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ウシハコベ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ウシハコベ
福島県会津地方 2013年9月
分類APG IV
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : キク上類 Superasterids
: ナデシコ目 Caryophyllales
: ナデシコ科 Caryophyllaceae
: ハコベ属 Stellaria
: ウシハコベ S. aquatica
学名
Stellaria aquatica (L.) Scop. (1772)[1]
シノニム
和名
ウシハコベ(牛繁縷)[4]

ウシハコベ(牛繁縷・牛蘩蔞[5]学名: Stellaria aquatica)はナデシコ科ハコベ属越年草、ときに多年草。属を独立させ、ウシハコベ属とし、学名を Myosoton aquaticum とする場合がある[4][6][7]。市街地から畑など身近に見られる野草で、食用することもできる。

名前の由来

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和名ウシハコベは、「牛繁縷」の意で、ハコベと比べると全体に大型であるため、牛をつけた[7]。別名で、ヒヨコグサ[5]、アサシラゲ[5]、オトコハコベ[5]ともよばれる。

種小名(種形容語)aquatica は、「水生の」意味[7]

分布と生育環境

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日本全土(北海道から九州)に分布し、山野のどこにでもふつうにみられる[4][6][7][5]。世界では、ユーラシア、北アフリカに広く分布し、北アメリカの東部に帰化している[6]

特徴

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全体のようすは同属のハコベに似るが、比べて大型である。が多く、下部は地をはい、上部は斜めに立ち上がって高さは20 - 50センチメートル (cm) になる[8]は円柱形で、節の部分は紫色を帯び、上部には腺毛が生える。対生しハコベよりも大きく、下部の葉は葉柄があり、上部のものは無柄で茎を抱く[8]。葉身は卵形から広卵形で、長さ1 - 8 cm、幅0.8 - 3 cmになり、先端はとがり、基部は円形から浅心形で、ふつう葉の両面に毛はない[4][6][7]

花期はふつう春から秋(4 - 10月)[8]は上部の葉腋に集散花序をつけるか単生する。花柄は長さ5 - 18ミリメートル (mm) になり、腺毛が密生し、花後は次第に下向きになる。は離生し萼片は5個、裂片は長卵形で長さ4 - 5.5 mm、腺毛が密生し、先端はやや鋭形。花弁は5個で白色、萼片より長いか短く、基部まで深く2裂し[9]、10弁花にみえる。雄蕊は10個。卵球形の子房の上に5個の花柱がある[8]果実蒴果になり、卵形で宿存する萼より長く、上部は5裂し各片の先はさらに2裂する。種子は円形から腎円形で、径約1 mmになり、低い乳頭状突起がある[4][6][7]

利用

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葉の質がやわらかく、ハコベ(コハコベやミドリハコベなど)とともに小鳥の餌として用いられてきた[5]。栄養的にも優れることから、野菜としての利用も行われるようになっている[5]。同属のハコベやミヤマハコベも同様に食べられる[5]

3 - 4月ごろに地上部を採取して、さっと茹でて水にさらして利用する。お浸しからし和え煮浸し、汁の実などにして食べられ、大根などを加えて味噌仕立てにした「ハコベ汁」も知られている[5]

ウシハコベ属

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ハコベ属はふつう花柱が3個あり、蒴果の先端が6裂するのに対し、ウシハコベは花柱が5個あり、蒴果の先端が5裂しさらにその裂片が2裂することから、ハコベ属から独立させ、ウシハコベ属(学名:Myosoton Moench )とする場合がある[6]

脚注

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  1. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Stellaria aquatica (L.) Scop. ウシハコベ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年3月18日閲覧。
  2. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Myosoton aquaticum (L.) Moench ウシハコベ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年3月18日閲覧。
  3. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Malachium aquaticum (L.) Fr. ウシハコベ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年3月18日閲覧。
  4. ^ a b c d e 『山溪ハンディ図鑑1 野に咲く花』p.345
  5. ^ a b c d e f g h i 高野昭人監修 世界文化社編 2006, p. 25.
  6. ^ a b c d e f 『日本の野生植物草本II離弁花類』pp.36-39
  7. ^ a b c d e f 『新牧野日本植物圖鑑』p.85, p.1318
  8. ^ a b c d 近田文弘監修 亀田龍吉・有沢重雄著 2010, p. 185.
  9. ^ 久志博信『「山野草の名前」1000がよくわかる図鑑』主婦と生活社、2010年、16ページ、ISBN 978-4-391-13849-8

参考文献

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  • 近田文弘監修 亀田龍吉・有沢重雄著『花と葉で見わける野草』小学館、2010年4月10日、184 - 185頁。ISBN 978-4-09-208303-5 
  • 佐竹義輔大井次三郎北村四郎他編『日本の野生植物 草本II 離弁花類』、1982年、平凡社
  • 高野昭人監修 世界文化社編『おいしく食べる 山菜・野草』世界文化社〈別冊家庭画報〉、2006年4月20日、25頁。ISBN 4-418-06111-8 
  • 林弥栄・平野隆久『山溪ハンディ図鑑1 野に咲く花』、1989年、山と溪谷社
  • 牧野富太郎原著、大橋広好邑田仁岩槻邦男編『新牧野日本植物圖鑑』、2008年、北隆館