鳥居啓子
人物情報 | |
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生誕 |
1965年(58 - 59歳) 日本・東京都杉並区 |
出身校 |
筑波大学第二学群生物学類卒業 筑波大学大学院生物科学研究科修士課程修了 筑波大学大学院生物科学研究科博士課程修了[1] |
学問 | |
研究分野 | 植物発生遺伝学 |
研究機関 |
テキサス大学オースティン校[1] 名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所(ITbM)[2] |
学位 | 博士(理学) |
主な受賞歴 |
第35回(2015)猿橋賞[2] 2021年度朝日賞[1] |
鳥居 啓子(とりい けいこ、1965年[3] - )は、日本の植物学者。専門は植物発生遺伝学。学位は、博士(理学)[4]。テキサス大学オースティン校分子細胞生物部教授(ジョンソン・エンド・ジョンソンセンテニアル冠教授)[5]。
概要
[編集]テキサス大学オースティン校を拠点に植物の発生メカニズムを研究している。名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所の海外研究室主催者(PI)および生命理学研究科の客員教授を兼任する。ハワード・ヒューズ医学研究所の日本人正研究員(インベスティゲーター)[6]である。日本とアメリカで研究室を主宰、生物学と有機化学の橋渡し研究をしている[7]。女性研究者としての啓蒙活動も実施している[8][9][10][11][12]。
学歴
[編集]研究
[編集]植物の形態形成、発生パターン形成の専門家であり、植物細胞は受容体キナーゼと呼ばれるシグナル伝達因子を用いて生長することを報告した。さらには遺伝学的・分子生物学的解析によって、植物の表皮において気孔が分化する分子メカニズムを明らかにした[13]。
東京大学の米田好文研究室では、ERECTAが植物において報告のなかった受容体型キナーゼであると報告した。[13]。受容体型キナーゼはペプチドホルモンを受け取るとされ、それが植物の成長や形態形成に関わると報告した。[13]。ワシントン大学の研究室では気孔の研究へ進み、ERECTA遺伝子に配列の似た2つの遺伝子があり、3つが揃って変異すると気孔の数と分布が制御できなくなると発表した[14]。
また、気孔ができない場合、気孔をつくる幹細胞の発生が停止しており、その原因となる遺伝子を見つけて「ミュート」(mute)と名づけ、報告した[15]。
鳥居の研究は科学技術庁のほか、アメリカの農務省、エネルギー省ならびに米国科学財団の助成を受けている[16]。
職歴
[編集]- 1992年 東京大学(米田好文教授研究室)-1994年[17]
- 1994年 イェール大学分子細胞発生学部 ブラウン博士研究員(Xing-Wang Deng教授研究室)-1997年[17]
- 1995年 日本学術振興会 海外特別研究員(-1997年)
- 1998年 ミシガン大学生物学部(現MCBD)博士研究員(スティーブン・クラーク教授[18]研究室)-1999年[17]
- 1999年- ワシントン大学 (ワシントン州) [17]
- 2008年 科学技術振興機構 さきがけ研究員 -2012年[19]
- 2011年- ハワード・ヒューズ医学研究所およびゴードン・アンド・ベティ・ムーア財団(HHMI-GBMF) 正研究員
- 2013年- 名古屋大学 トランスフォーマティブ生命分子研究所 主任研究員(海外PI)[12]
- 2019年- テキサス大学オースティン校分子細胞生物学部教授(ジョンソン・エンド・ジョンソンセンテニアル冠教授)[20]、ワシントン大学 (ワシントン州)生物学部客員教授[20]
顕彰・受賞
[編集]- 2005年 第11回日本女性科学者の会奨励賞[21]
- 2008年 日本学術振興会賞[3]
- 2011年 ハワード・ヒューズ医学研究所およびゴードン・アンド・ベティ・ムーア財団 (HHMI-GBMF) 正研究員選出[22][16]
- 2012年 アメリカ科学振興協会 (AAAS) フェロー選出[23]
- 2012年 ワシントン州科学アカデミー会員選出[24]
- 2014年 井上学術賞[25][26]
- 2015年 猿橋賞[27]
- 2015年 アメリカ植物生理学会(American Society of Plant Biologists) フェロー賞[28]
- 2022年 朝日賞[1]
- 2023年 スティーヴン・ヘールズ賞(アメリカ植物生理学会)[29]
- 2024年 紫綬褒章[30][31]
人物
[編集]東京都杉並区荻窪生まれ、神奈川県横浜市戸塚区育ち[32]。中学2年生の時に父の仕事の関係でアメリカに渡り、高校卒業までをニューヨークで過ごす[33]。
