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黒田亮

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黒田 亮(くろだ りょう、1890年1月30日 - 1947年1月5日)は、大正-昭和前半の日本の心理学者。動物心理学のほか、勘、禅、中国思想などの幅広い研究がある。

経歴

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1890年(明治23年)1月30日新潟県南魚沼郡石打村(現南魚沼市)生まれ。旧制長岡中学旧制第一高等学校を経て1815年(大正4年)東京帝国大学文科大学哲学科(心理学専修)卒業。旧制新潟高等学校教授などを経て1926年(昭和元年)京城帝国大学助教授、1928年(昭和3年)教授となり1942年(昭和17年)まで務める。退官後は著述活動に専念。1947年(昭和22年)岐阜県にて死去。[1]

京城帝大時代には、『勘の研究』(1933(昭和8)年、『続・勘の研究』1938(昭和13)年)、『心理学概論』(1935(昭和10)年)、『動物心理学』(1936(昭和11)年)などの著作や論文を書くかたわら[2]、随想なども著した。退官後は東洋の心理学に関心を深め、『唯識心理学』(1944(昭和19)年)、『支那心理思想史』(1948(昭和23)年_没後刊)などを執筆。なお、帝大卒業後の旧制高校教師時代にはトルストイの翻訳本なども出している。[3] 東京帝大の同窓生に古賀行義[4]、ダーウィンの翻訳者浜中浜太郎[5]がいる。[1]

業績

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  • 勘の研究
  • 「手術ニヨリテ開眼セル四十二歳先天性白内障夫人患者ニ就イテノ調査報告」("Acta Psychologica (Keijo)"誌、1巻1号、1930年)について。

哲学者ジョン・ロックが17世紀末に提出したモリヌークス問題(先天性盲人が初めて開眼した時の認識問題)はその後、実証的な臨床例が重ねられた。それらの研究文献を集めた古典的な書物をドイツのM・V・ゼンデン(Marius von Senden)が1932年に発表するより早く、黒田は欧米の14例と自身が観察した例を比較検討した論文を1930年に発表していたが、日本語で書かれていたためゼンデンの本にこの先駆的論文は収録も引用もされなかった[6]

著書

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主著

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  • 『勘の研究』岩波書店、1934年7月。 NCID BN0113224X国立国会図書館サーチR100000001-I37111101080093 
    • 『勘の研究』講談社(講談社学術文庫, 512)、1980年9月。 NCID BN0157248X 
  • 『動物心理學』三省堂、1937年2月。 NCID BA35051668 
  • 『勘の研究 続』岩波書店、1938年。全国書誌番号:46062119 
  • 『心の世界:心理學入門』三省堂、1943年。 NCID BN13154567 
  • 『唯識心理学』小山書店、1944年。全国書誌番号:46003228 
  • 『心理学概論』三省堂出版、1947年。 NCID BN09267650  TRC MARC No.91120306
  • 『支那心理思想史』小山書店、1948年10月。全国書誌番号:46001457 
    • 『支那心理思想史』大空社(アジア学叢書 43)、1998年2月。 NCID BA34719027 

随筆、植物,文献学関連

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編・校訂・翻訳書

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共著

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  • 大河内一男,美濃口時次郎,吉益脩夫,黒田亮,平光吾一,桜井芳人『厚生(現代日本の基礎;2)』小山書店、1944年。全国書誌番号:46016342 (黒田亮「日本人の気質」)
  • 沢木興道,黒田亮,柴野恭堂,林岱雲,後藤大用,宇井伯寿 著、鈴木大拙, 宇井伯寿, 井上哲次郎監修 編『禅の講座 第1巻 (禅の概要)』春陽堂書店、1952年。全国書誌番号:51008972 (黒田亮「禅の心理学」)
  • 『読書の眼』帝国大学新聞社 編、1937年、72-77頁。全国書誌番号:46066444 (黑田亮「眠りの前」)
  • 稲葉左馬吉 等 編『動物の心』清水書房〈青少年動物・植物の科学;3〉、1949年、79-97頁。全国書誌番号:45025799 (黒田亮「ヘビ・トカゲ・カメ・カエル・イモリの心」])

