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2022年9月16日 (金) 08:41時点における版
ピザあるいはピッツァ[注 1](伊: pizza[注 2][注 3][注 4])は、小麦粉、水、塩、イーストをこねた後に発酵させて膨張剤を含ませて作った生地を薄く円形に伸ばし、その上にトマト、チーズとその他に様々な具(アンチョビ、マッシュルーム、タマネギ、オリーブ、野菜、肉類、ハムなど)を乗せ、オーブンや専用の竃などで焼いたイタリア発祥の料理、食品である。基本的に、ピザはイタリア風・アメリカ風の二種類があり、イタリア風ピザをピッツァといい、アメリカ風ピザをピザということもある。
小サイズのものは、区別してピッツェッタ(伊: pizzetta)と呼ばれることもある。
概要
イタリアで生まれた。現在でもイタリアが本場中の本場であるが、アメリカでアメリカ風に変化したものも生まれた。それも世界中に伝播し、現在では世界的に広く食べられている料理である。
おいしいピッツァを生地から焼くには、大きな竈やオーブンが必要だったので、ピザ専門店やレストランなどで提供され、現在でもイタリアではそのタイプのピッツァが中心である[要出典]。一方、アメリカ合衆国では、1960年代から電話一本でピザを配達する配達方式のチェーン店が流行し、そのアメリカ資本の大規模ピザチェーン店がアメリカナイズされている傾向が強い国々への進出に成功し、世界の広範囲で親しまれるようになった。また近年では、家庭向けの冷凍食品およびチルド食品化されたピザもスーパーマーケットなどで販売されるようになった。ソース・具材も載った状態で販売されており、家庭の電気オーブン(オーブントースター)でも簡単に作れるようになったので、自宅にいながらにして気軽に安価に食べることができる料理となった。
本場イタリアでは「ピッツァ生地の発酵は24時間以上でなければならない」と法規的にも定められている。それに対してアメリカの場合はそういった法的規定が無く、ごく短時間で焼成する傾向が強いので、生地の発酵段階からしてすでにイタリアのピッツァとアメリカ風のピザは異なる。生地の質感がイタリアのものはパリッとした食感が楽しめる傾向があるのに対してアメリカ風のものはややボテッとした食感の傾向がある。さらに、その後の具材の選択がイタリアのものとアメリカ風では大きく異なり、アメリカ風のものは具材の多さを売り物にする傾向があり、さらに焼き方も異なるので、それらの要素が重層的に合わさって、結果として本場イタリアのピッツァとアメリカ風のピザは、別物である(次節以下でも、可能な場合、イタリアのものとアメリカ風のものは区別して説明する)。
数多くのレシピがある。トマトソース、ニンニク、オリーブオイルだけを使う(他に具材を一切のせない)「マリナーラ」(it:Pizza alla marinara)というとてもシンプルなピッツァから、トマトソースの上に具材としてモッツァレラチーズとバジルの葉を載せたマルゲリータ、さらにアメリカのチェーン店のもので具が(極端なまでに)盛りだくさんな状態になったピザなどまで、非常に多種類のピッツァ(ピザ)がある。もともとイタリア起源の料理なので、ソースを塗る場合は、トマトソースが基本ではある。アメリカ系の大規模チェーン店同士の激しい競争によって、さまざまな具材を載せたピザが商品開発された結果、人々の多様な好みに応えるようになっている。なかには地域にある産品を取り込んでご当地グルメ的変化を見せるものもある。
オーブンと材料があれば、家庭で、小麦粉から生地をつくり発酵させる段階からトマトソースを塗り具をのせて焼くところまで、全部自分で作ることもできる[1]。近年ではスーパーで(ピッツァの手作り用の)トマトソースも販売されている。
日本では、いくつかの経路で入って広まってきた経緯があり、イタリア風のピッツァとアメリカ風のピザが併存している。1946年には日本に住んだシチリア人がピザを提供する店を宝塚市に開店し、その近所の人々は本格的なイタリアのピッツアを食べられた。1954年には元進駐軍のイタリア系アメリカ人が東京・六本木にピッツェリアを開店。1970年代以降にはアメリカ系の「シェーキーズ」というピザ・レストランが日本の都市圏に出店して、アメリカ風のピザも親しまれるようになった。1980年代後半より始まったバブル景気の最中に起きたイタリア料理ブームで、あらためて本場イタリア風のピッツァのおいしさも、広く知られるようになっていった。その一方で、アメリカの宅配ピザチェーンの大手も順次日本に進出展開し、各家庭の郵便受けに投げ込まれるキャンペーンのチラシやテレビで流されるCMを見て注文する人も多く、アメリカ風のピザに親しむ人がさらに増えた。
