グジャラート語
グジャラート語 | |
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ગુજરાતી Gujarātī | |
話される国 |
インド ウガンダ パキスタン ケニア 南アフリカ共和国 タンザニア アメリカ合衆国 イギリス オーストラリア ニュージーランド フィジー カナダ |
話者数 | 4,600万人 |
話者数の順位 | 22 |
言語系統 | |
表記体系 | グジャラーティー文字 |
公的地位 | |
公用語 |
インド グジャラート州 ダマン・ディーウ ダードラー及びナガル・ハヴェーリー |
少数言語として 承認 | インド(連邦政府) |
言語コード | |
ISO 639-1 |
gu |
ISO 639-2 |
guj |
ISO 639-3 |
guj |
グジャラート語(グジャラートご、ગુજરાતી [ɡuʤəˈrɑːtiː]: グジャラーティー)はインド西部のグジャラート州の公用語で、インド連邦レベルでも憲法の第8付則に定められた22の指定言語のひとつである。インド・ヨーロッパ語族のインド・イラン語派に属す。
名詞は、男性名詞・女性名詞・中性名詞の3つの性を持つ。
分布
[編集]世界で4600万人が話し、世界で23番目に話者の多い言語である。そのうち、約4550万人がインドに、約15万人がウガンダに、約5万人がケニアに、おおよそ10万人がパキスタンに住んでいる。
グジャラート州の公用語である。またインド連邦レベルでも憲法の第8付則に定められた22の指定言語のひとつである。
グジャラート語はグジャラート州に隣接する連邦直轄地域のダマン・ディーウ、ダードラー及びナガル・ハヴェーリーでも主要な言語である。
イギリスと北米にもグジャラート語の話者が多数いる。英国ではレスター(ミッドランド)とロンドン北部のウェンブリーがグジャラート語のポピュラーな地域である。アメリカでは、ニュージャージー州、ニューヨーク州、カリフォルニア州とテキサス州でグジャラート語がポピュラーである。世界に広くグジャラート語の話者が広がっているために、公式用語である非在住インド人(Non Resident Indian: NRI)と呼ばれるよりは、非在住グジャラート人(Non Resident Gujarati: NRG)と冗談で呼ばれることもある。
グジャラート語は「インドの父」マハートマー・ガーンディーと「パーキスターンの父」ムハンマド・アリー・ジンナーの母語である。
歴史
[編集]グジャラート語の前身はアパブランシャにさかのぼることが出来る。アパブランシャは、アンヒルワーラー (パータン) のソーランキー王朝の王シッダラージ・ジャヤシンの治世のジャイナ教の僧であり、高名な学者であったヘーマチャンドラによって文法が記述された。アパブランシャはプラークリットの最後の段階にある文学語であるが、後期になるとグジャラート語の要素を含むようになった。
もっとも古い文学作品は口頭伝承で伝えられているもので、17世紀の2人の熱烈な支持者、クリシュナの崇拝者と偉大な平等主義者のナラシンハ・メヘター (Narasinh Mehta) に起源が遡れる(後にガーンディーの発想の基となった)。ナラシンハ・メヘター自身の話はプレーマーナンダ (Premananda) の長い語りに編集されており、偉大な詩人を意味する"maha-kavi"(“マハー・カヴィ”)と現代の言語史研究者たちに認められている。彼が生きていたのは、おそらく17世紀末である。その他には、多数の詩人がバクティと現在では呼ばれているヒンドゥー教の信仰活動のなかで活躍した。
プレーマーナンダは"vyakhyan-kar"(“ヴィヤキヤン-カール”)と呼ばれる吟遊詩人で、題材を詳しく何行もの歌にのせて語った。語りが流暢であったので、何百行にもわたる歌も人々の記憶に残り、朝のお勤めまで歌われた。この意味では、インドにはもっと古いヴェーダの伝統がかなり後まで残っていたのは確かである。
グジャラート地方と言語への近代的な調査は英国の行政官アレクサンダー・フォーブスによる。19世紀にこの土地の過去千年の歴史を調べ、多数の手写本をまとめた。グジャラート語を扱っている学術団体で、彼にちなんだ名前のついているファーバス・グジャラーティー・サバー (Farbas Gujarati Sabha) はムンバイーに本部がある。
音声
[編集]グジャラート語は [ə a i u e ɛ o ɔ] の8種類の母音を持つ。母音の長短は区別せず、歴史的な i ī および u ū はそれぞれ合流してひとつの母音になっている[1]。
[e o] 以外の 6母音については鼻母音も発達している[2]。
グジャラート語の母音の特徴に息もれ声(つぶやき声)の母音がある。この母音は、歴史的には子音 [ɦ] または開放時につぶやき声を持つ子音(有声帯気音)と隣接する母音が融合したものである。つぶやき声を上付きの h で表すと、以下のような対立をなす[3]。
意味 | グジャラート語 | ヒンディー語 |
---|---|---|
外 | bāʰr | bahār |
十二 | bār | bārah[4] |
おもし | bhār | bhār |
グジャラート語の子音には以下のものがある。ヒンディー語にない特徴的な子音に、そり舌側面音 /ɭ/ がある。括弧内は外来語に出現する。また、ḍ ḍh は母音間ではヒンディー語と同様に [ɻ ɻʱ] と発音される[5]。
ph は実際には摩擦音化して [f] になる。また、母音間では他の無声帯気音も摩擦音化し、有声帯気音は弱化する。
v は語頭で [v]、母音間で [v] または [w]、それ以外では [w] として現れる[6]。
両唇音 唇歯音 |
歯音 歯茎音 |
そり舌音 | 後部歯茎音 硬口蓋音 |
軟口蓋音 | 声門音 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
破裂音 破擦音 |
無声無気音 | p | t /t̪/ | ṭ /ʈ/ | c /tʃ/ | k | |
無声帯気音 | ph /pʰ/ | th /t̪ʰ/ | ṭh /ʈʰ/ | ch /tʃʰ/ | kh /kʰ/ | ||
有声無気音 | b | d /d̪/ | ḍ /ɖ/ | j /dʒ/ | g | ||
有声帯気音 | bh /bʱ/ | dh /d̪ʱ/ | ḍh /ɖʱ/ | jh /dʒʱ/ | gh /ɡʱ/ | ||
鼻音 | m | n | ṇ /ɳ/ | ||||
摩擦音 | 無声音 | s | š | ||||
有声音 | (z) | h /ɦ/ | |||||
はじき音 | r[7] | ||||||
半母音 | v | y /j/ | |||||
側面音 | l | ḷ /ɭ/ |
語彙
[編集]今日話されているグジャラート語は、イスラム教徒のスルタンの5世紀にわたる統治のために、他のインドの言語同様アラビア語、ペルシア語から多数の語彙を取り入れている。これは多くは世俗的、または非宗教的分野である。
筆記法
[編集]デーヴァナーガリー(サンスクリット語やヒンディー語を書くのに使われる文字)によく似たグジャラート文字で書かれるが、頭に横線(シローレーカー)がないほか、いくつかの違いがある。
脚注
[編集]参考文献
[編集]- Masica, Colin P (1993) [1991]. The Indo-Aryan languages (paperback ed.). Cambridge University Press. ISBN 0521299446
- Cardona, George; Suthar, Babu (2007) [2003]. “Gujarati”. In George Cardona; Dhanesh Jain. The Indo-Aryan Languages (paperback ed.). Routledge. pp. 659-697. ISBN 9780415772945