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デコカセットシステム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
DCシステムから転送)
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読み込み中の画面(MAMEより)

デコカセットシステムDECO Cassette System)は1980年9月にデータイーストが開発した、アーケードゲーム基板である。アーケードゲームの汎用的なシステム基板として完成形となったものとしては、日本初とされる。初期は「DSシリーズ」「DCシステム」という名称であったが、後にデコカセットシステムと表記されるようになった。通称「デコカセ」。

概要

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アーケードゲームコンピュータゲームを作るにあたり、ハードウェアソフトウェアとも共通使用できるものは残しておき、ゲーム毎に異なる部分だけ入れ換えるという概念は、コンピュータゲーム作りがある程度進んだ時点で考え方として存在していたが、本システムはそれが確立された、もっとも初期のものと言える。

本システムの特徴としては、データの入れ替えが必要な部分にROMなどの高価な半導体メモリーでなく、安価なカセットテープを採用した点にある。

デコカセットシステムはカセットテープに暗号化されたプログラムやデータをマザーボードに読み込ませる仕組みとなっており、マザーボード側にプロテクトドングルが用意されているなど、コピー対策としての側面もあった[1]。ただし、ただし、採用していたコンパクトカセット(通称「大カセ」)が市販のオーディオカセットテープと同じだったがゆえにダビングが容易であり、最初にドングル付きの基板を買えばオペレータ同士で別のゲームをコピーしあえるという問題が発覚した[1]。その後、他との互換性のない独自仕様の超小型のカセットテープ(通称「小カセ」)[注釈 1]がリリースされた[注釈 2]。国内においてはデコカセットシステムでは全てのタイトルにおいてこの「大カセ」「小カセ」の2種類がどちらもリリースされている一方、日本国外では「小カセ」のみ流通している。

ひとつのタイトルにはこのカセットテープと、キーモジュールと呼ばれるコピー防止用の樹脂で固められた基板がセットで提供され、それぞれを本システム基板にセットした上で起動する形となる。電源投入後は「DECO CASSETTE SYSTEM」のタイトルが表示され、テープが自動で巻き戻された後に自動で再生が始まり、下部のカウントが「001」になるまでカウントダウンが進む。「001」になった直後にテープの巻き戻しが自動で行われ、巻き戻しが完了した時点でゲームが起動する仕組みとなっている。

カセットテープの採用によりゲームタイトルの入れ替えが安価に実現できた反面、電源投入時に毎回ロードに5分程度の時間がかかるなと、テープメディアならではの長短両所をあわせ持つ。カセットデッキは専用の独自のものを採用しており、巻き戻し・一時停止・リトライなどを基板側から制御可能なフルロジックタイプが採用されている。このため、リードエラーが発生した場合でも自動で巻き戻してエラー発生箇所から再開する、などのオペレーションが自動で行われる画期的な機構を備えている。

リリース当初は本システムを組み込んだテーブル筐体 (大型の通称「デコカセ大基板」内蔵)が「DSシリーズ」として提供された。82万円と高めの設定であったものの、ゲーム単体が38000円程度と安めの提供であり、日本の業界からも好意的に迎えられた[1]。また、後に汎用筐体向けの、小型化されたシステム基板(通称「デコカセ小基板」)が「DECO MULTI」としてリリースされ普及していった。

その後経年劣化により正常に稼働できる筐体が減りつつあることが問題視され、第三者による保存活動の対象となったほか、テープデッキをEPROM基板や他メディアへ置き換える研究をしている者もいる[1]

