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みえるひと

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

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みえるひと』は、岩代俊明作の週刊少年ジャンプ2005年33号~2006年42号に連載していた少年漫画、及び 第10回ストーリーキングマンガ部門準キング受賞作(週刊少年ジャンプ増刊青マルジャンプ掲載)、週刊少年ジャンプ2004年45号掲載の読み切り作品。本項では連載作品について記述する。

あらすじ

高校入学するため上京してきた姫乃は、自分に憑いていた霊を霊問題の専門家である案内屋・明神に退治してもらう。明神の経営する「うたかた荘」の生者として唯一の住人となった姫乃は様々な問題に巻き込まれていく。


注意:以降の記述には物語・作品・登場人物に関するネタバレが含まれます。免責事項もお読みください。


登場人物

うたかた荘

明神冬悟(ミョウジン とうご)
生者。案内屋。霊と生者のためのアパート「うたかた荘」の管理人1月15日生まれのA型。霊が「みえるひと」。
師匠譲りの黒いコートサングラスを愛用する(ただし、サングラスは状況に応じて外す場合が多い)。髪の毛が白いが、それは生まれながら溢れ出るほどに魂の力が強い事のしるし。ゴウメイ戦で剄を右手に集中させた時には、髪が黒くなった。霊を見たり触ったりする事ができ、ある程度の霊撃耐性も持っている。
梵術を駆使して霊と闘う。敵を倒した時の決め台詞は「BOMB・ボン)」。
技も未熟な内に師匠を失い、案内屋として道しるべを示すものが居ない中で、経験を重ねながら手探り状態で徐々に技を習得していく。最初は補助具である黄布(梵字の入った布)を腕に巻きつけて戦闘していたが、ハセ戦で『空の梵痕キャのサン=スティグマ)』を得て以後、戦闘で黄布は必要としなくなった。
幼い頃に航空機事故により両親と死別。唯一の生存者となるが、事故を境に特異体質が現れ始めた。その後親戚をたらい回しにされる。望まないのに見え、触れられてしまう霊に対する恐怖も相まって、人に対しても心を閉ざしており若い頃は戦闘ジャンキー不良であった。そんな中、先代明神と出会い案内屋を志す。
〝明神〝の名は死んだ師匠から受け継いだものであり、元々の名前冬悟(とうご)という。通常は明神とだけ呼ばれるが、先代明神と区別するためか、或いはこれが現在の正式な名称なのか、明神冬悟と呼ぶ者もいる。なお、コミックス5巻から人物紹介の所でも「明神(冬悟)」と紹介されている。
現在ではかつての荒くれた気性から一転して、飄々として憎めない振る舞いが目立つ。人目を気にせずアズミに絵本を読んでやったり、敵の攻撃をわざと食らってみたり、その場の成り行きで地蟲にセンスのない名前を勝手につけたり、それを自分で忘れたりなどと掴みどころのない行動が多い。成長して多少落ち着き、憧れた師匠の人となりを真似てもいるようだ。ただし戦いの最中など、頭に血が上った時には地が出る。
私生活面では夜部屋で寝て朝道路で目覚めるほどの寝相の悪さと、まともに学校へ通えていない為の低学力が難点(ガク曰く「学力ゼロの体力馬鹿」)。しかし後者の原因である幼少の頃の辛い境遇から、自分には手の届かなかった「普通の生活」を何より大切に思っており、姫乃のそれを守るため彼女を全力で守ろうとする。
また最終的に、案内屋として「命あるものと霊との理解・共存」を目標として定めたようでもあり、本編から8ヶ月後の番外編においてはパラノイドサーカスとの共存を実現している。生者、陽魂、陰魄の垣根を越えて開かれた、彼の24歳の誕生日パーティーが物語を締めくくった。
姫乃との仲も8ヶ月の間に大分進展していたようである。
コミックス最終巻で明かされた本名は久能冬悟くのう とうご)。
桶川姫乃(おけがわ ひめの)
うたかた荘住人の中では(管理人を除いて)唯一の生者。女子高生あだ名は「ひめのん」(明神命名)。4月12日生まれのO型。明神同様に霊が「みえるひと」。
幼少時は母と2人暮らしをしていたが(父親は海外赴任中。教授職に就いているらしい)、母と死別後は祖父宅や親戚を転々とした後、都内の私立高校入学するため上京してきた。物心つく前陰魄に遭遇した事があり、10年後の上京初日に命を狙われる事になる。それがきっかけで明神に出会い、また死に近づいた事で霊を見る事ができるようになった。ただし霊に触る事はできない。
自分より他人を気遣うおっとりとした優しい性格(やや天然ボケ気味)だが、ぶっとい芯があり、母親に似たのかここぞという時は譲らない強情さも併せ持つ。
実は母親・雪乃のお腹にいる時に『無縁断世』の力を半分吸収し、受け継いだ。つまり姫乃自身も『無縁断世』である。そのため霊感が強く、無縁断世の力を求めるコモン一味やパラノイドサーカスに狙われてしまう。そしてそんな死線を潜り抜けるたびに、明神らうたかた荘の住人達と絆を深めていく。
最終回においてうたかた荘の住人達の後押しを受け、危険と知りつつも雪乃に会いに行く事を決意。その航路の途中、うたかた荘の住人とパラノイドサーカスが共に暮らす不思議な夢をみる。
戦いから8ヶ月後の番外編ではその夢が実現しており、うたかた荘の住人、パラノイドサーカス、そして雪乃との共同生活を満喫している。
8ヶ月の間に明神への好意は本物になっていたようだ。
うたかた荘に来て以来、陰魄がらみの事件に巻き込まれ続けてロクに学校に通えていないことが悩みのタネだったのだが、そんなこともなくなったらしく、エッちゃんという親友もできていた。さらにどうやらクラスの男子から人気があるらしい。
調理法では、刺身にしてもよい。
湟神澪(コウガミ みお)
案内屋。腹に『の梵痕バのサン=スティグマ)』を持つ。
スタイル抜群の美人で、白のニッカボッカを着用。白い前髪を隠す為かハンチング帽を被る。治癒術、結界術に長けており、戦闘では腰に提げたペットボトルの水と、(長ドス?)を武器とする。
性格は威勢のいい姉御肌。普段は冷静に振る舞っているものの、意外と沸点が低く短気な一面もある。また子供好きでもあるようで、アズミのことをとても可愛がっている。
幼い頃両親を亡くした孤児であり、師匠の湟神一兆に引き取られる。荒れた青春時代を送っており、14歳にしてレディースのリーダーになっていたりした。一兆との修行からもたびたび逃げ出していたが、その度、先代明神に連れ戻された。この経験から先代明神に好意を寄せるようになったと思われる。
無縁断世を巡る戦いへ向け、先代明神の死を知らぬまま、彼をたずねてうたかた荘を訪れる。弟子時代の明神(冬悟)との面識はなかったが、過去、師匠に連れられた姿を見ていたため冬悟の事自体は知っており、うたかた荘に合流後はシャボン玉を利用した修行で彼を鍛えた。
襲来したパラノイドサーカスが人間に危害を加えないよう、自ら決闘を提案。すぐにでも戦闘をしたいミズチに交換条件として右腕を持っていかれ、不利な状況のまま最初の戦いに臨む。戦略に長けるミズチを相手に苦戦を強いられるが、先代明神と共に戦う日のため磨き上げた水の梵術で、最後は見事勝利を収めた。
8ヵ月後の番外編では、仲間たちと共に明神の誕生日パーティーに参加。アズミにゾウのぬいぐるみをプレゼントしていた。
