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香港自治法

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
Public Law 116–149から転送)
香港自治法
アメリカ合衆国の国章
正式題名An act to impose sanctions with respect to foreign persons involved in the erosion of certain obligations of China with respect to Hong Kong, and for other purposes.
制定議会アメリカ合衆国第116議会英語版
施行日2020年7月14日
引用
一般法律Pub.L. 116–149
立法経緯

香港自治法(ホンコンじちほう、英語: Hong Kong Autonomy Act)は、アメリカ合衆国の法律。香港の自治の維持に対する中華人民共和国による侵害に関与する外国の個人および団体と、それらと著しい取引のある外国の金融機関に対し制裁を科すことを可能とする法律[1][2]2020年7月1日民主党ブラッド・シャーマン英語版下院議員により提出され、7月14日ドナルド・トランプ大統領の署名により成立。

香港関連の制裁のための法的枠組み

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香港関連の制裁の内、財務省外国資産管理局英語版(OFAC)が所掌する制裁のための法令の枠組みは、上位の公法として本法律のほか「国家緊急事態法英語版」「国際緊急経済権限法」「2019年香港人権・民主主義法」が制定されており[3][4]、執行命令として「大統領令13936号」が発布されている[3]。更に資産凍結・金融取引禁止を実施するOFACの執行規則として「香港関連制裁規則(連邦行政規則集第31巻585部)」が規定されている[3][5]

香港関連の制裁のための法的枠組み
法令の名称
制定法
執行命令
執行規則

制裁対象の特定

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当法律の制定後90日以内に財務長官と協議のうえ国務長官は、英中共同声明および香港基本法に基づく香港の自治を侵害することに関与する外国の個人および団体を特定し、それを記載した報告書を適切な議会委員会に提出するものとする[1]

上記報告書が提出されて30日以上60日以内に国務長官と協議のうえ財務長官は上記報告書の特定された個人および団体と著しい取引を行う外国の金融機関を特定し、それを記載した報告書を適切な議会委員会に提出するものとする。上記二つの報告書は継続的に更新され、可能な限り1992年米国・香港政策法第301条(合衆国法典第22編第5731条)に基づく年次報告書とともに再提出されるものとする[1]

制裁の内容

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一次制裁

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特定された個人および団体に対し米国管轄権の及ぶ資産の凍結を行う[1][2]

特定された個人に対し米国へのビザ発給拒否、国外退去の対象とする[1][2]

上記の制裁について大統領は国務長官の報告書の提出後遅くとも1年以内に科すものとする[1]

二次制裁

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特定された金融機関に対し、以下の項目のうち少なくとも5つの項目の制裁を財務長官の報告書の提出後遅くとも1年以内に、残りの項目も報告書の提出後遅くとも2年以内に科すものとする[1]

  1. 米国金融機関からの融資の禁止
  2. 米国債プライマリーディーラー英語版指定の禁止
  3. 米国政府基金の受け手となることの禁止
  4. 米国管轄の外国為替取引の禁止
  5. 米国管轄の銀行取引の禁止
  6. 米国管轄の資産取引の禁止
  7. 米国管轄の輸出・再輸出・移転の制限
  8. 米国民による制裁対象の金融機関への株式・債券等の投資・購入の禁止
  9. 制裁対象の金融機関の職員の国外退去
  10. 制裁対象の金融機関の役員に対し上記1~8の項目を適用

本法に基づき議会に報告された個人

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2020年10月14日、マイク・ポンペオ国務長官(当時)は、本法第5条(a)項の規定に基づき、香港の自治侵害に関与した人物として10名の個人を特定し、議会に報告した。この10名は既に大統領令13936号に基づき制裁が科されている[6]

本法律の規定に従い、財務省は上記10名と著しい取引を行う外国の金融機関を議会報告日10月14日から30日以上60日以内に特定し、議会に報告することになっていた。同年12月11日に調査の情況が公表され、該当する外国の金融機関を現時点で特定していない事が明らかとなった。引き続き、財務省は該当する外国の金融機関を特定するための調査を行い、米国・香港政策法に基づく年次報告書により報告するとしている[7]

