寒冬
表示
寒冬(かんとう)とは、平年(1971~2000年の平均)に比べて気温の低い冬のことである。気象庁による3階級表現で12月~2月の平均気温が「低い」に該当した場合の冬をいう。(階級表現に関しては#外部リンクも参照のこと)
なお、平年値は10年ごとに更新されるため、階級表現も更新される。そのため、当時の平年値では「並冬」であった冬が、更新された平年値では「寒冬」となる場合もある。また「寒冬」が「並冬」または「暖冬」となる場合もありえる。
寒冬の原因
日本では偏西風の蛇行や北極振動により寒気が流れ込みやすい状態の時に寒冬になるとされ、寒冬年は豪雪を伴うこともある。日本では、戦前において寒冬傾向が顕著であった。戦後においては1960年代から1986年まで寒冬年となることも多かったが、1987年以降は暖冬傾向が顕著となっており、寒冬年は激減している。特に1990年代は当時の平年値(1961~1990年)で1996年が寒冬となった以外は暖冬であった。2000年代になると北日本では寒冬年もみられるようになったが相変わらず暖冬年が多い。これは都市化や地球温暖化、地球規模の気候変動が関連すると考えられているが、近年では北極振動や太陽活動の関連性も指摘されている。またラニーニャ現象の発生年は日本列島では寒冬になりやすい傾向にある。
世界的に見ると北半球での冬の気温上昇が著しいが、アメリカやヨーロッパでは時折、記録的な大寒波に見舞われており、これに関しても地球温暖化との関連性が指摘されている。
社会への影響
- 過去の寒冬年は日本海側や内陸部を中心に豪雪による被害が発生することが多い。記録的な寒冬となった1962~1963年、1980~1981年、1983~1984年、1985~1986年、2005~2006年の冬は豪雪災害が発生しており、雪による人的・物的被害が増える傾向がある。近年では高齢化により、70歳以上の高齢者が巻き込まれる事故が増えている(平成18年豪雪の死者の大半が70歳以上の高齢者)。
- スキー場に関しては降雪量が増えるため、営業にはプラスとなる。しかし、同時に雪崩などの危険も増すため、平年より積雪が多いにも関わらず営業中止となったスキー場もある。
- 低温による水道管の凍結、破損が温暖な太平洋側でも発生する恐れが高まる。
- 冬物衣料品の売り上げが好調となったり、暖房の需要拡大により電気、灯油などの需要が増加する。さらに、豪雪地帯では雪の除雪費用が増加し、財政の厳しい自治体では財政が圧迫されるなどの影響が出る。
- 翌年の桜の開花が遅くなる傾向がある(特に寒冬に続いて寒春になる場合(1970年、1984年など)が該当する)。
過去の主な寒冬(日本)
- 平均気温は南西諸島を除き平年より3~4度以上も低く、気象庁の統計開始以来現在までで最も寒い冬となっている。ピーク時は平年を10度以上下回る日が連続し、多くの地点で積雪記録を更新し、長野県や富山県の一部では7メートルを超えた。北海道の雄武と北見枝幸では92日連続の真冬日(富士山頂以外では最長記録)を記録した。
- この年は年間を通して低温であり、冬に関しては12月と2月が低温だった。
- 北日本においては戦後最大の寒冬である一方、南西諸島は並冬という極めて北冷傾向の強い寒冬だった。
- 日本海側で記録的な豪雪となり、1月18日には新潟市で最深積雪120cmを観測した。ただこの年は比較的春の訪れが早く、3月以降は平年並みか高温で推移した。
