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タンゴ型潜水艦

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
641B型潜水艦から転送)
タンゴ型潜水艦
北大西洋を航行するタンゴ型潜水艦(1993年6月撮影)
基本情報
艦種 通常動力型潜水艦
命名基準 三桁の番号
ソ連各地のコムソモール(一部の艦)
ユーリー2世(B-380)
建造所 ゴーリキー(現・ニジニ・ノヴゴロド)、クラスノエ・ソルモヴォ工場英語版ロシア語版[1]
運用者  ソビエト連邦海軍(1973年 – 1991年)
 ロシア海軍(1991年 – 2007年)
建造期間 1972年 – 1982年
就役期間 1973年 – 2016年
同型艦 18隻
建造数 18隻
前級 フォックストロット型潜水艦
次級 キロ型潜水艦
要目
排水量 2,770トンt[2]
水中排水量 3,600t[2]
長さ 90.2m[2]
8.6m[2]
吃水 5.7m[2]
高さ 12.2m
主機 2D42Mディーゼルエンジン×3基
PG101電動機×2基
PG102電動機×1基
PG104電動機(140馬力)×1基
推進器 3軸[2]
出力 水上:5,700馬力 (4,250 kW)
水中:5,400馬力(最大)
電力 4.6MW
電源 60SU蓄電池×4基(112セル)
速力 水上:13ノット (24 km/h)[2]
水中:16ノット (30 km/h)[2]
シュノーケル航行:7.0ノット
航続距離 水上:1万4,000海里/7ノット[2]
水中:450海里/2.5ノット[2]
燃料 軽油420t
航海日数 80日
潜航深度 通常:240m[2]
最大:300m
乗員 78名[2](うち士官・政治将校17人)
兵装 533mm魚雷発射管×6基
魚雷×24本または機雷×44個)
FCS 火器管制装置「レニングラード」
レーダー MCI-25水上捜索レーダー(NATOコードネーム「スヌープ・トレイ」)[1]
電波探信儀「カスケード」
ソナー 音波探信儀「ルビコン」
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タンゴ型潜水艦(-がたせんすいかん Tango class submarine)は、ソヴィエト/ロシア海軍通常動力型潜水艦である。タンゴ型NATOコードネームであり、ソ連海軍の計画名は641B型潜水艦<ソム>Подводные лодки проекта 641B "Сом")である。“ソム(Сом)”とはロシア語で“ナマズ”を意味する。

開発

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本型はフォックストロット型潜水艦の改良型であり、ソ連第3世代潜水艦に分類される通常動力型潜水艦である。

設計はルビーン海洋工学中央設計局で行われ、ゾシマ・アレクサンドロヴィッチ・デリビンロシア語版が主任設計を担当し、海軍からは二等艦長ロシア語版のV・A・マルシェフとI・A・コツビンがオブサーバーとして参加した[2]。1971年より、ゴーリキー(現・ニジニ・ノヴゴロド)のクラスノエ・ソルモヴォ工場英語版ロシア語版で建造が始まった。

設計

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641B型潜水艦の艦型図

フォックストロット型潜水艦からの改良点として、航法装置や火器管制装置などの自動化と電子化による操作員の負担減少、寝台数・個室数増加による居住性向上、船体殻絶縁皮膜加工による静粛性向上、蓄電池・通信装置・電子機器の高性能化、魚雷搭載量の増加による攻撃力の強化[2]などが挙げられる。

艦体

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船殻は6つの隔壁で区切られ、艦首から魚雷発射管室、前部蓄電池室、発令所、後部蓄電池室、機関室、電動機室、乗組員室となっていた[3]。蓄電池室が2ヶ所になったことで、潜航時間はフォックストロット型潜水艦より長くなった[1]。脱出ハッチは第1・3・7区画にあった。艦体の大型化により居住性は大きく向上し、艦長と士官の個別のベッドが乗組員室に設置されたほか、水兵のベッドも全員分が用意された[2]

静粛化の向上のために駆動系を簡素化したほか、艦体には浮台(ラフト)構造や無反響タイルが本格的に導入され、水中雑音を大幅に軽減した。これらの設計により、タンゴ型潜水艦はソ連で最も静粛性の優れた潜水艦と評価されていた[2]

機関

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推進軸は3軸で、水上航行およびシュノーケル航行は2D42Mディーゼルエンジン(1,900馬力)3基で、水中航行にはPG101電動機(1,350馬力)2基と高速航行用のPG102電動機(2,7000馬力)2基、低速航行用のPG104電動機(140馬力)1基で推進した[2]蓄電池は、60SU蓄電池を112セル4基搭載した。