歴史
ピザの定義や語源は曖昧であるが、イタリアにはフォカッチャがあり丸パンに具材を乗せるところから、ピザの原型とされている。
フォカッチャが作られる前にも、エジプトには円盤状のパンに具材を乗せて焼いた物が現ピザの調理法と酷似していることから、原型はエジプトからイタリアに伝来していると言う説もある。
現在「ピッツァ」と呼ばれる料理が誕生したのはイタリアのナポリである。ナポリ第二大学の栄養学教授カルロ・マルゴーニによれば、初めて薄くのばしたパン生地にトマトソースを載せて焼いたピザが作られたのは1760年頃だという。1803年には初めてピッツェリアが創業した[2]。
イタリア系移民がアメリカ合衆国にピザを導入したのは19世紀末である。1905年にはニューヨークのリトル・イタリーに米国初のピッツェリアが創業した。第二次世界大戦後にはイタリア系米国人以外にも普及した。ピザは米国で独自の発展を遂げ、今日ではホットドッグやハンバーガーに並ぶアメリカの国民食となっている。
2017年12月、イタリア南部のナポリに伝わるピザ職人「ピッツァイオーリ(pizzaioli)」の技が、ユネスコ無形文化遺産に登録された[3]。
世界的に広まった経緯
この節のほとんどまたは全てが唯一の出典にのみ基づいています。 (2022年7月) |
1945年時点ではアメリカ人のほとんどはピザという名で呼ばれる食べ物を全然知らなかった[4]。第二次世界大戦でイタリアに駐留することになったアメリカの兵士たちがアメリカに帰ってからアメリカにピザが広まった、とする説明が、Ed Levine著の “Pizza: A Slice of Heaven.”という印刷された本に書かれているのだが[4]、数人の兵士がイタリアでピザを食べてアメリカでも食べようと思った可能性もありはするが、当時のイタリアはファシストの政府の誤った政府運営が原因で深刻な食糧危機に陥っていたので、ほとんどのアメリカの兵士たちはイタリアの食糧不足のせいで駐留中にピザには出会わなかった可能性が高い[4]。したがって、アメリカで現在のようにピザが広まったことの原因の説明としては、アメリカ兵のイタリア駐留を持ち出すのは不適切である可能性が高い[4]。
これほどまでに(アメリカや世界各地で)ピザが広まることになった原因として挙げるのにもう少し良さそうな説は、イタリアからの移民の多さである[4]。1870年から1970年にかけて2600万人よりも多くのイタリア人が仕事を求めてヨーロッパ諸国やアメリカやそれ以外の国に向けて出国した[4]。en:Encyclopedia Britannicaは「イタリア人移民がとても多かったことで、ピザはポピュラーな食べ物となった」と説明している[4]。たしかに、アメリカのニューヨークでも、アルゼンチンのブエノスアイレスでも、イタリアからの移民がイタリアン・レストランを開店して、さまざまなイタリア料理を提供した、という事実がある[4]。だが、それらのイタリア料理店のおかげで他のイタリア料理に関してはアメリカ人にも知られるようになったのに、ことピザに関しては、不思議なことに1950年代でもほとんどのアメリカ人が知らなかった[4]。
つまり、ピザは今ではグローバルなものになっているのにもかかわらず、それがどのようなメカニズムで広まったかについては、あまり正しく理解されていないのである[4]。1950年代から1980年代にかけてピザが世界的に広まったのは事実なのであるが、そこにはいくつかの要因が関係している[4]、とワシントン・ポストの記事の筆者は分析している(イタリア移民の世界的な多さだけを要因として挙げるべきではない[4]。たとえば当時、米国北東部で出店ブームとなったピザ店のおよそ半分はギリシア系のアメリカ人だった[4])。
