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カラワンギ・サーガラ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

カラワンギ・サーガラ』は、津守時生による日本の遠未来ファンタジー小説イラスト小林智美が担当している。

角川スニーカー文庫角川書店)から全4巻で刊行。当時5巻目として外伝の刊行を予定していたが、シリーズ売り上げが伸びず中止[1]。2000年に「完全版」として文庫未収録の短編、書き下ろしを足して全3巻で角川スニーカー文庫から再刊行された。

概要

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喪神の碑』と一部のキャラクターでつながっている。『喪神の碑』の32年後の物語。さらに29年後の話が『三千世界の鴉を殺し』である。

18歳の少女スーリヤは、夏期休暇を過ごすべく、叔母が研究員として滞在している未開惑星マサラへやってきた。熱帯性雨林気候のこの惑星の住民は部族ごとに集落を作って生活している。スーリヤは、ひょんなことからこの星で18年前の父の失踪と、自らの出生の謎を探ることに……。

主な登場人物

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六芒人(ヘクサノーツ)、ラフェール人、白氏族という種族名に関しては、三千世界の鴉を殺し#本作に登場する人種を参照。

マサラ星の研究員たち

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銀河連邦が地球系と六芒系に二分され、ゴタゴタしている隙を突いて違法行為に及んだ地球系企業の要請で滞在している研究員たち。

スーリヤ・フェイガン
小麦色の肌と長い黒髪をもつ、18歳の少女。大学進学前の夏期休暇を過ごすべく、叔母の元を訪れる。が、スリウォンとの出会いから、自らの運命を大きく変える旅をすることに。
アスカ・フェイガン
スーリヤと10歳しか違わない叔母。長い金髪と青い瞳が特徴。故郷では飛び級を重ね、15歳で学都惑星・瑠蓬(るほう)に入学した秀才で、5年で大学院までを終了し、助教授や大学教授を務めていたが、ケインズ財閥の要請を受け、森林生態学者としてマサラにやってきた。2年前まで教授を務めていた大学で民俗学を専攻する予定の姪のために、フィールドワークの機会を提供する。
連邦軍の調査員という身分も持ち、バイカ研究所の実態を調査すると同時に、ひそかに18年前に失踪した兄の足跡を追っている。最終的に、マサラ人と連邦関係者の間を取り持つべくマサラに永住することを選ぶ。
コルネラ・シム
六芒人(ヘクサノーツ)の女性。研究員達の護衛として財閥に雇われた傭兵。アスカとは仲がよく、よく冗談を言い合っている。終盤で戦闘中に熱線砲で撃たれ、最期を遂げる。
ニコル・マーベリック
医師。作中ではマーベリック博士、あるいはニコルと呼ばれる。金髪碧眼で、天使を連想させるような美貌の青年。専門は内科だが必要に応じて簡単な外科手術を行うこともある。コルネラと両想いだった。
実は連邦軍情報部に所属している軍人で、アスカの報告書を受けた情報部によって派遣された。本名はニコラルーン。カイユ生まれのラフェール人で、ある理由からテレパシストであることを隠していた。養父は前作に登場したラフェール人・カラマイである。『三千世界の鴉を殺し』にも登場する。
バツーク
バイカ研究所の所長。一見、小太りで温和な小父さんという印象だが、度々「侮れないタヌキ親父」と評される怪しい男。かつて、スーリヤの父・クレバーの助手だった。
自分が助手として関わってきた研究成果の多くを他人に横取りされ、辛酸をなめてきたことで手柄を狙う欲求と出世欲にまみれており、研究のためなら手段を選ばない。
ミー・チェン
研究員の1人。アスカやコルネラは彼にあまりいい感情を持っていなかった。ラグ・カオヤイの死体らしきものを持ち帰って解剖していたため、助手のほとんどと共に研究室内で圧殺された。

