The Open Group Architecture Framework
The Open Group Architecture Framework (TOGAF) は、2020年時点でもっとも多く利用されている[2]エンタープライズアーキテクチャのフレームワークであり、エンタープライズ分野において情報技術のアーキテクチャを設計・計画・実装・管理する包括的アプローチを提供する。TOGAFは設計の概観を与えるもので、通常はビジネス・アプリケーション・データ・テクノロジーの4段階でモデル化される。TOGAFはモジュール化・標準化の考えかたや、実績のある既存の技術・製品に大きく依存している。 TOGAFの開発が始まったのは1995年で、The Open Groupによりアメリカ国防総省のTAFIMとキャップジェミニのIntegrated Architecture Framework (IAF)をベースに開発された[3]。2016年時点で、The Open GroupによればDow Jones Global Titans 50の80%、およびフォーチュン500の60%の企業がTOGAFを利用している。[4]
アーキテクチャとアーキテクチャ・フレームワークの定義
[編集]ANSI/IEEE Std 1471-2000 によれば、(ソフトウェア中心のシステムの)アーキテクチャとは「システムの基盤であり、コンポーネント群、コンポーネント間の相互関係と環境との関係、設計と改良を管理する原則により構成される」ものである。
しかし、TOGAF ではアーキテクチャを「システムの形式記述、あるいはシステムのコンポーネントレベルの実装を補助する詳細な計画」または「コンポーネント群の構造、それらの関係、設計と改良を常に管理制御する原則とガイドライン」であるとされている。
アーキテクチャ・フレームワークは、広範囲の各種アーキテクチャを開発するのに使えるツール群を意味する。アーキテクチャ・フレームワークは以下のような特徴を備える。
- 情報システムを構成要素群で定義するための方法論を記述する。
- 構成要素がどう組合わせられるかを示す。
- ツール群を含む。
- 共通語彙を提供する。
- 推奨標準のリストを含む。
- 構成要素の実装に使用可能な製品のリストを含む。
TOGAF はこのような特徴を持つアーキテクチャ・フレームワークである。
歴史
[編集]TOGAFの作成が始まったのは1990年代始めのことで、最初は技術的なアーキテクチャを開発するための方法論として作成された。その後、The Open Groupによって大規模なエンタープライズアーキテクチャフレームワークとして開発が進められた[6]。 1995年にはTOGAFの最初のバージョン (TOGAF 1.0) がリリースされた。このバージョンは主に、アメリカ国防総省によって1980年代に開発が開始されたTechnical Architecture Framework for Information Management (TAFIM)が基になっていた。
2001年12月にはTOGAF 7が"Technical Edition"という名前でリリースされた[7]。 TOGAF 8 Enterprise Editionは2002年12月にリリースされ、2003年12月にはTOGAF 8.1として更新されたものが再公開された。2005年前後にはTOGAFがThe Open Groupの登録商標となった[8]。 2006年11月にThe Open GroupはTOGAF 8.1.1をリリースした。The Open Groupによれば、2011年2月時点で、15,000を超える個人がTOGAFの認定を受けている[9][10]。 2018年4月時点では、公式に登録されている認定者は77,500人を超えている[11]。
エンタープライズアーキテクチャの領域
[編集]TOGAF のサポートするアーキテクチャ領域は以下の4つである。
- エンタープライズ・ビジネス・アーキテクチャ: ビジネス戦略、管理、組織、主要なビジネスプロセスを定義する。
- アプリケーション・アーキテクチャ: 展開すべき個々のアプリケーションシステムの青写真を提供し、アプリケーションシステム間の連携、その組織の主要なビジネスプロセスとアプリケーションシステムとの関係を定義する。
- データ・アーキテクチャ: 組織の論理的および物理的データ資産の構造を記述し、それに関連するデータ管理リソースを記述する。
- テクノロジー・アーキテクチャ: 中心となるミッションクリティカルなアプリケーションの配備をサポートするためのソフトウェア基盤を記述する。
アーキテクチャ構築手法
[編集]アーキテクチャ構築手法(Architecture Development Method、ADM)は、その組織のビジネスや情報技術の必要性に応じたエンタープライズアーキテクチャを開発するのに適用される。その組織の必要性に応じて調整され、その後アーキテクチャ計画立案活動を管理する際に使用される。
アーキテクチャ開発の流れの概念図はArchitecture Development Cycleにある。
