スターリング・ポンド
スターリング・ポンド | |
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Pound sterling | |
ISO 4217 コード | GBP |
中央銀行 | イングランド銀行 |
ウェブサイト | www |
公式 使用国・地域 | イギリス ジャージー島 |
非公式使用 国・地域 | ピトケアン諸島[1][2] ラ・リネア, スペイン[3] ジンバブエ[4] |
インフレ率 | 10.1% (2023年3月) |
情報源 | ons.gov.uk |
ペッグしている 通貨 | フォークランド諸島ポンド (等価) ジブラルタル・ポンド (等価) セントヘレナ・ポンド (等価) ジャージー・ポンド ガーンジー・ポンド マンクス・ポンド |
補助単位 | |
1⁄100 | ペニー |
通貨記号 | £ |
ペニー | p |
複数形 | pounds |
ペニー | ペンス(pence) |
硬貨 | |
広く流通 | 1, 2, 5, 10, 20, 50ペンス 1, 2ポンド |
紙幣 | |
広く流通 | 5, 10, 20, 50ポンド |
流通は稀 | 1, 100ポンド |
硬貨鋳造 | 王立造幣局 |
ウェブサイト | www |
スターリング・ポンド[5](英: pound sterling)は、イギリスの通貨。
通貨単位としてのポンドは、本国を旧宗主国とするイギリス連邦諸国で用いられ、エジプトなどでは現在も用いられているが、単にポンドというと通常イギリスのポンドのことを示す。
通貨記号は £、国際通貨コード (ISO 4217) は、GBPであるが、STGとも略記する。
呼称としてはポンド、スターリングの他にクィド (quid) が用いられることがある。日本ではイギリス・ポンド、または英ポンド(えいポンド)、UKポンドと呼ばれることも多い。
概要
[編集]補助単位はペニー (penny/複数形: ペンス = pence) で、1971年より1ポンドは100ペンスである(下記「過去のポンド」参照)。
USドルが世界の決済通貨として使われるようになる以前は、イギリス帝国の経済力を背景に、国際的な決済通貨として使われた。イギリスの欧州連合加盟に伴い、ヨーロッパの共通通貨であるユーロにイギリスが参加するかどうかが焦点となったが、イギリス国内に反対が多く、通貨統合は見送られた。
対日本円で変動相場制を採用している。以前の固定相場制の頃は、当初1ポンド1,008円(1949年 - 1967年)、後に864円(1967年 - 1971年)だった。
なお2007年1月下旬に、1ポンドが241円40銭だったが、2007年3月2日には226円95銭と、1ポンドあたり約14円も下落しているように、為替変動の幅の大きい通貨である。2007年6月は約240円 - 246円で推移し、7月に入ってからは一時251円に達した。その後サブプライムローンショックによる影響も大きく、徐々に下落して2008年3月17日には192円台を記録。ポンド安が落ち着いた所へ、9月からの世界金融危機により徐々に大きく落ち込み、2008年10月に一時138円台にまで落ち込んだ。
さらに2009年1月23日 (GMT) には、1995年4月の史上最安値を14年ぶりに更新し、初めて118円台に突入。18か月でポンド/円レートが133円、半値以下まで下落した事になる。2016年のイギリスの欧州連合離脱是非を問う国民投票で、離脱派が多数になったことから、ポンドと自国通貨との両替を取りやめた両替商が多発した。
紙幣
[編集]イングランド銀行の発券する紙幣は5ポンド・10ポンド・20ポンド・50ポンドの4種類であるが、主に市中に流通しているのは20ポンド以下の紙幣である。
現在の紙幣は2016年9月以降より随時発行されている「シリーズG」。全てポリマー紙幣であり、表面にはイギリスの君主(エリザベス2世、2024年6月よりチャールズ3世[6][7])の肖像、裏面に歴史上の人物が描かれている。
- 5ポンド(ターコイズ・ブルー): ウィンストン・チャーチル(Winston Churchill、第61代イギリス首相)
- 10ポンド(橙): ジェイン・オースティン(Jane Austen、小説家)
- 20ポンド(紫): ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー(Joseph Mallord William Turner、ロマン主義の画家)
- 50ポンド(赤): アラン・チューリング(Alan Turing、数学者、暗号研究者、計算機科学者、哲学者)
- 超高額紙幣として、銀行間のみ(イングランド銀行発、アイルランド銀行やスコットランド銀行行き)で使用される1億ポンド紙幣が存在する[8]。用途は主として銀行券発行力証明。
このほかにスコットランドと北アイルランドの商業銀行計6行が発行する紙幣がある。額面の種類は発券銀行によって異なるが、1ポンドや100ポンドの紙幣も存在する。
硬貨
[編集]王立造幣局 (Royal Mint) にて発行されている硬貨は、1ペニー・2・5・10・20・50ペンス、1・2ポンドの8種類である。中世からの伝統に則り、全ての硬貨の表面にはイギリスの君主の肖像と称号のラテン語訳[9]が刻印されている。
