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'''神の王国'''(かみのおうこく、{{lang-el|βασιλεία τοῦ θεοῦ}}, {{lang-en|kingdom of God}}<ref>[[s:en:Bible_(King_James)/Mark#Chapter_1|''The Gospel According to St. Mark'' 1:15]](『[[欽定訳聖書]]』)。</ref>)は、[[1世紀]]30年ごろ[[パレスチナ]]で活動した[[ユダヤ人]]宗教家[[ナザレのイエス]]の宣教における最重要概念である。この宗教概念はのちにイエスが[[キリスト教]]の開祖とされ、キリスト教が世界宗教となるに及んで、宗教、社会、政治などさまざまな分野に影響を与えた。
'''神の王国'''(かみのおうこく、{{lang-el|βασιλεία τοῦ Θεοῦ}}<ref>[http://biblehub.com/interlinear/mark/1.htm Interlinear Bible Mark 1:15] Bible Hub</ref>, {{lang-en|kingdom of God}}<ref>[[s:en:Bible_(King_James)/Mark#Chapter_1|''The Gospel According to St. Mark'' 1:15]](『[[欽定訳聖書]]』)。</ref>)は、[[1世紀]]30年ごろ[[パレスチナ]]で活動した[[ユダヤ人]]宗教家[[ナザレのイエス]]の宣教における最重要概念である。この宗教概念はのちにイエスが[[キリスト教]]の開祖とされ、キリスト教が世界宗教となるに及んで、宗教、社会、政治などさまざまな分野に影響を与えた。


日本語の訳語としては『[[口語訳聖書]]』や『[[新共同訳聖書]]』が採用している'''神の国'''が広く使われている。[[岩波書店]]で発行している[[佐藤研]]らが日本語訳した『[[新約聖書]]』では'''神の王国'''と訳されている<ref>参照:[[佐藤研]]『新約聖書 1』1995年、補注2-3頁。ISBN 4000039261。</ref>。
日本語の訳語としては『[[口語訳聖書]]』や『[[新共同訳聖書]]』が採用している'''神の国'''が広く使われている。[[岩波書店]]で発行している[[佐藤研]]らが日本語訳した『[[新約聖書]]』では'''神の王国'''と訳されている<ref>参照:[[佐藤研]]『新約聖書 1』1995年、補注2-3頁。ISBN 4000039261。</ref>。


