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Wikipedia:フリーな百科事典とは

フリー百科事典というウィキペディアのスローガンを全面に出したロゴ

ウィキペディア誰でも編集できるフリー百科事典をうたっている。フリーという言葉の多義性から誤解されがちだが、この「フリー」はライセンスに対するウィキペディアのあり方を示すものであって、フリープランやフリースピーチの「フリー」とはあまり関係がない。ウィキペディアのコンテンツは商用で利用することも可能だし、言論の自由は尊重こそされているものの何かの方針として採用されているわけではないからだ。

「フリー」の中心的な意味

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ブリタニカ百科事典の「辞書」の項目には、辞書の出版史に関する興味深いエピソードが紹介されている。

その次に出版された重要な辞書は、1530年のジョン(あるいはジャン)・パルスグレイヴ による英仏辞書であり [...]彼が自分の許可なしにはこの辞書を複製して販売しないよう印刷業者と取り決めをしていたことを示す書簡が現存している。「彼はフランス語を教えることで儲けているのに、この言語を研究する、自分以外の人間に辞書が売られることになれば、その優位性が失われてしまうからだ」
Britannica Online Encyclopedia、dictionary、https://www.britannica.com/topic/dictionary#ref=ref282719

「フリー」(つまり英語の"free" )には複数の意味がある。「フリー百科事典」の「フリー」とは何よりもまず、ウィキペディアというコンテンツのライセンスを示す言葉である。ウィキペディアに投稿される文章は、Creative Commons Attribution-ShareAlike License (CC-BY-SA)the GNU Free Documentation License (GFDL)という、フリーコンテントを実現するためのコピーレフト型のライセンスのもとに置かれる。それがもっぱら何を意味するかといえば、文章に関する権利自体はそれを書いた人に帰属しつつも、文章は自由に読まれうるし、(再)配布も改変も同じライセンスのもとで行われる限りは自由だということである。

こうしたライセンスの目標は、全ての人がフリーで参照できる資料が生産されていくこと自体にある。それは人類の知識のコレクション化であり、著作権法にのっとって利用する限りは制限されることも規制されることもない。きわめて合理的な条件のもとで、誰もが何の障害もなくコンテンツを利用したり共有することができる。つまりウィキペディアは、ジョン・パルスグレイブ氏が500年前に提唱した、窮屈な知識のあり方をひっくり返しているわけである。

ウィキペディアにCC-BY-SAかGFDLと相いれないコピーライトを持つ情報をアップロードすることは認められていない。もしアップロードしたとしても、ただちに削除されることだろう。唯一の例外があるとすれば、英語版ウィキペディアにおいて取り入れられている「フェアユース」だ。これによって一部の画像やメディアファイルがいわば例外的にウィキペディアにアップロードされている(詳細はWikipedia:Non-free contentを参照)。他の言語版のウィキペディア(もちろん日本語版でも)では「フェアユース」という考え方は認められておらず、フリーな文章やメディア以外はコンテンツに含まれない。

他にもある「フリー」の意味

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「誰でも編集できるフリー百科事典」というスローガンを誤解している人もいる。大体にして英語の「フリー」には複数の意味があるからだ。ウィキペディアの共同創始者であるジミー・ウェールズは「フリー」という英語の持つ曖昧さについてこう語ったことがある。

gratis(無償)とlibre(自由)の両方を意味する英語の「フリー」という言葉が持つ難しさを目の当たりにしている気がします。私たちがフリーという時は主に二番目の意味ですが、それでlibre access(自由なアクセス)という概念がうまく表現できるかどうかは、言語そのものの問題です。またその意味では、利用にあたって無償であるかどうかは二次的だということでもあります。

以下に示すようなフリーの意味がウィキペディアの一部または全部にあてはめられることもある、ウィキペディアの存在意義を言い表したものとは必ずしもいえない。

「フリーな百科事典」は「無料で提供される百科事典」という意味ではない

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ワールド・ワイド・ウェブにアクセスしている人間は誰でも、wikipedia.orgというウェブサイトでウィキペディアのコンテンツを読むことができ、そのために代金を支払う必要はない、というのはその通りだ。でも、それはウィキペディアが完全に非商業的なコンテンツだということを意味しない。ウィキペディアのコンテンツは複製して販売することが可能だからだ。CC-BY-SAとGFDLのもとに置かれたコンテンツは配布にあたって対価を要求することも認められている。実際にウィキペディアの記事は光学メディア(DVDのような)にコピーされたり紙媒体に印刷されて、有償で配布されている。

もっと言えば、利用目的を非商業的な内容に限定するコピーライトを持っているコンテンツをウィキペディアにアップロードすることは禁じられている。そうしたコンテンツはCC-BY-SAとGFDLによって定義される「フリー」な百科事典とは相いれないからだ。

「フリーな百科事典」は「誰でも思うがままに編集できる」という意味ではない

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ウィキペディアは「誰でも編集できる」。といっても、編集者が自分の観点から文章を投稿する、法的または道徳的な意味での権利を持っているということではない。「誰でも編集できるフリー百科事典」の「誰でも編集できる」の部分を、フリーという言葉の延長線上にあると理解してる編集者もいるが、これは間違いだ。この文章は異なる二つの概念を包含しているからで、「フリー」はライセンスを、「誰でも編集できる」はウィキペディアがwiki(誰かに許可をもらわなくても、事実上インターネットにアクセスさえできれば誰でも内容の編集ができるシステム)を採用していることを表している。そして何よりウィキペディアは、信頼される百科事典を目指している。つまり、中立的な観点から書かれた、検証可能な情報を読者に提供する事典である。その目標に向かっているとみなされる限り、誰でも(時に大胆に)ウィキペディアの記事を編集することができる。しかしルールに反する編集行為は差し戻されるし、極端な場合でいえば、そうした編集を行った利用者はブロックされる。

2008年に札幌で開催されたIsummitで販売されたブランド「フリービール英語版」のビール。「フリービール」のレシピとラベルはCC-BY-SAのもとで自由に利用可能だが、飲み放題(free beer)なわけではない

「フリーな百科事典」は必ずしも「フリースピーチ」のことを指しているわけではない

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フリーソフトウェアの提唱者であるリチャード・ストールマンの「Think free as in free speech, not free beer」(フリーとは値段ではなく自由の問題である)というスローガンは有名だ。しかし繰り返しになるが、ウィキペディアの場合、フリー百科事典の「フリー」とは、フリースピーチではなくライセンスのことを指している。ウィキペディアは言論の自由を尊重しているが、コンテンツに関してのポリシーとしては採用されていない(これに関してはWikipedia:フリースピーチ英語版も参照)。

関連項目

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外部リンク

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