硬貨は定期的に刷新されており、1990年代に5、10、50ペンス硬貨のサイズが縮小され[10]、1ペニー〜10ペンス硬貨の材質が低コストなものに変更され、2017年には1ポンド硬貨が丸型から十二角形のバイメタル貨に刷新された。絵柄も2000年代に入り定期的に変更されるようになり、2008年より2ポンド硬貨以外の全硬貨の絵柄が刷新された[11]他、2023年に新国王の即位に伴い再び全硬貨の絵柄の刷新が発表され[12]、同年にミントセットが発売、2024年より通常流通としての発行が始まった。
現在流通している硬貨は以下の通り。
額面 | 形状 | 直径 | 重量 | 材質 | 表面の図柄 | 裏面の図柄 | 発行年 |
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1ペニー | 丸 | 20.3mm | 3.56g | 青銅 | エリザベス2世 | 落とし格子 | 1971- |
銅メッキ鋼 | 1992- | ||||||
国章の左下部分 | 2008- | ||||||
チャールズ3世 | ヨーロッパヤマネ | 2024- | |||||
2ペンス | 25.9mm | 7.12g | 青銅 | エリザベス2世 | プリンス・オブ・ウェールズの羽根 | 1971- | |
銅メッキ鋼 | 1992- | ||||||
国章の右上部分 | 2008- | ||||||
チャールズ3世 | リスとマツの枝 | 2024- | |||||
5ペンス | 丸 | 18mm | 3.25g | 白銅 | エリザベス2世 | 冠とアザミ | 1990- |
ニッケルメッキ鋼 | 国章の中央部分 | 2008- | |||||
チャールズ3世 | オークの枝 | 2024- | |||||
10ペンス | 24.5mm | 6.5g | 白銅 | エリザベス2世 | 冠を頂くライオン | 1992- | |
ニッケルメッキ鋼 | 国章の左上部分 | 2008- | |||||
チャールズ3世 | ヨーロッパオオライチョウ | 2024- | |||||
20ペンス | 七角形 | 21.4mm | 5g | 白銅 | エリザベス2世 | 冠を頂くテューダー・ローズ | 1982- |
国章の右下部分 | 2008- | ||||||
チャールズ3世 | ニシツノメドリ | 2024- | |||||
50ペンス | 27.3mm | 8g | 白銅 | エリザベス2世 | 女神ブリタニアとライオン | 1997- | |
国章の中央下部分 | 2008- | ||||||
チャールズ3世 | タイセイヨウサケ | 2024- | |||||
1ポンド | 十二角形 | 23.43mm | 8.75g | 外周:洋白
内周:ニッケル合金 |
エリザベス2世 | バラ、アザミ、リーキ、シャムロック | 2017- |
チャールズ3世 | セイヨウミツバチ | 2024- | |||||
2ポンド | 丸 | 28.4mm | 12g | 外周:洋白
内周:白銅 |
エリザベス2世 | 歯車や彩紋、「巨人の肩の上に立つ」 | 1998- |
女神ブリタニア | 2015- | ||||||
チャールズ3世 | バラ、アザミ、リーキ、シャムロック | 2024- |
50ペンス硬貨と2ポンド硬貨は定期的に記念硬貨が発行され、通常硬貨に混じって流通するかプルーフ貨幣としてケース販売されている。
また、過去に流通していた旧硬貨は以下の通りである。
- 1/2ペニー(青銅貨、1984年発行終了):王冠
- 大型5ペンス(白銅貨、1990年発行終了): アザミ冠紋章(スコットランドの国花)
- 大型10ペンス(白銅貨、1992年発行終了): 冠を頂くライオン(イギリスの国章のクレスト部分)
- 大型50ペンス(白銅貨、1997年発行終了): ルーローの七角形の硬貨。ブリタニア(大英帝国を象徴する女神)とライオン
- 丸型1ポンド(ニッケル黄銅貨、2017年発行終了): 2008年までは発行年ごとにデザインが異なり、連合王国の紋章と、イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドをそれぞれ代表する意匠が順に使われてきた。
- 植物=イングランドのオーク、スコットランドのアザミ、ウェールズのリーク、北アイルランドの亜麻。
- 王家の紋章=イングランドの「三頭のライオン」、スコットランドのライオン、ウェールズのドラゴン、北アイルランドのケルト十字。
- 代表的な橋=イングランドのゲーツヘッド・ミレニアム橋、スコットランドのフォース橋、ウェールズのメナイ吊橋、北アイルランドのエジプシャン・アーチ。
なお、この他に旧通貨システムによるクラウン銀貨やソブリン金貨、それにモーンディマネーと呼ばれる、1ペニーから4ペンスまでの4枚硬貨セットが発行される場合があるが、いずれも流通用ではなく、コレクター向けのアイテムである。また、ブリタニア金貨を始めとした様々な絵柄の地金型金貨や銀貨が投資家・コレクター向けに発行されている。
過去のポンド
