UNIVAC 1101
UNIVAC 1101 は、1950年代にエンジニアリング・リサーチ・アソシエイツ(ERA)が設計しレミントンランドが製造したコンピュータシステム。ERA 1101とも。アメリカでの最初のノイマン型コンピュータである。
概要
[編集]当初、アメリカ海軍艦船局(実際にはNSA)向けに Atlas の名で設計され(Barnaby という漫画の登場人物[1]から名づけられた)、商用版は 1101 と改称した("Task 13" として設計されたため、13を二進法で表記して1101となった)。
長さ11.5メートル、幅6メートルで、論理回路には2700本の真空管を使っている。磁気ドラムメモリは直径21.6cmで3500rpmで回転し、200個のヘッドがある。これに16,384ワード(1ワード24ビットなので、48KB)を保持し、アクセス時間は32μ秒から17m秒であった。
命令は24ビットで、そのうち6ビットが命令コード、4ビットがスキップ値(プログラム上、次の命令までスキップすべきワード数)、14ビットがメモリアドレスである。数値は二進数で表現され、負の数は1の補数で表されている。加算には96μ秒、乗算には352μ秒かかった。
48ビットアキュムレータが1つあり、基本的に減算を行うため、加算は1の補数に変換した上で減算を行うことで実現されていた。奇妙に思えるかもしれないが、この方が1の補数表現に特有の負のゼロ(-0)を生成する可能性が少なくなる。
UNIVAC 1101 には全部で38種類の命令があった。
歴史
[編集]ERAは海軍艦船局向けに2台の Atlas を1950年12月と1953年3月に納入した。商用版を MABEL にするという案もあったが、Jack Hill が 1101 という名称を提案した。ERA 1101 は1951年12月に発表された。
ERAは3台目を自社内に置き、計算サービスを他社に提供しようと考えていた。しかしこれは失敗し、1954年11月、レミントンランドがその(約50万ドルの価値がある)マシンをジョージア工科大学に寄贈した。NSAの2台のマシンは1956年ごろに磁気コアメモリにアップグレードされている。1958年11月、ジョージア工科大学でも4096ワードの磁気コアメモリにアップグレードしており、39,400ドルかかっている。同大学では 1101 は1961年ごろまで使われていた。
命令セット
[編集]摘要 | |
---|---|
y はアドレス y のメモリを意味する。 | X = Xレジスタ(24桁) |
( ) はその内容を意味する。 | Q = Qレジスタ(24桁) |
- | A = アキュムレータ(48桁) |
算術命令 | |
(y) を A にインサート(ロード) | (y) の補数を A にインサート |
(y) を A にインサート(倍精度) | (y) の補数を A にインサート(倍精度) |
(y) の絶対値を A にインサート | (y) の絶対値の補数を A にインサート |
(y) を (A) に加算 | (y) を (A) から減算 |
(y) を (A) に加算(倍精度) | (y) を (A) から減算(倍精度) |
(y) の絶対値を (A) に加算 | (y) の絶対値を (A) から減算 |
(Q) を A にインサート | A の右半分をクリア |
(Q) を (A) に加算 | (A) を Q に移す |
[(y) + 1] を A にインサート | |
乗除算命令 | |
(Q) * (y) の積を A に | (Q) * (y) の論理積を (A) に加算 |
(Q) * (y) の論理積を A に | (A) を (y) で割る(商は Q に、非負の余りは A に) |
(Q) * (y) の積を (A) に加算 | |
論理命令と制御フロー命令 | |
(A) の右半分を y にストア | (A) を左にシフト |
(Q) を y にストア | (Q) を左にシフト |
(Q) を演算子として (y) を (A) で置換 | (y) を次の命令とする |
(y) を (A) で置換(アドレス部分だけ) | (A) がゼロでない場合、(y) を次の命令とする |
(y) を Q にインサート | (A) が負の場合、(y) を次の命令とする |
(Q) が負の場合、(y) を次の命令とする | |
入出力命令と制御命令 | |
(y)の右半分6桁を印字する | オプション停止 |
(y)の右半分6桁を印字しパンチする | 即時停止 |
最終停止 |
関連項目
[編集]- UNIVAC
- UNIVAC 1103 - 後継機種
外部リンク
[編集]- Engineering Research Associates and the Atlas Computer (UNIVAC 1101) by George Gray,
from the Unisys History Newsletter, Volume 3, Number 3, June, 1999 - Introducing the ERA 1101: An operationally proven high-speed, electronic, general purpose digital computer, ERA, no-date. (8 pp) [2]
- ERA 1101 Documents by H. C. Snyder USN