このプロセスは反復的で周期的である。各段階で要求仕様が検証される。フェーズCはデータ・アーキテクチャとアプリケーション・アーキテクチャの一種の結合に関連する。
BとCの間で、追加の明確化を挿入することができ、それにより完全な情報アーキテクチャを提供する。
パフォーマンスエンジニアリングの手法が要求分析フェーズ、ビジネス・アーキテクチャのフェーズ、情報システムアーキテクチャのフェーズ、テクノロジー・アーキテクチャのフェーズのそれぞれに適用される。情報システムアーキテクチャのフェーズでは、データ・アーキテクチャとアプリケーション・アーキテクチャの両方に適用される。
企業連続体
[編集]企業連続体(Enterprise Continuum)とは、ある組織で利用可能な全アーキテクチャ資産の「仮想リポジトリ(virtual repository)」である。それには、アーキテクチャ的モデル、アーキテクチャ的パターン、アーキテクチャ記述などの生産物が含まれる。それらはその組織内に存在する場合もあるし、広くIT業界全体に存在する場合もある。企業連続体とは、企業の様々なレベルでのアーキテクチャ群などを一貫性を持って扱うということを示している。
企業連続体は、アーキテクチャ連続体とソリューション連続体から構成される。アーキテクチャ連続体は再利用可能なアーキテクチャ資産を意味し、その企業が利用可能な情報システム(群)の規則・表現・関連などを含む。ソリューション連続体は再利用可能なソリューション構成要素を定義することにより、アーキテクチャ連続体の実装を説明するものである。
The Open Group
[編集]TOGAF は The Open Group の Architecture Forum が開発し、1990年代半ばごろから改良し続けてきたものである。最新版 9.2は TOGAF 9.2 にある。同フォーラムは TOGAF 9 に取り組んでいる。TOGAF 9 に向けてのテーマは次の通りである。
- 企業、文化、権利保有者
- アーキテクチャ創造
- アーキテクチャに基づく転換
- アーキテクチャの具体化
- アーキテクチャ管理と制御
The Open Group は TOGAF の非商用目的での組織内での利用については無料で TOGAF を提供している。
出版物
[編集]- TOGAF 8.1.1 Enterprise Edition in a book format
- Guide to Security Architecture in TOGAF ADM (セキュリティに関する補足)
- TOGAF/MDA Mapping(OMGのモデル駆動型アーキテクチャ(MDA)とのマッピング)
脚注
[編集]- ^ Stephen Marley (2003). "Architectural Framework," at aiwg.gsfc.nasa.gov, NASA /SCI. Retrieved 10 December 2008 (webarchive.org).
- ^ N. Dedic, "FEAMI: A Methodology to include and to integrate Enterprise Architecture Processes into Existing Organizational Processes," in IEEE Engineering Management Review, doi: 10.1109/EMR.2020.3031968.
- ^ Wout, Jack van't; Waage, Maarten; Hartman, Herman; Stahlecker, Max; Hofman, Aaldert (17 June 2010). The Integrated Architecture Framework Explained: Why, What, How. ISBN 9783642115189
- ^ TOGAF Worldwide
- ^ Department of Defense (1996). Technical Architecture Framework for Information Management. Vol. 4. April 1996
- ^ Marc Lankhorst (2013) Enterprise Architecture at Work: Modelling, Communication and Analysis p. 23
- ^ Jaap Schekkerman (2003) How to Survive in the Jungle of Enterprise Architecture. p. 119
- ^ Tom van Sante, Hans Van Den Bent (2007) Togaf the Open Group Architectural Framework: A Management Guide. p. iv
- ^ <[https://togaf9-cert.opengroup.org/home-public
- ^ 15,000 certifications
- ^ Directory of Certified People