2021年3月11日、中国全国人民代表大会において香港の選挙制度の改正などを求める決定が採択される[8][9]。これを受けて、アントニー・ブリンケン国務長官は、香港の自治の侵害を理由に、本法第5条に基づき24名の個人を特定し、2020年10月14日の報告を2021年3月16日に更新した。この24名は既に大統領令13936号に基づき制裁が科されている[10][11]。同年5月18日には、これまでに特定された個人34名(2020年10月14日に10名、2021年3月16日に24名)と著しい取引を行う外国金融機関を特定するための調査の状況を財務省が公表し、2021年5月1日時点で特定していないと発表した。引き続き、財務省は調査を継続するとしている[12]

本法第5条に基づき議会に報告された個人
氏名 役職 生年月日 出生地 国籍 性別 議会報告日
林鄭月娥 香港特別行政区行政長官 1957年
5月13日
香港 香港 女性 2020年
10月14日
鄧炳強英語版 香港警務処処長 1965年
7月4日
香港 香港 男性
李家超 保安局英語版局長 1957年
12月7日
香港 香港 男性
鄭若驊英語版 香港特別行政区律政司司長 1958年
11月11日
香港 香港 女性
曾国衛英語版 政制・内地事務局英語版局長 1963年
9月1日
香港 香港 男性
夏宝竜 国務院香港マカオ事務弁公室主任 1952年
12月
天津市 中華人民共和国 男性
張曉明英語版 国務院香港マカオ事務弁公室副主任 1963年
9月3日
泰興市 中華人民共和国 男性
駱恵寧 中央政府駐香港連絡弁公室主任 1954年
10月5日
当塗県 中華人民共和国 男性
鄭雁雄 中央政府駐香港国家安全維持公署英語版署長 1963年
8月25日
汕頭市 中華人民共和国 男性
陳国基英語版 香港国家安全維持委員会英語版秘書長 1959年
4月5日
香港 香港 男性
王晨 全人代常務委員会副委員長
中国共産党中央政治局委員
1950年
12月
北京市 中華人民共和国 男性 2021年
3月16日
尤権英語版 中央香港マカオ工作領導小組英語版副組長
中国共産党中央書記処書記
中国共産党中央統一戦線工作部部長
1954年
1月
盧竜県 中華人民共和国 男性
曹建明 全人代常務委員会副委員長 1955年
9月24日
上海市 中華人民共和国 男性
張春賢 全人代常務委員会副委員長 1953年
5月
禹州市 中華人民共和国 男性
沈躍躍英語版 全人代常務委員会副委員長 1957年
1月
寧波市 中華人民共和国 女性
吉炳軒英語版 全人代常務委員会副委員長 1951年
11月
孟津県 中華人民共和国 男性
アルケン・イミルバキ 全人代常務委員会副委員長 1953年
9月
イェンギサール県 中華人民共和国 男性
万鄂湘英語版 全人代常務委員会副委員長 1956年
5月
公安県 中華人民共和国 男性
陳竺 全人代常務委員会副委員長 1953年
8月17日
鎮江市 中華人民共和国 男性
王東明 全人代常務委員会副委員長 1956年
7月
本渓市 中華人民共和国 男性
ペマ・ティンレー 全人代常務委員会副委員長 1951年
10月
テンチェン県 中華人民共和国 男性
丁仲礼英語版 全人代常務委員会副委員長 1957年
1月
嵊州市 中華人民共和国 男性
郝明金英語版 全人代常務委員会副委員長 1956年
12月
嘉祥県 中華人民共和国 男性
蔡達峰英語版 全人代常務委員会副委員長 1960年
6月
上海市 中華人民共和国 男性
武維華英語版 全人代常務委員会副委員長 1956年
9月
臨汾市 中華人民共和国 男性
鄧中華中国語版 国務院香港マカオ事務弁公室副主任 1961年
9月
長沙市 中華人民共和国 男性
李江舟英語版 中央政府駐香港国家安全維持公署副署長 1968年
1月
潜山市 中華人民共和国 男性
劉賜蕙英語版 香港警務処副処長 1965年
7月29日
香港 中華人民共和国 女性
李桂華中国語版 香港警務処国家安全処中国語版高級警司 1964年
11月22日
香港 中華人民共和国 男性
蔡展鵬英語版 香港警務処国家安全処処長 1970年
8月28日
香港 香港 男性
江学礼英語版 香港警務処助理処長 1972年
5月22日
香港 香港 男性
簡啓恩英語版 香港警務処助理処長 1969年
9月22日
香港 香港 男性
譚耀宗英語版 全人代常務委員会委員(香港代表) 1949年
12月15日
香港 中華人民共和国 男性
孫文清英語版 中央政府駐香港国家安全維持公署副署長 1965年 石家荘市 中華人民共和国 男性