『[[マルコによる福音書]]』によれば、イエスが[[洗礼者ヨハネ|ヨハネ]]から洗礼を受け、ヨハネの元から独立して一人で宣教を始めたその第一声が「時は満ちた、神の国は近づいた。悔い改めて福音を信ぜよ」<ref>『[[マルコによる福音書]]』1:15(『[[口語訳聖書]]』)</ref>である。なお、同じ場面が『[[マタイによる福音書]]』では「悔い改めよ、天国は近づいた」<ref>『[[マタイによる福音書]]』4:17(『口語訳聖書』)</ref>となっている。『マタイによる福音書』では他の箇所もほとんど'''神の国'''ではなく'''天国'''<ref group="注">文語訳『マタイ傳福音書』(『[[文語訳聖書#舊新約聖書|舊新約聖書]]』)でも「天國」と訳している。ただし「てんこく」と振り仮名を付けている。</ref>('''天の国'''<ref>『マタイによる福音書』4:17(『[[新共同訳聖書]]』)</ref>、{{lang-el|βασιλεία τῶν οὐρανῶν}}, {{lang-en|kingdom of heaven}}<ref>[[s:en:Bible_(King_James)/Matthew#Chapter_4|''The Gospel According to St. Matthew'' 4:17]](『欽定訳聖書』)</ref>)としているが、これは「「神」 のかわりに 「天」 という語を用いる当時のユダヤ人の言葉遣いに従」<ref>{{仮リンク|ペトロ・ネメシェギ|hu|Nemeshegyi Péter}}「天国」『[[新カトリック大事典]]』研究社 [http://kod.kenkyusha.co.jp/service/ KOD]</ref>っているためで、『マタイによる福音書』の天国(天の国)と他の『[[福音書]]』の神の国は同義である<ref>[[小河陽]]「天の国」『岩波キリスト教辞典』785頁。</ref>。
『[[マルコによる福音書]]』によれば、イエスが[[洗礼者ヨハネ|ヨハネ]]から洗礼を受け、ヨハネの元から独立して一人で宣教を始めたその第一声が「時は満ちた、神の国は近づいた。悔い改めて福音を信ぜよ」<ref>『[[マルコによる福音書]]』1:15(『[[口語訳聖書]]』)</ref>である。なお、同じ場面が『[[マタイによる福音書]]』では「悔い改めよ、天国は近づいた」<ref>『[[マタイによる福音書]]』4:17(『口語訳聖書』)</ref>となっている。『マタイによる福音書』では他の箇所もほとんど'''神の国'''ではなく'''天国'''<ref group="注">文語訳『マタイ傳福音書』(『[[文語訳聖書#舊新約聖書|舊新約聖書]]』)でも「天國」と訳している。ただし「てんこく」と振り仮名を付けている。</ref>('''天の国'''<ref>『マタイによる福音書』4:17(『[[新共同訳聖書]]』)</ref>、{{lang-el|βασιλεία τῶν οὐρανῶν}}<ref>[http://biblehub.com/interlinear/matthew/4.htm Interlinear Bible Matthew 4:17] Bible Hub</ref>, {{lang-en|kingdom of heaven}}<ref>[[s:en:Bible_(King_James)/Matthew#Chapter_4|''The Gospel According to St. Matthew'' 4:17]](『欽定訳聖書』)</ref>)としているが、これは「「神」 のかわりに 「天」 という語を用いる当時のユダヤ人の言葉遣いに従」<ref>{{仮リンク|ペトロ・ネメシェギ|hu|Nemeshegyi Péter}}「天国」『[[新カトリック大事典]]』研究社 [http://kod.kenkyusha.co.jp/service/ KOD]</ref>っているためで、『マタイによる福音書』の天国(天の国)と他の『[[福音書]]』の神の国は同義である<ref>[[小河陽]]「天の国」『岩波キリスト教辞典』785頁。</ref>。


== 概要 ==
== 概要 ==
[[ヘブライ思想]]を淵源とする宗教概念あるいは観念「神の王国」とは「神が王として支配すること」「神の支配する領域」<ref>『[[バルク書]]』3:24(『新共同訳聖書』)</ref>「神の王的支配」を意味する<ref name=iwa231 />。これは例えば『[[旧約聖書]]』所収の『[[詩篇]]』145篇13節「あなたの国はとこしえの国です。あなたのまつりごとはよろずよに絶えることはありません。」<ref>『口語訳聖書』</ref>といった箇所に見られるような観念にさかのぼることが出来る<ref name=iwa231>佐藤研「神の国」『岩波キリスト教辞典』231頁。</ref><ref group="注">ここ13節の「あなた」は、直前の10節「主よ、あなたの…」([[s:詩篇(口語訳)#145:10|詩篇(口語訳)#145:10]]) とある部分の続きで「主」すなわち神[[ヤハウェ]]を指す(参照:[[関根正雄]]訳『詩篇』[[岩波文庫]]、351頁、「ヤ<sub>ハ</sub>ウェよ、あなたの…」。[http://biblehub.com/interlinear/psalms/145.htm Interlinear Bible Psalm 145] ([[ヘブライ語]]原、英語注釈付き), "יְ֭הוָה Yah·weh O LORD")</ref>。
[[ヘブライ思想]]を淵源とする宗教概念あるいは観念「神の王国」とは「神が王として支配すること」「神の支配する領域」<ref>『[[バルク書]]』3:24(『新共同訳聖書』)</ref>「神の王的支配」を意味する<ref name=iwa231 />。これは例えば『[[旧約聖書]]』所収の『[[詩篇]]』145篇13節「あなたの国はとこしえの国です。あなたのまつりごとはよろずよに絶えることはありません。」<ref>『口語訳聖書』</ref>といった箇所に見られるような観念にさかのぼることが出来る<ref name=iwa231>佐藤研「神の国」『岩波キリスト教辞典』231頁。</ref><ref group="注">ここ13節の「あなた」は、直前の10節「主よ、あなたの…」([[s:詩篇(口語訳)#145:10|詩篇(口語訳)#145:10]]) とある部分の続きで「主」すなわち神[[ヤハウェ]]を指す(参照:[[関根正雄]]訳『詩篇』[[岩波文庫]]、351頁、「ヤ<sub>ハ</sub>ウェよ、あなたの…」。[http://biblehub.com/interlinear/psalms/145.htm Interlinear Bible Psalm 145] ([[ヘブライ語]]原行間に英語逐語訳ほか。[http://biblehub.com/ Bible Hub]), "יְ֭הוָה Yah·weh O LORD")</ref>。