夫は理論物理学者のアンドレアス・カーチ[34]。娘が2人いる[34]。
親族
[編集]祖父は三井石油化学社長・石油化学工業協会会長を務めた鳥居保治[35]。叔父はフランス文学者の清水徹。大伯父(父方の祖母の兄)に、神経繊維における跳躍伝導の発見者である生理学者の田崎一二と、同じく生理学者の田崎京二がいる。物理学者の田崎晴明は再従兄[36]。
脚注
[編集]- ^ a b c d “朝日賞受賞者 - 鳥居啓子・経歴”. 朝日新聞社 (2022年1月). 2022年1月7日閲覧。
- ^ a b “メンバー - 鳥居啓子”. 名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所(ITbM). 2022年1月7日閲覧。
- ^ a b “第5回日本学術振興会賞受賞者 鳥居啓子 TORII Keiko U”. 日本学術振興会賞. 2014年7月12日閲覧。
- ^ a b 鳥居啓子 (1993). Cell differentiation of the outermost cells of developing endosperm in carrot [ニンジン胚乳の最外層細胞における細胞分化] (博士 (理学) 甲第1049号). 筑波大学. doi:10.11501/3072022. NAID 500000101965. NDLJP:3072022。
- ^ “マイポータル”. 鳥居 啓子 トリイ ケイコ (Keiko Torii). researchmap. 2023年12月1日閲覧。
- ^ “[https://www.hhmi.org/node/15190 Our Scientists : Keiko U. Torii, PhD Investigator / 2011—Present]” (英語). ハワード・ヒューズ医学研究所. 2014年7月10日閲覧。
- ^ 辻 篤子 (2018年2月9日). “世界を変える研究所の挑戦”. 2018年6月8日閲覧。
- ^ Roach, John (2012-05) (英語). インタビュー 植物の小さな呼吸器官 Tiny Breathing Plant Mouths. 25. ハワード・ヒューズ医学研究所 2014年7月10日閲覧。.
- ^ “インタビュー” (英語). 米国細胞生理学会. 2014年7月10日閲覧。
- ^ “Science Career : Juggling Work and Family” (英語). サイエンス誌. 2018年5月30日閲覧。[リンク切れ]
- ^ (英語) インタビュー : Q & A Keiko U. Torii. 23. Current Biology. (2013-11-03). pp. R943-R944. doi:10.1016/j.cub.2013.08.032 2014年7月10日閲覧。.
- ^ a b c d e “この人に聞く : 米国と日本で研究室を主宰し、植物の発生メカニズムを探究 [第43回 生命にかかわる仕事っておもしろいですか?]”. 公益財団法人テルモ生命科学芸術財団. 2018年5月30日閲覧。
- ^ a b c “植物の世界は不思議がいっぱい!”. テルモ生命科学芸術財団. p. 3. 2018年6月1日閲覧。
- ^ Hines, Sundra (2005年7月7日). “3種の遺伝子が気孔の過剰を制御 [Trio of plant genes prevents too many mouths”] (英語). University of Washington News (ワシントン大学) 2018年5月31日閲覧。
- ^ Hines, Sundra (2007年1月4日). “〈無口〉と〈無言〉が植物の沈黙を破る ['Speechless' and 'mute' help break the silence of plants” (英語). University of Washington News] (ワシントン大学) 2018年5月31日閲覧。
- ^ a b Hines, Sandra (2011年10月16日). “大学ニュース 研究局面に寄与する新助成事業に本学植物学教授選出 [Boost for Plant Scientists including UW Prof Comes at Critical Time]” (英語). ワシントン大学. 2014年7月10日閲覧。
- ^ a b c d e f “Keiko Torii, Associate Professor : Research Faculty Profile”. Department of Biology, University of Washington. 2007年12月31日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年5月31日閲覧。
