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Wikipedia‐ノート:削除依頼/頭部穿孔

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 本項目「頭部穿孔」は民間療法に限定した内容ではあるが、医学史と密接な関係があるので、医療の立場での注意点を述べる。

 トレパネーションの英語訳は、trephine,trephination,trepanationで、穿孔(術)、穿頭(術)、頭蓋開口(術)と訳される。開頭術(Craniotomy)と同義。脳の手術の目的で骨のみに穴をあける処置で、硬膜を切らない段階までをいう。20世紀後半では開頭術を専門用語として使うようになり、trephiningは考古学専用の用語化した。ここでは穿頭(術)でまとめた。

 1920年、Burtonが穿頭を施された頭蓋骨について、その観察をまとめている。  まず他の文献を紹介し、1868年にM.PrunieresがAgieres近くのドルメンで発見したのが最初としている。その後、19世紀後半から20世紀初頭にかけ、脳外科医を中心として医師の間でも盛んに研究された。当時の集計の中から、陥没骨折の骨の除去目的の比率が28%で少数派。南米の例が多いがヨーロッパ各地にもある。ある博物館の63例は36例が頭頂部の傷で、左右差が無かったことから、凶器は主に、石斧ではなく投石であると推定された。また、穿頭部位に地域差がある。  この筆者は、全体の比率は少ないが、前頭部の生え際以下にあるインカ特有の穿頭術例に注目した。病理学的には骨の病気はなく、副鼻腔炎が骨に影響する痕跡がみられた。一つの穴を複数回に分けて開けた痕跡、最初の処置は生き延び、その後の病状変化で、2回目の処置をしたと考えられる例をあげている。  洞になっている外側の骨のみを穿頭し、外眼筋に障害を及ぼさないような配慮がみられる。前頭洞の部位、形、骨の厚さは個人差が大きい。しかし、左右いずれかの前頭洞を選び、一挙に深い穴をあけるのではなく、少しずつ削り取るような技法が想定される。以上が主な観察点。

 Penfieldは1954年、痙攣発作の手術治療に関する著書の第18章の一部を、穿頭の歴史に当てている。ヨーロッパでは14世紀頃から行われ、17世紀頃、ヒポクラテスが発見済みの知見を、パレとValsalvaが再確認している。17世紀後半のフランスでは、J.L.Petitが、痙攣の原因を除去する意味で、脳の切除を行った。18世紀に入りイギリスのP.Pottにより、骨を手術するのではなく、脳を手術するような意識に変わった。1886年、消毒、麻酔を系統的に利用した脳外科手術が初めて行われた。などと述べている。他方、けいれんの手術治療の文献例として、1920年頃の大腸切除や、その他を行うべきでないとしている。(民間療法と専門治療の区別は、ほんの一世紀ほどさかのぼるだけでも難しい。)

 ヒポクラテス全集第一巻、「頭部の損傷について」(283~306頁)に頭蓋骨骨折と穿頭術について詳しい記述がある。  まず、冒頭で受傷部位や受傷の程度などを分類し、違いを解剖学的に説明しようとしている。後頭部は前頭部に比べ筋肉が多く骨が分厚いため、前頭部に比較して陥没骨折は少なく、致命傷になりにくいと述べている。(多分ここでは、現在よりもやや後部を前頭部と表現している。)陥没した骨折は脳の圧迫による初期の致命率が高く(「頭部の損傷について」第一,二節)、骨の除去を急性期にしてはいけない。後で、化膿すれば、腫れて自然に浮き上がり外しやすくなる(同第一七節)。頭蓋骨骨折の急性期死亡を免れても、骨折した骨は化膿し、しばらくすると脳を覆う膜まで壊死が及んで死亡する。死亡までの期間は骨の厚みと、季節に依存する(夏で2週間、冬で4週間)(同第二節)。傷は早く膿みきらせて、悪い体液を体外に出し、体の浄化作用による治癒を促す(同第一五節)。鋭い凶器により、頭皮が大きく裂け、露出した骨に傷跡があっても、骨折でなければ穿頭術を行う必要が無い。そのような傷でも骨折が疑わしい場合には、消息子を使用して傷の周囲の骨まで探る。必要であれば骨膜を削り自然な縫合線と骨折線を区別する。穿頭術の適応を受傷後3日以内に決めて実施しなければいけない。(第九,一〇,一四節)時期を逃したら、1~2週間後の化膿・発熱の時期まで待って、穿頭術を行うが救命率は下がる。傷による痙攣は、左の怪我で右に起こりやすく、反対は逆である。救済不可能は早めに教える(同第一九節)。穿頭術の骨は、脳を覆う膜を傷つけないように少し手前でとめて、初めから外すことを目的にしないほうが良い。化膿すれば外しやすくなる。(第二一節)などと、こまかい技術的注意を述べている。  また、全書第一巻「流行病 七巻」第一二四節には、詳細不明だが首まで頭蓋骨が露出した成人例の記載がある。(明記していないが、頭蓋骨が露出したまま安定してしまう例があるので、みだりに骨を傷つけるべきではないといっているように思える。)

参考文献

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  • 松田徳一郎 (1999). リーダース英和辞典(第2版). 
  • Frank Albert Burton (1920). “Prehistolic trephining Of The Frontal Sinus (PDF available)”. California state journal of medicien: 321-324. 
  • Wilder Penfield , Herbert Jasper (1954). Epilepsy and the Functional Anatomy of the Human Brain. 
  • 大槻真一郎 編著 (1997). 新訂版 ヒポクラテス全集(Corpus Hippocraticum)全3巻. 
  • 共著 (2003). 医学大辞典. 

蛇足: 昔のことなので、生々しい傷の話になる。しかし、当時の社会状況からは許容しなければならない事態で、最善をつくしていたのがうかがわれ、涙ぐましい。

su_su 07/04/24 22:13