ゼータ関数(ぜーたかんすう)とは、狭義にはリーマンのゼータと呼ばれる
で表される関数のことをいう。すでにオイラーが考察して重要な発見をしていたが、ギリシャ文字のζで表したのはリーマンが最初であり、このことからリーマン・ゼータ関数(Riemann zeta function)と呼ぶ。上記級数は s が 1 より大きい実部をもつ複素数のときのみ収束するが、解析接続によって複素数平面の全域で定義された解析関数となる。素数分布の研究において極めて重要な関数である。
ゼータの特殊値
いくつかの s については ζ(s) の値はよく知られている。特に、
などである。実際、s が正の偶数、負の奇数のときのゼータの値はすでにオイラーが公式を発見した。s が負の偶数であれば ζ(s) = 0 である。これをリーマン・ゼータ関数の自明な零点とよぶ。
しかし未だに、たとえば s が正の奇数のときの ζ(s) の値はよくわかっていない。それでもラマヌジャンなどは次のような表示式を得ている。
ここで、はベルヌーイ数である。
ただし、s = 3 場合に限り、次のような表示式が知られている。
これを、アペリーの定数と呼ぶ。
オイラー積
素数との関連はオイラーによって示された。すべての素数 p を亘る無限積として(リーマン)ゼータ関数は
という表示を持つ。これをオイラー積あるいはオイラー表示という。このような表示が出来ることは、幾何級数(等比級数)の公式
が絶対収束すること(特に有限和のように分配法則が成り立つこと)に注意して、十分に大きな素数 p' を固定し、それ以下の素数 p にを亘る有限積をつくり、その p' → ∞ とした極限を考えることで示すことが出来る。実際に、この有限積の展開には自然数 n の素因数分解に現れる最大の素因数が p' であれば、そこまでの有限積の中に n が含まれる。
ゼータの表示と関数等式
ゼータ関数は次のような表示ももつ:
ここで ρ に関する積はリーマン・ゼータ関数の複素零点全体をわたるものとする。この式から、
はであることがわかる。実際
ここで γ はオイラーの定数、γi はスティルチェスの定数と呼ばれているものである。
またゼータ関数は s と 1 - s に関する対称的な関数等式をもつ。便宜上次の ξ を導入する:
すると、
が成り立つ。
ゼータ関数と数論的関数
ゼータ関数を適当に組み合わせることにより、様々な数論的関数を係数とするディリクレ級数の母関数を得ることができる。ほんの一例を紹介しよう。
たとえば、ゼータ関数の逆数はメビウス関数 μ(n) を用いて
と表せる。この式と ζ(2) の値から、分布が一様であるという仮定のもと、任意に取り出した二つの整数が互いに素である確率は 6/π2 であることが証明できる。
自然数 n の(正の)約数の個数を d(n), すべての約数の和を σ(n) で表すとき、
などが成り立ち、n と互いに素な n 以下の自然数の個数を φ(n) で表すとき、
なども成り立つ。
ゼータ関数と素数の個数関数
素数分布との関連、すなわち素数の個数関数 π(x) とゼータ関数との関係を、形式的だが簡単な変形によって導出してみよう。
まずゼータ関数のオイラー積表示の両辺において対数をとり、テイラー展開で和の中の対数を展開する:
ここで各 n ≥ 1 について
と変形して、先の式に代入すると
通常
と置いて、最終的に上式は次のように書かれる。
この公式に、メリン変換などと呼ばれる積分の反転公式を使うと、Π(x) を陽の形(explicit)に表示する公式を求めることができる。この公式は、リーマンの素数公式、あるいは明示公式(explicit formula)などと呼ばれている。なおメービウスの反転公式によって π(x) は
とかけることを注意しておこう。
ゼータ関数の零点の分布に関する未解決問題であるリーマン予想が、これらのことに密接に関係している。
その他のゼータ関数
関連項目
外部リンク
ゼータ関数