SISGrass
SISGrass(シスグラス)は、オランダに拠点を置く SIS Pitches(シスピッチ)社が販売・施工するスポーツ競技場向けの打ちこみ式ハイブリッド芝である。
概説
[編集]天然芝の補強材として人工繊維を打ち込み、そこに天然芝の根が成長して絡み合う仕組み。透水性が向上することで芝生の健康な育成にも寄与する。
SIS Pitches社は、SISGrassを施工したピッチは天然芝のみのものと比較すると、耐久性が増し芝の回復が早まると主張している[1]。
SISGrassは、チェルシーFCやFCバルセロナ、ベシクタシュJKなどの有名クラブのスタジアム、練習場施工をはじめ、イングランド代表チームのキャンプ地 『セント・ジョージズ・パーク』 や、2018 FIFAワールドカップ開幕戦および決勝戦が行われたルジニキ・スタジアムにも導入されている[2]。
2018 FIFAワールドカップの12会場のうち、2会場は天然芝、6会場にSISGrass、2会場にグラスマスター、2会場にその他ハイブリッド芝が採用されている。
日本での利用
[編集]日本では、ヴィッセル神戸が2016年10月に神戸市西区にある練習場(いぶきの森練習場)で SISGrass の試験施工を行い[3]、Jリーグによる実証実験、第三者機関によるフィールドテストを経て、2017年7月の日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)理事会で2018シーズンよりヴィッセル神戸の本拠地である御崎公園球技場(ノエビアスタジアム神戸)のハイブリッド芝ピッチ内敷設を承認[4]。フィールドテストでは「当該ハイブリッド芝は、安全性および質の点において、天然芝と同等であることが確認された。なお、今回の実証実験の成功要因は、グローイングライトや地温コントロールシステム等、天然芝育成環境の確保によるところが大きいと推察される」との総評を与えている。
また、ラグビーワールドカップ2019の開催地にもなった東京スタジアム(味の素スタジアム)にも2019年に導入されている[5]。2019年9月20日から11月1日までの40日間で日本代表戦2試合を含む8試合を行ったがピッチ状況は非常によく、World Rugbyやプレイした選手から好評を得ていた。しかし2020年東京オリンピックの馬術会場となっていた為、既にSISGrassは撤去され天然芝グラウンドに戻っている。
素材
[編集]SISGrassと類似のハイブリッド芝商品に、デッソスポーツシステムズ社のグラスマスターがあるが、両者は人工繊維の素材が異なっている。デッソ・グラスマスターは、強度や耐久性に優れているという理由からポリプロピレンを、一方SISGrassは、柔軟性と耐久性、皮膚親和性に着目し、ポリエチレンを採用している。[6] またSISGrassのために、独自開発された人工繊維MN Ultraは、FIFA及びWorld Rugbyの認可を受けている。[7][8]
主な導入実績
[編集]国名 | 主な使用チーム | 施工場所(スタジアム名・練習場) | 備考 |
---|---|---|---|
ロシア | FCスパルタク・モスクワ CSKAモスクワ |
ルジニキ・スタジアム | 2018年ロシア・ワールドカップ (開幕戦・決勝戦会場) |
PFCクリリヤ・ソヴェトフ・サマーラ | コスモス・アレーナ | 2018年ロシア・ワールドカップ (準々決勝など) | |
FCモルドヴィア・サランスク | モルドヴィア・アレーナ | 2018年ロシア・ワールドカップ | |
FCスパルタク・モスクワ | オトクリティエ・アレーナ | ||
FCロストフ | ロストフ・アリーナ | ||
FCバルチカ・カリーニングラード | カリーニングラード・スタジアム | ||
日本 | ヴィッセル神戸 | 御崎公園球技場 (ノエビアスタジアム神戸) |
スタジアム内試験施工面の完了 2016年 |
いぶきの森練習場 | 試験施工面の完了 2016年 | ||
御崎公園球技場 (ノエビアスタジアム神戸) |
Jリーグの認可を受け日本初導入 2018年完成 | ||
FC東京 | 東京スタジアム (味の素スタジアム) |
2019年 | |
イングランド | チェルシーFC | 練習場 | 1 面 2015年、 4 面 2016年 |