=== 新約聖書 ===
=== 新約聖書 ===
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== 外部リンク ==
== 外部リンク ==
* 「[http://digital-archives.sophia.ac.jp/repository/view/repository/00000008884 「神の国」と「天の国」と「天国」との比較]」 [[渋谷治]]『カトリック神学』1968年6月、上智大学神学会
* [[渋谷治]]「[http://digital-archives.sophia.ac.jp/repository/view/repository/00000008884 「神の国」と「天の国」と「天国」との比較]」『カトリック神学』1968年6月、上智大学神学会


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2018年1月18日 (木) 02:34時点における版

神の王国(かみのおうこく、ギリシア語: βασιλεία τοῦ Θεοῦ[1], 英語: kingdom of God[2])は、1世紀30年ごろパレスチナで活動したユダヤ人宗教家ナザレのイエスの宣教における最重要概念である。この宗教概念はのちにイエスがキリスト教の開祖とされ、キリスト教が世界宗教となるに及んで、宗教、社会、政治などさまざまな分野に影響を与えた。

日本語の訳語としては『口語訳聖書』や『新共同訳聖書』が採用している神の国が広く使われている。岩波書店で発行している佐藤研らが日本語訳した『新約聖書』では神の王国と訳されている[3]

マルコによる福音書』によれば、イエスがヨハネから洗礼を受け、ヨハネの元から独立して一人で宣教を始めたその第一声が「時は満ちた、神の国は近づいた。悔い改めて福音を信ぜよ」[4]である。なお、同じ場面が『マタイによる福音書』では「悔い改めよ、天国は近づいた」[5]となっている。『マタイによる福音書』では他の箇所もほとんど神の国ではなく天国[注 1]天の国[6]ギリシア語: βασιλεία τῶν οὐρανῶν[7], 英語: kingdom of heaven[8])としているが、これは「「神」 のかわりに 「天」 という語を用いる当時のユダヤ人の言葉遣いに従」[9]っているためで、『マタイによる福音書』の天国(天の国)と他の『福音書』の神の国は同義である[10]

概要

ヘブライ思想を淵源とする宗教概念あるいは観念「神の王国」とは「神が王として支配すること」「神の支配する領域」[11]「神の王的支配」を意味する[12]。これは例えば『旧約聖書』所収の『詩篇』145篇13節「あなたの国はとこしえの国です。あなたのまつりごとはよろずよに絶えることはありません。」[13]といった箇所に見られるような観念にさかのぼることが出来る[12][注 2]

