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コプロスマ属

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
Coprosmaから転送)
コプロスマ属
分類APG IV
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 core eudicots
階級なし : キク上群 superasterids
階級なし : キク類 asterids
階級なし : asterids I
: リンドウ目 Gentianales
: アカネ科 Rubiaceae
亜科 : アカネ亜科 Rubioideae
: コケサンゴ連 Anthospermeae
: コプロスマ属 Coprosma
学名
Coprosma J.R.Forst. & G.Forst.
タイプ種
Coprosma foetidissima[1]

本文参照

コプロスマ属あるいはヘクソボチョウジ属[2]Coprosma)とは、アカネ科の一つである。分布域は主にオセアニア地域で(参照: #分布)、特にハワイ諸島では絶滅の恐れがある固有種が数種類見られる(参照: #下位分類)。この属の種は美しい花冠をつけるなど多種多様な虫媒花を擁する[3]アカネ科植物としては珍しく雌雄異株かつ花弁の目立たない風媒花を咲かせる(参照: #特徴)。葉を観賞する園芸植物としていくつかのニュージーランド産の原種や改良品種が出回っている(参照: #利用)。

名称

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属名 Coprosmaギリシャ語 κόπρος (kópros)〈糞〉と ὀσμή (osmḗ)〈におい〉の合成によるもので[4]、全体で〈糞のようなにおいがする〉という意味合いである[5]。このような属名がつけられたのは、この属の種として Forster & Forster (1776:138) で史上初めて記載された C. foetidissima[注 1]コプロスマ・ルキダC. lucida)の2種[6]のうち前者が激しい悪臭を放つためという旨が原記載文献にも記されている。C. foetidissima には stinkwood〈臭う木〉という英名がつけられるようになるが、葉を潰した際のにおいは「腐った卵」と形容される代物である[7]

分布

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マレー群島区系から太平洋オーストラリア沖のマッコーリー島チリ沖のフアン・フェルナンデス諸島にかけて分布する[8]

生態

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ニュージーランドにおいては海岸沿いから山地に至るまであらゆる生態系に見られるが、22種が森林や低木林(藪)に見られる(Allan (1961); Poole & Adams (1994)[9]コプロスマ・ロブスタC. robusta)は湿った場所に、コプロスマ・ルキダはそれよりも乾燥した場所に、低木のコプロスマ・レペンスC. repens; マオリ語: taupata タウパタ)は沿岸地帯、とりわけ浜によく見られる[5]

耐霜性や半耐寒性を持つ種も存在する[10]

特徴

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コプロスマ・レペンスの雄花。
コプロスマ・レペンスの雌花。

常緑低木および小高木[10]

葉は概して対生で単葉、線形から円形、革質であるものが多く明淡緑色から濃緑色、紫色または褐色[10]

花は筒形または狭漏斗[10]や鐘形で4-5裂[11]、単生あるいは集散花序ないしは房状につき[10]、白色または緑色を帯びるが小さくて目立たない[11]。少なくともニュージーランド産でこの属の種は全て雌雄異株風媒花(風で花粉を運んでもらう花)をつける(Webb, Lloyd & Delph (1999)[9]。アカネ科ではコプロスマ属のほかにGalopina属やヤマトグサ属Theligonum)も花が縮小して風媒花が発達しているが、これらは基本的に両性花であるアカネ科にあっては異例のことである[12]。雄花の雄蕊は長く、雌花の柱頭も花粉を捕まえる舌のように突き出て長い[5]

果実は小さな多肉の漿果で同じアカネ科であるコーヒーノキと同様に種子を2つ含む。果肉の表面には必ずと言ってよいほど光沢が見られ、色は半透明な白色、青色、黄色、橙色、赤色といった具合にまちまちである[5]。これらの果実は房状になることが多く、特にコプロスマ・ロブスタコプロスマ・ルキダの場合それが顕著である[5]

