20フェンチャーチ・ストリート
20フェンチャーチ・ストリート 20 Fenchurch Street | |
---|---|
別名 | Walkie‐Talkie |
概要 | |
現状 | 完成 |
用途 | 商業ビル |
所在地 |
イギリス ロンドン |
座標 | 北緯51度30分41秒 西経0度5分1秒 / 北緯51.51139度 西経0.08361度 |
着工 | 2009年1月 |
完成 | 2014年4月[1] |
所有者 | 李錦記[2] |
高さ | 160 m (525 ft) |
技術的詳細 | |
階数 | 37[3] |
床面積 | 668,926平方フィート (62,100 m2)[3] |
設計・建設 | |
建築家 | ラファエル・ヴィニオリ |
開発業者 |
ランド・セキュリティーズ Canary Wharf Group |
構造技術者 | Halcrow Group |
主要建設者 | Canary Wharf Contractors |
受賞 | カーバンクル・カップ(2015年) |
ウェブサイト | |
skygarden |
20フェンチャーチ・ストリート(英語: 20 Fenchurch Street)は、シティ・オブ・ロンドンのフェンチャーチ街20番地に所在する商業用超高層ビルである。住所をそのままビルの名称としている。2014年4月に竣工し、2015年1月にレストランやバーを備えた屋上庭園「スカイガーデン」がオープンした[4][5]。総開発費は4.7億ポンドと報じられている[6]。
上部が膨らんだ特徴的なデザインは建築家ラファエル・ヴィニオリによるもので、似た形のトランシーバーになぞらえて「ウォーキートーキー」(Walkie‐Talkie)と呼ばれている[5][7]。この形状に由来するいくつかの問題点が指摘されている[8][9]。2015年、ビルディング・デザイン誌によってイギリスで最も醜い新築建築物カーバンクル・カップに選ばれた[10]。BREEAMによる持続可能性評価では「Excellent」と評された[11]。
当初はランド・セキュリティーズ社とカナリー・ワーフ社の所有であったが、2017年7月、香港の李錦記グループが12.8億ポンドで購入したと報じられた[6][12]。
建造の経緯
[編集]旧ビル
[編集]このビルの建造以前、この地には25階建て、高さ91メートル高層ビルが建てられていた。1968年の建造で、ロンドンで最も早期に建造された高層建築のひとつであった[13]。
2006年、新ビルの建設が許可された。旧ビルは2008年に取り壊されたが、屋上階からフロアを吊り下げる特異な構造であったため、下層階から順番にフロアを撤去する手順となり話題となった[14]。
新ビル
[編集]2009年1月に地盤工事、2011年1月に建築工事を開始し、2014年4月に竣工した[13]。翌月からテナントが入居を開始し、2014年8月までに仕上げを施し、2015年1月に建物とスカイガーデンが正式にオープンした[4][5]。
特徴
[編集]ウルグアイ人建築家ラファエル・ヴィニオリによる上部が膨らんだデザインが特徴的である。このデザインは、貴重な高層階フロアの面積を増やすとともに、地上階において広い歩道を設けることを可能にしている[15]。一方、単により多くの賃料を得るためだとの意見もある[16]。
フロア構成
[編集]地上階は2フロア分の高さのロビーとなっている。3階から34階まではオフィスが入居する。最上階の3フロアは屋上庭園「スカイガーデン」が設けられている[15]。ロンドンで最も高い位置にある公園を標榜している[4]。
スカイガーデンにはレストラン、バー、展望台、イベントスペースが設けられている[17]。
エコへの取り組み
[編集]環境性能評価BREEAMで「Excellent」の評価を得た[11]。屋上には太陽光発電パネルが設置されており[18]、年間27,300kWhを発生する[17]。欧州の省エネ性能証明書制度EPC-Bを取得している[17]。また、森林管理のための国際的機関である森林管理協議会(FSC)による認証を得ている[19]。
問題点
[編集]日光の反射
[編集]建築が進むにつれ、南側の窓に反射する日光のまぶしさが問題となり始めた[20]。
竣工に先立つ2013年9月、建築現場の近くに2時間ほど駐車していた乗用車の外装が溶けるという事件が発生し、当ビルの窓による日光の反射が原因と判断された[8][9]。通常のビルと異なり反り返るような形状のため、凹面鏡の原理で日光が集約され、異常な高温になったという[9]。開発業者は車の修理費用を負担した[8]。ほかにも、自転車のサドルや商店のドアマットが焦げた、フライパンで目玉焼きを焼くことができたなどの報告がなされた[21]。担当した建築家ヴィニオリは、ここまで高温になることは予想していなかったと述べた[22]。抜本的な対応として、南側の窓に日光を反射しない素材を取り付けた[23]。
ビル風
[編集]高層建築によるビル風が風害として時に問題となる[24]。当ビルでも竣工以来強いビル風の発生が報告されており[25]、独特の形状との関連も指摘されている[26]。2019年、シティ・オブ・ロンドンは、高層建築の建造にあたってより厳しい事前検査を行うようガイドラインを発表した[27][28]。
関連項目
[編集]- ヴィダーラ (ホテル) - 同じ建築家による凹面構造のガラス張りのビル
脚注
[編集]- ^ “London's Walkie Talkie judged UK's worst building” (英語). BBC News. (2015年9月2日) 2022年8月17日閲覧。
- ^ “London's Walkie Talkie building sold for record-breaking £1.3bn” (英語). The Guardian (2017年7月27日). 2022年8月17日閲覧。
- ^ a b “Schedule of areas”. 20 Fenchurch Street. 7 January 2014時点のオリジナルよりアーカイブ。7 January 2014閲覧。
- ^ a b c “What is Sky Garden - Sky Garden - London” (英語). Sky Garden. 2022年8月18日閲覧。
