カラマツガイ属
カラマツガイ属 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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分類 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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英名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
false limpets 中名 菊花螺 (jú huā luó) |
カラマツガイ(落葉松貝、Siphonaria)属はカラマツガイ科に属する貝である。カサガイ類(Limpet)のように笠形の貝殻を持つが、有肺類のカラマツガイ科は肺呼吸を行う点が異なる[2][3]。
形態
[編集]貝殻はカサガイ形で、放射肋が目立つ。殻内面にはC字型の筋痕があって右側に開き、殻は溝状にへこんでいて、そこから呼吸をする。肺に相当する空洞と合わせてえら(鰓)も持ち、水中でも水上でも呼吸ができ両生類的である。輸卵管と輸精管は合一し、雌雄同体。歯舌は先がとがらず、棲みか周辺の海藻が根こそぎ取られない形態になっている[4][2][5][6]
生態
[編集]潮間帯上部の海藻が生えた岩上でくらし、藻類を食べながら引き潮のときは下方へ、満ち潮のときは上方へ岩の上をはった後、もとの場所(「家」)へもどる習性がある[7][8]。ダイオウカラマツガイSiphonaria gigasの場合、雌雄同体であるがつがいで生活し生殖する[6]。カラマツガイやキクノハナガイは、雌が通った後岩礁に付着した粘液を感知した雄が、雌を追って交尾する[8]。夏季に岩上に黄色い輪状または「の」の字形の卵塊を産む。卵・成貝ともにアッキガイ科の肉食貝に捕食される[2][9]。
分布
[編集]両極以外の世界中の潮間帯の岩礁上に多数生息する[10]。
系統発生
[編集]Dyaratらによる系統分岐図の概要を一例として示す。なお(*)を付した種はさらに数種に分かれる可能性が高い[11]。
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Dayratらによるカラマツガイ属の分岐図の概要[11] |
種
[編集]この属にふくまれる種は、世界各地で多くの種が知られており、主な種を以下に記した[2][12][13]。なお(-)を付した種は分岐図に記載していない。
- カラマツガイ属 Siphonaria G. B. Sowerby I, 1823
- シロカラマツガイ Siphonaria acmaeoides Pilsbry, 1894 房総半島 (-)
- ヒラカラマツガイ Siphonaria atra Quoy and Gaimard, 1833 奄美諸島以南のインド-西太平洋 (*)
- Siphonaria australis Quoy & Gaimard, 1833 オーストラリア、ニュージーランド産
- Siphonaria diemenensis Quoy & Gaimard, 1833 南オーストラリア (-)
- ダイオウカラマツ Siphonaria gigas Sowerby, 1825 中米太平洋岸
- Siphonaria hispida Hubendick, 1946 南オーストラリア、ブラジル (-)
- カラマツガイ Siphonaria japonica (Donovan, 1824) 三陸~南シナ海
- コウダカカラマツガイ Siphonaria laciniosa Linnaeus, 1758 紀伊半島以南のインド-西太平洋 (*)
- ブラジルカラマツガイ Siphonaria lessonii Blaonville, 1824 ペルー, チリ, ブラジル, アルゼンチン。
- Siphonaria naufragm Steams, 1872 メキシコ湾 (-)
- Siphonaria normalis Gould, 1846 インド-西太平洋 (*)
- クシノハカラマツガイ Siphonaria pectinata Linnaeus, 1758 地中海~大西洋欧州岸
- ヒノデカラマツガイ Siphonaria radians Adams et Reeve, 1850 フィリピン以南 (-)
- コビトカラマツガイ Siphonaria rucuana Pilsbry, 1904 紀伊半島以南 (-)
- ホウライカラマツガイ Siphonaria siquijorensis Reeve, 1843 フィリピン以南 (-)
- キクノハナガイ Siphonaria sirius Pilsbry, 1894 東北~南シナ海
- クロカラマツガイ Siphonaria subatra Pilsbry, 1904 奄美諸島、小笠原諸島以南
- Siphonaria zelandica Quoy & Gaimard, 1833 オーストラリア、ニュージーランド
化石
[編集]中新世のパラテチス海や先地中海の地層から化石が見つかっている[1]。
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産卵中のカラマツガイ(三浦半島)
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カラマツガイの交尾(三浦半島)
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オーストラリアのカラマツガイ
脚注
[編集]出典
[編集]- ^ a b Hartzhauser 2017.
- ^ a b c d 湊宏 2004, p. 236.
- ^ 貝類学 2010, p. 100.
- ^ ミラクル 1997, p. 4.
- ^ Simone 2017.
- ^ a b Schaefer 2020.
- ^ 阿部 1935.
- ^ a b ミラクル 1997, p. 13.
- ^ 東江孝太 (2011). “カラマツガイと肉食貝”. シゼコン 52: 237 2022年3月25日閲覧。.
- ^ “Siphonaria”. gbif. 2022年3月26日閲覧。
- ^ a b Dayrat 2014.
- ^ “SIPHONARIOIDEA SIPHONARIIDAE カラマツガイ超科 カラマツガイ科”. 微小貝データベース. 2020年7月4日閲覧。
- ^ 波部・小菅(1966), p. 113.
参考文献
[編集]- 阿部襄「笠形有肺類の1種ヒラカラマツガヒ Siphonaria atra QUOY et GAIMARD の運動に就て」『Venus』第5巻第4号、1935年、206-213頁。
- 波部忠重・小菅貞男『原色世界貝類図鑑 第2 (熱帯太平洋編)』保育社、1966年。全国書誌番号:52002065 。
- R.T.アボット、S.P.ダンス『世界海産貝類大図鑑』波部忠重、奥谷喬司 監修・訳、平凡社、1985年3月。ISBN 4582518117。 NCID BN00814197。NDLJP:12602136。
- 奥谷喬司・岩崎敬二『貝のミラクル』東海大学出版会、1997年。ISBN 4-486-01413-8。全国書誌番号:98059996 。
- 奥谷喬司『世界文化生物大図鑑貝類』(改訂新版)世界文化社、2004年。ISBN 9784418049042。全国書誌番号:20617488 。
- 佐々木猛智『貝類学』東京大学出版会、2010年。ISBN 9784130601900。全国書誌番号:21846371 。
- Benoît Dayrat, Tricia C. Goulding and Tracy R White (2014). “Diversity of Indo-West Pacific Siphonaria (Mollusca: Gastropoda: Euthyneura)”. Zootaxa 3779 (2): 246-276. doi:10.11646/zootaxa.3779.2.7.
- Mathias Harzhauser, Bernard Manuel Landau and Anton Breitenberger (2017). “The false limpet Siphonaria in the circum-Tethyan Miocene with emphasis on its occurrence in the Paratethys Sea”. Annalen des naturhistorischen Museums in Wien 119A: 115-130 .
- Luiz Simone and M. I. Seabra (2017). “Shell and body structure of the plesiomorphic pulmonate marine limpet Siphonaria pectinata (Linnaeus, 1758) from Portugal (Gastropoda: Heterobranchia: Siphonariidae)”. Folia Malacologica 25: 147.
- Jessica L B Schaefer, John H Christy, Peter B Marko (2020). “Multiple and Extra-Pair Mating in a Pair-Living Hermaphrodite, the Intertidal Limpet Siphonaria gigas”. Integrative Organismal Biology 2 (1) .
外部リンク
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