オクトリカブト
オクトリカブト | ||||||||||||||||||||||||
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分類(APG IV) | ||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||
Aconitum japonicum Thunb. subsp. subcuneatum (Nakai) Kadota (1987)[1] | ||||||||||||||||||||||||
シノニム | ||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||
オクトリカブト(奥鳥兜)[8][9] |
オクトリカブト(奥鳥兜、学名:Aconitum japonicum subsp. subcuneatum)は、キンポウゲ科トリカブト属の疑似一年草。ヤマトリカブト A. japonicum subsp. japonicum を分類上の基本種とする亜種群の一つ、有毒植物[3][8][9]。別名、アイズトリカブト[1]。本州の東北地方でもっとも普通に見られるトリカブトである[3]。
ヤマトリカブトを基本種とする亜種群は、北海道の道南地方から本州、四国、九州まで、朝鮮半島、中国大陸東北部に分布するが、本亜種は北海道道南地方と主に東北地方の日本海側に分布し、低地から山地帯の林縁などに生育する。花柄と上萼片に屈毛が生え、葉身が腎円形で5-7浅裂-中裂するのが特徴[3][8][10]。
特徴
[編集]地下の塊根は径1-3cmになる。形態的変異が著しく、茎は草原に生えるときは直立し、林内や林縁に生えるときは斜上し先端は垂れて、高さ・長さは60-200cmになり、ときに300cmを超え、茎の上部に屈毛が生える。中部の茎葉の葉身は腎円形で、長さ7-15.5cm、幅8.5-19cmになり、5-7浅裂-中裂し、裂片はさらに羽裂して、終裂片は狭卵形になるか粗い鋸歯縁になる。葉質はやや厚く、葉身の裏面の葉脈は隆起し、葉柄は長さ2-8cmになる[3][8][9][11]。
花期は8-10月。花序は長さ8-20cmで、散房花序または棒状の円錐花序になり、3-10個ほどの花がつき、上部から下部に向かって開花する。花柄は長さ3-10cmになり、全体に下向きの屈毛が密生する。花は青紫色から菫色、ときに黄白色で、長さは3-5cmになる。花弁にみえるのは萼片で、上萼片1個、側萼片2個、下萼片2個の5個で構成される。かぶと状になる上萼片は背の高い円錐形から僧帽形になり、前方の嘴は長くとがる。萼片の外面に屈毛が生える。花弁は上萼片の中にかくれて見えないが、柄、舷部、蜜を分泌する距、唇部で構成される。1対あり、柄は長さ18-20mm、舷部は幅3-4mmあってふくらみ[3][8][9]、距は太く長く180度以上に屈曲するか、まれに短い嚢状[3]、または細く短い[8]か、細く長く屈曲する[9]。雄蕊には開出毛が生え、雌蕊は3-6個あり、無毛か屈毛が生える。果実は長さ16-25mmの袋果になり、直立するかやや斜開する。染色体数2n=32の4倍体種である[3][8][9][11]。
分布と生育環境
[編集]日本固有種[10]。北海道の道南地方、本州の新潟県・群馬県以北の日本海側に分布し、低地から山地帯の草原、林内、林縁、ときに高山草原に生育する[3][8][9]。
名前の由来
[編集]和名オクトリカブトは、「奥鳥兜」の意[9]。シノニムの A. subcuneatum Nakai (1914) のタイプ標本の採集地が、青森県八甲田山である[12]ことから、「陸奥」(みちのく)に因み、奥鳥兜としたものという[9]。
亜種名 subcuneatum は、「ややくさび形の」の意味[13]。
分類
[編集]オクトリカブトおよび分類上の基本種ヤマトリカブト A. japonicum とその亜種群は、トリカブト属トリカブト亜属 Subgenus Aconitum のうち、花弁の舷部が距に向かって膨大するキヨミトリカブト節 Section Euchylodea に属し、同節のうち、花はふつう花序の上から下に向かって開花するヤマトリカブト列 Series Japonica に分類される。ヤマトリカブト列に属する日本に分布するの種のうち、温帯に生育する種(高山植物でない種)としては、ヤマトリカブトの他、ヤサカブシ A. nikaii、コウライブシ A. jaluense(亜種にセンウズモドキ subsp. iwatekense がある)、ウゼントリカブト A. okuyamae、オンタケブシ Aconitum metajaponicum、 カワチブシ A. grossedentatum が属する。ヤマトリカブトとその亜種群、ヤサカブシは、花柄と上萼片に屈毛が生えること。ウゼントリカブトとオンタケブシは、葉が腎円形で3浅裂-中裂し、花柄と上萼片に開出毛と腺毛が生え、上萼片の嘴は短いこと。コウライブシは、葉が五角形で3全裂-深裂し、花柄と上萼片に開出毛と腺毛が生え、上萼片の嘴は長いこと。カワチブシの花柄と上萼片は無毛であることが異なる。なお、オンタケブシは分布が限られ極まれな種であり、ヤサカブシは山口県にのみ分布する種である[14]。
ヤマトリカブト類の分類
[編集]和名 | 亜種名 subsp. | 変種名 var. | 分布地 | 茎の長さ | 葉身 | 花序、長さ、花数 | 上萼片、嘴 |
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ヤマトリカブト | japonicum | 栃木県-愛知県の太平洋側 | 60-200cm | 五角形-五角形状円形、3深裂-中裂 | 散房状-総状、5-8cm、1-5個 | 円頭の円錐形-僧帽形、長い、短い | |
オクトリカブト | subcuneatum | 道南、東北地方の日本海側、新潟県 | 60-200cm | 腎円形、5-7浅裂-中裂 | 棒状の円錐状、8-20cm、3-10個 | 背の高い円錐形-僧帽形、長い | |
ツクバトリカブト | maritimum | 東北地方-関東地方の太平洋側、長野県 | 60-150cm | 五角形-五角形状円形、3全裂-3深裂 | 小型の円錐状、5-10cm、2-6個 | 僧帽形、短い | |
イヤリトリカブト | maritimum | iyariense | 長野県北部特産 | 300cm、上部はつる状 | |||
イブキトリカブト | ibukiense | 福井県-兵庫県の日本海側 | 25-180cm | 腎円形-五角形状円形、3中裂-3深裂 | 散房状-総状、4-14cm、2-7個 | 円頭の円錐形-僧帽形、短い | |
タンナトリカブト | napiforme | 中国地方、四国、九州 | 15-150cm | 五角形-五角形状円形、3全裂-3深裂 | 散房状、4.5-16cm、2-8個 | 僧帽形、長い |
共通することは、花柄と上萼片に屈毛が生えること[14]。
- ヤマトリカブト(山鳥兜[8]、Aconitum japonicum Thunb. (1784) subsp. japonicum[15])- 分類上の基本種。茎は高さ60-200cmになり、葉身は五角形-五角形状円形で、3深裂-中裂し、花序は散房状から総状になる。本州の栃木県から愛知県にかけて分布する[3]。
