コンテンツにスキップ

Geographic Data Files

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

Geographic Data Files (GDF) は、地理データのための交換ファイルフォーマットである。一般的なGISフォーマットとは異なり、GDFはデータの取得と表現に関する詳細なルール、および、標準的な機能、属性、関係性の幅広い一覧を提供する。最新の拡張では、歩行者ナビゲーション、3D地図レンダリング、先進運転支援システム (ADAS) への適用が拡充されている。

GDFは、カーナビゲーション、フリート管理、配送管理、道路交通分析、交通管理、車両位置特定、など、多くの産業でデータ交換に一般的に使用されている[1]

GDFは、元々フラットなプレーンテキストファイルとして始まった。大規模な地理情報アプリケーションで直接使用することは意図されておらず、通常はアプリケーション内で使うために、より効率的なフォーマットに変換する必要がある[1]。最近のXMLおよびSQLへの変換の開発により用途が広がっている。

GDF形式の地図は、HERETomTomMapscape BVGeoSmartAutomotive Navigation DataAutoNavi、NavInfo、など、多くの地図プロバイダが提供している。

標準化

[編集]

GDFは、道路ネットワークや他の地理データをモデル化、記述、転送するために使用される国際標準である。

この標準は、当初、デジタル地図プロバイダ、自動者メーカ、電子機器メーカ、の協力のものでCENによって策定された。これらの標準化の取り組みの成果 (CEN GDF 3.0 または ENV14825:1996) は、ISO/TC204 サブワーキンググループ3[2] によって作成された国際標準の主要なたたき台となった[1]

  • ISO GDF 4.0 (正式な標準名は ISO 14825:2004) (廃止)[3]
  • ISO GDF 5.0 (正式な標準名は ISO 14825:2011) (廃止)[4]
  • ISO GDF 5.1 (正式な標準名は ISO 20524-1:2020[5], ISO 20524-2:2020[6])

しかし、ISO GDF標準が存在しているにもかかわらず、モデル抽象化の特質、解釈の違い、各地図プロバイダの独自コンテンツ拡張部の存在、などにより、異なるプロバイダのGDF製品の間で相互運用性の問題が生じた。実際には、地図プロバイダの独自コンテンツ拡張部により、GDFには完全な互換性はない。このため、GDF 5.0 では、拡張されたメタデータと実装選択のためのフラグに関して、大幅な改善が提供されている。

GDF 5.0

[編集]

GDF 5.0 の仕様は、2001年から2008年にかけて、オーストラリアカナダチェコフランスドイツ日本韓国オランダアメリカ合衆国、の専門家が参加して開発され、編纂された。ISO/TC211の標準との調和にむけた広範な活動が行われた。GDF 5.0 は2011年7月に公開された[4]

GDF 5.0 の主な改良点には、UMLモデルの移行と改良、線形参照および地理空間ウェブ標準との調和、3Dコンテンツと時間座標のサポート、包括的な文字セットおよび音声表現、新しいXMLおよびSQLベースの配信形式、がある。

GDF 5.1

[編集]

GDF 5.0はアプリケーションとしてカーナビゲーションを主要対象とした地理データベースを扱っているが、その後協調ITS、マルチモーダルナビゲーション、自動運転システム等の新規アプリケーションの出現に呼応し、改訂のニーズが高まってきた。2014年10月にGDF 5.0を改訂する作業が始められた。GDF 5.0から存在する部分を変更したパート1は2020年4月に、協調ITS、マルチモーダルナビゲーション、自動運転システム、など、新たなシステムに対応するための規格を記述したパート2は2020年11月に発行された[5][6]

GDF標準化の背景と根拠

[編集]

1980年代後期には、デジタル道路地図データの製造業者と利用者は、共通のデータ交換基準の必要性を求めるようになった。このような基準の欠如は、こういったデータを使用する産業の成長と成功にとって障害になると考えられた[1]高度道路交通システム (ITS) 産業の登場前、空間データの交換基準の開発は、主に地域ごとに進められ、道路運送関連アプリケーションの特殊な要件にあわせて設計されていなかった。

1990年代にはカーナビゲーションの開発が進み、地図プロバイダとカーナビゲーション製造業者の間でデジタル地図データを交換するためにGDFが使われるようになった。GDFの仕様は、地理情報の収集と交換の両方を可能にする基盤を提供した。GDFの元々の設計では、アプリケーションに依存しないモデルを想定していたが、標準化においては特にカーナビゲーションを可能とする地図データ要件に重点を置いた[1]。それ以降、GDFはデータモデリングの能力、国際的な適用範囲、地理的なドメインの拡大、および、多様な交換形式の面で進化してきた。その結果、GDFは幅広いアプリケーション領域をカバーし、多くの地理空間技術に適用されている。


脚注

[編集]

注釈

[編集]

出典

[編集]
  1. ^ a b c d e GDF - Geographic Data Files”. August 8, 2024閲覧。
  2. ^ WG3 ITS 地理データ”. August 8, 2024閲覧。
  3. ^ ISO 14825:2004”. August 8, 2024閲覧。
  4. ^ a b ISO 14825:2011”. August 8, 2024閲覧。
  5. ^ a b ISO 20524-1:2020”. August 8, 2024閲覧。
  6. ^ a b ISO 20524-2:2020”. August 8, 2024閲覧。

関連項目

[編集]

外部リンク

[編集]

https://wiki.openstreetmap.org/wiki/GDF