本名は園城寺澪おんじょうじ みお)。趣味はぬいぐるみ集め。
エージ
陽魂少年の霊。うたかた荘の住人。本名、「眞白エージ(ましら-)」。5月25日生まれのO型趣味野球
具現化したバットを常に持ち歩く、元気バリバリの元気っ子。明神に憧れ、明神の言う「クールにサイキョー(最強)」を目指している。アズミやツキタケに比べれば年長で落ち着いている様子だが、持ち前の熱血ぶりがトラブルを呼ぶ事もある。エロいお姉さん(澪)に対する年相応の好奇心も持っているようだ。
作中では描かれていないが、時折明神達と外に遊びに行っているらしい。
生前、肝試しのつもりで富士樹海に入り、そこで陰魄に殺されてしまう。一緒にいた妹・真知まち)は樹海の入り口に留まったので無事だったが、彼が帰らないことで家族の時間は止まってしまった。
強くなりたいと願っていたのは自分を殺した陰魄を倒し、自分の死体を見つけて未だに帰りを待ち続けている両親、妹に自分の死を証明する為であった。
アズミ
陽魂。幼い少女の霊。うたかた荘の住人。本名、「木備野安曇(きびの あずみ)」。8月8日生まれのAB型
母親と歩いていた時にに轢かれ、そのまま死亡した。小さな怪獣と言われるほど元気がいい。一番の子守役は明神。絵本が好き。落書きも得意。
一切の戦闘能力を持たず、そもそも幼い為、明神達が戦いに趣く時はお留守番をする事になる。人間願望(アニマ)との戦いの最中、うたかた荘を訪れた澪と出会い、同じく地上に現れたコモンから庇われている。また戦いの終わりには奇しくもバオの最期を看取る事になった。
最終回では彼女がうたかた荘の壁に描いた住人達の落書きがラストを飾った。
「みえるひと」におけるマスコット的存在と言える。
ガク
陽魂青年の霊。本名、「犬塚我区(いぬづか がく)」。10月11日生まれのB型。通称「Mr.ガラスのハート」。
普段はいろいろな所を放浪していて、うたかた荘にはたまに訪れる程度だったが、姫乃に一目惚れしてからはうたかた荘に定住するようになる。その恋心の為、また性格的にも合わないため明神を異常に敵視し、喧嘩をする事もしばしば(これを止めるのは姫乃の役目)。姫乃にも初めのうちは恐がられていたが、一途な愛が通じたものか現在では「ガクリン」という愛称で呼んでもらえるようになった。
あだ名の通り繊細でナイーブな反面、感情の起伏が非常に激しく、一度キレると手がつけられない。ときには陰魄にも近くなる(本人曰く「テンションが上がる」「スイッチが入る」)。
ピコピコハンマーを持ち歩いていて、これを感情に伴って金槌など様々な形態に変化させる。このハンマーはガク自身の破壊衝動の現れであり、特に感情が高ぶった時(非常に強い負の感情を持って 陰魄に近くなった状態のとき)には大きな木弾丸に変化させる。戦闘能力はうたかた荘メンバーの中で明神に次いで高い。また、意外に頭の回転が速く、鋭い洞察力による頭脳戦を得意としている。決め台詞は、「愛の障害排除完了!」。コモンとの戦いの中焔狐を食べた事で力を吸収。炎を自在に操れるようになり更に戦闘能力が高まった。
惚れやすいと思われる性格だが、自分が愛情を注げられる相手を求めているというのが実情。それ故自分が愛情を捧げる相手、自分を慕ってくる相手が傷付けられた時は、普段の数倍はブチ切れる。フェミニストのようにも思われがちであるが、怒った時は敵が女であろうと容赦する姿勢は見せない。まさに「死せども愛に活きる男」。
生前は裕福な家の生まれだった。元来秀才であったが(得意科目は数学) 、上記の精神構造が災いしてかみるみる落第。学生時代の日課は女子への嫌がらせに近い告白の嵐。さらには地理の先生の説教に1分で逆ギレして暴れ出した「ピコピコハンマー乱闘籠城事件」をはじめ、数々の伝説を打ち立てている。
浪人生の時にツキタケと出会うが、「雉ノ葉月武誘拐事件」に巻き込まれて消息を断つ。ツキタケを守るために戦い、それがかなわず力尽きたのだとすれば、その時の彼の無念と怒りは計り知れない。ガクが死して陰魄に近い存在となったのも無理のないことと言えるだろう。
事件の黒幕と、その協力者であり悲劇の舞台となった団地の人間全てを葬ることを胸に秘めており、その強い負の感情を十味から危惧されている。
ツキタケ
陽魂少年の霊。本名、「雉ノ葉月武(きじのは つきたけ)」。6月6日生まれのA型
ガクの弟分で常にガクと行動をともにしており、現在はガクとともにうたかた荘の住人。生前はかなりの富豪(成金)の生まれで、そのせいで不良にタカられていたところをガクに救われたのが出会いだった。
性格は強気で意地っ張り。元々、家の事で周囲から苛められていたので、あまり他者と交わろうとはしなかったが、バオ戦を通じてエージと友情を確立する。作中では描かれていないがマフラーをエージに被せて遊んだりもしていた。そしてエージ同様、湟神澪の胸に興味がある様子。
戦闘はできるが直接攻撃するような術は持っておらず、基本的にエージとコンビで戦い、攻撃の殆どはエージに任せて援護する立場に当たる。本人曰く「ハートが全て、それが折れたら終わり」らしい。
一人称は「オイラ」。ガクを「アニキ」と慕い、明神を「ダンナ」、姫乃を「ねーちゃん」、そして澪を「アネゴ」と呼ぶ。
生前、ガクの家から帰宅途中、覆面の男達に襲撃され連れ去られる。同行していたガクも瀕死の重傷を負いながらも追跡したが、ある団地に入ったところですべての足取りが途絶え、被害者も犯人も全員が行方不明となってしまった。これが警察もお手上げの「雉ノ葉月武誘拐事件」である。
ツキタケとガクが命を落とし、霊となったこの事件の裏には、ツキタケの付き人であり兄のような存在であった轟が深く関与しているらしい。
明神勇一郎(ミョウジン ゆういちろう)
死者(故人)。案内屋。冬悟こと、現在の明神の師匠。「うたかた荘」の購入者でもある。黒いサングラスコートを愛用する(現明神と違い、サングラスは絶対に外さない)。身寄りのない現明神を拾い、共に生活し、彼を案内屋として、人間として育てた男。
性格は豪放磊落。かつ、どこかつかみどころがなく飄々としている。冬悟(現明神)へ「おにいけんぞ」と言ったり、澪に写真と付近のみを簡略に書いたいい加減なうたかた荘の地図を送ったりするなど、滅茶苦茶で周囲を戸惑わせるような言動が多い。澪の言によれば「ドエロ」でもあったようで、実際彼女に対するセクハラはかなり強烈だった。
案内屋として強い力を持っていたが、ハセとの戦いで現明神をかばい、そのまま絶命。魂はハセに囚われていて、後の再戦時に現明神に新たな力、空の梵痕を授けることになった。既に成仏したため霊としては現世に残っていない。
実は、高い実力を有しながらも剄の総量は凡人に毛が生えた程度で、冬悟(現明神)の10分の1以下であったという。案内屋でありながらも完全な黒髪なのはこれが原因と思われる。抜群の技術力やセンスで基本的な戦闘能力をカバーしているものの、発揮できる力の最大が低いため強敵には苦戦を強いられることもあった。身寄りの無い冬悟を育てていたのは、来るべき戦いに備えて人間側の切り札を用意するためでもあったのだ。
名跡のフルネームは明神勇一郎。だが、本名の姓は内緒らしい。
なお、増刊青マルジャンプに初掲載された読みきり版「みえるひと」(単行本6巻に収録)における明神(のキャラクターデザイン)は彼だった。

