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HSPA1L

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
HSPA1L
PDBに登録されている構造
PDBオルソログ検索: RCSB PDBe PDBj
PDBのIDコード一覧

3GDQ

識別子
記号HSPA1L, HSP70-1L, HSP70-HOM, HSP70T, hum70t, heat shock protein family A (Hsp70) member 1 like
外部IDOMIM: 140559 MGI: 96231 HomoloGene: 135835 GeneCards: HSPA1L
遺伝子の位置 (ヒト)
6番染色体 (ヒト)
染色体6番染色体 (ヒト)[1]
6番染色体 (ヒト)
HSPA1L遺伝子の位置
HSPA1L遺伝子の位置
バンドデータ無し開始点31,809,619 bp[1]
終点31,815,283 bp[1]
遺伝子の位置 (マウス)
17番染色体 (マウス)
染色体17番染色体 (マウス)[2]
17番染色体 (マウス)
HSPA1L遺伝子の位置
HSPA1L遺伝子の位置
バンドデータ無し開始点35,191,679 bp[2]
終点35,198,261 bp[2]
RNA発現パターン
さらなる参照発現データ
遺伝子オントロジー
分子機能 unfolded protein binding
ヌクレオチド結合
血漿タンパク結合
ATP binding
熱ショックタンパク質結合
ubiquitin protein ligase binding
ATPアーゼ活性
protein folding chaperone activity
misfolded protein binding
細胞の構成要素 COP9シグナロソーム
細胞質基質
ミトコンドリアマトリックス
blood microparticle
ミトコンドリア
核質
zona pellucida receptor complex
cell body
細胞質
生物学的プロセス regulation of cellular response to heat
response to unfolded protein
protein refolding
positive regulation of protein targeting to mitochondrion
binding of sperm to zona pellucida
cellular response to heat
Unfolded Protein Response
chaperone cofactor-dependent protein refolding
出典:Amigo / QuickGO
オルソログ
ヒトマウス
Entrez
Ensembl
ENSG00000234258
ENSG00000226704
ENSG00000236251
ENSG00000204390
ENSG00000206383
UniProt
RefSeq
(mRNA)

NM_005527

NM_013558

RefSeq
(タンパク質)

NP_005518

NP_038586

場所
(UCSC)
Chr 6: 31.81 – 31.82 MbChr 6: 35.19 – 35.2 Mb
PubMed検索[3][4]
ウィキデータ
閲覧/編集 ヒト閲覧/編集 マウス

HSPA1L(heat shock protein family A (Hsp70) member 1 like)は、ヒトでは6番染色体英語版に位置するHSPA1L遺伝子にコードされるタンパク質である[5][6][7]Hsp70ファミリーの一員そしてシャペロンタンパク質として、新たに翻訳されたタンパク質や誤ったフォールディングをしたタンパク質が適切にフォールディングするよう促進するとともに、変異タンパク質の安定化や分解を促進する[7][8]。その機能は、シグナル伝達アポトーシス、タンパク質恒常性、細胞成長や分化などの生物学的過程に寄与する[8][9]。HSPA1Lは、幅広い種類のがん神経変性疾患細胞老化や加齢、移植片対宿主病と関係している[8][9][10]

構造

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HSPA1L遺伝子はHsp70タンパク質をコードしており、この遺伝子はMHCクラスIII英語版遺伝子領域に、2つの密接に関連した遺伝子(これらもHsp70タンパク質をコードする)とともにクラスターとして存在している[7]。この遺伝子にコードされるHSPA1Lタンパク質は、HSPA1AHSPA1Bと90%が相同性を示す[11]。Hsp70タンパク質であるため、C末端に基質結合ドメイン、N末端にATP結合ドメインという構成をしている[12][13][14][15]。基質結合ドメインは、2層のβサンドイッチサブドメイン(SBDβ)とαヘリカルサブドメイン(SBDα)という2つのサブドメインから構成され、両者はループLα,βによって連結されている。SBDβにはペプチド結合ポケットが存在し、SBDαは基質が結合する溝を覆うふたとして機能する。ATP結合ドメインは4つのサブドメインから構成され、中心部のATP/ADP結合ポケットによって2つのローブへと分けられる[14]。N末端ドメインとC末端ドメインはループLL,1と呼ばれる保存された領域によって連結されており、この領域はアロステリック調節に重要である。最もC末端に位置する構造をとらない領域は、コシャペロンのドッキング部位となっていると考えられている[14][15]