- ^ a b c “Walkie Talkie skyscraper's public garden opens amid criticism” (英語). BBC News. (2015年1月8日) 2022年8月18日閲覧。
- ^ a b “London Walkie Talkie skyscraper sells for a record US$1.7 billion | The Straits Times” (英語). The Straits Times (2017年7月27日). 2022年8月18日閲覧。
- ^ “How much did it cost to build the Walkie Talkie building?”. GotThisNow.com. 2022年8月18日閲覧。
- ^ a b c “'Walkie-Talkie' skyscraper melts Jaguar car parts” (英語). BBC News. (2013年9月2日) 2022年8月18日閲覧。
- ^ a b c “This London skyscraper can melt cars and set buildings on fire” (英語). NBC News (2013年9月4日). 2022年8月18日閲覧。
- ^ “London's Walkie Talkie judged UK's worst building” (英語). BBC News. (2015年9月2日) 2022年8月18日閲覧。
- ^ a b “'Walkie Talkie' Awarded BREEAM Excellent” (英語). Better Buildings Partnership (2015年7月8日). 2022年8月18日閲覧。
- ^ “BRIEF-Lkk Health Products Group acquires Landmark office building for 1.28 bln stg” (英語). Reuters. (2017年7月27日) 2022年8月18日閲覧。
- ^ a b “Sky Garden, London” (英語). H&H Van Hire (2019年10月7日). 2022年8月18日閲覧。
- ^ Lane, Thomas (2008年5月23日). “20 Fenchurch Street: Demolition mission” (英語). Building. 2022年8月18日閲覧。
- ^ a b “20 Fenchurch Street”. Rafael Viñoly Architects. 2022年8月18日閲覧。
- ^ “The Walkie-Talkie: battle of the bulge on Fenchurch Street” (英語). The Guardian (2012年12月12日). 2022年8月18日閲覧。
- ^ a b c “20 Fenchurch Street” (英語). 20 Fenchurch Street. 2022年8月18日閲覧。
- ^ “20 Fenchurch Street Case Study | EvoEnergy” (英語). Evo Energy. 2022年8月18日閲覧。
- ^ “Milestone: 20 Fenchurch Street EC3M | Buildington”. Buildington (2015年5月14日). 2022年8月18日閲覧。
- ^ Smith, Jennifer (2013年8月30日). “London's 'Walkie Talkie' skyscraper forces passers-by to shield their eyes from blinding light reflected from its windows”. Mail Online. 2022年8月18日閲覧。
- ^ “How Sunlight Reflected Off a Building Can Melt Objects” (英語). History (2013年9月5日). 2022年8月18日閲覧。
- ^ “Walkie Talkie architect 'didn't realise it was going to be so hot'” (英語). The Guardian (2013年9月6日). 2022年8月18日閲覧。
- ^ Mullin, Gemma (2014年10月9日). “No more Walkie Scorchie! London skyscraper which melted cars by reflecting sunlight is fitted with shading”. Mail Online. 2022年8月18日閲覧。
- ^ 第2版,世界大百科事典内言及, ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典,百科事典マイペディア,精選版 日本国語大辞典,デジタル大辞泉,世界大百科事典. “ビル風とは”. コトバンク. 2022年8月18日閲覧。
- ^ “Walkie Talkie blamed for powerful downdraught on London streets” (英語). Dezeen (2015年7月23日). 2022年8月18日閲覧。
- ^ Baker, Keiligh (2015年7月22日). “Down-draught from 'walkie talkie' skyscraper is blowing workers over”. Mail Online. 2022年8月18日閲覧。
- ^ “City of London tightens rules on skyscrapers over wind tunnel fears” (英語). The Guardian (2019年8月19日). 2022年8月18日閲覧。
- ^ Davies, Alex. “London Is Changing Its Skyscraper Designs—to Favor Cyclists” (英語). Wired. ISSN 1059-1028 2022年8月18日閲覧。
外部リンク
[編集]- 20 Fenchurch Street - 公式サイト
- Sky Garden - スカイガーデン公式サイト