陽魂

地蟲(チコ)
陽魂ネズミモグラ等、小動物の魂の集合体『仙陽(陽仙?)(せんよう)』の一種。明神達が住む町の地下に棲んでいる。まん丸の体とブタのような鼻が特徴。長老のジジ以外は個別の名前を持たない。
ジジを筆頭に40匹いたが、人間願望(アニマ)に襲われて6匹になってしまい、案内屋に助けを求めた。使いに出されたうちの1匹が、勘違いから明神でなく姫乃とエージを地下に引き込んでしまったことから、「地下人間願望(アニマ)編」のストーリーが幕を開ける。
コモンに追い詰められ、さらに2匹の仲間を失うが、うたかた荘メンバーの活躍によって最終的にはジジ・チコゾー・チーコ(チコミ?)・チコちゃん(最初にヒメノを連れてきてしまったうっかり者)の4匹が生き残る。
チコゾーとチーコはパラノイドサーカス戦時もうたかた荘に滞在(巻き添えで軟禁状態)。その後、再びジジたちと合流し、パラノイドからの逃走作戦でサポート役を果たした。

陰魄

ハセ
他のを吸収して力を付けていくタイプの人間霊。本来のを隠し、代わりにコモンの顔を模倣した顔を持っている。かつて明神・冬悟師弟と戦い、先代明神を殺害。その魂を奪った。
死後、醜い陰魄になり、古い集落でうずくまっていたところにコモンが現れ、彼についていく。当時は自意識も弱く、コモンに言われるがままに陽魂を狩っていた。やがて力と知恵をつけ、コモンより強くなったと思い襲撃するが敗北、逃亡の後にキヌマと出会う。明神師弟と対決するのは更にこの後、独立してからの事である。
「明神が生きている」という噂を聞きつけてうたかた荘を来訪、現明神やうたかた荘メンバーを苦しめるが、最後は成長した現明神に敗れた。ほどなく、キヌマがを集めて上半身のみ復活させるも、アニマのグループに加わっていたコモンと再会。彼によってその場で粉々にされ、消滅する。
基本的には弱者をいたぶり自らの力を増すことに酔う悪党だが、変遷を続ける自らの正体や陰魄の在り方について考察し弁論を振るう、妙に哲学的な面も持っていた。コモンの顔を模倣していたのも、「憎んでいるくせに憧れる」という複雑な思いからのものだったようだ。
流仙蟲(ルセンチュウ)
動物の怨みや憎しみの情念が集まり形を成した霊の一種。イルカのような金魚のような不気味な姿をしている。人間の魂を食う霊としてほぼ退治されていたが、封印だけされて放置された一匹が幼い頃の姫乃と出会い、取り憑いていた。
で迷った姫乃に帰り道を教える代わりに、封印が解けた10年後に魂をもらいに行くと一方的に持ちかける。自由になり、姫乃を追って東京に現れるが明神に阻まれ、最後は『剄櫻』で倒された。
完全に余談だが、姫乃らと共にかの「こち亀」に出演した事もある。
カンテラ法師
自分より力の弱い霊魂を狩り、己の力(カンテラの灯り)として取り込む陰魄。その名の通り手に持ったカンテラから炎を放ったり、そのまま殴ったりして攻撃する。性格は非常に執念深く邪悪で、卑屈。
樹海に住んでおり、通りがかったエージに因縁をつけた。反撃され手傷を負った事に腹を立て、エージや姫乃を襲うが、エージの『ゴーストバスター・ストライク』と明神の『剄蘭』の連携で撃退、消滅させられる。
アズミの母
死者。アズミとともに交通事故死した。離れ離れになったアズミを探し回るうち、娘を求める気持ちが強すぎて陰魄になりかける。その思いの現れとして、背中から巨大な腕が生えている。
銭湯煙突に居座っていたところで明神らと接触、アズミとも再会を果たす。意識が暴走していたが明神の『剄楓』で陰魄としての部分=背中の腕を切りとられ、自我を取り戻したが、これにより現世に留まる強い力を失う。幼いまま命を落とした娘にもっと世界を見てほしかった、遊んでほしかったと願い、アズミを明神に託して一人成仏する。
ノミ&カンナ(陰鬼)(オンキ)
林の中の廃に棲みついていた二匹組の陰魄。浮かれ騒ぐ小鬼の類だが、場に澱んだ邪気を集めて巨大な状の陰魄カナゴモリ』を作り上げ、人間を襲っていた。
その事件の調査を十味に依頼された明神と、犯人ではないかとの疑いを(主に姫乃に対して)晴らそうとしたガクと戦う。明神にカナゴモリを倒され、自分たちもガクの一閃で二匹まとめて消え失せた。
幽灯大師観照(ゆうとうだいし かんてら)
鳥籠のような物に乗った、巨大な僧形の霊。顔全体を隠す頭巾を被っている。人間願望(アニマ)との戦いの直後、姫乃を母・雪乃の元へ連れて行こうと現れた。
口調や雰囲気からしてかなり位の高い霊のようだが、戦闘には手を下さず、姫乃たちに実力行使もしない。ただし、コモンの放った大量の焔狐をより強大な炎の中に吸収してみせるなど、戦闘力自体はけして低くない。
実はその正体は、元案内屋・壊神。どうして陰魄となり、案内屋の敵に回ったのかは明かされていない。ただ、その言葉の端々から人間(生者)に対する怨念めいた怒りが感じられる。
パラノイドサーカス、とくにキヨイの能力を利用して人間世界を滅ぼそうとしていたが、決戦後、雪乃は奪還されパラノイドサーカスはうたかた荘と和解している。裏切り者であり、真の黒幕であった彼がいかなる結末を迎えたのかは、誰にも分からない。
似通った名前と能力を持つ、カンテラ法師との関係は不明。