[編集]従来は1ポンド=20シリング=240ペンスであったが、計算時に混乱しやすいため、1971年2月13日に1ポンド=100ペンスに切り替えられた。イギリスとアイルランドで通貨補助単位の変更を行ったこの日を「デシマル・デー(十進法の日)」と称している。
古い補助貨幣はこのほか、クラウン (crown)、フローリン (florin)、グロート (groat)、ギニー (guinea) がある。1クラウン=5シリング、1フローリン=2シリング、1グロート=4ペンス、1ギニー=21シリングに相当した。イギリスでは、1817年にソブリン金貨が本位金貨として鋳造され、この金貨を1ポンドに流通させ、自由鋳造、自由融解を認める唯一の無制限法貨としたが、ギニー金貨も引き続き流通することになり、この時、価値が21シリングと定められた。因みに1ポンドは前述の通り20シリングであった。第一次世界大戦後にアメリカ合衆国ドルに取って代わられるまで、世界で最も信用の高い国際通貨であった。
通貨名は、古代の銀貨の質量に由来する。8世紀にマーシア王オファがフランク王国のドゥニエ貨幣にならって1ペニーウェイト(1ポンドの1/240)の銀を含む銀貨を鋳造したのをはじめとする。ただし当時の1ポンドは現在の1ポンドとは質量が異なる。
ポンドを表す記号 £ は、1ポンドにあたるラテン語「libra(リーブラ、元は「天秤」「はかり」の意)」の頭文字に由来する。
スターリングシルバーという言葉が使われるが、これはイギリスの銀貨と同じ品位の銀(銀含有量92.5%)を表す言葉である。
為替レート
[編集]現在のGBPの為替レート | |
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Google Finance: | AUD CAD CHF CNY EUR HKD JPY (/円) USD |
Yahoo! Finance: | AUD CAD CHF CNY EUR HKD JPY (/円) USD |
Yahoo! ファイナンス: | AUD CAD CHF CNY EUR HKD JPY (/円) USD |
XE: | AUD CAD CHF CNY EUR HKD JPY (/円) USD |
OANDA: | AUD CAD CHF CNY EUR HKD JPY (/円) USD |
外貨準備
[編集]スターリング・ポンドは世界各国において外貨準備として用いられている。各国主要通貨との比率推移は以下の通りである。
2018 | 2017 | 2016 | 2015 | 2014 | 2013 | 2012 | 2011 | 2010 | 2009 | 2008 | 2007 | 2006 | 2005 | 2004 | 2003 | 2002 | 2001 | 2000 | 1995 | 1990 | 1985 | 1980 | 1975 | 1970 | 1965 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
アメリカ・ドル | 61.74% | 62.72% | 65.36% | 65.73% | 65.14% | 61.24% | 61.47% | 62.59% | 62.14% | 62.05% | 63.77% | 63.87% | 65.04% | 66.51% | 65.51% | 65.45% | 66.50% | 71.51% | 71.13% | 58.96% | 47.14% | 56.66% | 57.88% | 84.61% | 84.85% | 72.93% |
ユーロ (1999年以前はECU) | 20.67% | 20.16% | 19.13% | 19.14% | 21.20% | 24.20% | 24.05% | 24.40% | 25.71% | 27.66% | 26.21% | 26.14% | 24.99% | 23.89% | 24.68% | 25.03% | 23.65% | 19.18% | 18.29% | 8.53% | 11.64% | 14.00% | 17.46% | |||
ドイツマルク | 15.75% | 19.83% | 13.74% | 12.92% | 6.62% | 1.94% | 0.17% | |||||||||||||||||||
日本円 | 5.20% | 4.89% | 3.95% | 3.75% | 3.54% | 3.82% | 4.09% | 3.61% | 3.66% | 2.90% | 3.47% | 3.18% | 3.46% | 3.96% | 4.28% | 4.42% | 4.94% | 5.04% | 6.06% | 6.77% | 9.40% | 8.69% | 3.93% | 0.61% | ||
イギリスポンド | 4.42% | 4.54% | 4.34% | 4.71% | 3.70% | 3.98% | 4.04% | 3.83% | 3.94% | 4.25% | 4.22% | 4.82% | 4.52% | 3.75% | 3.49% | 2.86% | 2.92% | 2.70% | 2.75% | 2.11% | 2.39% | 2.03% | 2.40% | 3.42% | 11.36% | 25.76% |