- オクトリカブト(奥鳥兜[8]、Aconitum japonicum Thunb. subsp. subcuneatum (Nakai) Kadota (1987)[1] - 本亜種。尾瀬およびその周辺の草原に分布する本亜種の直立型を「オゼトリカブト」ということがある。また、佐渡島と新潟県中部に分布し、葉が3深裂するものを「サドブシ」ということがある[3]。
- ツクバトリカブト(筑波鳥兜[8]、Aconitum japonicum Thunb. subsp. maritimum (Tamura et Namba) Kadota (1983)[16])- 茎は高さ60-150cmになり、葉身は五角形-五角形状円形で、3全裂-深裂し、花序は小型の円錐状になる。東北地方から関東地方の太平洋側の山地、群馬県、長野県に分布する[3]。
- イブキトリカブト(伊吹鳥兜[8]、別名、キタヤマブシ、Aconitum japonicum Thunb. subsp. ibukiense (Nakai) Kadota (1987)[18])- 茎は高さ25-180cmになり、葉身は腎円形-五角形状円形で、3中裂-深裂し、花序は散房状から総状になる。福井県から兵庫県、山口県の日本海側に分布する[3]。
- タンナトリカブト(耽羅鳥兜[9]、別名、サンインヤマトリカブト、Aconitum japonicum Thunb. subsp. napiforme (H.Lév. et Vaniot) Kadota (1987)[19])- 茎は高さ15-150cmになり、葉身は五角形-五角形状円形で、3全裂-深裂し、花序は散房状になる。中国地方、四国、九州、朝鮮半島、中国大陸東北部に分布する[3]。
ギャラリー
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葉は腎円形で、5-7浅裂~中裂し、裂片はさらに羽裂して、終裂片は狭卵形になるか粗い鋸歯縁になる。
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花弁にみえるのは萼片で、上萼片1個、側萼片2個、下萼片2個の5個で構成される。かぶと状になる上萼片は背の高い円錐形から僧帽形になり、前方の嘴は長くとがる。白色の四角形を右写真に拡大。
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左の白色の四角形の拡大。花柄の全体に屈毛が生え、茎の上部にも屈毛が生える。
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果実は袋果になり、直立するかやや斜開する。
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林内や林縁に生えるときは、茎は斜上し先端は垂れる。300cmを超える個体。
脚注
[編集]- ^ a b c オクトリカブト 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ Aconitum subcuneatum Nakai, International Plant Names Index
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s 門田裕一 (2016) 「キンポウゲ科トリカブト属」『改訂新版 日本の野生植物 2』pp.128-129
- ^ Aconitum zuccarini Nakai, International Plant Names Index
- ^ Aconitum aizuense Nakai, International Plant Names Index
- ^ Aconitum ozense Nakai, International Plant Names Index
- ^ オクトリカブト(シノニム) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ a b c d e f g h i j k l 『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』pp.212-213
- ^ a b c d e f g h i j 『新分類 牧野日本植物図鑑』pp.491-492
- ^ a b 『日本の固有植物』p.57
- ^ a b 『新北海道の花』p.335
- ^ Takenoshin Nakai, “Notulæ ad Plantas Japonicas et Koreanas. X. (Continuari e pagina 36 vol. XXVII.)”, The botanical magazine,『植物学雑誌』、Vol.28, No.327: pp.en59-60. (1914).
- ^ 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1489, 1515
- ^ a b 門田裕一 (2016) 「キンポウゲ科トリカブト属」『改訂新版 日本の野生植物 2』pp.120-122
- ^ ヤマトリカブト 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ ツクバトリカブト 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ イヤリトリカブト 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ イブキトリカブト 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ タンナトリカブト 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
参考文献
[編集]- 梅沢俊著『新北海道の花』、2007年、北海道大学出版会
- 加藤雅啓・海老原淳編著『日本の固有植物』、2011年、東海大学出版会
- 門田裕一監修、永田芳男写真、畔上能力編『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』、2013年、山と溪谷社
- 大橋広好・門田裕一・木原浩他編『改訂新版 日本の野生植物 2』、2016年、平凡社
- 牧野富太郎原著、邑田仁・米倉浩司編集『新分類 牧野日本植物図鑑』、2017年、北隆館
- 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- International Plant Name Index (IPNI)
- Takenoshin Nakai, “Notulæ ad Plantas Japonicas et Koreanas. X. (Continuari e pagina 36 vol. XXVII.)”, The botanical magazine,『植物学雑誌』、Vol.28, No.327: pp.en59-60. (1914).