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VKORC1

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
VKORC1
識別子
記号VKORC1, EDTP308, IMAGE3455200, MST134, MST576, VKCFD2, VKOR, vitamin K epoxide reductase complex subunit 1
外部IDOMIM: 608547 MGI: 106442 HomoloGene: 11416 GeneCards: VKORC1
遺伝子の位置 (ヒト)
16番染色体 (ヒト)
染色体16番染色体 (ヒト)[1]
16番染色体 (ヒト)
VKORC1遺伝子の位置
VKORC1遺伝子の位置
バンドデータ無し開始点31,090,842 bp[1]
終点31,095,980 bp[1]
遺伝子の位置 (マウス)
7番染色体 (マウス)
染色体7番染色体 (マウス)[2]
7番染色体 (マウス)
VKORC1遺伝子の位置
VKORC1遺伝子の位置
バンドデータ無し開始点127,492,235 bp[2]
終点127,494,789 bp[2]
RNA発現パターン
さらなる参照発現データ
遺伝子オントロジー
分子機能 酸化還元酵素活性
vitamin-K-epoxide reductase (warfarin-sensitive) activity
quinone binding
vitamin-K-epoxide reductase (warfarin-insensitive) activity
細胞の構成要素 integral component of membrane
endoplasmic reticulum membrane

小胞体
intracellular membrane-bounded organelle
生物学的プロセス peptidyl-glutamic acid carboxylation
凝固・線溶系
骨発生
vitamin K metabolic process
有機窒素化合物への反応
有機環状化合物への反応
regulation of blood coagulation
response to antibiotic
出典:Amigo / QuickGO
オルソログ
ヒトマウス
Entrez
Ensembl
UniProt
RefSeq
(mRNA)

NM_001311311
NM_024006
NM_206824

NM_178600

RefSeq
(タンパク質)

NP_001298240
NP_076869
NP_996560

NP_848715

場所
(UCSC)
Chr 16: 31.09 – 31.1 MbChr 16: 127.49 – 127.49 Mb
PubMed検索[3][4]
ウィキデータ
閲覧/編集 ヒト閲覧/編集 マウス

VKORC1は、ビタミンKエポキシドレダクターゼ複合体サブユニット1をコードする遺伝子である[5]。この酵素的なタンパク質複合体はビタミンK2,3-エポキシドを活性型に還元する役割を持つ。この働きは効率的な凝固に重要である。ヒトでは、この遺伝子の変異はビタミンK依存凝固因子の欠乏をもたらすことがある。

機能

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VKORC1タンパク質は、ビタミンKサイクルの核となる酵素である。VKORC1は163個のアミノ酸からなる膜タンパク質であり、小胞体に関連する。VKORC1 mRNAは多数の組織で発現している。VKORC1はビタミンKエポキシドをビタミンKに変換する働きを持ち、これはビタミンKの再利用の生理学的過程の律速段階である[6]。ビタミンKエポキシドの還元は第VII因子第IX因子第X因子などの血液凝固タンパク質に含まれるグルタミン酸残基をカルボキシル化する働きを持つ[5][7]。VKORC1はクマリン系抗凝固薬の必要服用量の患者間での大きな差を生じさせ、またビタミンK欠乏症の原因である可能性があることから、治療上の注目の対象となっている[8]

ワルファリン抗凝固薬として、深部静脈血栓症肺血栓塞栓症の治療や、心房細動心血管疾患人工心臓弁の患者の発作を防ぐために広く処方されている[9]。ワルファリンはVKORC1の働きを阻害し、凝固タンパク質の補因子として利用可能なビタミンKの減少を引き起こす。ワルファリンの不適切な服用は大出血と小出血の両方のリスクを大きく上昇させる。ワルファリンの薬理学上の標的として、VKORC1はワルファリンへの応答の個体差を生じさせる候補遺伝子と考えられている。過去の研究は、 CYP2C9の遺伝子型がワルファリン代謝と応答に影響を及ぼすことを示している [10]

遺伝子

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ヒトにおいては16番染色体に存在する。2つの偽遺伝子1番染色体X染色体で見つかっている。