フランス・フラン | 2.35% | 2.71% | 0.58% | 0.97% | 1.16% | 0.73% | 1.11% | |||||||||||||||||||
カナダドル | 1.84% | 2.02% | 1.94% | 1.77% | 1.75% | 1.83% | 1.42% | |||||||||||||||||||
オーストラリア・ドル | 1.62% | 1.80% | 1.69% | 1.77% | 1.59% | 1.82% | 1.46% | |||||||||||||||||||
スイス・フラン | 0.14% | 0.18% | 0.16% | 0.27% | 0.24% | 0.27% | 0.21% | 0.08% | 0.13% | 0.12% | 0.14% | 0.16% | 0.17% | 0.15% | 0.17% | 0.23% | 0.41% | 0.25% | 0.27% | 0.33% | 0.84% | 1.40% | 2.25% | 1.34% | 0.61% | |
オランダ・ギルダー | 0.32% | 1.15% | 0.78% | 0.89% | 0.66% | 0.08% | ||||||||||||||||||||
その他 | 2.48% | 2.50% | 2.37% | 2.86% | 2.83% | 2.84% | 3.26% | 5.49% | 4.43% | 3.04% | 2.20% | 1.83% | 1.81% | 1.74% | 1.87% | 2.01% | 1.58% | 1.31% | 1.49% | 4.87% | 4.89% | 2.13% | 1.29% | 1.58% | 0.43% | 0.03% |
出典:World Currency Composition of Official Foreign Exchange Reserves 国際通貨基金 |
脚注
[編集]出典
[編集]- ^ Alongside the New Zealand Dollar and US Dollar
- ^ Asia and Pacific Review 2003/04 p. 245 ISBN 1862170398
- ^ https://www.elmundo.es/andalucia/2017/11/06/5a0022c5ca474129158b45a6.html
- ^ Alongside Zimbabwean dollar (suspended indefinitely from 12 April 2009), Euro, US Dollar, South African rand, Botswana pula, Indian rupees, Australian dollars, Chinese yuan, and Japanese yen [1]. The U.S. Dollar has been adopted as the official currency for all government transactions.
- ^ 「出納官吏事務規程第十四条及び第十六条に規定する外国貨幣換算率を定める等の件」
- ^ “チャールズ国王の新紙幣お披露目 24年半ばまでに流通”. www.afpbb.com. 2023年1月21日閲覧。
- ^ “First pictures of King Charles banknotes revealed”. BBC News. BBC. (2022年12月20日) 2023年1月18日閲覧。
- ^ “Security by Design - A closer look at Bank of England notes”. 2012年12月31日閲覧。
- ^ エリザベス2世の場合、『神の恩寵による女王、信仰の守護者、エリザベス二世』(DEI.GRA.REG. FID.DEF 又は D.G.R F.D.。Dei Gratia Regina Fidei Defensorの略)。チャールズ3世の場合、『神の恩寵による王、信仰の守護者、チャールズ三世』(DEI.GRA.REX. FID.DEF 又は D.G.R F.D.。Dei Gratia Rex Fidei Defensorの略)。
- ^ このうち5ペンス硬貨・10ペンス硬貨はサイズがそれぞれ旧1シリング硬貨・旧2シリング硬貨と同一になっており、1990年と1992年のサイズ縮小まで少量ながら旧シリング硬貨も混ざって流通していた。
- ^ イギリスの紋章のエスカッシャン(盾)部分を各硬貨ごとに分けて描き、それを並べると一枚の画像となるようにデザインされている。同年から2017年まで発行された1ポンド硬貨にはその全体像が描かれていた。
- ^ 表面は新国王のチャールズ3世の肖像、裏面は左半分に国王のモノグラムに彩られた額面数字、右半分にイギリスにゆかりのある動植物の姿が描かれている。
- ^ a b ニューヨーク連邦準備銀行のForeign Exchange Rates Historical Searchを元にした。
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]