007年、180頁。