ピザ店というのは、開店する時の必要な開店資金が比較的少ないということが、他の選択肢もある中からピザ店を選んで開店することにつながった、と言えるとし[4]、また、テクノロジーの変化がピザの調理・配達に劇的な変化をもたらしたこともピザの普及に影響した、と指摘する。たとえば回転式の棚をそなえた金属製のオーブンの登場、あらかじめシュレッド(細切りに)されたチーズやトッピングの登場、加工済みの配達用ボックスの登場、自動車の一層の普及(モータリゼーション)などの要因が、より多くの消費者たち、たとえば都市の外に住む消費者たちや、大学のキャンパスにいる人々や、軍の基地にいる人々(軍関係者)にまで、ピザを配達するということにつながった[4]、とワシントン・ポストの記事の筆者は分析している。
作り方
一般的な作り方。
- 生地づくり
まず作業台の上に、材料(強力粉、塩、イースト)で小さな山をつくる。材料の小山のまんなかに(火山の噴火口のような台まで見える穴)『くぼみ』をつくる。そのくぼみや穴に水を入れて、水と周囲の材料を混ぜて、ひとかたまりにまとめ、まとまったら、それをこね、その後に発酵させ、生地(ピザクラスト)をつくる。
イタリアのピザ店では生地を24時間以上、じっくりと熟成させる。アメリカ風の店では、作業効率重視で、それほど時間をかけていない可能性がある。
その生地を薄く円形に成形。
成形された生地の上にトマトソースを薄く塗る。
- 具材載せ
基本的にオリーブオイルを使う。具材の選択はイタリア流とアメリカ風でやや異なる。本場イタリア流では、人びとは生地のパリッとした焼き加減、ピッツァ生地自体の旨み(うまみ)を楽しむので、具は少ないシンプルなものが好まれる傾向にある。基本はトマトソースとチーズなど。ただし、トマトソースを使わないピザや、チーズを使わないピザもある。トマトソースを使わないものをピッツァ・ビアンカ(白いピッツァの意)と言う。
アメリカ風のピザにするならば(トマトソースの上に)肉やシーフードや野菜などの具をたっぷりと載せる。アメリカ風はマヨネーズも多用する。
- 焼き
窯やオーブンで焼く。大きな窯を用いて焼く場合には、ピザピールという道具を用いて出し入れを行う。 本場イタリアのピッツァで薄手に仕上げてあるものを、大きなピッツァ専用窯で焼く場合で窯の内部温度を400度ほどにしている場合、わずか1分ほどで焼きあがる。生地に火が通れば(チーズを載せる場合はチーズに軽い焦げ目がつけば)出来上がる。本場イタリアのピッツァ窯は窯内部で薪を燃やして温度を上げるので、ピッツァがかすかに燻味(くんみ。燻製したような香り)をまとう、という効果もある。
アメリカ風のピザチェーン店の窯では温度設定がもっと低く、もっと時間がかかる。スーパーで販売されている冷凍食品は、家庭の電気式オーブントースターで焼く場合、5分~10分程度と、時間が設定される。
また、オーブンで生地を焼く代わりに、油で揚げると揚げピザとなる。イタリアやスコットランドのものがよく知られている。
- また、揚げピザ以外には、カルツォーネなどが知られている。
食べ方
本場イタリアでは1枚が1人前とされ、ナイフとフォークを使って食べる。ナポリではソースのかかった部分だけを切り取って食べ、「イル・コルニチョーネ」(Il Cornicione、「大きな額」)と呼ばれる縁は残す[5](日清製粉のナポリピッツァの基礎知識では、残さないとしている)。しかし歩きながらピザを食べるときは、上面を内側にして二つに折って手で食べることもあり、この食べ方を「ア・リブレット」(a libretto、「本のように」)と呼ぶ。
アメリカではナイフとフォークを使うよりも、大型のものをピザカッターなどを使って放射状あるいは碁盤目状に等分し、一切れずつ手でつまんで食べる方が一般的である。また薬味として用いられる香辛料は、イタリアでは唐辛子やにんにくを漬け込んだオリーブ油、アメリカでは乾燥した唐辛子を砕いたクラッシュト・ペッパー、日本ではタバスコ・ソースがよく用いられる。アメリカでは粉末のパルメザンチーズや乾燥オレガノをふりかけることもある。
一般的なピザの具材
- トマトソース
- チーズ - モッツァレッラやゴーダチーズを用いる場合が多い。各種チーズをピザに適した配合に混ぜたピザ用チーズも市販されている。
- ホワイトソース
- マヨネーズ - 日本で誕生した味付けである。[独自研究?]