利用

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園芸

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コプロスマ・カーキー 'ヴァリエガータ'
コプロスマ 'キウイゴールド'

花は目立たないが葉が美しく[10]、観賞されるのは専ら葉である[13]。雌株と雄株を両方植えれば実がなる[10]

園芸用となる主な原種はコプロスマ・レペンスコプロスマ・ロブスタ種間雑種コプロスマ・カーキーC. × kirkii[11][10]で、ほかにコプロスマ・アセローサC. acerosa[10]コプロスマ・ルキダコプロスマ・ピートリエイC. petriei)も知られる[11]。カーキーの方がレペンスよりも耐寒性が強く、暖地であれば露地でも越冬すると思われる[11]。品種としては 'ビートソンズゴールド'('Beatson's Gold')、'チョコレートソルジャー'('Chocolate Soldier')、'コッパーシャイン'('Coppershine')[11][10]、'キウイゴールド'('Kiwi Gold')[10]、レペンス由来の 'ピクチュラータ'('Picturata'; 'アウレア' ('Aurea') とも)や 'マーブルクイーン'('Marble Queen')、ロブスタ由来の 'ウィリアムシアイ・ヴァリエガータ'('Williamsii Variegata')[11][10]、カーキーの班入り品種 'ヴァリエガータ'('Variegata')などが存在する[10]

ロックガーデンや低木のボーダー花壇に植える[10]。降霜地域では半耐寒性種や品種を最低2度の温室あるいは観賞用温室で栽培する[10]横井 (1988)日本での栽培について、種によっては関東の無加温温室で容易に越冬し、十分成長すると述べている。温室で育てる場合は壌土を基本とする鉢物用土に砂を混ぜて植え、明るく遮光し、通気をよくする[10]。レペンスは室内の鉢物向きで日陰でも生長するが強光線が必要と思われ、暗い室内では枝が間延びして徒長しやすくなってしまう[11]。生長期は十分に水やりをし、成分のバランスがとれた液肥を月に1度施し、その他は適度に水やりを行う[10]。屋外で育てる場合は中性-弱酸性かつ適度に肥沃で湿っているが排水のよい土壌で、日なたか半日陰に植える[10]

薬用

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コプロスマ・ルキダ、Coprosma macrocarpa、コプロスマ・ロブスタの3種はマオリ語ではまとめてカラムーあるいはカラム(karamū)と呼ばれる[7]が、これらカラムーの葉や小枝の煎じ汁は傷や打撲の塗り薬として用いられ、また熱さましや腎臓の不調の際にも利用された[14]

下位分類

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コプロスマ・アセローサ
C. acutifolia
C. arborea
C. areolata
C. ciliata
C. crassifolia
C. dodonaeifolia
C. dumosa
C. ernodeoides
C. fatuhivaensis
C. foetidissima
C. foliosa
C. hirtella
C. intertexta
コプロスマ・カーキー
C. linariifolia
C. longifolia
コプロスマ・ルキダ
C. macrocarpa
C. meyeri
C. microcarpa
C. montana
C. × neglecta
C. nitida
C. ochracea
C. parviflora
C. perpusilla subsp. perpusilla
コプロスマ・ピートリエイ
C. propinqua
C. pubens
C. putida
C. rhynchocarpa(雌株)
C. quadrifida
コプロスマ・レペンス
C. rhamnoides
C. rigida
コプロスマ・ロブスタ
C. rotundifolia
C. rubra
C. rugosa
C. sundana
C. temetiuensis
C. tenuicaulis
C. tenuifolia
C. virescens
C. waima

分類は Govaerts et al. (2021) による。

脚注

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注釈

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  1. ^ なお、この種小名はラテン語で〈この上なくくさい〉という意味である。
  2. ^ マオリ語の ā は長母音であるため、厳密には「マーマーンギ」と転写する方がより原音に近い。

