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ウィルキンソン触媒

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ウィルキンソン触媒
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識別情報
CAS登録番号 14694-95-2
EC番号 238-744-5
RTECS番号 none
特性
化学式 C54H45ClP3Rh
モル質量 925.22 g/mol
外観 赤または紫色結晶
融点

245-250 °C

への溶解度 不溶
その他の溶媒への溶解度 ベンゼン
構造
配位構造 平面四角形
危険性
主な危険性 なし
Rフレーズ なし
Sフレーズ S22 S24/25
関連する物質
関連物質 トリフェニルホスフィン
Pd(PPh3)4
IrCl(CO)[P(C6H5)3]2
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

ウィルキンソン触媒(ウィルキンソンしょくばい、: Wilkinson's catalyst)はクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)(chlorotris(triphenylphosphine)rhodium(I))の慣用名であり、その名は1973年にノーベル賞を受賞した有機金属化学者、ジェフリー・ウィルキンソン卿からとられている。この化合物は平面4配位、16電子錯体で、普通赤または紫色の結晶性固体(融点245–250 ℃)として単離される。ウィルキンソン触媒は塩化ロジウム(III) 3水和物を過剰のトリフェニルホスフィン存在下、エタノール還元して合成される[1]

用途

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最も一般的なウィルキンソン触媒の使用法はアルケン水素化における均一系触媒であり[2][3]、その反応機構は次のようなものである。まず1つまたは2つのトリフェニルホスフィン配位子が脱離して14または12電子の錯体が生成し、これに水素 (H2) が酸化的付加 (oxidative addition) する。次に、アルケンとの π-錯体が形成され、転移挿入 (migratory insertion) が起こる。最後にアルカン還元的脱離 (reductive elimination) して生成物を与える。

他の用途として、カテコールボランピナコールボランを用いた触媒的水素化[4]トリエチルシランと組み合わせたα,β-不飽和カルボニル化合物の選択的1,4-還元[5]、アルデヒドやハロゲン化アシルからの脱カルボニル反応[6]ポーソン・カンド反応による[2+2+1]-環化がある。また、トリフェニルホスフィン配位子の代わりにキラルなホスフィン(例えば Chiraphos, DIPAMP, DIOP)を持つ錯体を用いると触媒もキラルになり、不斉水素化によりプロキラルなアルケンからキラルなアルカンを合成できる[7]

水素化の触媒サイクル

脚注

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  1. ^ Osborn, J. A.; Jardine, F. H.; Young, J. F.; Wilkinson, G. (1966). “The preparation and properties of tris(triphenylphosphine)halogenorhodium(I) and some reactions thereof including catalytic homogeneous hydrogenation of olefins and acetylenes and their derivatives”. J. Chem. Soc. A: 1711–1732. doi:10.1039/J19660001711. 
  2. ^ Birch, A. J.; Williamson, D. H. (1976). Org. React. 24: 1. 
  3. ^ Jones, B. R. (1973). Homogeneous Hydrogenation. New York: John Wiley & Sons 
  4. ^ Evans, D. A.; Fu, G. C.; Hoveyda, A. H. (1988). “Rhodium(I)-catalyzed hydroboration of olefins. The documentation of regio- and stereochemical control in cyclic and acyclic systems”. J. Am. Chem. Soc. 110: 6917–6918. doi:10.1021/ja00228a068. 
  5. ^ Ojima, I.; Kogure, T. (1972). “Selective reduction of α,β-unsaturated terpene carbonyl compounds using hydrosilane-rhodium(I) complex combinations”. Tetrahedron Lett. 13: 5035–5038. doi:10.1016/S0040-4039(01)85162-5. 
  6. ^ Tsuji, J. (1977). Wender, I., Pion, P. Eds.. ed. Organic Synthesis via Metal Carbonyls. Vol. 2. New York: Wiley. pp. 595–654 
  7. ^ Knowles, W. S. (2003). Adv. Synth. Catal. 345: 3–13. doi:10.1002/adsc.200390028. 

関連項目

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