- 野菜
- 肉類、魚介類
※デザートにするピザの場合は、トマトソースを使用せず、具材に果物(オレンジ、キウイフルーツ等)を用い、蜂蜜などをかける。生地にクッキー生地を用いたり、ピザ用のチーズの代わりに甘くしたクリームチーズを伸ばすこともある。
各国の異類
イタリアのピッツァ
イタリアは地方ごとに異なった食文化を持ち、ピッツァの製法、形状、食事としての位置付けも地方ごとに異なる。イタリアのピッツァとはどのようなものであるのかを限定して定義することはできないが、リストランテ格の店の料理ではないことはイタリア全土に共通である。
但し特定のピッツァにおいては、その名称及び伝統的材料と製造方法が欧州議会やイタリア議会によって制定された法による規則や規定、地域のピッツァ職人協会の規約などによって保護されており、それらの法や規約で定められた定義を満たすもののみがその特定の名称を名乗ることが出来る[6][7][8]。
ラウンドピッツァ(Pizza tonda)
ナポリピッツァに代表される最も一般的に見かける円形のもの。
イタリアでは、専用の窯(かま)が必要なことから普通の料理店では作られず、ピッツェリアで供される。同様に一般家庭で作られることもほとんど無いため、ナポリ風ピッツァの謳い文句として「ナポリのマンマの味」というのは成立しえない(カルツォーネは家庭でも作られることは珍しくない)。
一品でも様々な食材を載せバリエーションも豊かで、栄養バランスがいい[9]ことから軽食として夜食に食べられることが多く、同国内ではスローフードとしても親しまれている[10]。
なお、これとは別にイタリア内でも簡便に本格的なピッツァを求める向きもあり、2009年には盛り付け済みの冷凍ものを電子レンジで温めるのではなく、自動で生地を作るところから入り、これにトマトペーストを塗って具をトッピングした上で内蔵されたオーブンで焼くピッツァの自動販売機が設置されたが、これにはイタリア国内で賛否両論を招いている[11]。
ピッツァ・アル・タッリョ(Pizza al taglio)
ローマ以北に多く見られる切り売り又は計り売りのピッツァ。長方形の天パンに生地を敷き具材を散りばめてオーブンで焼いたもの。予め縦横に切り分けてあったり、あるいは注文に応じて希望の大きさに切り取って、一切れ当たり又は目方当たりの価格で売られる。学校前、バス停前、商店街、パン屋の一角など至る場所に見られ、気軽なファストフードとして利用されている。店頭には通常複数種類並んでおり、価格も場所によっては50セントからと安価であるため、2種1枚ずつ(例:キノコと生ハム、サラミと4チーズ等)買って具材が内側になるよう重ねて食べるのが一般的である。天パンごと保温されるショーケースに入っていたり、冷めたものを注文ごとにオーブンで暖め直したり、冷める間もなく次から次へと焼き上がってきたり、提供のされ方は店によって様々である。またカウンターやスツールを用意し飲み物も併売して店内でも食べられる店、持ち帰り用食べ歩き用に売るだけの店と形態も様々である。これら切り売り計り売りの店も、注文してから焼きテーブル席に着いてナイフとフォークで食べる店と同じくピッツェリアと呼ばれる。
地方による分類
ピッツァはイタリア各地で味付けや生地に差がある。
- ナポリピッツァ
- ピッツァ発祥の地と言われるナポリのピッツァは、最も伝統あるピッツァである。材料や製造方法が「真のナポリピッツァ協会」により定められている。生地は直径35cm以下で厚さが4mm、縁が1〜2cm、マルゲリータならチーズやトマトの産地が限定されている。トッピングはマルゲリータとマリナーラの2種類に限られている。
- ミラノピッツァ
- ナポリピッツァに比べ、薄く大きいのが特徴。また、トッピングは様々な種類がある。生地は直径40cmほどあり、厚さは縁でも5mm以下であることが多く、イタリアのピッツァの中で最も薄い。ナポリで発祥したピッツァが産業とファッションの中心であるミラノに移り、素早く火の通る厚さで、そしてお洒落に変化したとも言われている。
- トリノピッツァ
- it:Pizza al tegamino