- 12月はやや暖冬傾向で推移したが、12月末以降、西日本を中心とした大寒波に襲われ、北陸地方では平野部を中心に記録的豪雪に見舞われ甚大な被害が発生した。雪雲は本州日本海側だけでなく九州地方にも流れ込み、鹿児島県でも大雪となった。寒気が西回りで流れ込んだため、北海道では暖冬、東北ではほぼ平年並の気温だったが、東日本以西では顕著な寒冬となり、1月と2月は西日本、南西諸島で記録的低温となった(全国平均で見た場合、当時の平年比(1931-1960)では寒冬よりの並冬。これは北日本が暖冬だったためと、当時の平年値は1936年や1945年など、戦前の記録的異常寒冬時代の数値が含まれている時代の平年値であるためで、今の感覚とは大きくかけ離れる)。昭和38年1月豪雪も参照。
- 北日本を中心に低温となり、初冬から強い寒波に見舞われた。2月12日には東京で最高気温が-0.2℃で戦後唯一の真冬日を観測した。
- 東北地方~南西諸島の広い範囲で寒冬となり、特に12月と2月は西日本、南西諸島で記録的低温となった。平年を5度以上下回る日も多く、冬平均も西日本(平年比-2.2度)、南西諸島(平年比-2.4度)で平年を2度以上下回る顕著な寒冬となり、九州地方でも大雪となった。なお1967年秋から1968年春にかけてラニーニャ現象が発生していた。
- この年は3月の記録的低温を中心とした寒春の方が有名だが、12・1月を中心とした寒冬でもある。ただ寒冬の割には太平洋側の降雪が少ないといった特徴が見られた。
- この冬はラニーニャ現象が発生しており、北海道で暖冬だった以外は全国的に気温が低く、東日本から南西諸島で平年を1℃以上下回る低温となった。また、秋田県では12月~3月にかけて記録的豪雪(四八豪雪)となった。
- この年は日本で暖冬が起きやすいとされるエルニーニョ現象が発生していたにもかかわらず、平均気温は南西諸島を除き平年より1~2度低い顕著な寒冬となった。12月下旬から2月中旬まで気温は平年を大幅に下回る状態が続き、日本海側では大雪による被害も発生した。2月17日には久米島で、沖縄の気象観測史上唯一となる雪(正確には霙)も降った。
- 北日本を除き寒冬となり、特に西日本で顕著な低温だった。里雪型だった影響で北陸地方平野部でも最深積雪が1メートルを超えるなど、日本海側では大雪による被害が続出した。2月中旬になると一時的に暖かい日が続いたが、春が間近に迫った2月下旬後半に強烈な大寒波が襲来し、特に西日本で記録的な冷え込みとなった。富士山では2月27日に観測史上最低の-38.0度を記録した。五六豪雪も参照。
- 平均気温は全国的に平年を大幅に下回り、東日本や西日本を中心に観測史上有数の寒冬となり1944年-1945年に次いで2番目の低温であった。特に1月中旬から2月にかけては全国的に平年を7~8度も下回る日が続き、冬平均(12月~2月)でも東日本、西日本で平年より2度以上低かった。寒気団が日本列島を覆って全国的に低温となり、日本海側では記録的低温と大雪に見舞われ多くの死傷者を出した。また南岸低気圧の通過により、東京都心をはじめ関東地方でも度々大雪となったほか、西日本の多くの都市でも大雪に見舞われた。東京都心では冬期間(12~2月)の総降雪量は89cmに達した。五九豪雪も参照。さらにこの年は3月以降も異常寒春である(多くの本州主要都市で3月でありながら、10日以上も冬日を記録、さらに前年11月及び4~5月も異常低温でラニーニャの影響が出る梅雨期まで半年以上に亘り低温傾向は解消されず4月下旬から5月上旬に北日本で季節外れの豪雪に見舞われた)。
- 12月上・中旬までは暖冬傾向で推移したが、12月下旬から1月は大寒波に見舞われ、日本海側では北陸以北を中心に豪雪となった。1月は北日本で記録的低温となり、東日本、西日本でも平年を大きく下回った。2月は寒暖の変動が大きかったが気温の高い日も多くなり、3月以降は全国的には平均気温は平年並か高く経過し、前年のような大寒春にはならなかった。
