ミリア
ミリア (myria) は、1935年までメートル法で使われていた、104 = 10000(1万)を表す接頭語である[1][2][3]。記号は my、またはまれに ma、M。
ギリシア語で「1万」という意味の μύριοι (mýrioi) に由来し、英語で「無数の」を意味するミリアッド (myriad) と同じ語源である。
用例
[編集]ミリアメートル (myriametre, 10 km) は、19世紀の列車の運賃表に見られるほか、今日でも電波の波長による分類「ミリアメートル波」(波長 1–10 mym の電波。超長波)に名を残している。スウェーデンとノルウェーでは、ミリアメートルに等しい長さの単位ミール (mil) が今日でも日常的に用いられている。フランスで1812年から1839年まで使われていた習慣的度量衡 (mesures usuelles) では、トワーズ(約2メートル)より長い長さの単位が存在しなかった。そこで、この期間にはミリアメートルが使用された[4]。
フランスの取引で慣習的に使われる単位にミリアグラム (10 kg) がある。これは、ヤード・ポンド法(常衡)のクォーター(25ポンド)を置き換えるものである。アイザック・アシモフの1952年の小説『ファウンデーション対帝国』にはミリアトン (10 kt) が登場する。
歴史
[編集]ミリアは、1795年にフランスで最初のメートル法の一部として採用された[5]。しかし、1960年の第11回国際度量衡総会 (CGPM) で国際単位系 (SI) が制定されたとき、ミリアはSI接頭語に含められなかった。
トマス・ヤングによれば、19世紀初頭の出版物では、ミリアの同義語としてミリオ (myrio) も使用されていた[2][3][6]。なお、「ミリオはミリアとは別の10−4 = 1/10000(1万分の1)を意味する接頭語であり、ミリアと共にミリオもメートル法に導入された」とする説もあるが、信憑性は不明である[7]。ノースカロライナ大学チャペルヒル校数学科学教育センター長のラス・ローレットは、「105、10−4、10−5を表す接頭語が広く受け入れられたことはない」としている[8]。
ミリアの記号は最終的に my となった。1905年、国際度量衡委員会 (CIPM) はミリアの記号を M と決定した。これにより、ミリアメートルの記号は Mm となる[9]。しかし、20世紀初頭、電気工学者たちがメガワット、メガオームなどの106を表す接頭語メガを使い始め、その記号 M とした。この用法が広まったため、1935年にCIPMは接頭語メガとその記号 M を正式に採用し、ミリアを完全に廃止した[10]。これにより、(初期メートル法のように10の冪ごとではなく)1000の冪ごとに接頭語をそろえようとする方向性が明確になった。
アメリカ合衆国は1866年にミリアメートルとミリアグラムの使用を認可していたが、1975年にその使用はもはや許容できないと宣言した[11][12]。
関連項目
[編集]出典
[編集]- ^ 29th Congress of the United States, Session 1 (1866年5月13日). “H.R. 596, An Act to authorize the use of the metric system of weights and measures”. 2015年7月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年10月12日閲覧。
- ^ a b Brewster, David (1830). The Edinburgh Encyclopædia. 12. Edinburgh, UK: William Blackwood, John Waugh, John Murray, Baldwin & Cradock, J. M. Richardson. p. 494 2015年10月9日閲覧。
- ^ a b Brewster, David (1832). The Edinburgh Encyclopaedia. 12 (1st American ed.). Joseph and Edward Parker 2015年10月9日閲覧。
- ^ Appell, Wolfgang (2009年9月16日). “Königreich Frankreich” [Kingdom of France] (German). Amtliche Maßeinheiten in Europa 1842 [Official units of measure in Europe 1842]. 2011年10月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年2月10日閲覧。
- ^ “La Loi Du 18 Germinal An 3 - Décision de tracer le mètre, unité fondamentale, sur une règle de platine. Nomenclature des "mesures républicaines". Reprise de la triangulation.” (French). histoire.du.metre.free.fr. 2015年10月12日閲覧。
- ^ Dingler, Johann Gottfried (1823) (German). Polytechnisches Journal. 11. Stuttgart, Germany: J.W. Gotta'schen Buchhandlung 2015年10月9日閲覧。
- ^ Measurements, Units of Measurement, Weights and Measures - Numericana、SBF Glossary: ET to E3
- ^ Russ Rowett A Dictionary of Units of Measurement: Metric Prefixes
- ^ Benoît, Jean-René (1905). “Annex 1”. In Comité International des Poids et Mesures (French). Procès-Verbaux des Séances. 3 (2 ed.). Paris, France: Gauthier-Villars, imprimeur-libraire du Bureau des Longitudes, de l'École Polytechnique. p. 176 2015年10月12日閲覧。
- ^ Comité International des Poids et Mesures (1935) (French). Procès-Verbaux des Séances. 17 (2 ed.). Paris, France: Gauthier-Villars, imprimeur-libraire du Bureau des Longitudes, de l'École Polytechnique. p. 76.
- ^ Roberts, Richard W. (1975-06-01). Metric System of Weights and Measures - Guidelines for Use. USA: Director of the National Bureau of Standards. Federal Register FR Doc.75-15798 (1975-06-18). "Accordingly, the following units and terms listed in the table of metric units in section 2 of the act of July 28, 1866, that legalized the metric system of weights and measures in the United States, are no longer accepted for use in the United States: myriameter, stere, millier or tonneau, quintal, myriagram, kilo (for kilogram)."
- ^ Judson, Lewis V. (1976-10-01). “Appendix 7”. In Barbrow, Louis E.. Weights and Measures Standards of the United States, a brief history. Derived from a prior work by Louis A. Fisher (1905). USA: US Department of Commerce, National Bureau of Standards. p. 33. LCCN 76--60005. NBS Special Publication 447; NIST SP 447; 003-003-01654-3 2015年10月12日閲覧。
- ^ Danloux-Dumesnils, Maurice (1969). The metric system: a critical study of its principles and practice. The Athlone Press. p. 34 2015年10月9日閲覧。 (a translation of the French original Esprit et bon usage du systeme metrique, 1965)