具材による分類
※店ごとに名前や具材が異なることが多いが、代表的なものは次のとおり。
- マルゲリータ(Margherita)
- バジリコ、モッツァレッラ、トマトソース。
- マリナーラ(Marinara)
- 船乗り風。ニンニク、オリーブ油、トマトソース。
- クワットロ・フォルマッジ(Quattro formaggi)
- 4種のチーズ。
- クワットロ・スタジョーニ(Quattro Stagioni)
- 具材に四季の幸を使っている。
- ボスカイオラ(Boscaiola)
- 木こり風。山の幸である茸が使われている。
- ロマーナ(Romana)(en:Roman pizza)
- ローマ風のピザ。
- ナポレターナ(it:Napoletana)
- ナポリ風。ナポリピッツァでは無い。
- ビスマルク(Bismarck)
- 中央に半熟の目玉焼きを乗せたピザ。プロイセンの宰相ビスマルクの好物の一つが目玉焼きを乗せたステーキだったことに由来。
- カプリチョーザ(it:Pizza capricciosa)
- ロッシーニ(it:Pizza Rossini)
形状による分類
- ピッツァ・ナポレターナ(Pizza Napoletana)
- 麺棒を使わず手で伸ばすため円形で中心部が薄く縁が厚いのが特徴。
- カルツォーネ(Calzone)
- 円形のピザを二つ折りの半月形にして焼いたもの、または揚げたもの。半球状に膨らむ。ローマ以北では焼き上げたものを指す事が多く、ナポリ等南部では油で揚げたものを指す事が多い。そのため北部では揚げたものはあえてPizza frittaと呼び、南部では焼いたものはcalzone al forno(窯焼カルツォーネ)と呼んで区別する。イタリアのWikipediaでは揚げたものをCalzoneとし、他にCalzone al fornoとPizza frittaの項目を別に設けている。
- シチリア風ピッツァまたはスフィンチョーネ(Sfincione)
- 四角形のピザ。
- ピッツァ・アッラ・パーラ(Pizza alla pala)またはピッツァ・アル・メトロ(Pizza al metro)
- 長方形のピザ。alla palaは「スコップで」の意。炉端焼きに使われるヘラの柄を短く平らな部分を長くしたような板に乗せて焼かれそのまま供される。al metroは「1メートル」の意。短辺は15センチメートル程度だが長さは実際に1メートル程度ある。通常切り分けて複数人で食べる。ソレント半島あたりの発祥と言われている。
※生地部分は薄い円形が一般的ではあるが、そのほかにも様々な形状のものが存在する。上ではその一部を紹介した。
アメリカのピザ
アメリカなど北米地域では、地域ごとに特徴のあるピザが存在する。高さのある深いパンを用いて、チーズや具をたっぷり入れて焼いたものはディープディッシュピザあるいはシカゴ風ピザと呼ばれ、シカゴの名物となっている。また生地が薄いものはニューヨーク周辺に多く、ニューヨーク風ピザあるいはクリスピーピザと呼ばれる。またアメリカで新たに生まれたハワイアンピザなども、広くアメリカ国民に食べられている。ピザはホットドッグやハンバーガーに並ぶアメリカ料理のひとつとして位置づけられており、カフェテリアなどのメニューには必ず見つけることが出来る。アメリカのピザはイタリアのピザに比べて大きく、地域によっては生地が厚く甘みがあり、トマトソースと具の量が多く、薪で熱した石窯の床に直にピザを置いて焼くよりも丸い専用のパン(pan - 浅い焼き型)に具をのせた生地を入れてオーブンで焼くパンピザが一般的であるが、初期には石炭をくべるパン焼き窯で焼いていた。チーズはピッツァ・チーズと呼ばれる、熱すると融けて糸を引く薄黄色のプロセスチーズが多用される。これは一般にモッツァレッラと呼ばれているが、本物のモッツァレッラよりも水分が少ない。
ドミノ・ピザに代表される宅配ピザも非常に普及しており、気軽な会合などではよく供される。またアメリカの家庭は大型のオーブンがよく普及しているため、市販の冷凍ピザを買ったり、市販の生地を買ってきたり、ピザ生地を手作りして自宅で焼くことも多い。
