B*-環
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函数解析学における B*-環(ビー・スターかん、英: B*-algebra; B*-代数)は、両立するバナッハ環と *-環の構造を持ち、B*-条件と呼ばれる恒等式を満足するものである。言葉を変えれば、完備なノルムと双線型かつ連続な乗法を備える複素ベクトル空間であって、適当な条件を満足する対合を備えた代数系である。
定義
[編集]バナッハ *-環
[編集]→詳細は「バナッハ*-環」を参照
バナッハ *-環 A は複素数体 C 上のバナッハ環であって、対合と呼ばれる写像 ∗: A → A で以下の条件を満足するものを備える代数系である。x, y ∈ A, λ ∈ C は任意、上付きバー • は複素共軛を表すものとして
- (x + y)∗ = x∗ + y∗.
- (λx)∗ = λ x∗.
- (xy)∗ = y∗x∗.
- (x∗)∗ = x.
B*-環
[編集]- B*-条件
- (B*) ‖ xx∗ ‖ = ‖ x ‖2 (∀x ∈ A)
を満足するバナッハ *-環 A を表すのに1946年、C. E. Rickart は B*-環を導入した。
注意: B* と C*
[編集]→「C*-環」も参照
- C*-条件
- (C*) ‖ x∗x ‖ = ‖ x ‖‖ x∗ ‖ (∀x ∈ A)
を満足するバナッハ *-環 A は C*-環と呼ばれる[* 1] 。条件 (B*) から自動的に、対合 ∗ が等距、すなわち ‖ x ‖ = ‖ x∗ ‖ であることが従う。従ってこのとき (C*) が満足されるから、故に B*-環は C*-環である。実は (C*) から (B*) が導かれる(これは自明なことではない、が条件 ‖ x ‖ = ‖ x∗ ‖ を用いることなくそれを証明することができる[4])。そのような理由から、現在の用語法では「B*-環」と呼ぶことは稀で、「C*-環」と呼ぶようになっている。
注
[編集]注釈
[編集]- ^ 「C*-環」(C*-algebra) の語は1947年にアーヴィング・シーガルが、適当なヒルベルト空間 H 上の有界作用素全体の成す線型環 B(H) のノルム閉な部分線型環を記述するために導入した。"C" は「閉」(closed) を表すものである[1][2]。シーガルは自身の論文において、C*-環を「ヒルベルト空間上の有界作用素の成す一様閉な自己随伴線型環」として定義している[3]。
出典
[編集]- ^ Doran & Belfi 1986, p. 6, Google Books.
- ^ Segal 1947
- ^ Segal 1947, p. 75
- ^ Doran & Belfi 1986, pp. 5–6, Google Books.
参考文献
[編集]- Doran, Robert S.; Belfi, Victor A. (1986), Characterizations of C*-algebras: The Gelfand-Naimark Theorems, CRC Press, ISBN 978-0-8247-7569-8.
- Segal, Irving (1947), “Irreducible representations of operator algebras”, Bulletin of the American Mathematical Society 53 (2): 73–88, doi:10.1090/S0002-9904-1947-08742-5.