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オキシコドン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
オキシコンチンから転送)
オキシコドン
IUPAC命名法による物質名
臨床データ
販売名 Roxicodone, OxyContin, Oxecta, OxyIR, Endone, Oxynorm, OxyNEO
Drugs.com monograph
MedlinePlus a682132
胎児危険度分類
  • AU: C
  • US: B
法的規制
依存性 中程度〜高度
薬物動態データ
生物学的利用能60〜87%[1]
血漿タンパク結合45%[1]
代謝肝臓:primarily CYP3A and to a lesser extent, CYP2D6 to oxymorphone[1]
半減期3〜4.5時間[1]
排泄尿(83%)[1]
識別
CAS番号
76-42-6 チェック
ATCコード N02AA05 (WHO)
N02AA55 (WHO)(in combinations)
PubChem CID: 5284603
IUPHAR/BPS 7093
DrugBank DB00497 チェック
ChemSpider 4447649 チェック
UNII CD35PMG570 チェック
KEGG D05312  チェック
ChEBI CHEBI:7852 チェック
ChEMBL CHEMBL656 チェック
別名 dihydrohydroxycodeinone, 14-hydroxydihydrocodeinone, 6-deoxy-7,8-dihydro-14-hydroxy-3-O-methyl-6-oxomorphine
化学的データ
化学式C18H21NO4
分子量315.364 g/mol
物理的データ
水への溶解量HCl:166 mg/mL (20 °C)
テンプレートを表示

オキシコドン: oxycodone)とは、オピオイド系の鎮痛剤のひとつで、アヘンに含まれるアルカロイドテバインから合成される半合成麻薬。商品名オキシコンチン(OxyContin)やパーコセット(Percocet)などが有名。1996年のWHO方式がん疼痛治療法においては、3段階中の3段階目で用いられる強オピオイドである[2][3]

麻薬及び向精神薬取締法における麻薬で、劇薬でもある。

薬理

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モルヒネフェンタニルと並んでがん性疼痛治療第3段階に用いられる、強オピオイドで、オピオイド受容体μとκのアゴニスト[2]。鎮痛作用は経口投与でモルヒネの1.5倍、硬膜外投与で1/10程度である[4]

代謝

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主として肝臓の代謝酵素CYP3A4で代謝され、一部はCYP2D6で代謝される。

剤型

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オキシコドンの徐放剤オキシコンチンが塩野義製薬から発売されており、散剤や注射剤など、各社から様々に出ている。日本では、ヒドロコタルニンとの合剤の注射剤、アトロピンとの合剤の注射剤も販売されている。

徐放剤

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副作用吐き気便秘など)で、モルヒネを十分量使用することができない場合の薬として、2002年フェンタニル貼り薬、「デュロテップパッチ」が登場した。副作用が比較的少なく、効果が長続きするが、反面効果が安定するまでに時間がかかり、また一定量のモルヒネを使用した後でないと、パッチへの変更ができないというデメリットもあった。その点を考慮に入れ、一定量に満たないモルヒネを服用している場合でも代用できる薬として、モルヒネと同じオピオイドで、1916年に合成され、欧米で鎮痛剤として広く使われてきたオキシコドンが注目されるようになった。それまで日本ではオキシコドンは注射薬しかなかったが、2003年に経口投与が可能な徐放剤「オキシコンチン錠」が発売された。

オキシコドンの錠剤

オキシコンチンは、概して中程度から強い痛みを取るための薬剤であるため(モルヒネは強い痛みの場合に使用)、モルヒネを使用する程ではない痛みを抑える時にも使うことができる。他に、モルヒネとの相性がよくなく、一定量のモルヒネを使用していないため貼り薬に変更できない場合でも、このオキシコンチンを使うことができる。モルヒネから変更する場合は、それまで服用していたモルヒネの分量に合わせて、どの容量の錠剤を使うかが決まる。オキシコンチン錠は、効果が表れるまでの時間がモルヒネよりも長いため、オキシコンチンを服用していても痛みを感じる場合には、少量のモルヒネを併用することがある。持続効果は12時間である。また、モルヒネ同様に吐き気・嘔吐眠気、便秘などの副作用があるが、痛み止めの成分をモルヒネからオキシコンチンに変更することで副作用が軽くなった例もある[5]