臨床的意義

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ヒトでは、この遺伝子の変異はビタミンK依存凝固因子の欠乏に関連する。凝固機能の低下により、致死性の出血が生じることがある。

VKORC1 1639 (または 3673) 一塩基多型では、野生型でのGアレルが変異型ではAアレルとなっている。Aアレルを持つ人々 (Aハプロタイプ) は Gアレルを持つ人々 (非Aハプロタイプ) より少ない量のVKORC1を産生する。これらの変異の保有率は人種によっても異なり、90-95%のアジア人、37%の白人、14%のアフリカ人がAアレルを持つ[11]。Aアレルを持つ人々は凝固因子の産生量が少なく、凝固能力が小さい[12]

Aアレルを持つ患者にワルファリンを投与する場合、通常より少ない量の投与をする必要がある。遺伝子検査により変異の有無を検出でき、FDAはAアレルを持つ患者にワルファリンを投与する際に少量から開始することを推奨している。

2種の異なるアイソフォームをエンコードする、選択的スプライシングを受けた転写産物が発見されている。このアイソフォームはヒトとラットでワルファリン抵抗性の原因となる。これは、VKORC酵素の量と活性は変化していないものの、ワルファリンによる阻害作用を受けにくくなっているためである。このアイソフォーム変異は特定のエチオピア人とユダヤ人が保有する稀な例外である。

脚注

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  1. ^ a b c GRCh38: Ensembl release 89: ENSG00000167397 - Ensembl, May 2017
  2. ^ a b c GRCm38: Ensembl release 89: ENSMUSG00000096145 - Ensembl, May 2017
  3. ^ Human PubMed Reference:
  4. ^ Mouse PubMed Reference:
  5. ^ a b VKORC1 vitamin K epoxide reductase complex subunit 1 [Homo sapiens (human) - Gene - NCBI]”. www.ncbi.nlm.nih.gov. 2021年2月5日閲覧。
  6. ^ Ryan P., Owen; Li, Gong; Hersh, Sagreiya; Teri E., Klein; Russ B., Altmana (October 2010). "VKORC1 Pharmacogenomics Summary". Pharmacogenet Genomics: 642–644.
  7. ^ Vitamin K. Litwack, Gerald,. Amsterdam. ISBN 978-0-08-057006-8. OCLC 236088320. https://www.worldcat.org/oclc/236088320 
  8. ^ Rost, Simone; Fregin, Andreas; Ivaskevicius, Vytautas; Conzelmann, Ernst; Hörtnagel, Konstanze; Pelz, Hans-Joachim; Lappegard, Knut; Seifried, Erhard et al. (2004-02-05). “Mutations in VKORC1 cause warfarin resistance and multiple coagulation factor deficiency type 2”. Nature 427 (6974): 537–541. doi:10.1038/nature02214. ISSN 1476-4687. PMID 14765194. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/14765194. 
  9. ^ Warfarin Monograph for Professionals” (英語). Drugs.com. 2021年2月5日閲覧。
  10. ^ “Mutations in VKORC1 cause warfarin resistance and multiple coagulation factor deficiency type 2”. Nature 427 (6974): 537–541. (February 2004). Bibcode2004Natur.427..537R. doi:10.1038/nature02214. PMID 14765194. 
  11. ^ Yamamura, M.; Yamamoto, M. (1989-04). “[Tumor metastasis and the fibrinolytic system”]. Gan to Kagaku Ryoho. Cancer & Chemotherapy 16 (4 Pt 2-1): 1246–1254. ISSN 0385-0684. PMID 2730023. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/2730023. 
  12. ^ Yuan, Hsiang-Yu; Chen, Jin-Jer; Lee, M. T. Michael; Wung, Ju-Chieh; Chen, Ying-Fu; Charng, Min-Ji; Lu, Ming-Jen; Hung, Chi-Ren et al. (2005-07-01). “A novel functional VKORC1 promoter polymorphism is associated with inter-individual and inter-ethnic differences in warfarin sensitivity”. Human Molecular Genetics 14 (13): 1745–1751. doi:10.1093/hmg/ddi180. ISSN 0964-6906. PMID 15888487. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15888487. 

参考文献

[編集]