日本におけるピザ
現在は、従来よりも本格的なピザが冷凍食品として出回るなど、一般食品としても定着している。
ピザ協議会の調査によると、2010年(平成22年)度の日本におけるピザ末端売上高は、2,271億円に達している(1980年度は約500億円)[12]。
なお、沖縄県では戦後、長期間に亘ってアメリカの統治を受けた影響もあり、本土よりも早くピザが普及し、現在はすっかり県民の食生活に定着しているが、歴史的経緯からアメリカ風ピザがほとんどである。
- 歴史
「日本初のピザ」は、第二次世界大戦中に神戸に着いたカリテア号(イタリア海軍の特務艦)の、乗組員2人[13]が関与したとされる。まず、アントニオ・カンチェミ(1916 - 2003)が1944年(昭和19年)に僅か2ヶ月間だけ[14]開いた神戸のレストランにて、初めてピザが焼かれたという説[15][16]がある。
もう一つは、戦後の1946年(昭和21年)9月1日に、兵庫県宝塚市の宝塚温泉街にある寶來橋付近で創業したイタリア料理店“アベーラ”という説である。初代店主となったオラッツィオ・アベーラ(1913 - 1974)はシチリア出身で、昭和21年当時は日本国内にはイタリア料理店などはほぼ存在せずに、一般的ではなかった戦後間もない時に創業した。なお、阪急今津線宝塚南口駅界隈にある洋館建ての店舗は、オラツィオが帰天した後の1971年(昭和46年)に“アモーレ・アベーラ”として元の自宅を改装して移転した店舗で、子息のエルコレ・アベーラがオーナーとなり、父親から伝授したシチリア風テイストを受け継いでいる。
「日本初のピザハウス」は、1954年(昭和29年)、進駐軍のGI出身でイタリア系アメリカ人のギャング[17]、ニック・ザペッティが、六本木[18]に開いた“ニコラス”とされる。米陸軍の部隊を対象客層としてオープンしたが、日本人の若者層にも人気を博し、認知された[19][注 5]。
1964年(昭和39年)には、日本ペプシコーラ創業者でもあった比嘉悦雄がアメリカから冷凍ピザを輸入し、販売を開始[20]。その後は国内製造も行われ、スーパーマーケットなどで入手可能となり、家庭に普及し始める。
1973年(昭和48年)、アメリカのチェーン店“シェーキーズ”が日本初進出[21]。
1970年代半ば頃に差し掛かると、喫茶店や洋食店、ファミリーレストランなどで、ピザパイとして普及が始まる。前後して、ピザトースト[22][23]も考案される。
1985年(昭和60年)9月30日、日本で初めての宅配ピザ店“ドミノ・ピザ”恵比寿店が誕生[24]。
平成に入ると、さらに宅配ピザ店が全国に店舗を広げ(後述)、徐々にピザは一般的になっていく。そのほとんどはアメリカ風ピザであったが、1990年代のイタめしブームによってイタリアンピザも紹介され広まっていった。
2018年(平成30年)7月28日[25]、日本で(アジアでも[26])初めてピザ自動販売機“Pizza Self”が、広島県広島市西区のレンタルビデオ店TSUTAYA楠木店に設置された[27]。
またイタリアン・レストラン・チェーンのサイゼリヤもピッツアを提供しており、1990年代末から2010年代にかけて店舗数を伸ばし現在では日本国内で1000店舗を超え、多くの人が近所の店舗で(イタリア風のピッツァを)気軽に安価に食べられるようになった。
前述のピザトースト以外にも、パン屋におけるピザパン(惣菜パン)、ピザドッグ(ホットドッグ)、1972年のオープン時に既にあったロッテリアのイタリアンホット(ホットサンド)[28]、1979年に登場したピザまん(中華まん)[29]、コンビニエンスストアにおけるブリトー(トルティーヤ)、スティックピザ、ピザ味の商品(スナック菓子)など、多様である。
日本のピザは「日本でピザを食べるとなると、高いわりに美味しくないし」とアメリカ人の評判が良くなく、中には「コーンマヨピザってのを見た時には、めまいさえして倒れるかと思ったほど」という意見までもあった[30]。
宅配ピザ