訴訟

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2007年、アメリカ合衆国におけるオキシコンチンの販売者であるパーデュー・ファーマ社(Purdue Pharma)に対し、誤解を招くようなブランド戦略に対して6億ドルの罰金が科された[6]。同社は、オキシコンチンは長時間型の放出製剤であるので、短時間作用の薬剤よりも致命性や乱用性、依存性が低いと主張し、マーケティング・キャンペーンの要として1996年に売り出しすぐに10億ドルの売り上げに達した。

しかし、2000年にはアメリカ国内、特に農村部にて依存や関連犯罪が急増した。そして、同社の内部文書によれば、売り出される前から依存性や医師の懸念による抵抗があることを示していたが、詐欺的なマーケティング・キャンペーンを実施した[6]。会社を所有するサックラー家は、その依存性を控えめだと思わせるよう提示してきた手立てについて、『エスクァイア』誌も調査記事を載せた[7]2019年9月15日、パーデュー・ファーマ社は米連邦破産法第11章の適用をニューヨーク州の連邦裁判所に申請した[8]

規制

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イギリス

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イギリスではオキシコドンは1971年薬物乱用法により、クラスAドラッグとして規制されている[9]。この規制は「おおよそ有害であると認識されている」との分類であり、処方箋なしに保持している者は、最高で懲役7年または終身刑として罰せられる[10]。また、違法に売買した者は最高で終身刑に罰せられる[10]

乱用問題

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アメリカ合衆国

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オキシコンチン(乱用例)

アメリカでは手軽で効き目が長続きすることから、怪我や歯痛など慢性的な痛みを和らげる痛み止めとして利用されている。処方箋があれば街の薬局で入手できるが、オピオイド系の鎮痛剤としては最も強力なもので、本来であれば癌患者の疼痛緩和等、限定された患者にしか処方されない[11]。しかし、患者の要求に応じて簡単に処方箋を出す医師が多数存在していることから、乱用が社会問題となっている[12]。錠剤を粉砕して鼻から吸引し、ヘロインのような高揚感を得る例が多かったため[12]、2010年には粉砕してもゲル状になるようにオキシコンチンの製剤方法が変更された[13]

アメリカでは120万人以上の人口がオピオイドを乱用している[14]。2010年には、オピオイドおよび他のドラッグ(アルコールやベンゾジアゼピンなど)等の過剰摂取により16,652人が死亡している[15]。2013年7月、FDAは表示ガイドラインを改正し、医薬品メーカーに対し「中程度の痛み」に対する適応を削除し、代わりに「長期オピオイド療法が必要となる、日中夜続く深刻な痛み」と記載するよう要求した[16]。この改定は、医師が中程度の痛みに対して必要と判断した上で行う処方を制限するものではない[14]

アメリカ合衆国保健福祉省の統計によれば、おおよそ1100万人の市民が、cottonpillskickersorange countyなどの名前で違法に売られている医療外のオピオイドを一度は使用した経験があるという[17][18]。アメリカの病院においては、おおよそ年間10万人の男女がオピオイド薬物乱用のために入院しているとされ、オピオイド乱用は広くアメリカに蔓延している。

著名な依存症患者としてはウィノナ・ライダーがおり[19]、別件で逮捕された際、20人の医師から37通の処方箋を入手していたという。また、プリンスを司法解剖した際、遺体からパーコセットが検出された[20]

トヨタ役員逮捕事件

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2015年6月18日、トヨタ自動車の当時55歳だった女性常務役員が麻薬及び向精神薬取締法違反の容疑のため逮捕された。「ネックレス」と記載されたアメリカ合衆国からの国際宅配便の小包に、「オキシコドン」の錠剤が57錠入っていたため密輸の疑いが持たれたが、「麻薬を輸入したとは思っていない」と容疑を否認した[21]。小包はミシガン州から発送後にケンタッキー州の空港を経由し、6月11日に成田国際空港に空輸されたもので、元常務役員は「父親から送ってもらった」「膝の痛みを和らげるために輸入した」と説明している[22]。7月8日、東京地検は不起訴処分(起訴猶予)となり、元常務役員は即日釈放され帰国した[23]。「規制薬物との認識はあったが、体調不良に対処するためで快楽を求めるなど乱用目的ではなかった」と理由を説明していた。日本の検察当局は、アメリカでは違法薬物使用に関する罪が軽い事と、逮捕後の6月30日に役員を辞任し社会的制裁を受けている旨を考慮し、不起訴処分とした[24]