カオヤイ

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タウ
研究所の近くにあるオーダ村のカオヤイ。温和で中立的なカオヤイの鑑。ブラナーとは3歳ほど離れているが、15歳の時の出会い以来、ブラナーの友人でもある。スリウォンとも面識を持つ。
ブラナーと出会い、村を守るカオヤイであることより、対等な友人として彼を守ることを選んだため、意見が対立したスールワシと戦い重傷を負った。以降、ラグ・カオヤイに変化できなくなってしまっていたが、ブラナーを狙った小型飛行艇のレーザー砲を身をもって庇い命を落とす。
スリウォン
ワンナム村のカオヤイ。15歳位の少年だが「保守派」のリーダーを務める。研究所3階の部屋で夢うつつに巫女の神舞を舞っていたスーリヤを外から見かけ、窓を割って室内へ侵入し詰め寄った結果、悲鳴を上げられたのでとっさに自分の村へ連れ去ってしまった。
以降、この星のことについてはほとんど無知なスーリヤを馬鹿にしつつも惹かれていく。
ブラナー
ゴドワ村のカオヤイ。「改革派」のリーダーで独特の雰囲気を持つ。タウに引き合わされて以来、アスカに気がある。子供のような一面を持つものの、カリスマ性は高い。
12歳の時、直系先祖であるゴドワの残留思念に呼ばれ、禁域へ向かう途中にタウに出会い、一緒に禁域へ侵入し生還した。その際、残留思念から記憶を引き継いでいる。
スールワシ
珍しい女性のカオヤイ。ロンダウリ村のカオヤイだったが、ある事情から村が滅び、生き残りとともにゴドワ村に身を寄せる。チャンドゥアは幼馴染。
タウと戦い、瀕死の重傷を負った際に、自分が鳥に意識を乗せられることを知り、チャンドゥアがいるワンナム村へ無意識に向かっていたが、研究所の警備隊員らと遭遇し、相討ちとなって命を落とした。
チャンドゥア
ワンナム村にいたカオヤイ。ロンダウリ村同様、ある事情から滅びたクロンマイ村の出身。スキンヘッドの側頭部に花の刺青をしている。スリウォンよりは年長。
実はずっとスールワシに片想いしており、彼女の命を奪った者が研究所の関係者であると知るやクランタフ・オパに侵入、「発掘調査」として家捜ししていた研究員らをラグ・カオヤイになって惨殺し、研究所も襲撃するが、ウィーヴの策にはまり、1度は心停止する。その後、研究対象として持ち帰るため宇宙船に運ばれた。
ラグ・カオヤイ状態だったのが功を奏して蘇生したが、その人格はほとんど失われており、殺戮を目的とする狂人として宇宙船内を徘徊、偶然たどり着いたエンジンルームで、身を隠していた研究員がレーザー砲を乱射したことがきっかけでエンジンが損傷し宇宙船ごと爆死。
ティエンマ
火山の中腹にあるウルアビ村を飛び出したカオヤイ。肌が白く、その美貌は「神鳥アグンラランに似ている」と評される。ワンナム村に身を寄せている。
ブラナーと因縁があり、戦って殺す機会を狙っている。しかし、ブラナーの事情を聞いていたアスカと対話したことがきっかけで、自分の弱さを受け入れることができ、最後はブラナーと和解した。
サジャク
カラワンギの湖の側にある、パタン・カトゥ村のカオヤイ。まだ少年の域を出ていない。ブラナーに率いられた研究員一行を迎えた。その後、ウィーヴ率いる私兵部隊との戦闘中に熱線砲で撃たれて命を落とす。

その他

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中盤から登場する人物はこちらに記載。

ロヴ・ジョナサン
前作『喪神の碑』の主人公。情報部から異動した後出世し、銀河連邦軍ホウザン方面57師団の司令官となっている。階級は中佐。妻子がいたが、仕事が多忙を極めるため、10年ほど前に別れている。
オリビエ・オスカーシュタイン
前作からの登場。通称:O2(オーツー)。30年以上連邦軍情報部の部長を務める超A級テレパシスト。ただし、現在は諸事情から休職(あるいは失踪)中。ロヴとはかつての上司と部下という関係にある。彼の部下だった者たちの結束は強く、異動で情報部を離れてからも彼の要請に応じて情報を提供したりするほど。
前作との空白期にあったとある爆弾テロ事件で親友・マリリアードを失ったショックで、視覚・聴覚と発声機能を失っているが、その強力なテレパシーで補っている。
ウィーヴ
白氏族の最長老である銀河連邦軍元帥スクトラバの孫で、テレパシスト。外見は白髪とオレンジ色の双眸を持つ15歳ほどの少女だが、1000年以上を生きている。都合上O2の妻。
気紛れな快楽殺人者であり、短命種の人類はゴミとしか見ていない。バツークの要請を受け、人為的に開発された超能力者の部隊を率いてマサラ星にやってきた。
F・M・ゼロ
民間船「ペルセフォネ号」を操る女性船長。言動が男勝りな、男嫌いの賞金稼ぎ。道ゆく10人中全員が振り向くような肢体に黒い服をまとい、普段から黒いバイザーつきのヘルメットの下に隠れているが、波打つ金髪と非常な美貌の持ち主。