人間願望

コモン
パラノイドサーカスのメンバーであり、地下水道に棲む人間願望(アニマ)のリーダー格。である『焔狐(ほむらぎつね)』の霊。外見は青年だが、尻尾を持つ。あまり気は長くなく、冷徹且つ残忍な性格の持ち主。かつてハセを「暇潰しに育てて」いた。
キヌマたちのグループに加わったのは最近だが、グループの中で最強を誇り、キヌマに「獣の中の異端」と言わしめるほどの力を持っている。地下に迷い込んだ姫乃を狙う「狩り」をキヌマたちに提案した。
地下水道の戦いで明神以下、うたかた荘メンバーを相手に圧倒的な力を見せつける。しかし、うたかた荘と地蟲の団結、極限状態からの明神の成長によって逆転され、とどめには子分であった焔狐たちの反逆に遭い、ついに明神の必殺技剄花繚乱 闇螢』で消滅させられた。
パラノイドサーカスを離脱したのも、持ち前の強い野心のためだったらしい。度を越して自己中心的な性格がすべての命取りだったともいえる。
名前は漢字で「狐門」と書く。元ネタはおそらく九尾の狐
キヌマ
人間願望(アニマ)。の霊であるが、老人の姿をしており甲羅を持つ。性格も老獪で、長いものには巻かれるタイプ。ホルトには「世渡り上手」と評されたが、常に腹に一物持ってもいる。
魂の再構築師と呼ばれる一種の技術者であり、ほとんどばらばらで自己再生が不可能になった状態からでも魂を修復できるようだ。明神に倒されたハセを修復したことからその技術力が伺え、また消える直前のミズチのせりふからすると消滅寸前だったミズチも彼の手に掛かれば元通りに修復できる可能性があったと推測できる。
地下水道の戦いで明神に敗れるも、明神の前では消えず、他の場所で果てたと思われる。
元はに棲む古老の亀であり、名前はそれを由来として「亀沼」と書く。
ホルト
人間願望(アニマ)。の霊であるが、鳥頭の人間の姿をしている。プライドが高く、自分より強いコモンを常に意識していた。「ホハッ」「ホハハハ」と独特の奇声や笑い声を上げる。
ガクと戦うが、彼の新技『900mmラブ・パラベラム』の前に敗れ、完全に消滅させられた。
本人曰く名前は「異国の地で鳥の神と崇められる者の名」、つまりエジプト神話ホルス神からとられているという。
バオ
人間願望(アニマ)。動物園で飼育されていた一頭きりのの霊であり、容姿は二足歩行の象。力だけで頭はない。ホルトに率いられていることが多かったが、彼の言葉をアニマとして存在する指標にしており、意外にいいコンビだったようだ。
エージ・ツキタケコンビと対決、合体技『ゴーストカットスライサー』で真っ二つにされるが、その場で消滅はせず、強い負の感情でかろうじて再生、動き回れる程度の力を取り戻す。コモンを倒した明神たちが地下を脱出後、彼もまた地上へ出て姫乃を追う。だが、偶然聞いた姫乃たちの言葉をきっかけとして、未練を残すことなく消滅するに至る。本来の姿に戻り、成仏したといっていいほど安らかな最期だった。もっとも人から遠かったがゆえに、人間願望(アニマ)として救いを得ることができたと言えるだろう。
名前は自身の「バオ」という鳴き声から、ホルトにつけられたもの。ちなみに生前、動物園で飼われていた頃は「パオパオ」という名前だった。
パラノイドサーカス
キヨイ
人間を呪い殺す力を持ち、悪魔とも呼ばれる多角の山羊、『呪殺のバフォメット』の人間願望(アニマ)。
パラノイドサーカスのリーダー的存在。先代明神も畏怖するほどの恐るべき力の持ち主。
外見は穏やかな雰囲気の美貌の青年。頭部に二本の角があり、黒い毛皮のコート帽子を身に着けている。英語混じりの妙な口調で話す。
ゴウメイ、コクテン、グレイとは生前からの仲間。彼らと自分自身を救うため、真霧を殺した際に能力の反動で死亡、パラノイドサーカス誕生のきっかけを作り、アニマとなった。
その出自から人間に対する憎悪は誰よりも深く、心から人間の根絶を望んでいる。そのために『無縁断世』姫乃の力をつけ狙った。
8ヵ月後の番外編においては、経緯は不明であるが仲間達と共にうたかた荘に住みついている。明神の誕生日パーティーの最中、明神に人間と自分達が共存するにはまだまだ課題があると発言する。しかし、明神の「もう少し付き合ってほしい」という言葉を聞き入れ、もうしばらく共存の道を模索することに同意したようだ。
元ネタは悪魔バフォメット
ゴウメイ
放電現象を起こす力を持つ、中国の伝説の生物・『雷猿(らいえん)』の人間願望(アニマ)。
外見は筋骨隆々とした大男。雷を操る起点である二本の触覚を頭部に持つ。
性格は荒々しく乱暴で、とにかく好戦的。事実パラノイドサーカスのメンバーの中で一番「喧嘩」が強いらしい。ただし戦えれば何でも良いというわけではなく、強者同士の真剣勝負に意義を感じ一対一の勝負を拘りとしている。
キヨイ、コクテン、グレイとは生前からの仲間。敵には容赦ないが、仲間思いな面もある。かつてコモンをパラノイドサーカスに勧誘したのは彼である。
コモンを倒した明神に目をつけ、うたかた荘との決闘・第二回戦で対決。小細工抜きの肉弾戦を繰り広げるが、『白虎の構え』を得た明神との一撃勝負に挑み、力尽きる。敗北を認めてトドメを刺すように促すも、後に控えた脱出作戦のためトバリを維持する触角を破壊されるのみにとどまる。放電能力を失ったため脱出戦の際には前線から離脱していたが、最後にはキヨイらとともに正宗の射撃を受け止めるなど、健在ぶりを見せた。
決戦から8ヵ月後の番外編では、経緯は不明であるが仲間達と共にうたかた荘に住みついている。アズミや明神とも打ち解けているようだ。
元ネタは西遊記孫悟空
グレイ
時間の流れを狂わせる力『クロックワーク』を持つ、西洋の伝説の生物『クロックラビット』の人間願望(アニマ)。
長髪に眼鏡をかけた男性の姿をしているが、頭部からウサギの耳が生えている(と言っても俗に言う"ウサ耳"スタイルではなく、ロップイヤーのように長い耳が髪とともに垂れ下がった状態である)。ウサギだけに聴力が高く、垂れ下がった耳を上げれば数10m離れた話し声でも聞き取ることができる。ちなみにキャベツより人参が好き。
キヨイ、ゴウメイ、コクテンとは生前からの仲間。とくにキヨイへの思いは忠誠ではなく「愛」であり、キヨイのためなら何をもいとわない。
計算高い性格で、敵の前では常に落ち着きを見せる。その冷静さからうたかた荘との決闘を取り仕切るが、じゃんけんに負けて後から合流してきたコクテンに出番を奪われている。その後の乱戦ではガクと対決、一計を案じられ逃亡を許した。
8ヵ月後の番外編では、経緯は不明であるが仲間達と共にうたかた荘に住みついている。理屈屋同士似たところがあるのか、ガクとコンビで事あるごとに騒動を起こし、うたかた荘の窓を割りつつもそれを認めないなど往生際の悪い一面も見られた。
元ネタはおそらく不思議の国のアリスの白ウサギ。
コクテン
蝙蝠、吸血蝙蝠・『皇帝コウモリ』の人間願望(アニマ)。パラノイドサーカスの紅一点。
頭部にコウモリの羽を生やした、巫女装束の少女の姿をしている。この羽根はちょっとした弱点らしく、白金にくすぐられた時には笑い泣き状態になりながら拒絶反応を示していた。
外見的にも精神的にも姫乃と同年配くらい。一見すると若く可愛らしいが、実際はかなり凶暴。無邪気な物言いの中に暴力的な言葉を含むことが多い。
敵であるうたかた荘メンバーに軽々しく話しかけたり、一緒に観戦したりと他のアニマより社交的に接してくる。単にマイペースなだけかもしれないが、戦略上の都合と、散っていったミズチの名誉のためもあり、うたかた荘メンバーにむやみに手を出すような真似はしなかった。
キヨイ、ゴウメイ、グレイとは生前からの仲間であり、キヨイに好意を持っている。お互いの恋心(?)を巡って姫乃と一戦やらかしたりもした。
死後、自分たちの亡骸が見せ物扱いされることに激怒し、異天空間を用いて黒鳴町、及び雉ノ葉邸を乗っ取る計画を企てたらしいが、その事件の顛末は不明である。
8ヵ月後の番外編では、経緯は不明であるが仲間達と共にうたかた荘に住みついている。キヨイに抱きついたり、雪乃をおばさん呼ばわりするなど奔放な性格は変わっていないようだ。
ミズチ
地中における気の流れ「龍脈」を乱す力を持つ、『水霊(ミズチ)』の人間願望(アニマ)。
外見はオールバックで三白眼の男性。一見ヘビらしい特徴は見られないが、体内に無数の黒い蛇を宿している。これは、彼が共生する『水霊』たちの集合体だからである。それゆえに真の意味での仲間意識や協調性というものが理解できず、強い結束を持つ他のメンバーたちが珍しくてたまらない。
冷酷・非情・陰険な性格で、目的達成のためならば手段を選ばない。その上狡猾でもあり、心理的な駆け引きはいやらしいほどに巧み。肉弾戦闘は好まないようだが、戦う時には短刀を愛用する。
うたかた荘メンバーとの決闘、第一回戦で澪と激突、持ち前の戦略で彼女を形勢不利に追い込むも、澪にその上を行かれ『血華美刃 鬼百合』に敗北。バラバラにされて胸部だけがかろうじて残るものの、再生不能・消滅寸前の状態となる。最期は自分らしく派手に消えたいとゴウメイに頼み、介錯の一撃によって完全消滅、リタイアとなる。
チーム内で唯一、真霧邸以来の仲間でないためか、他のメンバーとは折り合いが悪いように見えた。しかし、彼が消滅した後のグレイたちの言動を見るに、きちんと「同志」として認められてはいたようだ。
元ネタは伝説上の生物「(みずち)」からきていると思われる。

