コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

エドワード・セント・オービン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
エドワード・セント・オービン
Edward St Aubyn
誕生 (1960-01-14) 1960年1月14日(64歳)
イングランドの旗 イングランドロンドン
職業 作家、ジャーナリスト
教育 ウェストミンスター・スクール
最終学歴 キーブル・カレッジ (オックスフォード大学)
配偶者
ニコラ・シュルマン英語版
(結婚 1987年、離婚 1990年)
子供 2人
ウィキポータル 文学
テンプレートを表示

エドワード・セント・オービン: Edward St Aubyn1960年1月14日 - )はイングランド作家ジャーナリストで、代表作に半自叙伝的小説『パトリック・メルローズ』シリーズを持つ。2006年には同シリーズ第4作の『マザーズ・ミルク』"Mother's Milk" でブッカー賞にノミネートされた[1]

家族と私生活

[編集]

セント・オービンはロンドンで上流階級の家庭に生まれ、父は元軍人で外科医のロジャー・ジェフリー・セント・オービン(Roger Geoffrey St Aubyn、1906年 - 1985年)、母は彼の2番目の妻であるローナ・マッキントッシュ(Lorna Mackintosh、1929年 - 2005年)であった[1]。彼はセント・オービン準男爵家英語版のエドワード・セント・オービン初代準男爵 (Sir Edward St Aubyn, 1st Baronet) の玄孫に当たるが、初代準男爵はジョン・セント・オービン (初代セント・レヴァン男爵)英語版の長男である。父の前妻はザルツブルクミラベル宮殿英語版のゾフィー・ヘレネ・フォン・プトン男爵夫人英語版 (Sophie Helene Freifrau von Puthon of Schloss Mirabell in Salzburg) であったが、1957年に離婚している[1]。母方の祖父はシーフォース・ハイランダーズ英語版所属のアラステア・ウィリアム・マッキントッシュ大尉 (Capt. Alastair William Mackintosh) で後にフロリダ州パームビーチに移住しているほか、母方の祖母リラ・エメリー (Lela Emery) はニューヨークの女子相続人で、シンシナティの実業家ジョン・ジョサイア・エメリー・シニア (John Josiah Emery, Sr.) の娘であり、きょうだいにはジョン・J・エメリー・ジュニア英語版オードリー・エメリー英語版ロシア大公ドミトリー・パヴロヴィチの妻)がいた[2][注釈 1]。彼女は後に「タリーランドとディノ公」(Duc de Talleyrand et Dino) と結婚し、フランスのサン=ブリス=スー=フォレ英語版に移住した[4]。アラステア・マッキントッシュはインヴァネス出身で、1926年から1927年にかけてアメリカの無声映画スターであるコンスタンス・タルマッジと結婚していた[5]。セント・オービン本人には姉アレクサンドラ (Alexandra) と、父親の最初の結婚で生まれた異母姉が2人いる[4]

彼は家族が家を持っていたロンドン・フランスの双方で育った[6]。自身の幼少期に関しては、5歳から8歳にかけて父親に児童性的虐待を受け、母親もこれに荷担していたことから、不幸せなものだったと回顧している[6][7]ウェストミンスター・スクールに進んだ後、1979年にはオックスフォード大学キーブル・カレッジで英文学を学んだが、大学在学時代にはヘロイン中毒に陥った[6]。25歳で心理療法と出会い、その後プロの文筆家になった。1987年から1990年にかけては、作家のニコラ・シュルマン英語版(現ノーマンビー侯爵夫人)と結婚していた[4]。ふたりの子どもがおり、ロンドン在住である。

『パトリック・メルローズ』シリーズ

[編集]

彼の代表作でもある『パトリック・メルローズ』シリーズは、『ネヴァー・マインド』、『バッド・ニュース』、『サム・ホープ』、『マザーズ・ミルク英語版』、『アット・ラスト』の全5巻から成っている。前4作は、最終作『アット・ラスト』の刊行に合わせ、2012年にそれぞれ1巻として再発行された。作品は筆者自身の人生を下敷きにしており、崩壊しかかったイングランドの上流階級の家庭を舞台に、両親の死、アルコール依存症ヘロイン中毒とそれからの回復、結婚や親としての生活などを描いている[8]。作品は、幼少期の逆境がいかにして心理的健康を損なうかを力強く探索した作品と評されている[9]

第4作『マザーズ・ミルク』は、2012年に長編映画化されたが、脚本はセント・オービン自身が執筆し、ジェラルド・フォックス (Gerald Fox) が監督した[10]。作品にはジャック・ダヴェンポートエイドリアン・ダンバー英語版ダイアナ・クイック英語版が出演したほか、マーガレット・タイザック英語版の遺作となった[10]

2018年には、ショウタイム (Showtime) とスカイ・アトランティック英語版の共同事業により、全5話のミニシリーズ『パトリック・メルローズ英語版』として映像化された。ベネディクト・カンバーバッチが主役・製作総指揮を務め(幼少期を演じるのはセバスチャン・モルツ)、1話につき原作の1巻を映像化する構成となっている[11][12][13]。シリーズは2018年5月12日にショウタイムで初放送され、好意的な評価を得た[14]。この年のテレビ番組を対象としたBAFTAテレビ賞では、最優秀ミニシリーズ賞と主演男優賞(カンバーバッチ)を獲得した[15]