各国の反応

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出典

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  1. ^ a b c d e f g “Hong Kong Autonomy Act” (英語). U.S. Government Publishing Office. (2020年7月1日). https://www.govinfo.gov/content/pkg/PLAW-116publ149/pdf/PLAW-116publ149.pdf 2020年7月20日閲覧。 
  2. ^ a b c “米で香港自治法が成立 中国の金融機関制裁が可能に”. 日本経済新聞. (2020年7月15日). https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61524190V10C20A7MM0000/ 2020年7月15日閲覧。 
  3. ^ a b c LEGAL FRAMEWORK FOR HONG KONG-RELATED SANCTIONS, Hong Kong-Related Sanctions”. DEPARTMENT OF THE TREASURY. 2021年7月18日閲覧。
  4. ^ Risks and Considerations for Businesses Operating in Hong Kong, Hong Kong Business Advisory”. DEPARTMENT OF STATE, DEPARTMENT OF THE TREASURY, DEPARTMENT OF COMMERCE, AND DEPARTMENT OF HOMELAND SECURITY. pp. 5-7 (2021年7月16日). 2021年7月17日閲覧。
  5. ^ Hong Kong-Related Sanctions Regulations, Office of Foreign Assets Control, DEPARTMENT OF THE TREASURY. 86. Federal Register. (2021-01-15). pp. 3793-3801. https://home.treasury.gov/system/files/126/fr86_3793.pdf 2021年7月17日閲覧。. 
  6. ^ Identification of Foreign Persons Involved in the Erosion of the Obligations of China Under the Joint Declaration or the Basic Law”. U.S. Department of State (2020年10月14日). 2020年10月15日閲覧。
  7. ^ Report Pursuant to Section 5(b) of the Hong Kong Autonomy Act” (PDF). U.S. Department of The Treasury (2020年12月11日). 2020年12月13日閲覧。
  8. ^ 中国の全人代、香港の「愛国者」選挙制度見直し案を採択”. BBC NEWS (2021年3月11日). 2021年3月18日閲覧。
  9. ^ 中国全人代、香港選挙制度改革に関する決定を承認 民主派を排除”. ロイター (2021年3月11日). 2021年3月18日閲覧。
  10. ^ Update to Report on Identification of Foreign Persons Involved in the Erosion of the Obligations of China Under the Joint Declaration or the Basic Law”. U.S. Department of State (2021年3月16日). 2021年3月17日閲覧。
  11. ^ BLINKEN, ANTONY J. (2021年3月17日). “Hong Kong Autonomy Act Update”. U.S. Department of State. 2021年3月17日閲覧。
  12. ^ Report Pursuant to Section 5(b) of the Hong Kong Autonomy Act” (PDF). U.S. Department of The Treasury (2021年5月18日). 2021年7月11日閲覧。

関連項目

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外部リンク

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