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アカテツ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
アカテツ
アカテツの樹姿(沖縄県国頭村)
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : キク類 asterids
: ツツジ目 Ericales
: アカテツ科 Sapotaceae
: アカテツ属 Planchonella
: アカテツ P. obovata
学名
Planchonella obovata (R.Br.) Pierre
和名
アカテツ
クロテツ
アカテツの葉表(沖縄県国頭村)
アカテツの葉裏と果実(沖縄県石垣市)
アカテツの花(沖縄県石垣市)
安田のアカテツ保安林の看板
(沖縄県国頭村)

アカテツPlanchonella obovata) は、アカテツ科樹木。日本では南西諸島などに生育する。

特徴

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常緑の高木[1]。樹皮は灰色で厚くて縦皺を生じる。若枝、葉裏、それに花序には赤褐色の細かい毛を密生する。

葉は倒卵形から楕円形、長楕円形で、先端はやや丸っこいか丸いか、あるいは時にややくぼむ。葉身の長さは5-10cm、基部は次第に狭まり、長さ0.5-3cmの葉柄に続く。新葉では表裏ともに赤褐色の毛があるが、成葉では表面の毛は脱落して平滑になり、緑色で強いつやがある。葉質は硬くて革質。

花は葉腋、または脱落した葉の葉腋から出て束生し、径5-6mm、淡い灰白色。液果は黒っぽく熟し、長楕円形で長さ1.2cm程度。内部には長楕円形の種子数個が収まる。

名前の由来

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佐竹他(1999)によると、この名は誤認によって付いたものである。元々小笠原ではこの種を Black iron-wood と呼んでおり、これは樹皮の色に基づくものであった。そのために明治期まではクロテツの名で呼ばれた。他方、アデクSyzygium buxifolium フトモモ科)が同地方で Red iron-wood と呼ばれており、これと取り違えられ、現在の名になったという。

なお、琉球列島ではチーギ(奄美から沖縄)、アンマーチーギ(沖縄)、トゥヌキ(石垣)などと呼ばれる[2]

分布

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日本では南西諸島と小笠原に産する。南西諸島ではトカラ列島の宝島以南に広く分布し、大東島にも産する。国外では中国南部、台湾から熱帯アジア、太平洋諸島に広く分布する。沖縄では主として海岸近くの低地林に見られる[3]

分類

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同属の植物は世界に200種あるが、日本では本種の他には小笠原諸島にムニンノキ P. boninensis があるのみである。なお、小笠原諸島に葉が小さくて細いコバノアカテツ P. obovata var. dubia がある。ただし、同一個体内の変異の幅に含まれる場合もあるとして、佐竹他(1999)は認めておらず、学名を挙げることすらしていない。大川・林(2016)では変種コバノアカテツについて記しているが、本種との差は連続的で区別しないことも多いとしている[4]

なお、外見的にはクスノキ科ハマビワがとてもよく似ており、不慣れだと判別に困ることがある。どちらも厚手で硬い楕円形で丸っこい葉をつけ、葉裏に細かい毛を密生する。ただしハマビワのそれは白っぽい。

利用

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公園樹や庭園樹としてよく、防潮林としてすぐれている。材は硬くて重く、薪炭材としてはすぐれているが用材としては加工が困難。また葉にゴムを含み、琉球王朝時代には漆器の朔として用いられたという[3]

沖縄県国頭村は「安田のアカテツ保安林」を昭和58年3月に天然記念物に指定した[5]

出典

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  1. ^ 以下、初島(1975)p.472-473、および佐竹他(1999)p.163
  2. ^ 天野(1982)p.141
  3. ^ a b 天野(1982)p.142
  4. ^ (大川 & 林 2016, p. 305)
  5. ^ 村の文化財 - 国頭村の概要”. 国頭村ホームページ. 沖縄県国頭村. 2024年7月8日閲覧。

参考文献

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  • 初島住彦『琉球植物誌(追加・訂正版)』,(1975),沖縄生物教育研究会
  • 佐竹義輔原寛・亘理俊次・冨成忠夫、『日本の野生植物 木本II』、(1999)、平凡社
  • 天野鉄夫、『琉球列島有用樹木誌』、(1982)、琉球列島有用樹木誌刊行会
  • 大川智史; 林将之『ネイチャーガイド 琉球の樹木 奄美・沖縄~八重山の亜熱帯植物図鑑』文一総合出版、東京都新宿区、2016年。ISBN 9784829984024