- ^ “Steven Clark, Professor”. PEOPLE | FACULTY. Dept. of Molecular, Cellular, and Developmental Biology, University of Michigan LSA. 2023年12月1日閲覧。
- ^ “第3期さきがけ(鳥居 啓子) 研究課題”. 科学技術振興機構. 2014年7月10日閲覧。
- ^ a b “経歴”. 鳥居 啓子 トリイ ケイコ (Keiko Torii). researchmap. 2023年12月1日閲覧。
- ^ “第11回奨励賞(2006年度)受賞研究:植物の器官形成を制御する細胞間シグナル伝達機構の解明”. 日本女性科学者の会. 2018年5月30日閲覧。
- ^ “ニュース 研究局面に植物学者対象の助成事業新設 [New Program Boosts Support for Plant Scientists at Critical Time]” (英語). ハワードヒューズ研究所 (2011年6月11日). 2014年7月10日閲覧。
- ^ “アメリカ科学振興協会会員、フェローに選出される [AAAS Members Elected as Fellows]”. アメリカ科学振興協会 (2012年11月30日). 2018年5月30日閲覧。
- ^ “ワシントン州科学アカデミー、新会員37名を選出 [37 New Members Elected by Science Academy]” (PDF) (英語). Washington State Academy of Sciences (2012年8月1日). 2015年4月21日閲覧。
- ^ 「井上学術賞受賞者一覧 第31回(2014年度)」(pdf)、公益財団法人井上科学振興財団、2018年6月7日閲覧。
- ^ 「公益財団法人 井上科学振興財団 2014年度 事業報告書」(pdf)、公益財団法人井上科学振興財団、2018年6月7日閲覧。
- ^ “猿橋賞に鳥居啓子氏 植物の気孔を研究”. 47NEWS. (2015年4月21日) 2015年4月21日閲覧。
- ^ Cato, Susan (2015年4月6日). “2015 Fellow of ASPB Award: Dr. Caren Chang and Dr. Keiko Torii” [2015年ASPBフェローを発表:カレン・チャン博士、鳥居啓子博士] (英語). アメリカ植物生理学会 [ASPB]. 2018年5月30日閲覧。
- ^ “Stephen Hales Prize 2023 Winner: Keiko Torii”. Awards & Funding. The American Society of Plant Biologists. 2023年7月12日閲覧。
- ^ 『官報』号外第106号、令和6年4月30日
- ^ “令和6年春の褒章受章者(在外居住者)” (PDF). 内閣府. p. 1 (2024年4月29日). 2024年5月9日閲覧。
- ^ “米ワシントン大教授 鳥居啓子さん”. 日本経済新聞 (2018年11月6日). 2023年1月12日閲覧。
- ^ “第43回 | この人に聞く「生命に関わる仕事っておもしろいですか?」 | 中高生と“いのちの不思議”を考える─生命科学DOKIDOKI研究室”. www.terumozaidan.or.jp. 2023年1月12日閲覧。
- ^ a b “米ワシントン大教授 鳥居啓子さん”. 日本経済新聞 (2018年11月8日). 2023年1月12日閲覧。
- ^ Prof. Keiko Torii [@KeikoUTorii] (2023年5月29日). "Wikipediaで初めて祖父の生年月日や出身地を知る。あまり親戚づきあいのない家だったし、お爺様といえば「黒塗りのリムジンに乗る怖い人」という子供時代の記憶。。。イランジャパン石化プロジェクトとか、色々な話を聞いてみたかった。". X(旧Twitter)より2023年5月29日閲覧。
- ^ 田崎晴明 日々の雑感的なもの 2014年4月1日
外部リンク
[編集]- テキサス大学オースチン校 分子生命科学科の教員紹介
- ワシントン大学 分子細胞生物学プログラムの教員紹介
- 名古屋大学生命理学研究科植物パターン形成グループ
- 世界トップレベル研究開発拠点プログラム (WPI) 名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所(ITbM)
- Prof. Keiko Torii(本人のTwitterアカウント)
- Torii Lab(研究室のTwitterアカウント)