用語

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マサラ星(マサラせい)
銀河連邦法に基づいて与えられた惑星ナンバーはNE7092。赤道を挟んで緯度で50度の地域に一つの大陸と数千の島々が密集している惑星。雨季と乾季はあるものの熱帯性雨林の気候を持つ。しかし、研究員たちが「旧式の核融合炉を搭載した宇宙船が墜落した」跡だと分析した、残留放射線値が異常に高い砂漠化した地域も存在し、現在も星の環境に影響を与えている。
文化レベルは、宇宙船建造技術も統一惑星国家も存在しないレベル7。銀河連邦に加入し、様々な惑星へ移住者を送っている地球はレベル2で、地球系人類がマサラに定住し、住民達と接触するのは銀河連邦法違反らしい。
マサラ人(マサラじん)
部族ごとに村落を形成して暮らしており、村の外とほとんど交流を持たないため、同じ単語でも部族によって違う意味を持つことがある。ただし、カオヤイだけは言葉が違ってもテレパシーで意思を通じ合わせることが出来る。ほとんどの住民は日に焼けた褐色の肌だが、火山地帯などの高地にある村の住民は、もや等によって日が遮られるため地球系とほぼ変わらない肌色である。宗教は精霊崇拝に分類され、その根幹にはカラワンギと呼ばれる巨木への信仰がある。
祖先の残留思念から記憶を伝えられたブラナーによると、彼らの祖先はこの星で発生し進化してきた種族ではなく、ある惑星の政府に反逆者の烙印を押され人体実験を施された上で流刑にされた研究者などの知識人2千人であり、この星の過酷な気候に適応する中で文字や共通言語を失ったのだという。
カオヤイ
部族ごとに集落を作って生活するマサラ人の、祭儀的リーダーとも言える人物への呼称。男女問わず長身の美形で、身体能力が一般的なマサラ人とは比べ物にならないくらい高い上にテレパシーを有する。人によっては動物に意識を乗せたり、テレパシーを応用して動物を呼び寄せることが出来る者もいる。
髪が金属光沢を持ち、こめかみなどの髪の一部が赤や黄色といった鮮やかな色になっているのが特徴。髪の光沢や色、戦闘時に発動する超能力には個人差がある(一例として、ブラナーは念力発火能力を持ち、スリウォンは風を操ることが出来る)。体に芸術レベルの刺青を施している。直接カラワンギの神託を受けることもある。
真巫女となったスーリヤの説明によると、カラジャマルによってカオヤイが減ると、次代の子供たちがカオヤイである確率が上がり、その結果、環境の変化に耐えて生き延びるマサラ人がカオヤイばかりになるらしい。
ラグ・カオヤイ
カオヤイが感情の爆発などをきっかけに気を高め、神聖変化(ムルントゥク)した状態。皮膚のすぐ上に、全身の刺青を模した金属光沢を持つ生体装甲のようなものがつく。伸びた爪には毒があり、食らうとしばらくの間高熱が出る。戦闘時に変化することが多い。この状態では物理攻撃がほとんど効かない。
第2段階へ変化すると、皮膚がむき出しだったところも鱗などで覆われた獣のような姿になり、防御力、攻撃力共に上昇するが人間としての理性はなく、動物的な戦闘本能で戦う。レーザー砲ですら装甲が拡散させてしまう上、高い再生能力を持つが、再生には体力を消耗する。
カラ・カオヤイ
ブラナーとスリウォンが戦闘の中で変化しかけた、鳥人のような姿。ラグ・カオヤイの第3段階とされるが、カラワンギの知識を得たスーリヤによると、彼らの祖先を利用した人体実験で不老長寿を願った研究者達によって遺伝子に植え込まれた最終進化形である。変化が完了すれば「人でも動物でもなくなる」「ただ生きているだけのもの」という理由で強制的に解除された。変化する確率は0.1%ほどしかなかったはずだが、2人も変化しかかったためスーリヤが驚いていた。
カラワンギ
マサラ人の信仰の対象である、巨木に宿るとされる神。各村のカオヤイの他に真巫女、祭巫女を選ぶ。木自体は湖に浮かぶ小島に生えていて、湖の上を覆いつくすほど長く太い枝を張りめぐらせている。一種のテレパシーで神託を下すなど、いろいろと謎が多い。
