コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

なかよしパン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
なかよしパン
販売会社 ぐしけん
種類 パン
販売開始年 1960年
完成国 日本の旗 日本
外部リンク なかよしパン
テンプレートを表示

なかよしパンは、沖縄県の製パン業者である株式会社ぐしけんうるま市)で製造されている菓子パン[1]。沖縄の本土復帰前から販売されているロングセラー商品である[2]。ぐしけんで販売されているパンの中でも、売れ筋の上位を占める定番であり[3]、ぐしけんの看板商品の一つである[4]タコライスサーターアンダギーに並ぶ沖縄のソウルフードとの声もある[5]

沿革

[編集]

ぐしけん工場長によれば、沖縄では3世代にわたる大家族の家庭が多いため、家族皆でちぎって「仲良く食べてほしい」という想いから生まれた[4][6]。「なかよしパン」の名には、「大切な家族や大事な人と楽しく分け合って食べてほしい」との思いが込められている[7]。製造が開始されたのは1960年(昭和35年)頃とみられているが[4][6]、2020年代においては当時携わった従業員がもう存在しないため、正確な販売開始時期は判明していない[3]

発売当初は、本社工場がある沖縄県中部のスーパーマーケットでのみ販売されていた[4]。やがて、「店頭でひときわ目立つ大きな菓子パン」「大好きな甘いものがたくさん食べられる」など、口コミで少しずつ評判が伝わり、沖縄南部や北部にまで販売エリアが拡大され、沖縄全域で愛される定番商品になった[4]

沖縄は、車やタクシーなどでラジオを聴く県民が多いことから、2014年(平成26年)頃からは月に数回、ラジオ番組のコマーシャルでぐしけんの商品紹介が始まっており、なかよしパンの名が若い世代の視聴者にも広がることで、激励の言葉が寄せられている[4]

特徴

[編集]

大家族で食べられるようにとの経緯から、全長40センチメートルという大きさが特徴であり、カロリーは1300kcalを超える[8]。手で簡単にちぎって食べられるよう、パンに7本の切れ目(節)が入っている[4][9]

柔らかいココア生地のパンに、甘いバニラ風味クリームが挟まれている[1][10]。沖縄県民はテビチ(豚足)ラフテー(豚肉の角煮)、ステーキなど脂気の多い食べ物、甘い物を好む傾向があることから、バニラミルク風味の濃厚なバタークリームが使用されている[4]。クリームのついている部分だけを存分に楽しめるように、パンの端は切り落とされている[4]

中種を低温で長時間発酵させて焼き上げる製法「冷蔵中種法[11]」を用いているため、食感の軽さも特徴の一つに挙げられる[2]

「東京になかよしパンがないのは残念」との意見もあるが、航空輸送上の品質保証の問題から、本州に輸送することは困難であること[4]、また「新鮮な状態でお客さんに届けたい」という思いから[2]、沖縄限定のパンとして販売されている[2][4]

しゅういちくん

[編集]

パッケージには、特徴的なカエルのキャラクター「しゅういちくん」がデザインされている。ぐしけん営業部によれば、ぐしけんの創業者である具志堅秀一が、戦後にニューギニア出征から帰ってきた経験を持つことから、「無事に帰る」「お金が返る」「福を迎える」「よみがえる」「たちかえる」として、縁起の良いものとして、カエルをキャラクターにした経緯がある[3][12]。「しゅういちくん」の名も、具志堅秀一にちなんでいる[3][4]

このカエル「しゅういちくん」は、パンを運搬するトラックにも大きく描かれている[4]。インパクトのあるデザインのトラックが沖縄中を走り回ることで、県民の目にとまる機会が増え、なかよしパンが身近な存在となるきっかけにもなった[4]

姉妹品

[編集]

当初は先述の通り、ココア生地のパンとバニラクリームの「なかよしパン」のみであったが[10]、外国人居住者が多い沖縄ではチョコレート系やピーナッツ系のパンも人気なことから[4]、プレーン生地にピーナッツクリームを挟んだ「なかよしピーナツ」、チョコレートを折り込んだ生地にピーナッツクリームとメープルクリームを交互に挟んだ「なかよしプレミアム」、プレーン生地にジャージークリームとカスタードクリームを交互に挟んだ「なかよしジャージー&カスタード」、子供向けにミルククリームとチョコクリームを挟んだ「なかよしわんぱくキッズ」[10]、ココアクリームを挟んだ「なかよしココアクリーム」などが登場した[7]

少食の客や[1]、「1人でも食べきれるサイズも欲しい」という客の要望に応え、「なかよしハーフ」などのハーフサイズも販売されている[2][4]。家族連れの客が多いスーパーマーケットでは通常サイズが人気だが、コンビニエンスストアでは1人用として、ハーフサイズが支持されている[4]

脚注

[編集]
  1. ^ a b c 「所変われば品変わる ご当地パン全国行脚」『週刊実話』第133号、日本ジャーナル出版、2020年5月8日、103頁、大宅壮一文庫所蔵:000050686 
  2. ^ a b c d e カエルのパッケージが特徴の「なかよしパン」”. たびらい. パム (2016年12月5日). 2022年5月28日閲覧。
  3. ^ a b c d やんばるたろう (2020年12月2日). “なかよしパンのカエルにはなぜヘソがあるのか - ぐしけんパンの謎にせまる”. 沖縄B級ポータル - DEEokinawa. DEEokinawa LLP. 2022年5月28日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q 地域密着 愛されご当地パン”. at home VOX. アットホーム (2017年9月5日). 2022年5月28日閲覧。
  5. ^ 比嘉研仁 (2016年11月11日). “なかよしパン、ゼブラパン、うず巻サンド…沖縄県民に愛され続けてきた、ご当地ロングセラー菓子パン14選”. ファミンチュ. 沖縄ファミリーマート. 2022年5月28日閲覧。
  6. ^ a b 沖縄大好き ケコ (2020年11月15日). “沖縄でしか買えない美味しいご当地パン!”. 沖縄REPEAT. リピートアップ. 2022年5月28日閲覧。
  7. ^ a b 石川亮太 (2022年5月15日). “沖縄の定番「なかよしパン」 あのカエルに名前があるって知ってた?”. 沖縄タイムス. 沖縄タイムス社. 2022年5月28日閲覧。
  8. ^ 『女子旅行プチセレブ ちょっと贅沢なわがまま旅24コース』交通新聞社〈散歩の達人MOOK〉、2016年10月1日、83頁。ISBN 978-4-330-71416-5 
  9. ^ サーターアンダギーと並ぶ、沖縄のソウルフード「なかよしパン」!”. カメリヤ (2019年7月1日). 2022年6月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年5月28日閲覧。
  10. ^ a b c マエシロ (2018年3月1日). “沖縄土産として持ち帰りたい! 沖縄ローカルの味“なかよしパン” の魅力をご紹介♪”. OkinawaHolidayHackers. 沖縄ツーリスト. 2022年5月28日閲覧。
  11. ^ 「ちょっと訪問 ぐしけん 独自技術で「郷土パン」」『日刊工業新聞』日刊工業新聞社、2010年3月18日、15面。
  12. ^ 「第26回2018おきなわマラソン 大会まで1週間 号砲目前 準備OK?」『琉球新報』琉球新報社、2018年2月11日、朝刊、16面。