兵装

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兵装として、533mm魚雷発射管6門を艦首に集中配置した。冷戦当時の西側諸国では、艦尾にも魚雷発射管4門を有するとされていたが[1]、本型はソ連の通常動力潜水艦として初めて艦尾の魚雷発射管を有しない潜水艦となった。魚雷発射管から発射する兵装は、魚雷を24本または機雷を44個したが、居住性を犠牲にすればさらに魚雷12本または機雷24個を搭載でき、従来の潜水艦より搭載量が20%増加した[2]

C4Iシステム

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タンゴ型潜水艦は、ソ連海軍の通常動力型潜水艦として初めて、ソナー戦闘処理装置を結合したC4Iシステムが搭載された。魚雷への目標情報の入力や雷撃手順が自動化されたほか、戦闘時の操艦を補助した[2]

運用

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タンゴ型潜水艦は1973年から1982年までに18隻が建造され、6隻が黒海艦隊に、12隻が北方艦隊に配備された。。1974年以降の建造艦は、ユーリ・ニコラエビッチ・コーミリシンロシア語版による改良設計が反映された。個別の艦名は無かったが、一部の艦は各地のコムソモールを顕彰して、それに因んだ艦名が与えられた。

ソビエト連邦の崩壊後、タンゴ型潜水艦は1990年代末までに全艦が退役した。大半がスクラップとして解体されたが、一部は博物館に展示されている。B-396のように、車椅子に対応できるよう改装された。

艦番号 艦名 就役 配備 除籍 除籍後
B-443 1973年5月 黒海艦隊 1995年8月4日 2003年にスクラップとして解体
B-474 1974年12月31日 北方艦隊 1995年10月12日 スクラップとして解体
B-437 マグニトゴルスキー・コムソモーリッツ 1975年9月30日 北方艦隊 2001年11月1日 除籍時点でネルパで処分待ち
B-498 1975年12月31日 黒海艦隊 1995年8月4日 2003年にスクラップとして解体
B-515 1976年4月29日 北方艦隊 2002年4月10日 除籍後、ハンブルク博物館で「U-434」の名称で水上展示。
B-519 1976年12月 黒海艦隊 1995年8月4日 改修中の予算不足で除籍。サンクトペテルブルクで石炭積み出し設備に転用。
B-290 1977年9月 北方艦隊 1995年8月4日 改修中の予算不足で除籍。クロンシュタットで処分待ち。
B-303 1977年12月30日 北方艦隊 1995年8月4日 改修中の予算不足で除籍。1999年にスクラップとして解体
B-146 コムソモーリッツ・カザフスターナ 1978年9月30日 黒海艦隊 1998年1月22日 スクラップとして解体。
B-546 1978年12月 北方艦隊 1998年4月22日 2002年5月にポリャールヌイに回航され、解体。
B-30 1979年10月 黒海艦隊 1998年または2001年
B-215 1979年12月 北方艦隊 1997年10月4日 改修中の予算不足で除籍。ポリャールヌイで解体待ち
B-396 ノヴォロシースキー・コムソモーリッツ
(1984年 – 1992年)
1980年9月 北方艦隊 1998年1月22日 2006年からモスクワセヴェルノエツシノ公園ロシア語版ロシア海軍歴史博物館ロシア語版で水上展示。
B-307 1979年12月30日 北方艦隊 2002年 2005年からトリヤッチK・Gサハロフ記念技術史公園ロシア語版で陸揚げ展示。
B-319 コムソモーリッツ・チュヴァシィ(1988年12月16日 – 1992年2月15日) 1981年9月25日 北方艦隊 1998年1月22日 解体後、司令塔のみポリャールヌイで記念碑として保存。
B-225 1981年12月 北方艦隊 1998年1月22日 スクラップとして解体。
B-312 1982年7月 北方艦隊 1998年3月16日 スクラップとして解体。
B-380 ゴールコフスキー・コムソモーリッツ(1982年12月30日 – 1992年2月15日)
スヴァートイ・クニャージ・ゲオルギー(2008年 – )
1982年12月30日[2] 黒海艦隊 2016年 2000年から浮きドックに入渠して大規模改修に入ったが、2009年に中断。2019年12月14日に浮きドックごと沈没し、浮揚後解体[2]

出典・参照元

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  1. ^ a b c d ノーマン・ポルマー英語版:編著、町屋俊夫:訳『ソ連海軍事典』 原書房 1988年 ISBN 4-562-01975-1 P.213
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u Подводная лодка "Б-380" Черноморского Флота”. flot.sevastopol.info. 2020年10月14日閲覧。
  3. ^ Подводные лодки, Проект 641Б”. 2020年10月5日閲覧。
  • Robert Jackson:編『The Encyclopedia Of Warships From World War Two To The Present Day』(ISBN 978-1592236275)Thunder Bay Press:刊 2006年

関連項目

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外部リンク

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