Plain Old Documentation
Plain Old Documentation(POD)は、Perl における単純でプラットフォームに依存しないドキュメンテーションツールである。
特徴
[編集]POD は必要十分な文法を持つ単純で明快な言語として設計された。書体、画像、色、表などの機構を意図的に排除し、必要な機能だけを持つようにしている。その目的は以下の通りである。
- 構文解析が簡単である。
- 他の言語(HTML や TeX)への変換が簡単である。
- サンプルコードを含めるのが簡単である。
- フォーマッタで整形しなくても(ソースコードのままで)読むのが簡単である。
- 書くのが簡単である。さもなくばプログラマは文書を書きたがらない。
perlpod の筆者は「POD形式は本を書くのには不十分である」と書いているが、PODを拡張した書式で本が実際に書かれている。この拡張版PODには表や脚注の機能があり、オライリーメディアから出ているいくつかのPerlに関する本で使われた。例えば、ラリー・ウォール、ジョン・オーワント、トム・クリスチャンセンの Programming Perl(邦題は『プログラミング Perl』)が有名である。POD を若干拡張修正した版としてMOD があり、Mark Jason Dominus による Higher-Order Perl で使われた。
利用
[編集]POD は Perl 関連での文書作成に使われている。Perl 自身、ほとんど全ての公開されている Perl モジュール、多くのスクリプト言語、多くの設計文書、Perl.com などの Perl 関連 Webサイトにある多くの記事、Parrot仮想機械などで使われている。
POD形式のソースコードをそのまま読むことは少ないが、そのままでも読めるように設計されている。一般に、perldoc ツールを使って読んだり、manページ形式に変換したり、HTML形式に変換したりする。
純粋な POD ファイルの拡張子は .pod
だが、POD は通常 Perl のソースコードに埋め込んで使われるため、拡張子は .pl
または .pm
であることが多い。Perl インタプリタの構文解析器はソースコード内の POD 部分を無視するよう設計されている。
POD文書例
[編集]これは文法的に正しい POD であり、節の題名についても規約に従っている。
POD文書ソース | HTML変換結果[1] |
---|---|
=head1 名前 podsample - POD文書のサンプル =head1 概要 $here->isa(Piece::Of::Code); print <<"END"; このインデントされたブロックはフォーマットされた コードか指示のため、走査されずに、スペースは保持 されるでしょう。 END =head1 記述 これは標準テキストです。これはB<ボールド>、I<イタリック>、 C<$リテラルコード>のテキスト書式を 内部に含んでいます。 =head2 例の一覧 =over 4 =item * これは正丸リストです。 =item * ここに別口があります。 =back =begin html <img src="Example.png" align="right" alt="範例" /> <p> ここに、何らかの埋め込まれたHTMLがあります。 このブロックでは、画像を入れたり、 <span style="color: green">スタイル</span>を 適用するか、HTMLで記述しています。PODパーサは HTML出力中にそれを完全に無視することはありません。 </p> =end html =head1 参照 L<perlpod>, L<perldoc>, L<Pod::Parser>. =head1 著作権 Copyright 2005 J. Random Hacker <jrh@cpan.org>. Permission is granted to copy, distribute and/or modify this document under the terms of the GNU Free Documentation License, Version 1.2 or any later version published by the Free Software Foundation; with no Invariant Sections, with no Front-Cover Texts, and with no Back-Cover Texts. =cut
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名前 podsample - POD文書のサンプル
概要
$here->isa(Piece::Of::Code);
記述
これは標準テキストです。これはボールド、
イタリック、
例の一覧
ここに、何らかの埋め込まれたHTMLがあります。 このブロックでは、画像を入れたり、 スタイルを 適用するか、HTMLで記述しています。PODパーサは HTML出力中にそれを完全に無視することはありません。
参照
perlpod, perldoc, the Pod::Parser manpage.
