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うさぎ座ゼータ星

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
うさぎ座ζ星
ζ Leporis
星座 うさぎ座
見かけの等級 (mv) 3.55[1]
位置
元期:J2000.0
赤経 (RA, α)  05h 46m 57.34096s[2]
赤緯 (Dec, δ) −14° 49′ 19.0199″[2]
視線速度 (Rv) 24.7 km/s[2]
固有運動 (μ) 赤経: -14.54 ミリ秒/[2]
赤緯: -1.07 ミリ秒/年[2]
年周視差 (π) 46.28 ± 0.16ミリ秒[2]
(誤差0.3%)
距離 70.5 ± 0.2 光年[注 1]
(21.61 ± 0.07 パーセク[注 1]
絶対等級 (MV) 1.9[注 2]
うさぎ座ζ星の位置(丸印)
物理的性質
半径 1.5 R[3]
質量 1.9 M[4]
表面重力 17 G[5][注 3]
自転速度 245 km/s[5]
スペクトル分類 A2 Vann[6]
光度 14.0 L[7]
表面温度 9,772 K[6]
色指数 (B-V) 0.10[1]
色指数 (U-B) 0.07[8]
色指数 (R-I) 0.03[8]
金属量[Fe/H] -0.19[9]
年齢 231 +126
−181
×106[6]
他のカタログでの名称
うさぎ座14番星, BD-14 1232, FK5 219, GJ 217.1, HD 38678, HIP 27288, HR 1998, SAO 150801, ウォルフ 9190[2]
Template (ノート 解説) ■Project

うさぎ座ζ星(ζ Leporis、ζ Lep)は、うさぎ座の方角に約71光年の距離にある恒星である。視等級は3.6で、肉眼でみることができる[8]。うさぎ座ζ星は、小惑星帯が恒星の周りを取り巻いていると考えられている。

恒星

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大きさの比較
太陽 うさぎ座ζ星
太陽 Exoplanet


うさぎ座ζ星は、スペクトル型がA2 VannのA型主系列星である[6]。添字の"ann"は、この恒星が星団に属さないか、進化の進んだ星団の一員で、吸収線スペクトルが高速の自転によるドップラー偏移で広がって、非常にぼやけていることを表す[10][11]。自転の下限速度は、245km/sと推定される[3]

うさぎ座ζ星は、質量太陽の1.9倍[4]、半径が太陽の1.5倍[3]光度太陽の14倍と推定される[4][3][7]金属量、つまり水素ヘリウム以外の元素量は、太陽に比べて65%程度である[9]。うさぎ座ζ星は若い恒星で、年齢はおよそ2億3000万年程度とみられるが、この見積もりにはかなり幅があり、5000万年から3億5000万年までとり得る[6]

小惑星帯

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太陽系(上)とうさぎ座ζ星(下)の小惑星帯の大きさ比較。

1983年に行われたIRAS衛星による赤外線放射の観測から、1986年には大きな赤外超過を持つことが知られ、星周塵が恒星の周りにあると考えられた[1][12]。これは、半径およそ1,000AUの殻と考えれば説明できたが、うさぎ座ζ星の赤外線放射はそこまで大きな構造が検出されておらず、半径7AU程度の残骸円盤英語版である可能性も考えられた[12]

2001年ケックI望遠鏡による観測で、塵の分布をより精度よく制限したところ、塵粒子は概ね恒星から6AU以内に存在し、塵の温度は約320Kと見積もられた[4]。塵が、恒星からの放射によって加熱されていると考えると、この温度から塵が存在できる場所は、恒星から2.8AUより外側となる[4]。この塵は、恒星を取り巻く大規模な小惑星帯からもたらされると考えられている。

2007年には、ジェミニ南望遠鏡による観測で、塵の円盤が直接撮影された[13]。これは、太陽系外で小惑星帯の証拠が検出された最初の例とされる[14]。同観測では、小惑星帯の半径も3AUと推定され、これは太陽系の小惑星帯と似たような大きさとなる[13][14]。ただし、この半径は典型的なもので、外側にもう一つ8AU程度まで広がる希薄な円盤がある可能性がある[13]。また、その後のハーシェル宇宙望遠鏡による観測では、小惑星帯はもう少し外側で半径5-6AUを中心に分布するという主張もある[7]

円盤の推定質量は、塵粒子の分が地球の100万分の1程度であるが、塵粒子はポインティング・ロバートソン抵抗や、恒星からの放射圧によって、1万年から数万年で寿命を迎えるので、小惑星帯から塵が継続的に補充されていると考えられる[4][13]。そこから推定した小惑星帯の質量は、およそ6 ×1026 gで、これは太陽系のメインベルト小惑星帯の1割程度の質量である[13]

うさぎ座ζ星の惑星[13]
名称
(恒星に近い順)
質量 軌道長半径
天文単位
公転周期
()
軌道離心率 軌道傾斜角 半径
塵円盤(内側) 2—4 au
塵円盤(外側) 4—8 au