雑誌

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  • 「悲劇「信仰と故鄕」に就いて」『東亜の光』第11巻第2号、東亜協会、1916年2月、40-47頁、全国書誌番号:00016135 
  • 「豐國の錦繪」『文芸春秋』第11巻第9号、文芸春秋、1933年9月、16-17頁、全国書誌番号:00021363 
  • 「機關車の改良案」『文芸春秋』第14巻第1号、文芸春秋、1936年1月、11-12頁、全国書誌番号:00021363 
  • 文部省教学局 編『日本諸学振興委員会研究報告 第二篇(哲學)』内閣印刷局、1941年、97頁。全国書誌番号:66013801  (京城帝國大學敎授 黑田亮「沙石集を中心として見たる鎌倉時代の思想傾向」)
  • 矢の倉書店 編『読書随筆』矢の倉書店、1938年、217頁。全国書誌番号:46066452 (黑田亮「玩物喪志」)
  • 「文部省と大學」『文芸春秋』第16巻第16号、文芸春秋、1938年9月、125-、全国書誌番号:00021363 
  • 「書齋獨語」『書斎 4』第10巻第39号、三省堂、1940年10月、6-9頁、全国書誌番号:00011796 
  • 「科学文化」第2巻第2号、科学文化協会、1942年2月、全国書誌番号:00003548 (黑田亮「日本人の感」)
  • 「政界往来」『政界往来 = Political journal』第13巻第8号、1942年8月、93-95頁、全国書誌番号:00012889 (黑田亮「國語と其の表現」)

論文

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  • 「ロェブとワットソン」『心理研究』第17巻第98号、日本心理学会 The Japanese Psychological Association(以後略)、1920年、178-188頁、doi:10.4992/jjpsy1912.17.178NAID 130001728470 
  • 「アリマキの行動特にその對光反應に就いて」『心理研究』第19巻第109号、1921年、30-34頁、doi:10.4992/jjpsy1912.19.30NAID 130001728739 
  • 「高等學校入學試驗成績と精神檢査との相關に就いて」『心理研究』第20巻第119号、1921年、333-336頁、doi:10.4992/jjpsy1912.20.119_334NAID 130001728061 
  • 「高等學校の心理學科に關する私見」『心理研究』第21巻第123号、1922年、188-193頁、doi:10.4992/jjpsy1912.21.188NAID 130001727854 
  • 「爬蟲類に於ける聽覺の研究」『心理研究』第25巻第147号、1924年、268-281頁、doi:10.4992/jjpsy1912.25.147_268NAID 130001726648 
  • 「再び高等學校の心理學教授に就いて」『心理研究』第27巻第161号、1925年、375-384頁、doi:10.4992/jjpsy1912.27.375NAID 130001725890 
  • 「二歳兒の距離知覺に就いて」『心理学研究』第1巻第1号、日本心理学会(以後略)、1926年、69-80頁、doi:10.4992/jjpsy.1.69NAID 130002012407 
  • 「猿の生活から」『心理学研究』第1巻第6号、1926年、934-960頁、doi:10.4992/jjpsy.1.934NAID 130002012463 
  • 「XXX 淡水巻貝の對光趨動知見補遺」『動物学雑誌』第40巻第482号、社団法人日本動物学会(以後略)、1928年12月15日、513-514頁、NCID AN00166645NDLJP:10832756 
  • 「XXXII 蝌蚪の生育に及ぼす光線及生活領域の影響」『動物学雑誌』第40巻第482号、1928年12月15日、514-515頁、NCID AN00166645NDLJP:10832758 
  • 『音の比較心理学(博士論文)』1930年2月15日。 NAID 500000490941  東京帝国大学文学博士号論文
  • 日本心理学会第一回大会報告(編)「心理學實驗室の改造」『心理学論文集』第1巻、岩波書店、1928年、67頁、全国書誌番号:47003737 
  • 日本心理学会 編(編)「(2編)「消滅刺激の心理學的意義に就いて」(p.116~)「兒童に於ける距離知覺の再生 」(p.147~)」『心理学論文集』第2巻、岩波書店、1933年、全国書誌番号:--閲覧 
  • 「情緒に伴ふ身體的變化の局所性に就いて-On the Localization of Bodily Disturbance accompanying Emotions-」『心理学研究』第9巻第5-6号、1934年、891-900頁、doi:10.4992/jjpsy.9.891NAID 130002026848  (英語論文)
  • 「價値」『思想』第4巻第167号、岩波書店、1936年4月、95-103頁、全国書誌番号:00010061 
  • 「城戸幡太郎著「心理學史 (上)」」『心理学研究』第12巻第2号、1937年、81-83頁、doi:10.4992/jjpsy.12.2_81NAID 130002012599 
  • 東京文理科大学,東京高等師範学校,東京文理科大学心理学教室 編(編)「本邦心理學者の語學力に就いての數量的考察」『教育心理研究』第13巻第10号、培風館、1938年10月、42-43頁、全国書誌番号:00005288 
  • 「勘を中心とする保育の問題」『保育(10月號)』第66巻、保育発行所、1942年10月、2-7頁、全国書誌番号:00021704 