新約聖書

マタイによる福音書』によれば、まず洗礼者ヨハネが「悔い改めよ、天国は近づいた」と伝え、人々にバプテスマを施す[14][注 3]。バプテスマを受けたイエスは「四十日のあいだ荒野にいて、サタンの試みに」あった[15]後に、「悔い改めよ、天国は近づいた」と宣教を開始した[16]。イエスがいわゆる山上の垂訓を語った際には最初に「こころの貧しい人たちは、さいわいである、天国は彼らのものである。」と語り始めた[17]。「義のために迫害されてきた人たちは、さいわいである、天国は彼らのものである。」とも語った[17]主の祈りについて教えた時には「御国がきますように」と祈るように教え、神の王国が来ることを待ち望むようにと教えた[18]

エホバの証人

19世紀後半にアメリカで起こったキリスト教系の新宗派エホバの証人のいう神の王国[19]千年王国説(至福千年説)に依るものである。千年王国説は、ユダヤ教終末論に由来し、キリスト教では『新約聖書』所収の『ヨハネ黙示録』第20章「千年間の支配」「サタンの敗北」「最後の裁き」[20]がその主な根拠になっている。[21]

脚注

注釈

  1. ^ 文語訳『マタイ傳福音書』(『舊新約聖書』)でも「天國」と訳している。ただし「てんこく」と振り仮名を付けている。
  2. ^ ここ13節の「あなた」は、直前の10節「主よ、あなたの…」(詩篇(口語訳)#145:10) とある部分の続きで「主」すなわち神ヤハウェを指す(参照:関根正雄訳『詩篇』岩波文庫、351頁、「ヤウェよ、あなたの…」。Interlinear Bible Psalm 145 (ヘブライ語原典、行間に英語逐語訳ほか。Bible Hub), "יְ֭הוָה Yah·weh O LORD")
  3. ^ 洗礼者ヨハネは、「わたしのあとから来る人はわたしよりも力のあるかた」と述べているが(マタイによる福音書(口語訳)#3:11)、イエスが洗礼者ヨハネの元に来てバプテスマを受けようとした際にイエスを「思いとどまらせようとして」「わたしこそあなたからバプテスマを受けるはずですのに、あなたがわたしのところにおいでになるのですか」(『マタイによる福音書』3:14(『口語訳聖書』))と述べている事から、「わたしよりも力のあるかた」とはイエスを指していると読み取れる。

出典

  1. ^ Interlinear Bible Mark 1:15 Bible Hub
  2. ^ The Gospel According to St. Mark 1:15(『欽定訳聖書』)。
  3. ^ 参照:佐藤研『新約聖書 1』1995年、補注2-3頁。ISBN 4000039261
  4. ^ マルコによる福音書』1:15(『口語訳聖書』)
  5. ^ マタイによる福音書』4:17(『口語訳聖書』)
  6. ^ 『マタイによる福音書』4:17(『新共同訳聖書』)
  7. ^ Interlinear Bible Matthew 4:17 Bible Hub
  8. ^ The Gospel According to St. Matthew 4:17(『欽定訳聖書』)
  9. ^ ペトロ・ネメシェギハンガリー語版「天国」『新カトリック大事典』研究社 KOD
  10. ^ 小河陽「天の国」『岩波キリスト教辞典』785頁。
  11. ^ バルク書』3:24(『新共同訳聖書』)
  12. ^ a b 佐藤研「神の国」『岩波キリスト教辞典』231頁。
  13. ^ 『口語訳聖書』
  14. ^ マタイによる福音書(口語訳)#第3章
  15. ^ 『マルコによる福音書』1:13(『口語訳聖書』)
  16. ^ マタイによる福音書(口語訳)#4:17
  17. ^ a b マタイによる福音書(口語訳)#第5章
  18. ^ マタイによる福音書(口語訳)#6:9,10
  19. ^ 神の王国とは何ですか」エホバの証人
  20. ^ 『新共同訳聖書』の小見出し
  21. ^ 参照:川中子義勝國府田武「千年王国」『岩波キリスト教辞典』691-692頁。

参考文献

関連項目

外部リンク

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