イングランド代表チーム | セント・ジョージズ・パーク | 1 面 2015年、 1 面 2016年 | |
英国スポーツターフ研究所(STRI) | 研究施設グラウンド | 試験施工面の完了 2015年 | |
ダービー・カウンティFC | iProスタジアム | スタジアム 2016年 | |
ダービー・カウンティFC | 練習場 | 5面 2016年 | |
レディングFC | 3面 2016年 | ||
ハル・シティAFC | 2面 2015年 | ||
フラムFC | 2面 2016年 | ||
AFCボーンマス | バイタリティー・スタジアム | スタジアム内試験施工面の完了 2016年 | |
バーミンガム・シティFC | セント・アンドルーズ・スタジアム | 1面 2017年 | |
ウェールズ | スウォンジー・シティAFC | 練習場 | 1面 2016年 |
アゼルバイジャン | アゼルバイジャン代表チーム | バクー・オリンピックスタジアム | 1面 2015年(UEFA欧州リーグ決勝戦2019年開催) |
トルコ | ベシクタシュJK | ボーダフォン・アリーナ | 1面 2016年(UEFAスーパーカップ決勝2019年) |
ベシクタシュJK | 練習場 | 1面 2016年 | |
チャイクル・リゼスポル | リゼ・アタテュルク・スタジアム | ||
トラブゾンスポル | ヒュセイン・アヴニ・アケル・スタジアム | ||
ガズィアンテプスポル | ガズィアンテプ・カミル・オジャク・スタジアム | スタジアム内試験施工面の完了 2016年 | |
フェネルバフチェSK | シュクリュ・サラジオウル・スタジアム | ||
フェネルバフチェSK | 練習場 | 試験施工面の完了 2016年 | |
サムスンスポル | 19 May Stadium | 1面 2016年 | |
ギリシャ | オリンピアコスFC | カライスカキス・スタジアム | |
イタリア | ACキエーヴォ・ヴェローナ エラス・ヴェローナFC |
スタディオ・マルカントニオ・ベンテゴディ | 1 面 2017年 |
ドイツ | 1860ミュンヘン | 練習場 | 試験施工面の完了 2017年 |
ヴェルダー・ブレーメン | ヴェーザーシュタディオン | 1 面 2017年 | |
スペイン | FCバルセロナ | 練習場 | 試験施工面の完了 2016年 |
アスレティック・ビルバオ | |||
マルタ | マルタ代表チーム | タカリ・ナショナルスタジアム | 1 面 2016年 |
イスラエル | マッカビ・テルアビブFC | サミー・オフェル・スタジアム | |
ノルウェー | ローゼンボリBK | レルケンダール・スタディオン | |
スウェーデン | スウェーデン代表チーム | フレンズ・アリーナ |
脚注
[編集]- ^ “SISGrass Hybrid Pich”. 2016年11月12日閲覧。
- ^ “2018 World Cup breaks new ground with SIS Pitches reinforced turf”. 2016年1月27日閲覧。
- ^ “神戸 18年にも導入検討のハイブリッド芝は新たな選択肢になるか”. スポーツニッポン. (2016年10月29日) 2016年10月29日閲覧。
- ^ 『ノエビアスタジアム神戸 ハイブリッド芝について ~国内スタジアム初のピッチ内敷設へ~』(プレスリリース)日本プロサッカーリーグ、2017年7月25日 。2019年9月22日閲覧。
- ^ “はがれる天然からハイブリッド芝に 味の素スタジアム改修”. 毎日新聞. (2019年8月13日) 2019年9月14日閲覧。
- ^ “Hybrid football pitches: why the grass is always greener”. 2016年10月11日閲覧。
- ^ “SISGrass system recognised as the number one choice for the Besiktas Vodafone Arena, in Istanbul.”. 2016年6月24日閲覧。
- ^ “HYBRID YARNS- OFFERING YOU THE BEST OF BOTH WORLDS”. 2016年11月12日閲覧。