案内屋

明神冬悟
明神勇一郎
湟神澪
それぞれ「うたかた荘」を参照。
神吹白金(カンブキ シロガネ<プラチナ>)
案内屋。腰に巻いたライダーベルトの中に『の梵痕カのサン=スティグマ)』を持つ(?)。自称「世界を救うヒーロー(カ)のプラチナ」。
性格も容姿も派手そのもの。白髪(後ろ髪だけが黒い)の優男で、着崩したスーツとサングラス、梵字の書かれたライダーベルトを身に着けている。
幼少の頃に神吹銀一の元へ養子として預けられ、以降は銀一流スパルタ教育を受けたエリート案内屋。湟神澪、火神楽正宗とは修行時代からのいわば幼なじみである。澪に恋心を抱いていたようだが、彼女にはパシリ扱いされていた。
「世を忍ぶ仮の姿」はフツーのサラリーマン。髪を黒く染めた地味な外見で、異様なほど腰が低い。その処世術は師匠の教育と澪の暴力により培われたものらしい。
脱出作戦の要として、澪の要請でうたかた荘に駆けつける。明神対ゴウメイ戦の直後、ゴウメイのトバリ起雲蛮岩が解けると同時に乱入してきた。そのままコクテンと戦闘に入るが、目的はむしろ撹乱と陽動にあったようで、最後の詰めは正宗に託している。
コクテンにセクハラしたり、肝心のところは仲間頼りだったりとなかなか愉快なヒーロー像ではある。
8ヵ月後の番外編においても澪、正宗と行動を共にしている。性懲りもなくコクテンにちょっかいを出して逆襲を受けたりしていた。
火神楽正宗(ヒカグラ まさむね)
案内屋。『の梵痕(ラのサン=スティグマ)』を持つ。
タバコを咥え、右目に眼帯をつけている。髪の毛は、眼帯のない左側の一部だけが白い。ベストを着込んだスタイルは先代火神楽を髣髴させる。
幼い頃両親を戦争で失い、傭兵であった先代火神楽に拾われ案内屋として生きる事となった。白金とは修行を共にした親友であり、よき相談相手。白金の本心を当時から知っていた。
火の案内屋のわりに性格はクール。周囲が熱くなったり盛り上がったりしている中でもポーカーフェイスを崩さない。
脱出作戦の要として、澪に頼まれた白金にさらに頼まれてうたかた荘に駆けつける。火の梵術による狙撃でキヨイのトバリから明神を救った。
8ヵ月後の番外編においても澪、白金と行動を共にしている。パーティーの席では特大のクラッカーを打ち鳴らしてみせたり、それなりに楽しんでいた模様。
名前の由来はおそらく伊達政宗だと思われる。
湟神一兆(コウガミ いっちょう)
案内屋。澪の師匠で、育ての親。左胸に『の梵痕バのサン=スティグマ)』を持つ。全国の除霊師、案内屋と広くネットワークを持つ、霊能力者たちのリーダー的存在。
長い白髪と髭をたくわえた、小柄な和装の老人。外見に似合わずファンキーな性格をしており、スケベらしい。
17年前、先代明神とともに桶川雪乃と対面し、彼女の意志を確かめた。その後は雪乃を守るためパラノイドサーカスと戦う。ゴウメイとの一騎打ちに敗れたようだが、現在の生死は不明。
本名は神山一兆カミヤマ イッチョウ)。
火神楽・M・忠勝(ヒカグラ・マイク・ただかつ)
案内屋。正宗の師匠。右腕に『の梵痕ラのサン=スティグマ)』を持つ。
黒々とした口髭が特徴の渋い中年男性。サングラスと葉巻を愛用している。
14年前の戦いでは、長距離火力による狙撃で敵を追い込む役割を果たしていた。軽い人間が嫌いで、軽口を叩く先代明神に説教する場面も。現在の生死は不明。
本名は不明。海外で傭兵の経験があり、「バレットイーグル」という名の非合法バーのマスターをしていたという。
ネーミングの由来は本多忠勝だろうか。
神吹銀一(カンブキ ぎんいち)
案内屋。プラチナの師匠。左の掌に『の梵痕カのサン=スティグマ)』を持つ。「処刑者銀一」と恐れられる使い手。
端正な顔に眼鏡をかけ、スーツを着こなす。非常にクールな印象の男性。
冷静かつ高い分析力を持ち、14年前の戦いにおいて、案内屋の中に裏切り者がいる可能性を指摘した。また、アニマたちの背後にいる統率者の存在も予想していた。現在の生死は不明。
本名、松倉銀一マツクラ ギンイチ)。仮の姿は高校教師で、担当は世界史。弟子や生徒に厳しすぎる一面もあり、受けは悪かったらしい。
壊神幽響(エガミ ゆうこう)
案内屋。おそらく『の梵痕アのサン=スティグマ)』の持ち主。トランプを所持していたが、能力と関係があるかは不明。
壮年の男性で、額の左側に銃痕のようなものが見受けられる。彼の人となりや、詳しい経歴は明かされていない。
14年前の戦いにおける「裏切り者」。現在は仮面をかぶり、人間たちに戦いを挑んでいる。陰魄を率いる幽灯大師観照と同一人物である。

