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アムダリヤ川

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
オクソス川から転送)
アムダリヤ川
延長 2574 km
水源 ヒンドゥークシュ山脈
ワフジール峠
水源の標高 4840 m
河口・合流先 アラル海
流路 アフガニスタンの旗 アフガニスタン
タジキスタンの旗 タジキスタン
トルクメニスタンの旗 トルクメニスタン
ウズベキスタンの旗 ウズベキスタン
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アムダリヤ川(アムダリヤがわ、ペルシア語آمودریا, Āmū Daryāタジク語: Омударёウズベク語: Amudaryo / Амударёカラカルパク語: Әмиўдәрья / Ámiwdáryaトルクメン語: Amyderýa)は、パミール高原ヒンドゥークシュ山脈から発するパンジ川ヴァクシュ川が合流し、北西へ向かって流れる。元々はアラル海に注いでいたが、現在は河口部ではほぼ干上がっている。延長2574km[1]、全長1415km[1]

呼称

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「ダリヤ」は、「海(転じて大河)」を意味するペルシア語テュルク語読みになるので、アム川と表記する場合も見られる。

中国語文献に嬀水(きすい)又は烏滸河(おこが)とみえる。ギリシア語文献でオクソスὮξος、Oxos)の名前で記されている川で、ソグド語では「ワフシュ」(wxwšw)と呼ばれ神格のある大河であった。ペルシア語の「アームー(・ダルヤー)」の他に、アラビア語ではジャイフーン川(جيحون‎, Jayḥūn)とも称されていた。

地理

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パンジ川

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パンジ川の流域

アムダリヤ川の源流はヒンドゥークシュ山脈ワフジール峠(標高4,923m)から発するワフジル川である[2]。これにオクスー川が加わってワハン川(ワハンダリヤ)になるが、すぐにパンジ川(ピャンジ川)と名前を変える[2]。パンジとは「5つ」の意味であり[2]パミール高原氷河万年雪などから流れ出た4つの川(パミール川英語版グント川英語版バルタング川英語版ワンチ川英語版)が次々と合流する[2]。パンジ川はタジキスタンのゴルノ・バダフシャン自治州とアフガニスタンのバダフシャーン州の間の高山地帯を西に進み、途中で北に大きく向きを変えて長い距離を流れていく。その後また南に向きにを変えると、高山地帯を抜けてタジキスタンのハトロン州に入る。

ハトロン州とウズベキスタンのスルハンダリヤ州の間はパミール・アライ山脈英語版から南に幾筋もの支脈が走り、支脈と支脈の間に盆地が広がる複雑な地形になっている。パンジ川が最初に出会うのはアフガニスタンのタハール州からハトロン州に広がる盆地であり、その西にはクンドゥーズ州から広がる盆地がある。この辺りはいくつもの川が合流する地域で、まず北からキジルスー川英語版が合流し、次に南からコクチャ川英語版が合流する。北からヴァフシュ川(ワフシュ川)が合流すると、パンジ川はアムダリヤ川と名前を変える[2]

アムダリヤ川

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アムダリヤ川はタジキスタンとアフガニスタンの国境を西進し、南北から2つの川(クンドゥーズ川英語版カフィルニガン川英語版)が合流する。この辺りからアムダリヤ川左岸(南側)では、トルクメニスタンカラクム砂漠まで続く広大な平野が始まる。一方、アムダリヤ川右岸(北側)はウズベキスタンスルハンダリヤ州に変わる。北から2つの川(スルハンダリヤ川シェラバード川英語版)が合流すると、パミール・アライ山脈の最後の支脈が終わり、アムダリヤ川は砂漠地帯に入る[3]

アムダリヤ川がトルクメニスタンカラクム砂漠を北西に進んでいくと左岸にカラクーム運河、右岸にアム・ブハラ運河がある[4]ブハラではかつてはパミール高原の北側から流れてきたザラフシャン川が合流していたが、現在は干上がっている[4]。アムダリヤ川が更にウズベキスタンのキジルクム砂漠とトルクメニスタンのカラクム砂漠の間の国境を北に流れていくと、トゥヤムユン屈曲部がある[4]。ここから西はアラル海周辺のトゥラン低地である。この一帯はかつては河口デルタだった場所で、現在でも巨大なオアシスがある[4]。しかしカラクーム運河の分流量が多すぎた為に、アラル海が干上がり自然破壊水の危機が深刻化している。