出典

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  1. ^ a b c d e Roxicodone, OxyContin(oxycodone) dosing, indications, interactions, adverse effects, and more”. Medscape Reference. WebMD. 8 April 2014閲覧。
  2. ^ a b 特定非営利活動法人 日本緩和医療学会『がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2014』金原出版、2014年6月。ISBN 978-4307101653 
  3. ^ http://www.nytimes.com/2007/05/10/business/11drug-web.html
  4. ^ NEW 薬理学 改訂第6版(南江堂)
  5. ^ 痛み止めQ&A:がん情報サービス国立がん研究センターがん対策情報センター
  6. ^ a b Barry Meier (May 11, 2007). “In Guilty Plea, OxyContin Maker to Pay $600 Million”. The New York Times. http://www.nytimes.com/2007/05/11/business/11drug-web.html 2015年5月15日閲覧。 
  7. ^ 「オピオイド危機」で儲けているのは誰か?麻薬系鎮痛剤オキシコンチンで数十億ドルを稼ぐ 秘密主義のサックラー一族”. Democracy Now! (2017年10月19日). 2017年12月5日閲覧。
  8. ^ “米・オピオイド系製薬会社のインシス社に続きパーデュー社も破産申請”. JC-NET. (2019年9月17日). http://n-seikei.jp/i/2019/09/post-61665.html 2019年9月17日閲覧。 
  9. ^ List of drugs currently controlled under the Misuse of Drugs legislation”. UK. Home Office (2009年). 2009年4月8日閲覧。
  10. ^ a b Class A, B and C drugs”. UK. Home Office. 2009年4月8日閲覧。
  11. ^ “「オキシコドン」は、"警戒"するべき薬だった”. https://toyokeizai.net/articles/-/76003 
  12. ^ a b 小林哲 (2015年6月20日). “麻薬オキシコドン、米では鎮痛剤で普及 乱用が社会問題”. 朝日新聞. 2015年7月17日閲覧。
  13. ^ Filipa Ioannou (2014年10月3日). “Heroin Deaths in America Doubled in Just Two Years”. The Slatest. http://www.slate.com/blogs/the_slatest/2014/10/03/heroin_deaths_double_cdc_study_opioids_and_painkillers.html 2015年5月15日閲覧。 
  14. ^ a b Girioin, Lisa; Haely, Melissa (11 September 2013). “FDA to require stricter labeling for pain drugs”. Los Angeles Times: pp. A1 and A9 
  15. ^ Drug Overdose in the United States: Fact Sheet”. アメリカCDC. 12 September 2013閲覧。
  16. ^ ER/LA Opioid Analgesic Class Labeling Changes and Postmarket Requirements” (PDF). FDA. 12 September 2013閲覧。
  17. ^ “Now a counselor, she went from stoned to straight”. San Francisco Chronicle. (November 2. 2015). http://www.sfchronicle.com/news/article/Now-a-counselor-she-went-from-stoned-to-straight-6605620.php 
  18. ^ “Street Names and Nicknames for OxyContin”. http://luxury.rehabs.com/oxycontin-addiction/street-names-and-nicknames/ 
  19. ^ “死者50万人、アメリカにまん延する鎮痛剤中毒――オピオイド依存に苦しんだセレブ5人”. https://cyzowoman.jp/2022/06/post_391028_1.html 
  20. ^ “プリンスさんの遺体から鎮痛剤パーコセット検出=報道”. https://jp.reuters.com/article/prince-autopsy-idJPKCN0XX032 
  21. ^ 大西睦子 (2015年7月3日). “トヨタ役員逮捕「オキシコドン」報道に対するアメリカでの反応”. 新潮社Foresight. 2015年7月17日閲覧。
  22. ^ 斎川瞳 (2015年6月26日). “麻薬密輸容疑:過去にも送ってもらった…トヨタ役員が供述”. 毎日新聞. 2015年7月17日閲覧。
  23. ^ Nathan Bomey (2015年7月8日). “The Kennedy touch: Ambassador helps Toyota exec go free”. USA TODAY. 2015年7月17日閲覧。
  24. ^ トヨタ元常務役員を不起訴 地検「乱用目的ではない」”. 朝日新聞 (2015年7月8日). 2015年7月17日閲覧。

関連項目

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