からすときつね
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「からすときつね」または「騙されたからす」は、イソップ寓話のひとつ。ペリー・インデックス124番。
あらすじ
[編集]鴉が大きな肉をくわえて高い木にとまった。いざ食べようとしたときに狐に声をかけられ、容姿についていろいろと褒められる。鴉は肉を食べることを忘れ、しばし聞き入ってしまう。そして狐が「きっと素晴らしい声をしているんだろうなあ。ああ、声を聞いてみたい」と言うと、鴉は「カー」と高らかに鳴き、くわえていた肉は下にいた狐の口に収まってしまう。
教訓
[編集]褒められていい気になりすぎると、痛い目をみることになる。
別のバージョン
[編集]この寓話については、早くホラティウス『風刺詩』の中で言及されている[2]。
ジャータカに多少似た話があり、ジャンブの木の実をついばむカラスをジャッカルがほめたたえ、それを聞いたカラスは実を落としてやる。ただしイソップとの影響関係は明らかでない[3][4]。
ラ・フォンテーヌの寓話詩では「セミとアリ」についで2番めに収録されている。この話ではカラスがくわえているのは肉ではなくパエドルスにしたがってチーズになっている[5]。この詩はジャック・オッフェンバック(1842年)をはじめとして何度も歌曲化されている。ジャン・ジャック・ルソーは『エミール』においてこの話を批判し、寓話の教訓とは逆に、子供はいかにして他人の口からチーズを落とさせるかという策略を学ぶだろうと言っている[6]。
レッシングの寓話集では、カラスのくわえていた肉が実は毒入りで、キツネは死んでしまう。阿諛追従を戒める内容になっている[7]。
クルイロフの寓話集にも収録されている。
脚注
[編集]- ^ “Le Corbeau et le renard”. Choix de fables de La Fontaine. 1. Tsoukidji-Tokio. (1894)
- ^ 中務 1996, p. 159.
- ^ 中務 1996, pp. 159–160.
- ^ Jambu-Khadaka Jataka (#294), The Jataka Tales
- ^ 中務 1996, pp. 158–159.
- ^ 小堀桂一郎『イソップ寓話』講談社学術文庫、2001年(原著1978年)、203頁。ISBN 4061594958。
- ^ レッシング 著、久保天随 訳「烏と狐」『譬喩談 : 家庭教訓』晴光館、1906年、81-84頁 。
参考文献
[編集]- 中務哲郎『イソップ寓話の世界』ちくま新書、1996年。ISBN 4480056637。
外部リンク
[編集]- ギリシャ語版ウィキソースに本記事に関連した原文があります:Αισώπου Μύθοι/Κόραξ και αλώπηξ
- ラテン語版ウィキソースに本記事に関連した原文があります:Fabulae (Phaedrus)/Liber I#XIII. Vulpis et corvus.(パエドルス版)
- フランス語版ウィキソースに本記事に関連した原文があります:Le Corbeau et le Renard (La Fontaine)(ラ・フォンテーヌ版)
- ロシア語版ウィキソースに本記事に関連した原文があります:Ворона и Лисица (Крылов)(クルイロフ版)
- Lessing, Gotthold Ephraim (1759). “Der Rabe und der Fuchs”. Fabeln. Berlin: Christian Friedrich Voß. pp. 53-54(レッシング版、Deutsches Textarchiv)
- “Carasuto, qitçuneno coto”. Esopono fabulas. (1593). p. 465(『エソポのハブラス』より「烏と狐の事」。大英図書館蔵 天草版『平家物語』『伊曽保物語』『金句集』画像、国立国語研究所)