地下にある神殿を流れる水は、水よりも比重の重いカラワンギの樹液であり、カラワンギの意思によって固形化されることがある。
ブラナーによると、その正体は流刑にされた人達を保護監督するべく設置された植物コンピュータの一種であり、1歳になった子供たちをカオヤイに連れてこさせて適性を調べ、カオヤイや祭巫女の適性を持つ子供の額に発信機や思念波受信機を植え込んでいたらしい。
ある頃から自分を設置した惑星政府の関係者が来なくなったため、幾つかある使命のうち「マサラ人の保護」を最優先として稼動しており、人間の目から見れば過保護・過干渉を行ってきた。
ある時墜落した旧式の宇宙船がきっかけで作動を開始した、カラワンギの設置と同時に地下深くに設置された地震誘発装置を停めるべく、最後の真巫女から単体生殖で誕生させたスーリヤを地球へ送って、この星に存在しない知識を持ち帰らせようとしていた。最後の真巫女を失ってから1年間、自身の意思を語る巫女の代用として、神殿へたどり着き、異星人の視点からこの星を分析していたクレバー・フェイガンの身体を利用しており、そのためクレバーは失踪扱いになった。
ブラナーがマサラ人をまとめていけば、人々はいずれ宇宙に出て行くという予測も出ていたため、導き手としての自身が必要なくなることを知っており、60以上ある火山が噴火を始め、自身に最も近い火山が噴火した時は、自身の生命線でもある湖に溶岩を流し入れることによって出来る限りマサラ人の生命を守ろうとした「犠牲の神」。スーリヤの意識を残した状態で彼女と融合したため、これまでは分からなかった人間の感情についても少しずつ理解しはじめる。
真巫女(サリ・スゥリーヤ)、祭巫女(ガシャ・スゥリーヤ)
真巫女は、カラワンギの湖にある神殿でカラワンギと直接語り合い、村々にいる祭巫女やカオヤイに神託を伝える女性。首の後ろから伸びた、触手めいたコードで直接カラワンギと融合しており、神殿を動くことが出来ないため、ふもとのパタン・カトゥ村の人々が世話をしている。
祭巫女は、祭りを行っている村へ神託を下す際に、カラワンギの意思の受け手となる女性。普段は普通の村人と変わらないが、神託を受けるとトランス状態に陥り、豹変する。
神軍(カラジャマル)
カオヤイ同士の戦い。「神」という漢字が当てられるとおり、カラワンギの命によって始まる。作中での神軍は、カラワンギが「地殻振動による地震で環境が大きく変化しても生き延びられるマサラ人(=カオヤイ)」を増やすべく命じた。
クランタフ・オパ
カラワンギによって禁域とされた場所。ゴドワ村の住民達の先祖が最後まで暮らしていた。ブラナーによると、その名前は失われた言葉で「最後の砦」を意味するらしい。もともとは旧式の宇宙船だったが、ゴドワたちによって使える部分は再利用され、各種記録を残していた。
ソル・ゴサ
「カラワンギの御使い」と呼ばれる合成生物のひとつ。筋組織をむき出しにした胴体に翼をつけたような姿をした、大型の怪鳥。普段は保存液に浸かっているため、魚のような生臭いにおいを放つ。
この他にも、カエルのような合成生物やサメのような合成生物が存在し、かつてブラナーとタウを襲っている。

シリーズ一覧

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旧版
  1. 密林の戦士(みつりんのラグ・カオヤイ)(1993年3月)
  2. 虜囚の惑星(1994年3月)
  3. 犠牲の神(スーリヤ・カラ)(1995年3月)
  4. 神と人の物語(カラ・ワンギ・サーガラ)(1996年5月)
完全版
  1. 密林の戦士(みつりんのラグ・カオヤイ)(2000年9月)
  2. 犠牲の神(スーリヤ・カラ)(2000年10月)
  3. 神と人の物語(カラ・ワンギ・サーガラ)(2000年12月)

関連項目

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脚注

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  1. ^ 完全版第3巻あとがきより。