太陽系との接近

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うさぎ座ζ星は、最近太陽系のごく近傍を通過したことがわかっている。ヒッパルコス衛星の観測結果による推定では、およそ100万年前に太陽から5.37光年まで接近した[15]。その後、改正されたヒッパルコスのデータで推定したところでは、およそ86万年前に4.16光年まで接近したとみられる[16]

脚注

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注釈

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  1. ^ a b パーセクは1 ÷ 年周視差(秒)より計算、光年は1÷年周視差(秒)×3.2615638より計算
  2. ^ 視等級 + 5 + 5×log(年周視差(秒))より計算。小数第1位まで表記
  3. ^ 出典での表記は、

出典

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  1. ^ a b c Aumann, Hartmut H.; Probst, Ronald G. (1991-02-10), “Search for Vega-like nearby stars with 12 micron excess”, Astrophysical Journal 368: 264-271, Bibcode1991ApJ...368..264A, doi:10.1086/169690 
  2. ^ a b c d e f g zet Lep -- Star”. SIMBAD. CDS. 2018年2月11日閲覧。
  3. ^ a b c d Akeson, R. L.; et al. (2009-02), “Dust in the inner regions of debris disks around a stars”, Astrophysical Journal 691 (2): 1896-1908, Bibcode2009ApJ...691.1896A, doi:10.1088/0004-637X/691/2/1896 
  4. ^ a b c d e f Chen, C. H.; Jura, M. (2001-10-20), “A Possible Massive Asteroid Belt around ζ Leporis”, Astrophysical Journal 560 (2): L171-L174, Bibcode2001ApJ...560L.171C, doi:10.1086/324057 
  5. ^ a b Chen, C. H.; et al. (2006-09), “Spitzer IRS Spectroscopy of IRAS-discovered Debris Disks”, Astrophysical Journal Supplement Series 166 (1): 351-377, Bibcode2006ApJS..166..351C, doi:10.1086/505751 
  6. ^ a b c d e Song, Inseok; et al. (2001-02), “Ages of A-Type Vega-like Stars from uvbyβ Photometry”, Astrophysical Journal 546 (1): 352-357, Bibcode2001ApJ...546..352S, doi:10.1086/318269 
  7. ^ a b c Mennesson, B.; et al. (2014-12), “Constraining the Exozodiacal Luminosity Function of Main-sequence Stars: Complete Results from the Keck Nuller Mid-infrared Surveys”, Astrophysical Journal 797 (2): 119, Bibcode2014ApJ...797..119M, doi:10.1088/0004-637X/797/2/119 
  8. ^ a b c Hoffleit, D.; Warren, W. H., Jr. (1995-11), “Bright Star Catalogue, 5th Revised Ed.”, VizieR On-line Data Catalog: V/50, Bibcode1995yCat.5050....0H 
  9. ^ a b Saffe, C.; et al. (2008-10), “Spectroscopic metallicities of Vega-like stars”, Astronomy & Astrophysics 490 (1): 297-305, Bibcode2008A&A...490..297S, doi:10.1051/0004-6361:200810260 
  10. ^ Revised MK Spectral Atlas for Stars Earlier than the Sun”. University College London (1978年). 2018年2月15日閲覧。
  11. ^ Kaler, James B. (1997-03-27), Stars and Their Spectra: An Introduction to the Spectral Sequence, Cambridge University Press, p. 74, ISBN 9780521585705, https://books.google.co.jp/books?id=4fNhk7m2MGYC 
  12. ^ a b Fajardo-Acosta, S. B.; Telesco, C. M.; Knacke, R. F. (1998-05), “Infrared Photometry of β Pictoris Type Systems”, Astronomical Journal 115 (5): 2101-2121, Bibcode1998AJ....115.2101F, doi:10.1086/300323 
  13. ^ a b c d e f Moerchen, M. M.; et al. (2007-02), “Mid-Infrared Resolution of a 3 AU Radius Debris Disk around ζ Leporis”, Astrophysical Journal 655 (2): L109-L112, Bibcode2007ApJ...655L.109M, doi:10.1086/511955 
  14. ^ a b 太陽系の小惑星帯と同じサイズの「系外小惑星帯」候補を発見”. AstroArts. 2018年2月11日閲覧。
  15. ^ García-Sánchez, J.; et al. (2001-11), “Stellar encounters with the solar system”, Astronomy & Astrophysics 379 (2): 634-659, Bibcode2001A&A...379..634G, doi:10.1051/0004-6361:20011330 
  16. ^ Bobylev, V. V. (2010-03), “Searching for Stars Closely Encountering with the Solar System”, Astronomy Letters 36 (3): 220-226, arXiv:1003.2160, Bibcode2010AstL...36..220B, doi:10.1134/S1063773710030060 

参考文献

[編集]
  • Cote, J. (1987), “B and A type stars with unexpectedly large colour excesses at IRAS wavelengths”, Astronomy & Astrophysics 181 (1): 77-84, Bibcode1987A&A...181...77C 

関連項目

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外部リンク

[編集]

座標: 星図 05h 46m 57.34096s, −14° 49′ 19.0199″