出典

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  1. ^ Tropicos.org. Missouri Botanical Garden. 01 Jul 2019 <http://www.tropicos.org/Name/40013835>
  2. ^ 米倉, 浩司『新維管束植物分類表』北隆館、2019年、200頁。ISBN 978-4-8326-1008-8 
  3. ^ 福岡 (1989)
  4. ^ Forster & Forster (1776:138).
  5. ^ a b c d e Fitter (2009:130).
  6. ^ WCSP (2019), Coprosma lucida J.R.Forst. & G.Forst., Char. Gen. Pl.: 138 (1776).
  7. ^ a b c d e f g h i j Coprosma - Māori Dictionary. 2019年7月3日閲覧。
  8. ^ WCSP (2019), Coprosma J.R.Forst. & G.Forst., Char. Gen. Pl.: 137 (1776).
  9. ^ a b Merrett & Robertson (2012).
  10. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w ブリッケル (2003).
  11. ^ a b c d e f g h i j k l m n 横井 (1988).
  12. ^ Ronse De Craene (2010:319).
  13. ^ コプロスマ”. みんなの趣味の園芸. NHK出版. 2019年7月3日閲覧。
  14. ^ a b c 塩田 (2007).
  15. ^ Large, Mark F.; Mabberley, David J.; Wood, Elise (2020). “Coprosma autumnalis (kanono; Rubiaceae) in New Zealand: nomenclature, iconography and phenology”. Kew Bulletin 75, 37. doi:10.1007/s12225-020-9876-4. 
  16. ^ a b Cantley, Jason T.; Sporck-Koehler, Margaret J.; Chau, Marian. M. (2016). “New and resurrected Hawaiian species of pilo (Coprosma, Rubiaceae) from the island of Maui”. PhytoKeys 60: 33–48. doi:10.3897/phytokeys.60.6465. https://www.researchgate.net/publication/294283434_New_and_resurrected_Hawaiian_species_of_pilo_Coprosma_Rubiaceae_from_the_island_of_Maui. 
  17. ^ a b c Wagner, Warren L.; Lorence, David H. (2011). “Revision of Coprosma (Rubiaceae, tribe Anthospermeae) in the Marquesas Islands”. PhytoKeys 4: 109–124. doi:10.3897/phytokeys.4.1600. https://www.researchgate.net/publication/51881294_Revision_of_Coprosma_Rubiaceae_tribe_Anthospermeae_in_the_Marquesas_Islands. 
  18. ^ Fosberg, F. R. (1968). “Studies in Pacific Rubiaceae: VI–VIII”. Brittonia 20 (4): 292–294. doi:10.2307/2805686. JSTOR 2805686. 

参考文献

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ラテン語:

日本語:

  • 横井, 政人「コプロスマ〔属〕」『園芸植物大事典2』小学館、1988年、284-5頁。ISBN 4-09-305102-X 
  • 福岡誠行 著「Rubiaceae アカネ科」、堀田満,他 編『世界有用植物事典』平凡社、1989年、928頁。ISBN 4-582-11505-5 
  • クリストファー・ブリッケル 編集責任、横井政人 監訳『A-Z 園芸植物百科事典』誠文堂新光社、2003年、294-5頁。ISBN 4-416-40300-3
  • 塩田, 晴康 著「コプロスマ」、ニュージーランド学会 編『ニュージーランド百科事典』春風社、2007年。ISBN 978-4-86110-111-3 

英語:

関連文献

[編集]
  • Allan, H.H. (1961). Flora of New Zealand. 1. Wellington: Government Printer. NCID BA88475593 
  • Poole, A.L.; Adams, Nancy M. (1994). Trees and shrubs of New Zealand (Rev. ed.). Lincoln: Manaaki Whenua Press. NCID BA65181822 
  • Webb, C. J.; Lloyd, David G.; Delph, Lynda F. (1999). “Gender dimorphism in indigenous New Zealand seed plants”. New Zealand Journal of Botany 37 (1): 119-130. doi:10.1080/0028825X.1999.9512618. 

外部リンク

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