生者

桶川雪乃(おけがわ ゆきの)
姫乃の母親。『無縁断世』。当然、「みえるひと」だったのだろう。
若い頃から陰魄に狙われ続けてきたが、身ごもっていた子供(姫乃)のために『無縁断世』の宿命に従うことを拒否。その強い意志に賛同した先代明神や、その他梵痕(サン=スティグマ)持ちの案内屋に守られながら姫乃を育てた。しかし、最後はパラノイドサーカスによって強奪されてしまう。
長い間行方不明であり、姫乃は死んだと思っていたが、肉体とが分かれた特殊な状態でありながらも生きていて、『倚門島イモントウ)』という場所に囚われていた。
パラノイドサーカスとの決戦を経て、無事奪還され、番外編においては姫乃たちと共にうたかた荘にて暮らす。怒ると怖い。
先代明神と親しかったためか、現在の明神のことは「冬悟さん」と名前で呼ぶ。ちなみに明神は彼女のことを「お母さん」と呼んで敬っていた。
十味源五郎(とみ げんごろう)
生者。通称「トミのじーさん」。元刑事老人で、霊を見ることができる。開襟シャツとハゲ頭がトレードマーク。
明神とは長い付き合いがあり、よく仕事を持ちかけにうたかた荘を訪れる。しかしその報酬は大体払わない。
そもそも現在の明神と先代明神を出会わせたのが彼であり、現役当時、ケンカを繰り返し頻繁に補導されていた現明神(冬悟)を先代の明神に預けた。先代の死に際し「自分が明神を継ぐ」という冬悟の決意表明を聞いたのも彼だった。
現在でも「雉ノ葉月武誘拐事件」を追い続けており、事件の行き着く先であるガクの暴走を危惧している。
現役時代の相棒・真路川まじかわ)刑事とは今も付き合いがある模様。
初代明神、姫乃と並んで青マル掲載時から登場している人物。
轟宗之助(とどろき そうのすけ)
雉ノ葉家の運転手。仕事の外でも車好きな青年であり、「轟」という名字と引っ掛けて「自分から『』をとったらただの『 宗之助』だ」という冗談をよく口にしていた。
ガクと出会うまでのツキタケの唯一の理解者でもあったはずなのだが、彼こそが「雉ノ葉月武誘拐事件」の首謀者、黒幕である。15年前、借金苦により一家心中を図った家族の生き残りであるというが……。
団地の人間まるまる全てを、しかも現在では霊となったガクを認識できるほどに支配するという、人間業とは思えぬ力を持っているらしい。彼の心情、正体、すべてが謎に包まれたままである。
真霧(まぎり)
珍種動物のコレクターで、動物を実験道具としか見ていない異常者。闇のルートから(生前のキヨイ・ゴウメイ・コクテン・グレイ)を入手し、実験を行っていた。彼の虐待によって衰弱し、死を迎えようとしていた仲間たちを救うため、キヨイによって殺害される。
雉ノ葉豪造(きじのは ごうぞう)
ツキタケの父か先祖と思われる、真霧のコレクター仲間。真霧の殺害後、パラノイドサーカスの死骸は彼が引き取った。
その亡骸を貴重な資料として扱ったことがコクテンの怒りに触れ、屋敷もろとも彼女のトバリに狙われることとなる。この事件の顛末は不明。

