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KISS (カルトレイン)

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KISS (カルトレイン)
KISS(306編成)(2023年撮影)
基本情報
運用者 ペニンチュラ回廊共同権限委員会(Peninsula Corridor Joint Powers Board)
製造所 シュタッドラー・レール
製造年 2020年 -
製造数 161両(7両編成23本)(電車)(予定)
運用開始 2024年
投入先 カルトレイン
主要諸元
編成 7両編成(電車
4両編成(蓄電池電車
軸配置 2'Bo' + Bo'Bo' + 2'2' + Bo'Bo' + Bo'Bo' + 2'2' + Bo'2'(電車)
軌間 1,435 mm
電気方式 交流25,000 V、60 Hz
架空電車線方式
最高速度 177 km/h
車両定員 下記を参照
編成長 182,560 mm
全幅 3,000 mm
全高 4,840 mm
軸重 23.6 t
編成出力 7,000 kW
制動装置 回生ブレーキ
備考 主要数値は[1][2][3][4][5][6]を参照。
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この項目では、スイスの鉄道車両メーカーであるシュタッドラー・レールが展開する2階建て鉄道車両ブランドであるKISSのうち、アメリカ合衆国カリフォルニア州の通勤鉄道であるカルトレイン(Caltrain)に導入された車両について解説する。カルトレインの近代化および輸送力増強の一環として導入が行われ、2024年から営業運転を開始した[1][4][5][6]

概要

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アメリカ合衆国カリフォルニア州の通勤鉄道であるカルトレインでは、近代化プロジェクト(CalMod英語版)の一環として、温室効果ガスや騒音の削減に加え、利用客の増加に対応した列車の高速化、高頻度化を目的に、サンフランシスコサンノゼを結ぶ区間の電化(Peninsula Corridor Electrification Project、PCEP)が実施されている。その一環として2017年、同事業者はシュタッドラー・レールのアメリカ合衆国の支社であるシュタッドラーUS社との間に、従来のディーゼル機関車牽引の客車列車に代わり電化後に使用される2階建て電車の発注を行い、同社はカルトレイン向けの「KISS」の開発を実施した[1][2]

耐久性や耐腐食性に加え、軽量化を意識したアルミニウム製の車体は全高4,840 mm(15 ft 10 1/2 in)の2階建て構造で、各車の1階部分には車椅子用スペースが設けられている他、1階部分と中2階部分を結ぶ車椅子用リフト、編成内に1箇所設けられているバリアフリー対応トイレなど、障害を持つアメリカ人法(ADA)に準拠した設備が各所に設けられている。また、中間車2両の1階部分については、自転車の利用客が多い事を考慮し最大36台の自転車が設置可能なラックが存在する。運転席についても最新の人間工学を用いた操作性や視野の向上を重視した設計となっている。これらの車内には、冷暖房双方に対応した空調装置(HVAC)が完備されている。両開き扉が2箇所存在する1階部分に加えて中2階部分にも乗降扉が設置可能な構造になっているが[注釈 1]、これは電化開業時の低床式プラットホームに加えて将来的な高床式プラットホームの導入に備えたものである[1][7]

車体設計については、貨物列車など他の列車も走行する区間で用いられる事から、欧州連合に加えてアメリカ連邦鉄道局が定めた耐衝突性基準を満たした設計になっており、クラッシャブルゾーンを始めとした衝突時の乗務員や乗客を保護する構造に加え、緊急時のインターホンや最新の診断機能を備えた車両制御システム、故障時に備え冗長性を意識した電力システムなどが搭載されている。また制動装置には回生ブレーキが用いられており、制動の際に生じた電力を回収する事が可能である[1]

契約当初は16編成の発注が行われたが、2018年に3編成の追加発注が実施され、編成両数についても6両編成から7両編成へ増やされた他、2023年にも後述する試験車両を除いた4編成の追加発注が行われている[1][2][4][5][8]

2020年からユタ州ソルトレイクシティ郊外にあるシュタッドラー・レールの工場で車両の製造が実施され、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響によりスケジュールに遅延が生じたものの、カルトレインでの試運転は2023年6月6日から行われた。そして2024年8月10日の特別運転を経て翌8月11日から「KISS」の定期運転が開始された。以降、同年9月21日ダイヤ改正で実施されるサンフランシスコ - サンノゼ間の全列車の「KISS」への置き換えに向け、順次車両の導入が進められている[2][3][6][9][10][11]

編成表

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KISS (カルトレイン、電車) 編成表
号車 B C D G E F A
座席数 1階・中2階 32 17 16 32 32 16 32
2階 52 52 60 52 52 60 52
折り畳み座席数 1階・中2階 18 16 13 16 16 13 18
車椅子スペース 2箇所 2箇所 2箇所 2箇所 2箇所 2箇所 2箇所
自転車収容数 36台 36台
備考・参考 [1][12]

蓄電池車両

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2023年に発注されたKISSのうち、1編成(4両編成1本)については、電化区間に加えて非電化のまま維持される区間への直通運転が可能なよう蓄電池を搭載した試験車両(蓄電池電車、BEMU)として製造される事が決定している。編成の内訳は2階建て車両3両と充電池や電源装置を搭載した車両1両で、電化区間に加えてサンノゼ - ギルロイ間の非電化区間での試験的な営業運転を含めたデモンストレーション走行が実施される事になっている[4][5]

脚注

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注釈

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  1. ^ 製造当初は中2階部分にも両開き式の乗降扉が設置されていたが、後に一旦塞がれている。

出典

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  1. ^ a b c d e f g KISS DOUBLE-DECKER ELECTRIC MULTIPLE UNIT EMU for Peninsula Corridor Joint Powers Board (CALTRAIN), California, USA”. Stadler Rail. 2024年9月5日閲覧。
  2. ^ a b c d First electric trains on Caltrain corridor”. Railvolution (2023年6月10日). 2024年9月5日閲覧。
  3. ^ a b Caltrain Fleet”. Caltrain. 2024年9月5日閲覧。
  4. ^ a b c d Caltrain to Pilot First-in-the-Nation Bi-Level Dual Electric and Battery Powered Train to Expand Zero-Emission Service”. Caltrain (2023年8月17日). 2024年9月5日閲覧。
  5. ^ a b c d Update on Stadler Contract Option and Rail Vehicle Acquisition”. Caltrain (2023年4月24日). 2024年9月5日閲覧。
  6. ^ a b c Caltrain Welcomes First Passengers on New Electric Trains”. Caltrain (2024年8月10日). 2024年9月5日閲覧。
  7. ^ Michalle Bouchard 2018, pp. 5.
  8. ^ Caltrain to purchase additional electric cars”. The Daily Journal (2018年12月7日). 2024年9月5日閲覧。
  9. ^ Caltrain’s first complete electric multiple unit trainset assembled”. MASS TRANSIT (2020年7月29日). 2024年9月5日閲覧。
  10. ^ Tim Fitzpatrick (2024年1月16日). “Utah’s Stadler rail plant rolling out clean trains to replace diesel”. The Salt Lake Tribune. 2024年9月5日閲覧。
  11. ^ PENINSULA CORRIDOR ELECTRIFICATION PROJECT (PCEP)”. Caltrain (2021年4月21日). 2024年9月5日閲覧。
  12. ^ Michalle Bouchard 2018, pp. B.

参考資料

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Michalle Bouchard (5 June 2018). Modernaization Peninsula Corridor Electrification Project (PCEP) (PDF) (Report). Caltrain. 2024年9月5日閲覧 {{cite report}}: 不明な引数|1=が空白で指定されています。 (説明)