この遺伝子に由来するcDNA5' UTRにはゲノム上で連続していない119 bpの領域が含まれており、そのためHSPA1L遺伝子はHSPA1AHSPA1Bとは異なり、5' UTRに少なくとも1つのイントロンが含まれている可能性が高い[11]

機能

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一般的に、HSPA1Lは幅広い組織に低濃度で存在するが、精巣では恒常的かつ豊富に発現している[15][16]

HSPA1Lは他の熱ショックタンパク質とともに、既存のタンパク質を凝集から保護し、また細胞質基質オルガネラで新たに合成されたタンパク質のフォールディングを媒介する[8][9]。非ネイティブタンパク質を適切にフォールディングさせるため、HSPA1LはATPによって制御された形でタンパク質の疎水的ペプチド断片と相互作用する。その正確な機構は不明であるものの、kinetic partitioningそしてlocal unfoldingと呼ばれる、少なくとも2種類の作用様式が存在する。Kinetic partitioning機構では、Hsp70は基質の結合と放出のサイクルを繰り返し、遊離状態の基質を低濃度に維持する。この機構は凝集を効果的に防ぎ、遊離分子のネイティブ状態へのフォールディングを可能にする。Local unfolding機構では、結合と放出のサイクルによって基質のフォールディングが局所的にほどかれ、ネイティブ状態へのフォールディングの速度論的障壁を乗り越えるよう補助する[8][9]

HSPA1Lはタンパク質のフォールディング、輸送、分解過程に加えて、変異タンパク質の機能を維持する役割も果たす。しかしながら、Hsp70のシャペロン能力を凌駕するようなストレス条件下では変異の影響が表出する[8]。このタンパク質は、細胞傷害性T細胞への効率的な抗原提示を促進することで、抗原特異的腫瘍免疫を高める[9]。HSPA1LはHSPA1AやHSPA1Bと密接な相同性を有するが、その調節は異なっており、熱誘導性ではない[11]

臨床的意義

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Hsp70ファミリーのメンバーは、カスパーゼ依存的経路に作用したり、TNF-αスタウロスポリンドキソルビシンなどのアポトーシス誘導因子に対抗したりすることで、アポトーシスを阻害する。こうした役割は、発がん、神経変性、老化など多くの病理過程と関係している[9]。腫瘍細胞におけるHsp70濃度の上昇は、癌胎児蛋白を複合体形成によって安定化し、これらを細胞内の部位へ輸送することで、腫瘍の悪性度や治療抵抗性を高め、腫瘍細胞の生存を促進している可能性がある[8][9]。そのため、Hsp70を標的としたがんワクチン戦略は動物モデルで高い成功を収めており、臨床試験へと進行している[9]。反対に、アルツハイマー病パーキンソン病ハンチントン病脊髄小脳変性症などの神経変性疾患や、加齢や細胞老化に対しては、Hsp70の過剰発現によってその影響は緩和される。また、百寿者では熱ショックフォにHsp70産生の強力な誘導が観察される[8]。HSPA1Lは、損傷ミトコンドリアへのParkin英語版の輸送を調節し、その除去を促進することで、抗パーキンソン病作用を示す可能性がある[16]

HSPA1Lは移植片対宿主病にも関与しており、診断/予後マーカーとして機能する可能性がある[10]HSPA1L遺伝子の多型、特に基質結合ドメインに位置するものがこの疾患と関連している[15]

