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ナイチンゲールの歌

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
鴬の歌から転送)

ナイチンゲールの歌』、または『うぐいすの歌』(: Le Chant du rossignol )は、イーゴリ・ストラヴィンスキーが自作のオペラ『夜鳴きうぐいす(ナイチンゲール)』の音楽を再構成して作った交響詩、またこれに基づく1幕のバレエ作品。

作曲の経過

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モスクワ自由劇場の委嘱による3幕の歌劇『夜鳴きうぐいす』(原作:アンデルセン)は、第1幕が1907年から1909年、残りの第2、第3幕が1913年から1914年にかけて作曲された。作曲が中断していた4年の間にストラヴィンスキーの作風は『火の鳥』(1910年)、『ペトルーシュカ』(1911年)、『春の祭典』(1913年)の作曲を経て大きく変化したため、完成した『夜鳴きうぐいす』は1幕とそれ以外の幕で様式に大きな断層が生じることとなった。

依頼主であったロシア自由劇場が完成直前に倒産したため、バレエ・リュスの主宰者セルゲイ・ディアギレフはストラヴィンスキーに上演を承諾させ[1]1914年オペラ座で初演を行った。オペラの初演は好評であったが[2]、パリで2回、ロンドンで4回上演された後は再演されなかった[3]

その後、ストラヴィンスキーが、同じ様式によって書かれた第2幕と第3幕をまとめて交響詩にしようと考えていたところ、1917年初めにディアギレフから『夜鳴きうぐいす』のバレエ化の提案があり[4]、これに同意した。ストラヴィンスキーは編曲にとりかかると同時に、アンデルセンの原作を元にバレエのための台本を作り直した[5]

初演

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交響詩の初演は1919年12月6日ジュネーヴにおける[6]エルネスト・アンセルメ指揮、スイス・ロマンド管弦楽団の演奏会で行われた[7]

バレエの初演は2か月後の1920年2月2日パリ・オペラ座におけるバレエ・リュスの公演で行われた。振付はレオニード・マシーン、ナイチンゲール役は『火の鳥』初演時に「火の鳥」役を踊ったタマーラ・カルサヴィナ。美術と緞帳はアンリ・マティス[8]、指揮は交響詩の初演と同じくアンセルメが担当し、オペラ『夜鳴きうぐいす』のためにアレクサンドル・ブノワがデザインした歌舞伎隈取のようなメーキャップが引き続き使用された[3]。ところが、この時のマシーンによる振付は音楽のリズムを無視したものであったために、観客、ダンサー、ディアギレフのいずれにも不評であり[9]、わずか2回上演されただけでレパートリーから外されてしまった[3]

その後、バレエ・リュスでは1925年ジョージ・バランシンによる新しい振付によって『ナイチンゲールの歌』が再演された。この時のナイチンゲール役に起用された当時15歳のアリシア・マルコワは、体重36kgの小柄な身体で見事に籠の中の鳥を演じて成功をおさめた[3]。マルコワのための衣裳は白で統一され、タイツの上にスカートをはかないという斬新なデザインであった。また、高価な白鷺の羽毛を使った帽子は予算超過となり、超過した分はストラヴィンスキーとマティスが負担した[10]

演奏時間

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  • 約20分

楽曲構成

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(作曲者によるピアノ編曲版の序文による区分)[4]

  • 第1部:中国の宮殿の祭
  • 第2部:二羽のうぐいす(本物のうぐいすと機械仕掛けのうぐいす)
  • 第3部:中国の皇帝の病気と回復

楽器編成

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オペラ版よりも縮小された2管編成。トゥッティの箇所は少なく、ソロやセクションに協奏的役割が与えられている[11]

脚注

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  1. ^ ストラヴィンスキーに対する作曲料1万フランは、すでに自由劇場が支払っていたので、ディアギレフは無料で『夜鳴きうぐいす』を手に入れた(リチャード・バックル、鈴木晶訳『ディアギレフ ロシア・バレエ団とその時代』リブロポート、1983年、上巻317ページ)。
  2. ^ バックル、前掲書、上巻322ページ
  3. ^ a b c d 芳賀直子『バレエ・リュス その魅力のすべて』国書刊行会、2009年、226-227ページ
  4. ^ a b 『最新名曲解説全集6 管弦楽III』音楽之友社、1980年
  5. ^ 塚谷晃弘訳『ストラヴィンスキー自伝』全音楽譜出版社、1981年、90ページ
  6. ^ 『自伝』114ページ。『最新名曲解説全集6』(音楽之友社)ではジェノヴァになっている。
  7. ^ ストラヴィンスキーはこの時の演奏を「完璧な演奏ぶり」と高く評価している(『自伝』114-115ページ)。
  8. ^ 当時、マティスはナイチンゲールをはじめ、何百羽もの鳥を飼っていたという(バックル、前掲書、下巻101ページ)。
  9. ^ バックル、前掲書、下巻103ページ
  10. ^ バックル、前掲書、下巻212ページ
  11. ^ 『自伝』114-115ページ