宅配(出前)ピザのシステムは、1960年にアメリカのドミノ・ピザが始めたもの。アメリカでは、電話で注文すれば自宅までピザを届けてくれるという配送を中心としたピザ販売が大いに普及し、多数の業者が存在する。配達は通常自家用車を持つアルバイトによって行われ、勤務中は車に宣伝を兼ねたロゴを取り付けて業務を行う。レストランで食事をした場合と同じく、配達者には15%くらいのチップを渡すのが習慣である。
日本国内の宅配ピザ
日本でも、このような業務形態が定着し、宅配ピザと呼ばれるようになった。まず1985年(昭和60年)9月30日に東京都渋谷区恵比寿でドミノ・ピザが日本初の宅配ピザ店としてオープンしたのを皮切りに、チェーン店方式の宅配ピザ店が大量出店し、自宅で気軽にピザを食べられるようになった。かつてドミノ・ピザでは注文後、30分以内に配達先に到着出来なければピザ1枚につき700円を返金するという配達時間の約束があったが、「30分以内」を厳守しようとする配達員の無理な運転による交通事故の可能性、住宅事情の変化から30分以内に配達できない実例などが増加などから、現在は実施されていない。
2012年(平成24年)、関東圏すべてのチェーン店で前出の30分以内配達ルールは(ドミノ・ピザでは遅配した際は天候や交通事情等に関わらず、無条件で次回以降利用できる500円割引チケットを配布していた。これを目的として土日・荒天日にオーダーする顧客も多かったとのこと)、主に東京都多摩東部の住宅街を中心に配達員の道路交通法に違反する運転が警察当局・地元自治体・議会などで問題となり、特に周知のないまま8月には完全に消滅した。
2000年(平成12年)頃から、一部の店ではインターネットでも注文を受け付けるようになった。
2012年(平成24年)11月現在、各業者とも自社サイトとともに提携総合インターネットサイトにて「ダブルでポイントがたまる」といった電話不要のユーザーにとってありがたい手法で競争している。ただし、宅配業界もピザ以外の分野の業者が配達エリアの拡大、各種キャンペーンの展開、営業日時の柔軟化などで対抗してきている。店舗によっては固定客に対してサイドメニューやドリンクのサービスを行っている。ネットからの宅配ピザの注文も可能拡大し、NTTドコモが運営するdデリバリーなどスマートフォン等からも簡単に予約が可能になった。また配達者に対するチップなどの習慣は、日本国内においては一般的とされていない。
2013年以降では無人航空機を使用してピザを配達するサービスが登場、ないし実証実験が行われている[31]。ロシアでは2014年にドローンでピザを宅配するサービスが開始された[32]。
近年では人件費がかかる分割高になる宅配ではなく、店舗から持ち帰る方式が主流になりつつあり、各チェーン店も割引競争が激化している。
- 日本国内の主な主要チェーン
- ストロベリーコーンズ(1983年創業。1986年11月、宮城県仙台市に1号店。日本資本)
- ドミノ・ピザ(1985年9月、東京都渋谷区恵比寿に日本1号店)
- シカゴピザファクトリー(1986年10月、東京都渋谷区に1号店)
- ピザ・カリフォルニア(1986年11月創業)
- ピザーラ(1987年4月、東京都豊島区目白に1号店。日本資本)
- アオキーズ・ピザ(1987年、愛知県名古屋市に1号店。東海地方のみ。日本資本)
- ピザハット(1991年5月、日本KFCがピザハット事業部を新設し展開開始)
- ピザヨッカー
- ピザ・ロイヤルハット(1989年9月創業。岐阜、兵庫、岡山、広島、四国4県に展開)
- シェーキーズ
- ナポリの窯(ストロベリーコーンズが運営)
- ピザリトルパーティ
- テン.フォー
- Pizza Salvatore Cuomo
- ピザクック
- ピザ・ウイリー
- ピザ・ダーノ
- ピザポケット
日本国内の主要ピザメーカー
記念日
5月22日: ビットコイン・ピザ・デー (Bitcoin Pizza Day)
2010年5月22日、ビットコインによる初の現実世界での商取引として2枚のピザが買われたことから、ビットコインに関わる人々の間では5月22日を「ビットコイン・ピザ・デー (Bitcoin Pizza Day)」として祝う風習がある[33]。