相互作用

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HSPA1LはPARK2英語版と相互作用することが示されている[16]

出典

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  1. ^ a b c GRCh38: Ensembl release 89: ENSG00000234258、ENSG00000226704、ENSG00000236251、ENSG00000204390、ENSG00000206383 - Ensembl, May 2017
  2. ^ a b c GRCm38: Ensembl release 89: ENSMUSG00000007033 - Ensembl, May 2017
  3. ^ Human PubMed Reference:
  4. ^ Mouse PubMed Reference:
  5. ^ “Genomic structure of the spermatid-specific hsp70 homolog gene located in the class III region of the major histocompatibility complex of mouse and man”. Journal of Biochemistry 124 (2): 347–53. (Aug 1998). doi:10.1093/oxfordjournals.jbchem.a022118. PMID 9685725. 
  6. ^ “Genetic influences on sarcoidosis”. Eye. 11 11 (2): 155–61. (Nov 1997). doi:10.1038/eye.1997.44. PMID 9349405. 
  7. ^ a b c Entrez Gene: HSPA1L heat shock 70kDa protein 1-like”. 2024年3月1日閲覧。
  8. ^ a b c d e f g h “Hsp70 chaperones: cellular functions and molecular mechanism”. Cellular and Molecular Life Sciences 62 (6): 670–684. (Mar 2005). doi:10.1007/s00018-004-4464-6. PMC 2773841. PMID 15770419. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2773841/. 
  9. ^ a b c d e f g h “HSP72 and gp96 in gastroenterological cancers”. Clinica Chimica Acta; International Journal of Clinical Chemistry 417: 73–9. (Feb 2013). doi:10.1016/j.cca.2012.12.017. PMID 23266770. 
  10. ^ a b “Elevated level of HSPA1L mRNA correlates with graft-versus-host disease”. Transplant Immunology 32 (3): 188–94. (Feb 2015). doi:10.1016/j.trim.2015.02.002. PMID 25680846. 
  11. ^ a b c “Genomic structure of the spermatid-specific hsp70 homolog gene located in the class III region of the major histocompatibility complex of mouse and man”. Journal of Biochemistry 124 (2): 347–53. (Aug 1998). doi:10.1093/oxfordjournals.jbchem.a022118. PMID 9685725. 
  12. ^ “Heat-shock protein 70 antagonizes apoptosis-inducing factor”. Nat. Cell Biol. 3 (9): 839–43. (September 2001). doi:10.1038/ncb0901-839. PMID 11533664. 
  13. ^ “Heat shock protein 72 suppresses apoptosis by increasing the stability of X-linked inhibitor of apoptosis protein in renal ischemia/reperfusion injury”. Mol Med Rep 11 (3): 1793–9. (2015). doi:10.3892/mmr.2014.2939. PMC 4270332. PMID 25394481. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4270332/. 
  14. ^ a b c “Crystal structure of the stress-inducible human heat shock protein 70 substrate-binding domain in complex with peptide substrate”. PLOS ONE 9 (7): e103518. (2014). Bibcode2014PLoSO...9j3518Z. doi:10.1371/journal.pone.0103518. PMC 4110032. PMID 25058147. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4110032/. 
  15. ^ a b c d “Crystal structures of the ATPase domains of four human Hsp70 isoforms: HSPA1L/Hsp70-hom, HSPA2/Hsp70-2, HSPA6/Hsp70B', and HSPA5/BiP/GRP78”. PLOS ONE 5 (1): e8625. (11 January 2010). Bibcode2010PLoSO...5.8625W. doi:10.1371/journal.pone.0008625. PMC 2803158. PMID 20072699. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2803158/. 
  16. ^ a b c “High-content genome-wide RNAi screens identify regulators of parkin upstream of mitophagy”. Nature 504 (7479): 291–5. (Dec 2013). Bibcode2013Natur.504..291H. doi:10.1038/nature12748. PMC 5841086. PMID 24270810. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5841086/. 

関連文献

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外部リンク

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