- 1984年ほどではないものの3ヶ月通して気温の低い状態が続き、1月、2月は平年を5~6度下回る日が多く、冬平均気温も全国的に平年より1~2度低かった。寒気団が居座って日本海側では記録的な大雪となり、新潟県上越市高田では2月6日に最深積雪が324cmに達した。六一豪雪も参照。ただ、春以降は3月に一時的に寒気の流入があったが気温の上昇は比較的順調で、1984年のような半年を超える異常低温とはならず春の訪れはほぼ平年並みであった。
- 殆どが暖冬年の1990年代において唯一の寒冬となり日本海側山間部で雪が多く、東日本(平年比-0.6度)、西日本(平年比-0.8度)、南西諸島(平年比-0.3度)で冬の平均気温を下回った。11月から寒い日が続き、12月25日にはクリスマス寒波となり、三重県四日市市では翌26日にかけて記録的大雪に見舞われ、26日には最深積雪53cmを記録した。その後も1月下旬から2月上旬に強烈な寒波が襲来し記録的大雪となった地域が続出した。但しこの年は継続的に低温が続くことはなく、1月中旬や2月中旬には東日本~西日本の地点で最高気温が20℃前後まで上がる日があるなど、寒暖の変動がかなり大きい冬だった。なお、北日本(平年比+0.3度)は並冬で、北海道では平年比+0.6度で暖冬だったが一部では記録的な大雪となり、札幌市では冬期間(12~2月)の総降雪量が577cmに達した。この年は冬に続いて春の気温もかなり低く、特に4月は西日本でも雪が降るなどして著しい低温となった。
- この年は北日本のみの寒冬だったが、北日本の平均気温は平年を1.4度下回り、1985-1986年以来15年ぶりに平年を1℃以上下回る寒冬となった。1月中旬には強い寒波が襲来し、北日本~九州北部の日本海側で大雪となり、1月15日には金沢市で84cmの積雪を記録した。また、1月は本州南岸を低気圧が周期的に通過しやすかった影響で東北南部~関東甲信地方でも多くの地点で記録的な大雪となった。1月は北日本~東日本で低温となったが、冬平均で低温だったのは北日本のみで、東日本(平年比-0.1度)と西日本(平年比+0.4度)のうち近畿・中国・四国・九州北部地方は平年並みの寒さとなり、九州南部以南は暖冬となった。そのいっぽうで奄美諸島と沖縄県などの南西諸島(平年比+1.4度)は顕著な暖冬であったため、全国平均では平年並みの冬となった。この年は北極振動指数がマイナスであったため、日本付近に寒気が流れ込みやすい傾向にあったが、一方で日本の南の太平洋高気圧の勢力が冬になっても依然として強く、西日本方面への寒気の南下はブロックされやすかった。
- 当初、気象庁は暖冬と予想していたが12月中旬頃から北極振動により日本付近に寒気が流れ込みやすくなった。そのため予想に反して北海道から山陰地方では大雪が続き、12月21日~22日には非常に強い寒気が日本列島に流れ込んで名古屋市で20cmを越す積雪を記録、積雪が稀な宮崎市でも1cmの積雪を観測し、気象庁は暖冬予想を撤回した。12月の月平均気温が戦後最低になった地点が続出し、低温傾向は1月上旬まで続いた。1月中旬以降は寒気の南下は一時的で平年並~暖冬傾向に転じたが、北日本・北陸地方以北の山間部ではその後も積雪は増え続け、積雪が3~4メートルに達した。著しい低温となった北陸地方では12~2月の平均気温が平年を1.2度下回り、最も寒かった12月は平年を3.1度下回る記録的な低温となった。それ以外の地域でも北日本から九州北部の広い範囲で12~2月の平均気温を下回り、北日本では平年比-0.6度、東日本は平年比-0.8度、西日本は平年比-0.5度で20年ぶりの全国的な寒冬となった。平成18年豪雪も参照。