「Acta Psychologica (Keijo)」誌

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[7]

  • KURODA, R (1930). “手術ニヨリテ開眼セル四十二歳先天性白内障夫人患者ニ就イテノ調査報告[A report of investigations dealing with a new case of cataricta congenita in a lady,who gained sight by successful operation at her forty-second year.”. Acta Psychologica (Keijo) 1 (1): 17-42. (英文アブストラクト以外日本語)[8]
  • KURODA, R (1932). “On Vijnati-matrata. 1. Introduction and the eight phases of the mind.”. Acta Psychologica (Keijo) 1: 133-145. 
  • KURODA, R (1934). “On Vijnati-matrata. II. The first two classes of Caitasikadharma. Acta Psychologica”. Acta Psychologica (Keijo) 2: 84-90. 
  • KURODA, R (1934). “Takuan's psychology revealed in his work, "Rigaku Shokei."”. Acta Psychologica (Keijo) 2: 71-75. 

共同論文

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  • 田邊元,黒田亮,横山松三郎,高木貞二,増田惟茂,城戸幡太郎「シンポジウム- 感覺の概念に就いて」『心理学研究』第2巻第3号、日本心理学会、1927年、439-485頁、doi:10.4992/jjpsy.2.439/NAID 1300020129602015-8-29閲覧 
  • 黒田亮,葉山正,松島亀之助「雜録 生き物雜録/日日ぐさ(1)/自文鳥人工育雛」『動物心理』第1巻第2号、社団法人日本動物学会、1934年、22-35頁、doi:10.2502/janip1934.1.22NAID 1300036579692015-8-29閲覧 

参考文献

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  • 鳥居修晃「〔日本基礎心理学会〕第23回大会特別講演 先天盲開眼前後における事物の識別--黒田亮博士の足跡をたずねて」『基礎心理学研究』第24巻第1号、日本基礎心理学会、2005年9月、24-38頁、NCID AN00006194 

関連文献

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脚注

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  1. ^ a b コトバンク「黒田亮」
  2. ^ 1.CiNii<黒田亮(同名異人あり-発表年代で判別の事)>
    2.THE PSYCHOLOGY AND PHYSIOLOGY OF MEDITATION AND RELATED PHENOMENA: A BIBLIOGRAPHy1 p.50
  3. ^ 国会図書館<黒田亮>
  4. ^ コトバンク<古賀行義>
  5. ^ 国会図書館<浜中浜太郎>
  6. ^ 鳥居修晃はこれを遺憾とし、2005年に大山正が企画・執筆したPioneering studies in the 1930's on perception中の一編として黒田論文を[Special Issue:The history of psychology in Japan(Oyama,Torii,Mochizuki)]として「Japanese Psychological Research」誌で紹介した。(黒田亮博士の足跡をたずねて 2005, p. 26)
  7. ^ Beverly Timmons, Joe Kamiya. “THE PSYCHOLOGY AND PHYSIOLOGY OF MEDITATION AND RELATED PHENOMENA: A BIBLIOGRAPHy” (PDF). Association for Transpersonal Pshychology. p. 50. 2015年8月29日閲覧。
  8. ^ 先天盲開眼前後における事物の識別--黒田亮博士の足跡をたずねて et al.

関連項目

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外部リンク

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国立国会図書館デジタル化資料<黒田亮>

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国立国会図書館デジタル化資料<閲覧制限>

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閲覧制限 (国会図書館館内および図書館送信参加館の館内)<