受賞歴

[編集]

著作

[編集]

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ^ セント・オービンの著作『パトリック・メルローズ』シリーズ第5作の『アット・ラスト』には、次のような一節がある。なおパヴロヴィチはグリゴリー・ラスプーチンの暗殺の実行人物でもあった。
    ジョンソン家の三姉妹の末っ子でいちばん美しかったガーティーに、まちがいなく母は最も競争心を燃やしていた。ガーティーはロシア最後の皇帝の甥であるウラジーミル大公と結婚した。ナンシー[=パトリックの母方の叔母]が「ウラド叔父さん」と呼んでいたこの大公は、ラスプーチンの暗殺に手を貸し、とどめを刺すために皇帝のリボルバーをユスポフ公に手渡したが、結局は、この生命力旺盛な怪僧にヒ素を盛り、ネヴァ川で溺れさせるという中途半端な方法がとられた。 — エドワード・セント・オービン、『アット・ラスト』[3]

出典

[編集]
  1. ^ a b c #TheNewYorker140602
  2. ^ “Former Husband of Film Actress to Wed”. The Warren Tribune (Warren, Ohio: Ogden Newspapers Inc.英語版): p. 9. (September 7, 1928) 
  3. ^ エドワード・セント・オービン 著、国弘喜美代手嶋由美子 訳『アット・ラスト』早川書房〈パトリック・メルローズ〉、2019年2月25日、29-30頁。ISBN 978-4-15-209839-9 
  4. ^ a b c Mosley, Charles, ed (2003). Burke's Peerage, Baronetage & Knighthood英語版 (107 ed.). London, England: Burke's Peerage & Gentry. p. 3496. ISBN 0-9711966-2-1 
  5. ^ “Film Actress's Divorce Suit”. The Times (London, England: The Times Digital Archive): p. 9. (29 September 1927) 
  6. ^ a b c Brown, Mick (2 May 2014). “How writing helped Edward St Aubyn exorcise his demons”. デイリー・テレグラフ (London, England: テレグラフ・メディア・グループ英語版). https://www.telegraph.co.uk/culture/books/authorinterviews/10800965/How-writing-helped-Edward-St-Aubyn-exorcise-his-demons.html 4 May 2014閲覧。 (Paid subscription required要購読契約)
  7. ^ Moss, Stephen (17 August 2011). “Edward St Aubyn: 'Writing is horrible'”. ガーディアン (London, England: ガーディアン・メディア・グループ). https://www.theguardian.com/culture/2011/aug/17/edward-st-aubyn-interview 4 May 2014閲覧。 
  8. ^ Kakutani, Michiko (February 21, 2012). “Laying to Rest Familial Horrors: Edward St. Aubyn’s ‘At Last,’ an Autobiographical Novel”. The New York Times (New York City: New York Times Company). https://www.nytimes.com/2012/02/22/books/edward-st-aubyns-at-last-an-autobiographical-novel.html?pagewanted=all October 1, 2012閲覧。 
  9. ^ James, O.W. (2013). How to Achieve Emotional Health. London, England: Vermilion 
  10. ^ a b Bradshaw, Peter (2012年11月8日). “Mother's Milk – review”. ガーディアン. 2019年6月16日閲覧。
  11. ^ ベネディクト・カンバーバッチが破壊的なプレイボーイ演じる「パトリック・メルローズ」18年12月より日本初放送 ─ 原作小説も邦訳、ドップリ楽しめ”. THE RIVER (2018年10月3日). 2019年6月16日閲覧。
  12. ^ 市川遥 (2018年10月7日). “カンバーバッチが破滅的プレイボーイを演じたドラマ、12月日本初放送!”. シネマトゥデイ. 2019年6月16日閲覧。
  13. ^ なかざわ ひでゆき (2018年12月30日). “【新作ドラマ・レビュー】 『パトリック・メルローズ』 ベネディクト・カンバーバッチの大熱演に注目!”. 海外ドラマboard. AXN Japan. 2019年6月16日閲覧。
  14. ^ Villarreal, Yvonne (May 12, 2018). “Benedict Cumberbatch takes on a dream role in Showtime's 'Patrick Melrose' — thanks to Reddit”. Los Angeles, California: Tronc. July 26, 2018閲覧。
  15. ^ ゴミ袋ドレスでレッドカーペットに登場 英テレビ賞授賞式”. BBC (2019年5月13日). 2019年6月16日閲覧。
  16. ^ Previous winners of the Betty Trask Prize and Awards”. The Society of Authors. 2019年6月23日閲覧。
  17. ^ a b ベネディクト・カンバーバッチ主演ドラマ原作『パトリック・メルローズ』シリーズの書影公開! ドラマの日本放送も決定!”. 早川書房 (2018年10月3日). 2019年6月23日閲覧。
  18. ^ Borat up for South Bank Show gong”. 英国放送協会 (2007年1月5日). 2019年6月23日閲覧。
  19. ^ Lea, Richard (19 May 2014). “Edward St Aubyn wins Wodehouse prize with a satire of literary awards”. ガーディアン. 2019年6月23日閲覧。
  20. ^ Waters, Lowenna (2014年5月19日). “Edward St Aubyn's satire on book prizes wins book prize”. デイリー・テレグラフ. 2019年6月23日閲覧。

参考文献

[編集]

外部リンク

[編集]