YC-15 (航空機)
マクドネル・ダグラス YC-15
YC-15は、アメリカ空軍の「先進中型短距離離着陸輸送機計画」(AMST, Advanced Medium STOL Transport)に基づいてマクドネル・ダグラスが製造した軍用輸送機である。
ボーイングの開発したYC-14とともに競争試作されたが、両機とも制式採用はされなかった。
概要
[編集]1970年代前期にアメリカ空軍はC-130を代替する「先進中型短距離離着陸輸送機計画」を開始し、それに応じてマクドネル・ダグラスが開発した機体がYC-15である。
YC-15の特徴は、EBF方式(Externally Blown Flaps)によるパワード・リフトによりSTOLを可能としていることにある。これはターボファンエンジンの排気を直接フラップに当てることにより、上方推力を得る方式である。また二重隙間フラップを用いているため、フラップを通過した排気の一部はコアンダ効果により、揚力増加効果をもたらす。エンジンノズルに工夫を凝らすことにより、排気温度の低下も行なわれていた。
胴体および尾翼はC-130のものを流用しており、主翼は高翼配置の直線翼とし、翼断面形状にはスーパークリティカル翼型を用いている。尾翼はT字尾翼となっていた。エンジンにはターボファンエンジンを4基装備している。
2機が製造され、試作1号機は1975年8月26日に初飛行し、1号機と2号機により合わせて600時間ほどの飛行試験が行われた。しかし、競争試作機のYC-14と同様、短距離離着陸性能の過度の追求による高コストがネックとなり、1979年にはAMST計画は中止となり、本機の開発も中止となった。その後はデビスモンサン空軍基地でモスボール化されて保管された。
後に1機は博物館に送られたが、もう一機は1997年に飛行可能状態に戻し技術試験機として使用する計画があり、復元作業も行われたが、途中で計画中止となった。
YC-15は制式採用はなされなかったものの、本機によって実証されたEBF方式によるパワード・リフトは、後にマクドネル・ダグラス(現:ボーイング)によって開発されたC-17 グローブマスターIIIに採用され、本機の開発によって得られた各種データはC-17の開発に大いに生かされている。
要目
[編集]- 全長:37.9 m
- 全幅:33.6 m(試作1号機)/ 40.4 m(試作2号機)
- 全高:13.2 m
- 翼面積:162 m2
- 空虚重量:47.6 t
- 最大離陸重量:98.286 t
- 最大積載量:35 t ないし 武装兵員 150 名
- エンジン:P&W JT8D ターボファンエンジン (推力 68.9kN)4基
- 最高速度:861 km/h
- 航続距離:4,810 km
- 乗員:3名
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]