用語・設定

用語

案内屋(あんないや)
霊に関するエキスパート。陰魄退治や陽魂の保護などを行う(それらの仕事は内容によって仏滅赤口といった六曜を基にした名前で呼ばれる)。梵術と呼ばれる術を使う。名称の由来は、昔案内屋に助けてもらった人々が「安寧や」と口にしたからだと言われる。
一般に名跡襲名制に似た襲名を行い、各自自分の師匠の名跡(姓)と本名(名)を合成した名前を名乗っている。案内屋の名跡である姓には「神」という字が含まれ、そのまま案内屋の専門属性(明神=空、神吹=風、火神楽=火、湟神=水、壊神=地(?))を表す。
梵術
案内屋が使う対霊戦闘術。霊に触れられる程の高い霊力を持った者しか使えない。世を構成する”五大”「(キャ)・(カ)・(ラ)・(バ)・(ア)の力を利用し、体内の生命エネルギー)を術に昇華させる。各案内屋にはそれぞれ得意とする専門属性があるが、訓練次第では他の属性の梵術を使用することも可能。ただし、専門以外の梵術の効果などは専門としている者よりも明らかに劣る。
梵痕(サン=スティグマ)
五大の属性毎に存在する、剄の操作技術を飛躍的に向上させる「高出力回路」。案内屋の中でも一部の者だけが持ち、陰魄たちには脅威として認識されている。案内屋の体表面にそれぞれの属性に対応した梵字として表れるが、そのサイズがそのまま所有者の潜在能力の大きさを表している(明神の『空の梵痕(キャのサン=スティグマ)』は右腕全体を覆うほど大きい)。また、慣れないうちには肉体に対しある程度の反動を伴う。
尚、梵痕を持たない案内屋にとって(または専門属性以外の梵術による)剄の操作は非常に困難なものであるため、補助道具として黄布(梵字の書かれた黄色い布)などを使うことがある。
本作の設定では、霊は陽魂と陰魄とに大別される。未練のあるために現世に留まったが霊であり、未練がなくなると成仏する。生者からは見ることも触ることもできないが、霊からは生者を見ることができる。霊が生者に触ることはできない。薄い壁ならば抜けられる者も存在する。生まれつき霊能力が非常に高い生者は霊を見、触ることができる。また生者が生死の狭間に立ち死の世界に近づいたとき、その者の持つ霊感が高ければ霊が見えるようになる。
陽魂(ようこん)
通常の霊。生前人間であったとは限らず、また単体から形成されているとも限らない(例として地蟲のような小動物の霊の集合体など)。全体的に弱いが故に陰魄に虐げられることも多い。
陰魄(いんはく)
なんらかのの感情を伴った霊。俗に言う悪霊。陽魂同様、生前人間であったとも単体から形成されているとも限らず、さらに作られた陰魄というものも存在する(例えばカナゴモリなど)。
陽魂と同じように生者からは触れられないが、陰魄が触りたいと思えば陰魄から生者に触ることができる。そのため陰魄による被害は陽魂のみならず生者に対しても及ぶ。生者が有し案内屋が利用するエネルギーである剄に対して、魄と呼ばれるエネルギーを持ち、稀にそのエネルギーを利用した術を使う者もいる。
人間願望(アニマ)
人間への憧れ、妬みから力を得た動物の魂からなる陰魄。「なぜ人間ではなく動物として生まれたのか」といった感情から陰魄になり、人間に替わって世の中を支配することを望む。人間社会の飛躍的な発展によって、近年になって現れ始めた。個々の未練、目的、個性などさまざまな要因で集団行動を苦手としてきた従来の陰魄と異なり、共通の理想を持つがゆえに力と知恵をつけるほど集団・組織的に動くようになっていった。
人間のように二足歩行が出来、人語を解する(喋れないものはいる)。極めて人間に近いものから動物に近い容姿を持つものまでいるが、共通して動物的な部分が残っている。語源はラテン語のアニマ
パラノイドサーカス
姫乃を連れ去るために現れた、観照配下の実働部隊。桶川雪乃を強奪し、彼女の力によって莫大な力を得た陰魄グループ。その当時は案内屋軍団と熾烈な争奪戦を繰り広げた。コモンが所属していたのもその頃。
妖のアニマのみ(キヨイゴウメイグレイコクテンミズチ)で構成されている。
名前はキヨイによって名付けられた。
(あやかし)
「生命ある時から高い霊威を持つ」動物のこと。案内屋などの霊能力者を「人の中の異端」とすれば、「獣の中の異端」とでも呼ぶべき存在。何かしらの身体特徴や特殊能力を持っており、裏の世界では人間たちに高値で取引されている。その力は死してアニマとなっても変わらない。
無縁断世(むえんだんせ)
突然変異の霊能力者。数世代に一人しか現れることはない。霊魂の力を増幅し、創り変える力を持つ。
その力の危険さゆえに自害するか、「牢」(活岩の鯨と呼ばれる巨大な陽仙の魂内)に入って一生を送るかの選択をせねばならない、過酷な宿命を負う。
その霊力は16歳を境に発現すると言われている。