著作権
Copyright 2005 J. Random Hacker <jrh@cpan.org>. Permission is granted to copy, distribute and/or modify this document under the terms of the GNU Free Documentation License, Version 1.2 or any later version published by the Free Software Foundation; with no Invariant Sections, with no Front-Cover Texts, and with no Back-Cover Texts. |
<h1><span id="name">名前</span></h1> <p>podsample - POD文書のサンプル</p> <p> </p> <hr /> <h1><span id="synopsis">概要</span></h1> <pre> $here->isa(Piece::Of::Code); print <<"END"; このインデントされたブロックはフォーマットされた コードか指示のため、走査されずに、スペースは保持 されるでしょう。 END</pre> <p> </p> <hr /> <h1><span id="description">記述</span></h1> <p>これは標準テキストです。これは<strong>ボールド</strong>、 <em>イタリック</em>、<ins>アンダーライン</ins>、<code>リテラルコード</code>の テキスト書式を内部に含んでいます。</p> <p> </p> <h2><span id="an_example_list">例の一覧</span></h2> <ul> <li><strong><span id="item_this_is_a_bulleted_list_2e">これは正丸リストです。</span></strong> <li><strong><span id="item_here_27s_another_item_2e">ここに別口があります。</span></strong> </ul> [[ファイル:Example.png|範例|right|thumb]] <p> ここに、何らかの埋め込まれたHTMLがあります。 このブロックでは、画像を入れたり、 <span style="color: green">スタイル</span>を 適用するか、HTMLで記述しています。PODパーサは HTML出力中にそれを完全に無視することはありません。 </p><p> </p> <hr /> <h1><span id="see_also">参照</span></h1> <p><em>perlpod</em>, <em>perldoc</em>, <a href="/Pod/Parser.html">the Pod::Parser manpage</a> <p> </p> <hr /> <h1><span id="copyright">著作権</span></h1> <p>Copyright 2005 J. Random Hacker <jrh@cpan.org>.</p> <p>Permission is granted to copy, distribute and/or modify this document under the terms of the GNU Free Documentation License, Version 1.2 or any later version published by the Free Software Foundation; with no Invariant Sections, with no Front-Cover Texts, and with no Back-Cover Texts.</p> |
POD における書式の詳細
[編集]PODファイルは ASCII互換の文字符号化方式(例えば Latin-1 や UTF-8)で書かれる。POD の構文解析器はファイルの先頭から POD 形式であるとは見なさず、最初に POD のディレクティブが出て来るところまでは無視する。POD のディレクティブは行の先頭に書かれ、必ず先頭に等号(=)がつく。構文解析器はその後の行がPOD形式であると見なし、"=cut" ディレクティブが先頭にある行までをPOD形式として解釈する。その後、再び別のPODディレクティブが出現するまでは無視する。このため、実行可能なコードを解釈するインタプリタが POD 形式部分を無視するなら、POD 形式と実行可能コードを混在させることができる。
POD の内容は空行で段落分けされる。段落の先頭に空白文字(スペースやタブ)がある場合、その段落は "verbatim paragraphs" として解釈され、中身を整形しない。これはサンプルコードやアスキーアートに使われる。等号記号で始まる段落は "command paragraphs" である。等号の直後に続く文字列が POD ディレクティブとして解釈され、残りの部分はディレクティブに従って整形される。ディレクティブによってはその後の段落にも影響を与える。等号や空白以外で始まる段落は "ordinary paragraphs" として解釈される。
ordinary paragraphs や command paragraphs の中身の構文解析では書式に従って整形が行われる。POD による書式指定は非常に単純である。ボールド、イタリック、アンダーライン、等幅といった書式しかない。また、同一文書内の別の節や他のPOD文書へのリンクも可能である。書式符号には以下の形式がある。
- 1文字の大文字の後に不等号(<)が続き、その後に整形すべき内容、さらにその後に不等号(>)が続く。例えば、
B<bolded text>
となる。 - 1文字の大文字の後に2つ以上の不等号(<<)が続き、その後に整形すべき内容、さらにその後に同じ個数の不等号(>>)が続く。例えば、
B<< bolded text >>
となる。これは内容に不等号が含まれる場合に使われる。
POD 内のコマンド(ディレクティブ)には、4段階の節、番号なしと番号つきのリスト、他の言語の節などがある。他の言語の節は、その言語を解釈する構文解析器による特殊な整形を可能にする。
参考文献
[編集]- Wall, Larry; Christiansen, Tom; & Orwant, Jon (2000). Programming Perl (3rd ed.). Sebastopol: O'Reilly & Associates. ISBN 0-12-345678-9.
脚注
[編集]- ^ 上段はHTML表示イメージ(ウィキペディアに適した形に修正しています)、下段はHTMLソース。実際には、ヘッダタグ、節の目次リスト(デフォルト)、フッタタグも出力される。
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- Perlの小技 - ウェイバックマシン(2004年10月25日アーカイブ分)
- Perlドキュメントの読み方 - ウェイバックマシン(2004年10月19日アーカイブ分)
- 氷魚.jp
- perlpod - Perlに標準インストールされているPODの書き方マニュアル(和訳)
- pod2html - POD→HTMLに変換するツールのマニュアル(和訳)
- index of /Pod - Perlに標準搭載されているPOD関連のモジュールマニュアル。Pod::××なので該当する配下モジュールをクリック。(Pod::)Htmlなどを参照。(和訳)
- The CPAN search site - Perlで一番信頼のおけるモジュール配布サイト。 (英語)
- perlpod - POD形式の文書を書く人向けの説明。
- perlpodspec - POD形式の構文解析器を書く人向けの説明。
- pod2html - POD→HTMLに変換するツールのマニュアル
- Pod::Html - POD→HTMLに変換する標準モジュールのマニュアル
- Getopt::Euclid module - 入力を POD タグに基づいて自動的に構文解析する。
- Index of /src/NWCLARK/perl-5.8.8/pod/ - Perl のマニュアルページの解釈前のPOD形式を公開。
- Index of /src/NWCLARK/perl-5.8.7/lib/ - ディレクトリにPOD書式が埋め込まれたモジュールが多数存在する。