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イクレペルチン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
臨床データ
法的規制
  • 治験薬
識別
CAS番号
1421936-85-7
PubChem CID: 155259577
UNII M43ZDU10DD
別名 BI 425809
化学的データ
化学式C20H18F6N2O5S
分子量512.42 g·mol−1
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イクレペルチン: Iclepertin)は、ベーリンガーインゲルハイムが開発中の統合失調症の陰性症状の改善を目指した治験薬のこと。グリシン再取り込み阻害薬の1つ。開発コードBI 425809と呼ばれていたが、2023年1月16日にイクレペルチンという一般名称が厚生労働省により決定された[1]

概要

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イクレペルチンはグリシントランスポーター1阻害薬であり、統合失調症の陰性症状の一つである認知機能障害(CIAS)を改善することを目標として開発が進められている[2]。投与経路は経口剤である。

イクレペルチンは、グリシントランスポーター1を阻害することにより、シナプス間隙のグリシン濃度を増加させる。グリシンは、 NMDA受容体においてグルタミン酸とともに必要なコ・アゴニストとして作用する。先行研究において、NMDA受容体の機能低下は、統合失調症の陰性症状において重要な役割を果たしている可能性が示唆されており、シナプス間隙におけるグリシン濃度の増加を介した、グルタミン酸作動性神経系の調節は、NMDA受容体の機能を強化し、統合失調症の陰性症状(認知機能障害)を改善するのに役立つ可能性が期待されている[3]

歴史

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  • 2018年
    • 4月25日:第2相臨床試験(1346.9試験)開始[4]
  • 2020年
    • 1月29日:第2相臨床試験終了。
    • 9月14日:ベーリンガーインゲルハイムはイクレペルチン(BI 425809)が第2相試験において、主要評価項目を達成したと発表した[5]
  • 2021年
    • 3月:第2相臨床試験結果が「ランセット・サイカイアトリー」に掲載[6]
    • 5月24日:FDAに「画期的治療薬(ブレークスルーセラピー)」に選定される[7]
    • 10月19日:国際共同第3相臨床試験で、日本における患者登録を開始[2][8]
  • 2022年
    • 6月10日:長期投与試験(第3相臨床試験、CONNEX-X試験)開始[9]。第3相臨床試験を26週間投与を完了した、統合失調症による認知機能障害を有する患者(第3相試験の実薬群、プラセボ群)を対象に、オープンラベル化し、単群で追加の安全性データを取得することを目的にしている[9]
  • 2023年
    • 1月16日:厚生労働省により一般名称が「イクレペルチン」に定められた[1]

臨床試験

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第2相臨床試験

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1346.9試験として11ヵ国(81施設)で実施された[4][6]。治験参加者は統合失調症の18歳~50歳の外来患者509人[4][6]。イクレペルチン(BI 425809)2~25 mgの用量の12週間投与した際の有効性と安全性の評価された[5]。主要評価項目がMATRICS Consensus Cognitive Battery(MCCB)で評価され、10mg群と25mg群で主要評価項目を達成し、効果量は10mg群「0.34」、25㎎群「0.3」であった[5][6]

第2相臨床試験 サブグループ解析

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PANSS合計スコアと脳波測定によるミスマッチ陰性電位(MMN)発生異常の相関を評価[10]。統計的に有意な結果ではなかったが、両者には正の相関がみられた[10]

第3相臨床試験

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CONNEX試験プログラム(国際共同第3相臨床試験)が行われている。CONNEX試験プログラムは統合失調症患者を対象にグリシントランスポーター1阻害薬であるイクレペルチン(BI 425809)を26週間投与した際の有効性と安全性を評価する3つの第3相臨床試験から構成され、成人の統合失調症患者の認知機能の改善を評価することを主な目的としている[8]

脚注

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  1. ^ a b ・医薬品の一般的名称について(◆令和05年01月16日薬生薬審発第116001号)”. www.mhlw.go.jp. 厚生労働省 (2023年1月16日). 2023年9月17日閲覧。
  2. ^ a b 日本ベーリンガーインゲルハイム、統合失調症の認知機能障害(CIAS)の国際共同第3相臨床試験で、国内における患者登録を開始”. ベーリンガーインゲルハイム (2021年10月19日). 2023年9月17日閲覧。
  3. ^ "Bitopertin for schizophrenia" Archived 30 July 2012 at the Wayback Machine., "EuroScan", 14 August 2012
  4. ^ a b c Clinical Trial of BI 425809 Effect on Cognition and Functional Capacity in Schizophrenia. https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02832037?term=1346.9&draw=2&rank=1. Last accessed September 2020.
  5. ^ a b c 統合失調症患者さんを対象とした、BI 425809の第2相試験結果において、認知機能の改善が示される”. ベーリンガーインゲルハイム (2020年9月29日). 2023年9月17日閲覧。
  6. ^ a b c d Fleischhacker, W. Wolfgang; Podhorna, Jana; Gröschl, Martina; Hake, Sanjay; Zhao, Yihua; Huang, Songqiao; Keefe, Richard S. E.; Desch, Michael et al. (2021-03). “Efficacy and safety of the novel glycine transporter inhibitor BI 425809 once daily in patients with schizophrenia: a double-blind, randomised, placebo-controlled phase 2 study”. The Lancet. Psychiatry 8 (3): 191–201. doi:10.1016/S2215-0366(20)30513-7. ISSN 2215-0374. PMID 33610228. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33610228/ 2023年9月17日閲覧。. 
  7. ^ Ingelheim, Boehringer (2021年5月24日). “Boehringer Ingelheim's Investigational Treatment for Cognitive Impairment Associated with Schizophrenia Receives FDA Breakthrough Therapy Designation” (英語). www.prnewswire.com. Cision US Inc.. 2023年9月17日閲覧。
  8. ^ a b 日本ベーリンガーインゲルハイム、統合失調症の認知機能障害(CIAS)の国際共同第3相臨床試験で、国内における患者登録を開始”. 日経バイオテクONLINE. 日本経済新聞社 (2021年10月20日). 2023年9月17日閲覧。
  9. ^ a b 臨床研究等提出・公開システム”. jrct.niph.go.jp. JRCT (2022年6月10日). 2024年6月4日閲覧。
  10. ^ a b Schultheis, Christian; Rosenbrock, Holger; Mack, Salome Rebecca; Vinisko, Richard; Schuelert, Niklas; Plano, Andrea; Süssmuth, Sigurd D. (2022-08-11). “Quantitative electroencephalography parameters as neurophysiological biomarkers of schizophrenia-related deficits: A Phase II substudy of patients treated with iclepertin (BI 425809)” (英語). Translational Psychiatry 12 (1): 1–9. doi:10.1038/s41398-022-02096-5. ISSN 2158-3188. https://www.nature.com/articles/s41398-022-02096-5. 

関連項目

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