アシュバートン男爵
アシュバートン男爵(英: Baron Ashburton)は、イギリスの男爵位。
2度創設されており、1782年にジョン・ダニングがグレートブリテン貴族として叙されたのが最初の創設である。ダニング家が絶えた後の1835年に銀行家財閥ベアリング家のアレクサンダー・ベアリングが連合王国貴族として叙されたのが2度目の創設である。以降その男系男子によって現在まで世襲されており、2020年現在の保有者は第8代アシュバートン男爵マーク・ベアリングである。
歴史
[編集]ダニング家
[編集]ホイッグ党所属の庶民院議員ジョン・ダニング(1731–1783)が1782年3月27日にグレートブリテン貴族「カウンティ・オブ・デヴォンにおけるアシュバートンのアシュバートン男爵(Baron Ashburton of Ashburton in the county of Devon)」に叙されたのが最初の創設である。彼は王権拡大を狙うジョージ3世に抵抗し、1763年にウィルクス運動を支持したり、1780年4月に「国王の影響力が増大してきた。現在も増大中であり、削減されなければならない」という決議案を出したことなどで知られる[1]。
初代男爵の死後、生存している唯一の息子であるリチャード・ダニング(1782–1823)が第2代男爵位を継承したが、彼は子供を残さなかったため、彼の死とともに第1期アシュバートン男爵位は廃絶した[2]。
第2期は、初代アシュバートン男爵(第1期)ジョン・ダニングの妻エリザベスの甥にあたるアレクサンダー・ベアリング(1774–1848)が1835年4月10日に連合王国貴族「カウンティ・オブ・デヴォンにおけるアシュバートンのアシュバートン男爵(Baron Ashburton, of Ashburton in the County of Devon)」に叙されたことにはじまる[3][4]。彼は銀行家財閥ベアリング家の出身であり、ベアリングス銀行を経営しつつ庶民院議員も務めた。以降彼の男系男子によって2016年現在まで世襲されている[4]。
6代アシュバートン男爵アレクサンダー・ベアリング(1898–1991)と7代アシュバートン男爵ジョン・ベアリング(1928-2020)はともにベアリングス銀行の経営者として活躍し、ガーター勲章を受勲している[5][6]。
本邸はハンプシャー州・ノーシントンにあるレイクハウス(Lake House)[4]。家訓は「困難の中での不屈の精神(Virtus In Arduis)」[4]。
歴代アシュバートン男爵
[編集]アシュバートン男爵 第1期 (1782年)
[編集]- 初代アシュバートン男爵ジョン・ダニング (1731–1783)
- 2代アシュバートン男爵リチャード・バリー・ダニング (1782–1823)
アシュバートン男爵 第2期 (1835年)
[編集]- 初代アシュバートン男爵アレグザンダー・ベアリング (1774–1848)
- 2代アシュバートン男爵ウィリアム・ビンガム・ベアリング (1799–1864)
- 3代アシュバートン男爵フランシス・ベアリング (1800–1868)
- 4代アシュバートン男爵アレグザンダー・ヒュー・ベアリング (1835–1889)
- 5代アシュバートン男爵フランシス・デンジル・エドワード・ベアリング (1866–1938)
- 6代アシュバートン男爵アレグザンダー・フランシス・セント・ヴィンセント・ベアリング (1898–1991)
- 7代アシュバートン男爵ジョン・フランシス・ハーコート・ベアリング (1928-2020)
- 8代アシュバートン男爵マーク・フランシス・ロバート・ベアリング (1958-)
- 法定推定相続人は8代男爵の長男フレデリック・チャールズ・フランシス・ベアリング(1990-)。
家系図
[編集]ジョン・ベアリング (1697-1748) | |||||||||||||||||||||||||||||||||
1782年アシュバートン男爵 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
初代準男爵 フランシス・ベアリング (1740-1810) | エリザベス・ベアリング (1744-1809) | 初代アシュバートン男爵 ジョン・ダニング (1731-1783) | |||||||||||||||||||||||||||||||
2代アシュバートン男爵 リチャード・ダニング (1782–1823) | |||||||||||||||||||||||||||||||||
アシュバートン男爵廃絶 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
1835年アシュバートン男爵 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
2代準男爵 トマス・ベアリング (1772-1848) | 初代アシュバートン男爵 アレクサンダー・ベアリング (1774-1848) | ヘンリー・ベアリング (1777-1848) | |||||||||||||||||||||||||||||||
ノースブルック男爵 | レヴェルストーク男爵 クローマー伯爵 グレンデールのホウィック男爵 | ||||||||||||||||||||||||||||||||
2代アシュバートン男爵 ビンガム・ベアリング (1799-1864) | 3代アシュバートン男爵 フランシス・ベアリング (1800-1868) | ||||||||||||||||||||||||||||||||
4代アシュバートン男爵 アレクサンダー・ベアリング (1835-1889) | |||||||||||||||||||||||||||||||||
5代アシュバートン男爵 フランシス・ベアリング (1866-1938) | |||||||||||||||||||||||||||||||||
6代アシュバートン男爵 アレクサンダー・ベアリング (1898-1991) | |||||||||||||||||||||||||||||||||
7代アシュバートン男爵 ジョン・ベアリング (1928-2020) | |||||||||||||||||||||||||||||||||
8代アシュバートン男爵 マーク・ベアリング (1958-) | |||||||||||||||||||||||||||||||||
フレデリック・ベアリング (1990-) (法定推定相続人) | |||||||||||||||||||||||||||||||||
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ トレヴェリアン(1975) p.52
- ^ Lundy, Darryl. “Richard Barré Dunning, 2nd Baron Ashburton” (英語). thepeerage.com. 2015年2月15日閲覧。
- ^ Lundy, Darryl. “Alexander Baring, 1st Baron Ashburton” (英語). thepeerage.com. 2015年2月15日閲覧。
- ^ a b c d Heraldic Media Limited. “Ashburton, Baron (UK, 1835)” (英語). Cracroft's Peerage The Complete Guide to the British Peerage & Baronetage. 2016年2月8日閲覧。
- ^ Lundy, Darryl. “Alexander Francis St. Vincent Baring, 6th Baron Ashburton” (英語). thepeerage.com. 2015年2月15日閲覧。
- ^ Lundy, Darryl. “John Francis Harcourt Baring, 7th Baron Ashburton” (英語). thepeerage.com. 2015年2月15日閲覧。
参考文献
[編集]- G.M.トレヴェリアン 著、大野真弓 訳『イギリス史 3』みすず書房、1975年(昭和50年)。ISBN 978-4622020370。
関連項目
[編集]- ベアリング家
- ノースブルック男爵 - 本家筋
- レヴェルストーク男爵 - 分流
- クローマー伯爵 - 分流
- グレンデールのホウィック男爵 - 分流