梵術・技

案内屋の梵術
基本的に案内屋の能力は一種類特化型で、それぞれ自分の性質に適した種類の術を習得・鍛錬し使用するが、必要に応じて他の種類の術を一部習得する場合もある模様。
空(キャ)の梵術
発剄」。体外へ剄を放出する技術。自身の体内に剄を巡らせることで身体能力を極限まで高めることもでき、格闘戦を専門とする。この原理による高速移動術『フェイ)』は、空以外の案内屋も修行する。使用者は明神(冬悟)と、師匠である先代明神。
手に気を練り込み溜め、そのまま掌からエネルギーとして噴出する『剄蘭ケイラン)』、霊を内部から1つの形として地上に留まれぬ程に分解する『剄櫻ケイオウ)』、剄をまとわせた手刀を振り下ろし、霊を切断する『剄楓ケイフウ)』などが基本の技。空中に放出した自身の剄をコントロールし、球状に変化、外側から内側へ凝縮して攻撃する『剄櫻 円想虚“空”』という進化技もある。
また、明神は作中において、打撃のインパクトの瞬間に最大まで溜めた剄の力を爆発させる『剄花繚乱 “闇螢”ケイカリョウラン ヤミボタル)』という独自の必殺技を編み出した。
剄を体の一部(明神の場合、梵痕のある右腕)のみに集中させる『白虎の構え』という型も存在する。
水(バ)の梵術
剄伝導」。様々な物質へ剄を伝達・操作する技術。傷を癒したり結界を張ったりすることができる。作中での使用者は湟神澪。
主な技は、対象に刀を突き刺すことで体内に剄を浸透させ、傷を癒す『活剄 血刃鬼百合カッケイ ケツジンオニユリ)』、周囲に2日以上維持可能な直方体の結界を張る『水剄郭 浄浄沙房スイケイカク ジョウジョウサボウ)』、自身を包み込む水の結界を張って防御する『守剄 瞬水陣シュケイ シュンスイジン)』、刀による剄伝導で相手を内部から一気に破壊する必殺技『血華美刃 鬼百合ケッカビジン オニユリ)』など。
一度明神が水の梵術による回復を試みていたことから、回復術の一部に関しては、他の案内屋も習得する場合があるようだ。
風(カ)の梵術
身剄融合」。自分の肉体を周囲の大気やエネルギーに変化・同化させることが可能。作中での使用者は神吹白金、および師匠である神吹銀一。
作中に登場した技は、自身の体をへと変化させ、広範囲を覆って撹乱する『天使の一服スモーキーエンジェル)』、その霧と一体化する事で、5人の分身を作り出す『天使の五重奏エンジェルクインテット)』。この術で作り出した分身は、白金曰く「全員本物」。
どちらの技も、ネーミング等は白金のオリジナルだと思われる。とくに『天使の五重奏』の5人の分身はそれぞれにコードネームがつけられており、白金ブルー、ピンク、イエローが確認されている。おそらく本人がレッド、残る一人はグリーンかブラックなのだろう。
白金の場合、腰のライダーベルトを叩くことで術が発動するようになっている。
火(ラ)の梵術
心現放射」。剄をイメージ通りに発現し、そのエネルギーを遠距離へ射出する技術。作中での使用者は火神楽正宗、および師匠である火神楽・M・忠勝。彼らの場合は剄を銃火器の形で発現し、狙撃に用いていた。
地(ア)の梵術
作中に使用者が登場していないため、詳細は不明。
陽魂の技
ガクの技
すべてが具現化したハンマーによる攻撃。木槌で瞬時に殴りかかる『高回転フルスロットル)』、木槌を弾丸の様に変化させ高速で振り抜く『900mmラブ・パラベラム』という必殺技がある。
また、焔狐を取り込んだことにより、その力を利用した『灼熱の恋煩い』という技も使えるようになった。焔狐が放った炎をハンマーで叩き、相手に撃ち込む技である。
マジカル・オーロラ・プリティ・グレーター・スイスマウンテンドッグ・明神殺し』という「ド適当かつオレ限定の必殺技(明神談)」を放ったこともあるが、おそらくただの思いつきである。
エージ、ツキタケの技
エージは野球に関係した技を使う。エネルギー野球ボール変化させ対象に投げ付ける『ゴーストバスター・ストライク』、それを大量に放つ『GBSゴーストバスター・ストライクマシンガン』など。
ツキタケは首に巻いたマフラーを伸縮自在に操ることができる。長く伸ばした『ウールサーキット』で空中を滑走することも可能。
エージが打ち出すの形の高エネルギーをツキタケが捌き、さらにそれを打ち返す『ゴーストカットスライサー』が二人の必殺技。
地蟲の技
一族全員が、マンホールの蓋を穴が開いた様に一瞬消失させ、また元に戻す『鉄奇開々テッキカイカイ)』という技を持つが、消費が激しく1日1回しか使えない。
複数の地蟲達で地蟲の唄を歌う事によりエネルギー弾(のようなもの)を発動させる『地蟲陣砕々チコジンサイサイ)』、複数の地蟲の魂を対象に注ぎこみ対象の魂を活性化させる『地氣衡天チキショウテン)』という切り札も持つ。
陰魄の技
ハセやアニマのような一部の陰魄は、魂殻変化を行うことができる。体の一部または全体を(主に生前の姿に近いフォルムに)変化させることで、能力を最大限に発揮する。
パラノイドサーカスの面々は異天空間トバリ)と言う技も使用可能。外部と隔絶された特殊な霊的空間内に相手を追い込み、戦闘を有利に進めることができる。
ハセの技
先代明神の魂を吸収した結果、梵術に似た技を使えるようになっている。「陽魂は転帰 陰魄は地帰 に属せぬ者よ 大地へ還れ」という、案内屋の謳い文句にも通じる呪文を唱える場面もあった。
使用したのは、己の魂の一部を相手に注ぎ、破裂させる『魄櫻(ハクオウ)』や『魄蘭(ハクラン)』。また、魂殻変化ではトカゲのような姿に変身する。
コモンの技
を操る。同族である焔狐の霊を複数操る『炎陣・狩猟結界エンジン・ハンティングワールド)』や、『紅炎プロミネンス)』、『炎陣「大喰いラコン」』、率いるすべての焔狐を解き放つ『大炎陣』など数々の技を使う。また魂殻変化【炎陣】で下半身を狐に変化させることができる。
キヌマの技
を操り、鉄壁の防御力を誇る。主な技は、自身を中心に球状の甲羅で覆う『水陣 “硬断甲”すいじんこうだんこう)』、水をオーラで包み込み水球として6つ同時に投げ付ける『水陣 “六渦旋”すいじんろっかせん)』、“六渦旋”の全ての水球を集結させた巨大な水球で攻撃する『水陣 “大渦旋”すいじんだいかせん)』。魂殻変化【水陣】で甲羅が大きくなる。
ホルトの技
を操る。主な技は、手から突風を放つ『飄風ヒョウ)』、高速移動の『疾風アクセル)』、『疾風』の高速移動から放たれる抜き手攻撃『太刀風タチ)』、背中に翼を生やし、それによって周囲の空気を集め強大な風を作りだせる魂殻変化【風陣】、魂殻変化【超高速フルアクセル)】を行った状態で、大量の風による高速スピードを得、敵を切り裂く『瞬渦太刀風シュンカタチ)』。
ゴウメイの技
腕を雷化させた状態で殴り付ける『雷角(らいかく)』、雷化させた腕を振るう事で前方に黒いエネルギー(電撃)を発生させる『雷角・毘沙門』、両手で相手に触れた状態で強烈な雷を放つ『轟雷掌ゴウライショウ)』など強力な攻撃技を持つ。
また、10年間もの間修行を重ねた成果で、トバリを使っていても魂殻変化【凄天太聖セイテンタイセイ)】を行うことができる。魂殻変化では全身が雷化した状態となるため、体毛を毟り取り、それに息を吹き掛けて飛ばす『雷針ライシン)』という技も使える。
異天空間(トバリ)は雷雲の結界を張る『吼雷招ハウリングストーム)』、その雷雲を変化させ、円形闘技場を作り出す『起雲蛮岩バーバリアンロックス)』。
ミズチの技
誘爆能力を持つ蛇を操り、大地の龍脈を狂わす事で大爆発を起こす『龍脈之蛇リュウミャクノヘビ)』が主な技。一匹一匹の殺傷力は高くないが、持ち前の戦略で相手を追い詰めることに真価を発揮する。
異天空間(トバリ)は、自身を中心に黒い雨を降らせ、円形状の結界を張る『嘆きの雨』。
キヨイの技
自身の故郷のイメージたる、大量の墓標が並んだ荒野のごとき異天空間(トバリ)『グレイブバースディ』を操る。
相手の足下から黒いのような角で貫き、何年もかけて精神エネルギーを吸い取ってしまう。しかもキヨイより魂の小さい者は抗うことができない。
人間世界そのものを滅ぼす可能性すらある恐るべき能力だが、閉鎖空間としては穴だらけ、有効範囲も見た目より狭いなど、いまだ不完全でもある。姫乃に眠る『無縁断世』の力と、かつて得た雪乃のそれを合わせて完全なものになるという。
コクテンの技
異天空間(トバリ)『闇の女王』を操る。血液を吸う事で人間の心を奪い、音波で行動を操る能力。範囲は直系1kmであり閉鎖能力は無い。
コミックスにて設定のみ明かされた能力で、本編中では使用されていない。

単行本

  1. 2005年12月2日発行 ISBN 4088738985
    イルカはしゃべらない/ 第一譚~第七譚(週刊少年ジャンプ・2005年33号~40号)
  2. 2006年2月3日発行 ISBN 4088740211
    道標/ 第八譚~第十六譚(週刊少年ジャンプ・2005年41号~49号)
  3. 2006年4月4日発行 ISBN 4088740440
    人間願望(アニマ) / 第十七譚~第二十五譚(週刊少年ジャンプ2005年50号~2006年8号)
  4. 2006年7月8日発行 ISBN 4088741323
    犬塚我区/ 第二十六譚~第三十四譚(週刊少年ジャンプ2006年9号~17号)
  5. 2006年9月4日発行 ISBN 4088742532
    選択 /第三十五譚~第四十三譚・番外編「ダベるひと」(週刊少年ジャンプ2006年18号~27号・赤マルジャンプ6/10号)
  6. 2006年11月2日発行 ISBN 4088742753
    籠城・うたかた荘/第四十四譚~第五十譚・読切「みえるひと」(週刊少年ジャンプ2006年28号~34号・青マルジャンプH16.4/1増刊号)
  7. 2007年1月4日発行 ISBN 4088743028 
    みんなで/第五十一譚~最終譚・番外編「NEVER END」・読切「みえるひと」(週刊少年ジャンプ2006年35号~42号・週刊少年ジャンプH16.45号)
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