ソフトウェア一覧

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  • デコカセットシステムのソフトウェアはオレンジ色の紙箱に入っており、ナンバリングされている(欠番あり)。
  • 紙箱の中にはインストレーションカード、説明書、ディップスイッチ表、及びカセットテープとキーモジュールが入っている。
  • 国内版では全てのタイトルで「小カセ」版及び「大カセ」版がリリースされた。海外版は「小カセ」版のみ。
  • ソフトウェアはリージョンロックされ、起動には対応するリージョンBIOS ROMとキーモジュールが必要となる。
  • ソフトウェアの末尾にはリージョン記号としてA(JP)・B(US)・C(UK)・D(GE)・EI(FR)・F(MILTI)の記載がある。
  • デコカセシステムではなくEPROMで実装された基板があるものについては附記に記載した。
  • ソフトウェアは全て縦画面で、横画面のソフトはリリースされていない。
デコカセットシステムのソフトウェア一覧
# 発売年月 タイトル 海外タイトル 附記
1 1980年12月 ハイウェイチェイス HWY CHASE
2 1980年12月 戦国忍者隊 NINJA
3 1980年12月 マンハッタン MANHATTAN
4 1981年2月 テラニアン TERRANEAN
6 1980年12月 ネブラー NEBULA
7 1981年2月 アストロファンタジア ASTRO FANTASIA
8 1981年3月 ザ・タワー THE TOWER
9 1981年5月 スーパーアストロファイター SUPER ASTRO FIGHTER
10 1981年3月 オーシャンツーオーシャン OCEAN TO OCEAN
11 1981年4月 ロックンチェイス LOCK 'N' CHASE EPROM版あり
12 1981年8月 フラッシュボーイ THE DECO KID
13 1981年8月 プロゴルフ (18チャレンジ版 / トーナメント版) PRO GOLF 2バージョンあり。EPROM版あり
14 1981年6月 DSテレジャン (日本国内のみ)
15 1982年1月 ラッキーポーカー LUCKY POKER
16 1982年2月 トレジャーアイランド TREASURE ISLAND
18 1982年2月 エクスプローラ EXPLORER
19 1982年5月 ディスコ・ナンバーワン DISCO NO.1 / SWEET HEART EPROM版あり
20 1982年6月 トルネード TORNADO
21 1982年5月 ミッション・エックス MISSION-X ZOAR (本作の修正版) あり
22 1982年6月 プロ・テニス PRO TENNIS EPROM版あり
発売前に盗難に遭い、それを基にコピー品が作られたことで、警視庁へ被害届が提出され、刑事および民事事件として捜査された[2]
また1981年に発売した『プロゴルフ』を基に無断コピー品が製造販売されたとして、1982年7月2日にテクノスジャパンなどに訴訟を起こした[3]
24 1982年7月 詰碁快勝 (つめごかいしょう) (日本国内のみ)
25 1982年10月 フィッシング ANGLER DANGLER
26 1982年8月 ハンバーガー BURGER TIME EPROM版あり
27 1982年11月 バーニンラバー BURNIN' RUBBER / BUMP 'N' JUMP EPROM版あり
28 1982年11月 グレイプロップ GRAPLOP / CLUSTER BUSTER EPROM版あり
29 1983年4月 ラッパッパ LA-PA-PA / ROOTIN' TOOTIN' EPROM版あり
30 1983年2月 スケーター SKATER GAITER
31 1983年3月 プロボウリング PRO BOWLING
32 1983年4月 ナイト・スター NIGHT STAR
33 1983年7月 プロサッカー PRO SOCCER EPROM版あり
34 1983年9月 スーパーダブルステニス SUPER DOUBLES TENNIS EPROM版あり
37 1983年10月 ゼロイゼ ZEROIZE
38 1984年3月 スクラムトライ SCRUM TRY
39 1984年2月 ピーターペッパーズアイスクリーム PETER PEPPER'S ICECREAM FACTORY
40 1984年4月 ファイティングアイスホッケー FIGHTING ICE HOCKEY
41 1984年5月 大相撲 (日本国内のみ) 音声ボード付き
42 1984年8月 ハローゲートボール (日本国内のみ)
44 1985年8月 バルダーダッシュ BOULDER DASH
UX-7 1984年12月 東京見栄診療所 (日本国内のみ)
UX-9 1985年5月 芸能人資格試験 (日本国内のみ) マルチ画面

脚注

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注釈

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  1. ^ この「小カセ」はフィリップス社が開発したミニカセットと呼ばれる超小型のカセットテープをベースにしたものであったが、コピー防止のためシェルやヘッド形状などの異なるものが採用されており、それぞれの互換性はない。
  2. ^ ライターのこうべみせがゲーム保存文化研究所に寄稿した記事では、サーバやシンセサイザのバックアップに用いられたため、入手困難だったと記されている[1]

出典

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  1. ^ a b c d e 時代を先取りしたデコカセの思想と、有志によるデコカセ保存活動”. ゲーム文化保存研究所 (2018年4月2日). 2024年9月23日閲覧。
  2. ^ 産業スパイ的コピー行為 データイーストの「プロテニス」テープが盗難に」『ゲームマシン』第191号、アミューズメント通信社、1982年7月1日、1面。2024年9月20日閲覧。
  3. ^ データイースト「プロテニス」で 2社相手に訴訟 アイビスは逆に訴訟起し、反発」『ゲームマシン』第199号、アミューズメント通信社、1982年11月1日、2面。2024年9月22日閲覧。

外部リンク

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