歴史

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アムダリヤ川を通じて流れてくる大量の川砂はカラクム砂漠キジルクム砂漠、河口デルタを形成した[5]。アラル海南岸の肥沃なデルタ地帯では4~5千年前から人が住み始め、農業が行われたことが様々な遺跡の調査で判明している。アムダリヤ川の支流の1つであるコクチャ川英語版には、有史以前からラピスラズリで知られていたバダフシャーン(バダフシャン)があった。またアムダリヤ川の上流域はトハーリスターン地方、中流域はザラフシャン川水系のブハラ、河口部には古都キャトカタルーニャ語版ドイツ語版ペルシア語版などのホラズム地方が隣接していた。またかつてのケリフ・ウズボイ(涸れ谷)や現代のカラクーム運河などを通じてメルブ遺跡(現在のマル)にも分流しており[6]、流域では様々な文明が生まれ滅んでいった。数千年の間にアムダリヤ川の流路は何度も変わり、川の流れが著しく変わるたびに人々は城を造り替えたため、その下流には多くの都城跡が残されている。例えば10~13世紀までホラズム王国の首都として栄えたウルゲンチは14世紀までホラズム地方の中心として栄えたが、17世紀にアムダリヤ川の流路が変わると南東150kmのヒヴァに繁栄の中心が遷り、ヒヴァ・ハン国などが出来た。

アムダリヤ川は中央アジアの大平原を2つに分け、北方からやってくる遊牧民イラン人などの地元住民を分ける国境としての役割も果たした。サーサーン朝時代には東方境域であるフワラーサーン(後のホラーサーン)地方と昭武九姓などが住むソグド地方とを分け、イスラーム時代になってもホラーサーンマー・ワラー・アンナフルを分かつ境となった。19世紀のアムダリヤ川はグレート・ゲームを演じるロシア帝国大英帝国がせめぎ合う境界となり、20世紀には共産圏とそれ以外がせめぎ合う境界となった。

気象

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ケッペンの気候区分

ケッペンの気候区分によると、パンジ川は高地地中海性気候に属し、アムダリヤ川の上流域と中流域は地中海性気候ステップ気候砂漠気候に属し、河口部は砂漠気候に属する。

支流

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源流
  • ワフジル川
  • オクスー川
  • ワハン川(ワハンダリヤ)
  • パンジ川(ピャンジ川)
パンジ川
アムダリア川
分流
かつての分流

流域の都市

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パンジ川
上流部
中流部
河口部

交通

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パンジ川
上流部
中流部

遺跡

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クトルグ・ティムール・ミナレット(クフナ・ウルゲンチ
パンジ川
上流部
河口部

資源

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アムダリヤ川の中流部には左岸のカラクム砂漠を中心に、トルクメニスタンからアフガニスタンまで数百キロ続く広大なアムダリヤ堆積盆地(Armu Darya Basin)があり、天然ガス石油を産出する[12]。一方、アムダリヤ川の上流部からパンジ川の河口部にかけてはアフガン・タジク堆積盆地(Afghan-Tajik Basin)があり、こちらにも大量の資源があると予想されている[12]

環境

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環境破壊

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河口附近の衛星写真(1994年
中流部

1960年代以降、旧ソ連の「自然改造計画」によりカラクーム運河が建設され農地が開発された。しかし、この運河は原始的工法で、水が大量に大地に吸収されてしまっている。さらに砂漠気候(BWk)の気象条件下で蒸発量も多く、この蒸発と毛細管現象に伴う激しい塩害が発生している。さらに巻き上げられた塩・農薬による、住民の健康被害も発生している[要出典]

河口部

下流域には中央アジアで最大規模の河畔林トゥガイ英語版があり、中央アジアの砂漠地帯にありながら生物多様性に富む。特に絶滅危惧種タシケントアカシカ英語版にとっては重要な生息地である[13]

カラクーム運河の建設や下流部での無計画な灌漑により、流入量の激減したアラル海は急速に縮小し、周辺環境が大きく悪化している。また、下流での灌漑排水がサリカミシュ低地に流れ込み、新たに巨大な湖が誕生するという事態も発生している[要出典]

下流域の北部からアラル海の南東側一帯の地域は2021年にユネスコ生物圏保護区に指定された[13]

自然保護区

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パンジ川
上流部
中流部
河口部

脚注

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  1. ^ a b 「シルクロードの古代都市」P6, 8
  2. ^ a b c d e 加藤九祚『シルクロードの古代都市』岩波書店、2013年、2-9頁。ISBN 978-4004314448 
  3. ^ 「シルクロードの古代都市」P9-10
  4. ^ a b c d 「シルクロードの古代都市」P10-22
  5. ^ 「シルクロードの古代都市」P11
  6. ^ 「シルクロードの古代都市」P13-18
  7. ^ a b アジアハイウェイ路線とその現状”. 国土交通省. 2014年1月27日閲覧。
  8. ^ 「シルクロードの古代都市」P65-66
  9. ^ 「シルクロードの古代都市」第二章
  10. ^ 「シルクロードの古代都市」第三章
  11. ^ a b 「シルクロードの古代都市」P19
  12. ^ a b Assessment of Undiscovered Oil and Gas Resources of the Amu Darya Basin and Afghan–Tajik Basin Provinces, Afghanistan, Iran, Tajikistan, Turkmenistan, and Uzbekistan, 2011”. USGS (2012年2月2日). 2014年2月10日閲覧。
  13. ^ a b c Lower Amudarya State Biosphere Reserve” (英語). UNESCO (2022年1月31日). 2022年10月21日閲覧。

関連項目

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