11月20日: ピザの日
日本の凸版印刷が11月20日をピザの日と定め、ピザの普及活動を行ったことから成立したもの。同日は、イタリア王妃マルゲリータの誕生日である。
脚注
注釈
出典
- ^ 『イタリアマンマの粉ものレシピ - 本格的ピッツァやパスタが家で作れる!』講談社、2016年
- ^ Schwartz, Arthur. Naples at Table. Harper Collins, New York, 1996. p.67
- ^ ナポリピザの職人技、ユネスコ無形文化遺産に決定(ロイター、2017年12月8日、2022年2月5日閲覧
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o The Washington Post, Five myths about pizza
- ^ Schwartz, Arthur. Naples at Table. Harper Collins, New York, 1996. p.73
- ^ “Publication of an application pursuant to Article 8(2) of Council Regulation (EC) No 509/2006 on agricultural products and foodstuffs as traditional specialities guaranteed” (英語). EUR-Lex (2008年2月14日). 2021年12月11日閲覧。
- ^ “Ventunesima revisione dell'elenco dei prodotti agroalimentari tradizionali - Tabella con suddivisione per Regione e categoria merceologica (293.69 KB)” (pdf) (イタリア語). Ministero delle politiche agricole alimentari e forestali. 2021年12月4日閲覧。
- ^ “Disciplinare Internazionale Per L’ottenimento Del Marchio Collettivo “Verace Pizza Napoletana” – (Vera Pizza Napoletana)” (pdf) (イタリア語). Associazione Verace Pizza Napoletana (AVPN). 2021年12月14日閲覧。
- ^ “ピザはバランス栄養食”. ピザ協議会. 2013年4月13日閲覧。
- ^ La vera pizza napoletana - ピザについて(イタリア語)
- ^ 「イタリアでピザの『自動製造販売機』が登場へ」 ロイター、2009年3月27日、2022年2月5日閲覧
- ^ ピザのマーケット - ピザ協議会
- ^ 「兵庫人 挑む」第9部 われら地球人 ニッポンで追い求める夢 祖国離れ苦労の末に得た幸せ - 神戸新聞、2007年12月23日
- ^ ピザ東京デビューは丸?四角? - 東京新聞、2006年6月10日
- ^ みんな知ってる? 11月20日はピザの日 - ピザ協議会(PDF)
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- ^ 採用情報:ヒット商品変遷史まで 昭和43年〜昭和60年 - 井村屋
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- ^ ドミノピザが宅配にドローンを採用? 「ドミコプター」テスト映像を公開(動画あり)
- ^ ドローン(無人飛行機)で配達するロシアのピザショップの実態
- ^ Bitcoin Pizza Day: Celebrating the Pizzas Bought for 10,000 BTC - ビットコイン・ピザ・デー(英語)